ページ「利用者:シャムネコ/sandbox」と「一万円紙幣」の間の差分
(ページ間の差分)
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし |
Goshuinnist (会話 | 投稿記録) 見本の写真を現物に差し替え(質の高いものが投稿されたら、また差し替えをよろしくお願いします。) タグ: モバイル編集 モバイルアプリ編集 Androidアプリ編集 |
||
1行目:
{{Infobox banknote
| denomination = 日本銀行券 一万円券
| country = 日本
| value = 10,000
| unit = 円
| width_mm = 76
| height_mm = 160
| weight_g =
| security_features = [[透かし|すかし]]、超細密画線、ホログラムなど<ref>[https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/n_note/security.htm 一万円券の偽造防止技術について] - 日本銀行</ref>
| paper_type =
| years_of_printing = 2024-現在(F号券)
| nature_of_rarity =
| estimated_value = <!-- 希少な紙幣 -->
| obverse = 一万円紙幣 F号券 表面.jpg
| obverse_design = [[渋沢栄一]]<ref name="mof">[https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/issue.htm#p01 現在発行されている銀行券・貨幣] - 日本銀行</ref>
| obverse_designer =
| obverse_design_date = 2024
| reverse = File:一万円紙幣 F号券 裏面.jpg
| reverse_design = [[東京駅]](丸の内駅舎)<ref name="mof"/>
| reverse_designer =
| reverse_design_date = 2024
}}
'''一万円紙幣'''(いちまんえんしへい)は、[[日本銀行券]]の一つ。額面は10,000円で、歴代の日本銀行券の中で最高額面である。[[紙幣]]券面の表記は「壱万円」。
現在発行されている一万円紙幣は、[[2004年]]([[平成]]16年)発行の[[#E号券|E号券]]と、[[2024年]]([[令和]]6年)から発行の[[F号券]]である。
この他にかつて発行された[[#C号券|C号券]]と[[#D号券|D号券]]があり、これまでに発行された一万円紙幣は全部で4種類存在する。いずれも法律上有効である<ref name="有効" />。
'''一万円札'''(いちまんえんさつ)、'''万札'''(まんさつ)、または、'''一万円券'''(いちまんえんけん)、'''万券'''(まんけん)とも呼ばれる。俗に、D号券とE号券の肖像より、諭吉券(ゆきち)、諭吉(ゆきち)とも呼ばれる。
== 概要 ==
発行された背景は、[[第二次世界大戦]][[日本の降伏|敗戦]]後の[[日本のインフレーション|インフレーション]]により[[銭]]から[[円 (通貨)|円]]へと日常的に使用される通貨単位が切り替わり、さらにはかつて[[国家予算]]レベルであった万の位が商取引レベルで登場し始めたためで、[[1958年]](昭和33年)の登場後に[[高度経済成長]]の一端を担うこととなった。
原料は[[ミツマタ]](三椏)や[[マニラアサ|マニラ麻]]などで、このうちミツマタはかつて「局納みつまた」として[[大蔵省印刷局]](現在の[[国立印刷局]])と[[生産契約]]を結んで栽培されていた。[[2005年]](平成17年)までは、[[島根県]]、[[岡山県]]、[[高知県]]、[[徳島県]]、[[愛媛県]]、[[山口県]]の6県の[[農業協同組合|農協]]が生産契約を結び、局納価格は山口県を除く5県が毎年輪番で印刷局長と交渉して決定<ref>{{Cite web|和書|url=http://nittokusin.jp/wp/bunkazai_iji/washi/washi3/|title=和紙原料の生産・流通状況|publisher=日本特用林産振興会|accessdate=2017-06-13}}</ref>されていたが、その後の過疎化、高齢化、後継者不足により生産量が激減<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.jsapa.or.jp/tokusan/tokusanchousa/nousakumotuchousah22.pdf|title=特産農産物に関する生産情報調査結果(平成 24 年)|publisher=公益財団法人日本特産農産物協会|accessdate=2017-06-13}}</ref>し、[[2010年]](平成22年)ごろからは[[ネパール]]や[[中華人民共和国|中国]]産のミツマタの輸入で不足分を補うようになった。[[2016年]](平成28年)時点でも国産ミツマタは、岡山県、徳島県、島根県<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20160725000082/print|title=ミツマタ出荷で集落再生 京都・福知山、紙幣原料に|publisher=京都新聞社|accessdate=2017-06-13}}</ref>で栽培されている。
== C号券 ==
[[ファイル:Series C 10K Yen Bank of Japan note - front.jpg|right|261px|thumb|表面]]
