「行政法」の版間の差分
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'''行政法'''(ぎょうせいほう)とは、[[行政]]特有の活動について、私人相互の関係とは異なる規律をする
== 概説 ==
行政法とは「行政に関する法」あるいは「行政に特殊固有な法」をいう<ref name="minami2">{{Cite book |和書 |author=南博方 |year=2012 |title=行政法第6版補訂版 |page=2 |publisher=有斐閣 }}</ref>。行政法は「[[民法]]」や「[[商法]]」のように単独の法典が存在しているわけではなく行政に関連する法律の総称をいう<ref name="minami2" />。
行政の定義については[[行政#行政法学上の定義]]参照。
=== 行政と法 ===
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[[ローマ法]]以来の伝統的な立場では法は私法と公法に分けられ、行政法は公法に属すると考えられてきた<ref name="minami3">{{Cite book |和書 |author=南博方 |year=2012 |title=行政法第6版補訂版 |page=3 |publisher=有斐閣 }}</ref>。国などの行政主体が私人に公権力を行使する権力関係は、私人間の利益の調整と配分を目的とする私法とは全く異質のもので公法的な色彩が最も顕著に表れる<ref name="minami3" />。また、非権力手段によって行政作用が行われる非権力関係においても、それが公益の目的を持つ限り私法の適用は排除または修正されると考えられている<ref name="minami3" />。
一方、[[英米法]]では[[コモン・ロー]](common law)のもとで国などの行政主体か私人かを問わずに共通に適用される一般法的地位にある。<ref name="minami3" />
英米法においては行政法が成立する以前にコモン・ローが権威を獲得していたため、行政法の特質や、そのような特質のある規律を受けるに値する行政とはいかなる活動か、といった議論は[[大陸法]]系と比べにおけるほど重要ではない。例えば、あるアメリカ行政法の教科書<ref>ゲルホーン=レヴィン著、大浜=常岡訳『現代アメリカ行政法』(木鐸社、東京、1996年)</ref>は、行政や行政法の定義からではなく、行政にはいかなる権限が与えられ得るかという問題から説明を始めている。▼
=== 行政法学 ===
{{読み仮名|'''行政法学'''|ぎょうせいほうがく}}は、行政法をはじめとする行政活動に対する法的規律のあり方を研究する学問である。歴史的には、行政権の権力行使を法的に
伝統的な行政法学は、行政法の特質を、「公益保護の見地から私人相互間の利害調整([[私法]])を超える特殊な規律を定めること、さらに、その目的達成のために公権力の行使を認めること」に求めていたが<ref>前掲芝池総論6頁、前掲リヴェロ9頁~14頁</ref>、現代の行政法の内容は、こうした公益優先性や公権力性に尽きるものではなく、行政活動の手続・説明
== 行政法の歴史 ==
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やがて、市民階級が経済的に台頭すると、君主が無制限に行政権を発動することに対して反発が強まる。彼らにより行政活動を法により規律する必要性が認識され、[[フランス革命]]などの[[市民革命]]を経て、市民によって選ばれた議会で制定された法によって行政権を縛ろうとした。
このように全能とみなされていた君主の行政権を制約しようとするところからスタートしているため、大陸の行政法は行政の国民に対する優越を前提としてする独自の法体系=行政法が形成された。
そして、行政の自立と擁護のために、通常の司法裁判所とは別に「'''[[行政裁判所]]'''」が行政内部に作られた。[[国務院 (フランス)|コンセイユ・デタ]]を頂点とする行政裁判権が蓄積してきた判例と、それを体系化しようとする学説の努力とによって、行政法の諸理論が発達していった。このような行政裁判所は他の大陸諸国にも波及し、後に日本など他の地域の司法制度にも影響を与えることになる。そして、この特別な裁判所の存在が公法と私法を分ける根拠にもなった<ref>原田尚彦『行政法要論』(学陽書房、1976年10月)第7版補訂二版19~21頁</ref>。