[[ファイル:Series C 10K Yen Bank of Japan note - back.jpg|right|261px|thumb|裏面]]
1958年([[昭和]]33年)11月20日の[[大蔵省]]告示第237号「十二月一日から発行する日本銀行券壱万円の様式を定める件」<ref name="c10000">1958年(昭和33年)11月20日大蔵省告示第237号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-19581120-0237-14.pdf 十二月一日から発行する日本銀行券壱万円の様式を定める件]」</ref>で[[紙幣]]の様式が定められている。主な仕様は下記の通り<ref name="rekigi"/>。
*'''日本銀行券'''
*'''額面''' 壱万円(10,000円)
*'''表面''' [[聖徳太子]]
*'''裏面''' [[鳳凰]]
*'''印章''' 〈表面〉総裁之印 〈裏面〉発券局長
*'''銘板''' 大蔵省印刷局製造
*'''記番号仕様'''
**'''記番号色''' 黒色
**'''記番号構成''' 記号:英字1 - 2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字1文字
*'''寸法''' 縦84 [[ミリメートル|mm]]、横174 mm<ref name="c10000"/>
*'''製造実績'''
**'''印刷局から日本銀行への納入期間''' [[1956年]](昭和31年)[[11月14日]] - [[1983年]](昭和58年)[[12月2日]]<ref name="rekigi">{{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1984|month=11|title=日本銀行券製造100年・歴史と技術|pages=306-313|publisher=大蔵省印刷局|isbn=}}</ref>
<!--**'''記号範囲'''-->
**'''製造枚数''' 9,323,050,000枚<ref name="handbook">{{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1994|month=6|title=日本のお金 近代通貨ハンドブック|pages=242-255|publisher=大蔵省印刷局|isbn=9784173121601}}</ref>
*'''発行開始日''' [[1958年]]<ref>{{Cite news|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4c512531c0db482d08966441797ea4f6f52a3b0e|title=「安倍政権は天文学的な金額の利権を求めて紙幣の刷新を決めた」Twitterでデマ広がる(篠原修司) |newspaper=Yahoo!ニュース|date=2019-04-10|accessdate=2020-12-01}}</ref>(昭和33年)[[12月1日]]<ref name="c10000"/>
*'''支払停止日''' [[1986年]](昭和61年)[[1月4日]]<ref name="有効">{{Cite web|和書|title=現在発行されていないが有効な銀行券 一万円券|url=http://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/past_issue/pbn_10000.htm/ |website=日本銀行|accessdate=2021-06-19|language=ja}}</ref>
*'''有効券'''
[[1953年]](昭和28年)に[[#未発行紙幣|B壱万円券]]の発行方針が公表されるも、当時は通貨[[インフレーション]]発生に対する警戒感が非常に根強く一旦は断念していた{{Sfn|植村峻|2015|pp=215-216}}。[[1955年]](昭和30年)頃から[[神武景気]]と呼ばれる飛躍的な[[経済成長]]が続き、当時の最高額面の[[千円紙幣#B号券|B千円券]]が紙幣発行高の85%を占めるようになった{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。やがて経済成長と共に国内経済が安定しかつてのようなインフレーションの心配もほぼなくなり、更なる高額紙幣発行の反対意見も収まりを見せたことから改めて一万円紙幣と[[五千円紙幣]]の発行が決定された{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。依然としてインフレーションや[[釣り銭|釣銭]]の扱い等を懸念する声があることも踏まえ、当初は一万円紙幣を先に発行予定であったところ、様子を見ながら五千円紙幣([[五千円紙幣#C号券|C五千円券]])から順に発行することとなった{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。
発行開始当時の大卒初任給が1万3000円程度ということもあり、当時はこのような高額紙幣は発行する必要があるのかという議論がなされ、小銭を扱う業種では釣銭への対応が難しいといった高額紙幣に対する不安があったが<ref>{{Cite news | title = 悲鳴を上げる窓口 小銭扱う興行街や駅など | newspaper = 朝日新聞 朝刊 | ___location = 東京 | pages = 7 | date = 1953-09-03 | url = | accessdate = }}</ref>、折しも[[高度経済成長]]が始まった時期でもあり高度経済成長の進展とともに順調に流通量が増えていった。
B千円券やC五千円券と同じく[[肖像]]は聖徳太子であり、表面右側に描かれている{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。聖徳太子の肖像については、同じ原画を基にしているものの各券種で別に彫刻されたものであるため表情が僅かに異なっている{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。裏面には中央の空白部分を挟んで1対の鳳凰の図柄が描かれている。裏面に描かれた鳳凰は、[[平等院]]鳳凰堂内の円柱に描かれている鳳凰模様である{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。大型の寸法の券面のため、記番号は4ヶ所に印刷されている{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}<ref group="注釈">B号券以降の日本銀行券の中で記番号が4ヶ所に印刷されている紙幣は、この紙幣と[[五千円紙幣#C号券|C五千円券]]のみである。</ref>。製造原価は11円27銭(1951年(昭和26年)時点)。
[[透かし]]は[[奈良県]][[生駒郡]][[斑鳩町]]にある[[法隆寺]][[夢殿]]の図柄である{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。B号券以前の透かしよりも精緻で明瞭となったほか、B号券とは異なりその部分には印刷がされていないためこれを容易に確認できる{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。紙幣用紙は[[ミツマタ|三椏]]などを原料とするものであるが、[[洗濯機]]の普及により誤って洗濯機にかけられて紙幣が損傷するなどの事象が多発したため、用紙の強化を目的に[[尿素樹脂]]が添加されている<ref name="kanri219">{{Cite book|和書|author=日本銀行調査局|year=1975|title=図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨|pages=219-220|publisher=東洋経済新報社|isbn=}}</ref>。
B号券では製造効率の向上のために[[五十円紙幣#B号券|B五十円券]]を除き縦方向の寸法を同じにして、横方向の寸法のみを額面金額が上がるにつれて8[[ミリメートル|mm]]間隔で長くしていたが<ref name="kanri214">{{Cite book|和書|author=日本銀行調査局|year=1975|title=図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨|pages=214-216|publisher=東洋経済新報社|isbn=}}</ref>、[[C号券]]では券種識別性向上のために額面金額が上がるにつれて縦方向に4mm、横方向に5mmずつ長くする形式に変更された<ref name="kanri218">{{Cite book|和書|author=日本銀行調査局|year=1975|title=図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨|pages=218-221|publisher=東洋経済新報社|isbn=}}</ref>。
使用色数は、表面10色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様6色、印章1色、記番号1色)、裏面5色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様3色、印章1色)となっている<ref name="kanri190">{{Cite book|和書|author=日本銀行調査局|year=1975|title=図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨|page=190|publisher=東洋経済新報社|isbn=}}</ref><ref name="rekigi"/>。新技術である多色[[凹版印刷]]が盛り込まれ{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}、凹版印刷による主模様が途中から色の変わる2色刷りとなっている<ref name="rekishi198">{{Cite book|和書|author=植村峻|year=1989|month=11|title=紙幣肖像の歴史|pages=198-203|publisher=東京美術|isbn=9784808705435}}</ref>。地模様も印刷色が大幅に増加し、従来の券種と比較すると幾分カラフルな見た目の券面となっている{{Sfn|植村峻|2015|pp=216-222}}。
[[沖縄]]の[[沖縄返還|本土復帰]]に伴う[[ニクソン・ショック#沖縄の通貨交換|通貨交換]]([[B円#第五次通貨交換|第五次通貨交換]])用の特殊記号券が存在し、記番号の英字の組み合わせのうちいくつか特定のものがこれに当たるが、その現存数は非常に少ない。
== D号券 ==
[[ファイル:Series D 10K Yen Bank of Japan note - front.jpg|right|240px|thumb|表面]]
[[ファイル:Series D 10K Yen Bank of Japan note - back.jpg|right|240px|thumb|裏面]]