ただ、[[アメリカ合衆国]]や[[イギリス]]をはじめとする[[コモン・ロー]]法系の諸国では、若干様相が異なる。イギリスでは、行政組織が発達する以前からコモン・ローが権威を獲得しており、行政が行動する際に用いるのは、特例を定める[[制定法]]がない限り、コモン・ローの手続であって、行政作用に固有の法制というものは存在しない<ref>前掲リヴェロ日本語版への序文、17頁</ref>。
[[明治維新]]後の日本は自国の法典を作るにあたり、フランスの行政法も参考にしていたが、初期の行政法は未完成な一面があっ
== 日本法における行政法
=== 行政法の法源 ===
行政法の[[法源]]。法源は複数存在し、以下のような法が挙げられる<ref>前掲原田 28~36頁</ref>。
; [[成文法]]
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なお、[[訓令]]・[[通達]]は形式上、行政組織内部での規範(行政規則)に過ぎず、行政法の法源とはなりえない。しかし、実務の上では必要性が高く大きな影響力を持っているため、現代行政を「法律による行政」ならぬ「通達による行政」と揶揄することもある<ref>前掲原田 37~40頁</ref>。
=== 行政法の分類 ===
行政主体に関する法。[[国家行政組織法]]、[[内閣法]]、[[地方自治法]]、[[国家公務員法]]、[[地方公務員法]]などである<ref name="muroi13">{{Cite book |和書 |author=室井力 |year=2005 |title=新現代行政法入門 |page=13 |publisher=法律文化社 }}</ref>。
▲*[[国家行政組織法]]
==== 行政作用法 ====
{{See|行政#行政作用
行政作用に関する法。[[行政代執行法]]、[[警察官職務執行法]]、[[土地収用法]]、[[財政法]]、[[会計法]]、[[国税通則法]]、[[国税徴収法]]、[[行政手続法]]などである<ref name="muroi13" />。
==== 行政救済法 ====
{{See|行政#行政救済
行政救済に関する法。[[国家賠償法]]、[[行政不服審査法]]、[[行政事件訴訟法]]などである<ref name="muroi13" />。
英米法では政府の行政活動を統制する法の一部門を行政法という<ref name="muroi17">{{Cite book |和書 |author=室井力 |year=2005 |title=新現代行政法入門 |page=17 |publisher=法律文化社 }}</ref>。
▲英米法においては行政法が成立する以前にコモン・ローが権威を獲得していたため、行政法の特質や、そのような特質のある規律を受けるに値する行政とはいかなる活動か、といった議論は[[大陸法]]系
英米法での行政法は、行政機関に与えられた権限に関する法、行政機関の権限行使に課される要件に関する法、不法な行政活動に対する救済に関する法の3分野からなる<ref name="muroi17" />。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 参考文献 ===▼
<!-- === 注釈 === -->
本文中で引用したもののほか、▼
{{Notelist}}
*[[橋本博之]]「行政訴訟に関する外国事情調査結果(フランス)」([http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/gyouseisosyou/dai7/7siryou2.pdf 首相官邸トップ > 会議等一覧 > 司法制度改革推進本部 > 検討会 > 行政訴訟検討会]第7回会合配付資料、2002年)▼
*ウェール=プイヨー著、兼子=滝沢訳『フランス行政法』(三省堂、東京、2007年)ISBN 9784385322926▼
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
▲本文中で引用したもののほか、
▲*[[橋本博之]]「行政訴訟に関する外国事情調査結果(フランス)」([
▲*ウェール=プイヨー著、兼子=滝沢訳『フランス行政法』(三省堂、東京、[[2007年]])ISBN 9784385322926
== 外部リンク ==
* 森稔樹『[http://kraft.cside3.jp/verwaltungsrecht00-6.htm 行政法講義ノート〔第6版〕]』
* {{Kotobank}}
{{法学のテンプレート}}
{{authority control}}
{{デフォルトソート:きようせいほう}}
[[Category:行政法|*]]
[[Category:公法]]
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