1984年(昭和59年)6月25日の大蔵省告示第76号「昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」<ref name="d10000">1984年(昭和59年)6月25日大蔵省告示第76号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-19840625-0076-14.pdf 昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>で紙幣の様式が定められている。主な仕様は下記の通り<ref name="rekigi"/>。
*'''日本銀行券'''
*'''額面''' 壱万円(10,000円)
*'''表面''' [[福澤諭吉]](紙幣面の人名表記は[[新字体]]の「福沢諭吉」)
*'''裏面''' [[キジ|雉]]
*'''印章''' 〈表面〉総裁之印(ミニ改刷後は特殊発光インキ) 〈裏面〉発券局長(ミニ改刷後は特殊発光インキ)
*'''銘板''' 大蔵省印刷局製造/財務省印刷局製造/国立印刷局製造(製造時期により3種類あり)
*'''記番号仕様'''
**'''記番号色''' 黒色/褐色(製造時期により2種類あり)
**'''記番号構成''' 記号:英字1 - 2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字1文字
*'''視覚障害者用識別マーク''' 丸印が横に2つ(透かし・左下隅)
*'''寸法''' 縦76 mm、横160 mm<ref name="d10000"/>
*'''製造実績'''
**'''印刷局から日本銀行への納入期間''' [[1983年]](昭和58年)[[4月8日]]<ref name="rekigi"/> - [[2003年]](平成15年)
<!--**'''記号範囲'''-->
**'''製造枚数''' <ref>{{Cite book|和書|author=鈴木和三郎|year=2011|month=11|title=日本の現行貨幣 収集の手引き|page=72|publisher=内外貨幣研究会|isbn=}}</ref>
*** 11,307,600,000枚[記番号:黒色]
*** 10,448,100,000枚[記番号:褐色・大蔵省銘]
*** 1,472,400,000枚[記番号:褐色・財務省銘]
*** 421,900,000枚[記番号:褐色・国立銘]
*'''発行開始日''' [[1984年]](昭和59年)[[11月1日]]<ref name="d10000"/>
*'''支払停止日''' [[2007年]](平成19年)[[4月2日]]<ref name="有効" />
*'''有効券'''
[[#C号券|C一万円券]]の発行開始から20年以上が経過しC号券で使用された紙幣製造技術や偽造防止技術が陳腐化してきたことや、飛躍的な印刷技術の向上を背景に[[1980年代]]初め頃から精巧な偽造券が散見されるようになったことから、偽造防止対策強化のために[[D号券]]が発行された{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}。D一万円券、[[五千円紙幣#D号券|D五千円券]]、[[千円紙幣#D号券|D千円券]]の3券種同時の改刷であるが{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}、日本銀行券で3券種が同日に改刷されるのは[[第二次世界大戦]]以降では初めてである。またこの頃には[[現金自動預け払い機|ATM]]や[[両替機]]、[[自動販売機]]([[自動券売機]])といった紙幣取扱機器も広く普及し始めていたことからこれも念頭に置いたうえで改刷が行われた{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}。
D号券では各額面の人物肖像に[[文化人]]が採用された{{Sfn|植村峻|2015|pp=234-237}}。世界的な傾向として[[国家元首]]や[[政治家]]だけでなく、文化人も紙幣肖像に採用されるようになったことがD号券で文化人が採用された理由である{{Sfn|植村峻|2015|pp=234-237}}。一万円券の肖像には[[啓蒙思想]]家の福澤諭吉が選ばれ、表面右側に肖像が描かれている{{Sfn|植村峻|2015|pp=237-239}}。検討段階ではラフな[[着流し]]の[[和服]]姿を紙幣肖像とすることに異論もあったが、福澤諭吉本人が常に和服を着用していたという事実や、本人がこの写真を気に入っていたということなどを踏まえそのまま採用されることとなった{{Sfn|植村峻|2015|pp=237-239}}。なおD号券及びE号券の人名表記は「福澤諭吉」ではなく「福'''沢'''諭吉」と書かれている。表面周囲の輪郭部分の[[唐草模様]]については、肖像の福澤諭吉が活躍した[[明治]]時代の[[西洋館|洋風建築物]]の装飾で用いられた唐草模様を基にしたデザインとなっている<ref>{{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1984|month=11|title=日本銀行券製造100年・歴史と技術|page=39|publisher=大蔵省印刷局}}</ref>。
裏面には中央の空白を挟んで両側に[[国鳥]]とされる雉のつがいを描いており、左側の立っているものが[[雄]]、右側の座っているものが[[雌]]である{{Sfn|植村峻|2015|pp=242-243}}。また券面中央の[[透かし]]部分の[[円 (数学)|正円形]]の空白は、雉の[[卵]]の形状をイメージしたものである{{Sfn|植村峻|2015|pp=245-246}}。この正円形の空白の輪郭は、表裏両面で位置が一致するよう印刷されている{{Sfn|植村峻|2015|pp=245-246}}。
初期の記番号は[[黒|黒色]]で印刷されていた<ref name="d10000"/>が、[[1993年]](平成5年)[[12月1日]]発行分から記番号の色を[[茶色|褐色]]に変更する<ref name="d10000-ka">1993年(平成5年)6月24日大蔵省告示第134号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-19930624-0134-14.pdf 平成五年十二月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>とともに、「ミニ改刷」と呼ばれる一部改造券を発行した{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}。従来のデザインはそのままに、追加で[[マイクロ文字]]、[[ルミライト印刷|特殊発光インキ]]([[紫外線]]照射により発光するインキであり、表面印章「総裁之印」のオレンジ色発光と、裏面印章「発券局長」の赤色発光が確認できる。)等の偽造防止技術が施されている{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}。なおミニ改刷前の黒色記番号は記番号の組み合わせを全部使い切っていなかった。
[[中央省庁再編]]及び[[独立行政法人]]化に伴う製造者の名称変更に伴い、褐色記番号の紙幣の製造者名の銘板表記については、当初は「大蔵省印刷局製造」<ref name="d10000"/>、[[2001年]](平成13年)[[5月14日]]発行分から「[[財務省 (日本)|財務省]]印刷局製造」<ref name="d10000-zai">2001年(平成13年)3月30日財務省告示第85号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20010330-0085-14.pdf 平成十三年五月十四日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>、[[2003年]](平成15年)[[7月1日]]発行分から「[[国立印刷局]]製造」<ref name="d10000-koku">2003年(平成15年)6月13日財務省告示第482号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20030613-0482-14.pdf 平成十五年七月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>と3度変更されている{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}。
D一万円券の変遷の詳細を整理すると下表の通りとなる。下記の4タイプに分かれる。
{|class="wikitable" style="font-size:80%;"
|-
!発行開始
!記番号色
!マイクロ文字
!印章
!銘板(製造者名)
!変更理由
|-
|1984年(昭和59年)11月1日<ref name="d10000"/>||黒色<ref name="d10000"/>||なし{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}||特殊発光なし{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}||rowspan="2"|大蔵省印刷局製造<ref name="d10000"/>||
|-
|1993年(平成5年)12月1日<ref name="d10000-ka"/>||rowspan="3"|褐色<ref name="d10000-ka"/>||rowspan="3"|あり{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}||rowspan="3"|特殊発光あり{{Sfn|植村峻|2015|pp=248-249}}||偽造防止力向上のための様式変更(ミニ改刷)
|-
|2001年(平成13年)5月14日<ref name="d10000-zai"/>||財務省印刷局製造<ref name="d10000-zai"/>||製造者の組織変更
|-
|2003年(平成15年)7月1日<ref name="d10000-koku"/>||国立印刷局製造<ref name="d10000-koku"/>||製造者の組織変更
|}
[[透かし]]は肖像と同じく福澤諭吉であり、従来よりも大型で白黒の階調のはっきりしたすき入れとなっている{{Sfn|植村峻|2015|pp=245-246}}。[[視覚障害者]]が触覚で容易に券種を識別できるよう、表面から見て左下隅に識別マークとして点字の「う」を模した「丸印が横に2つ」透かしにより施されている{{Sfn|植村峻|2015|pp=245-246}}。透かしによる視覚障害者用識別マークは世界初である{{Sfn|植村峻|2015|pp=245-246}}。
寸法については前代のC一万円券と比べて縦方向・横方向ともに小型化している{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}。これは世界的な紙幣の小型化の流れに合わせたものであるほか{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}、製造能力の向上や省資源化<ref>{{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1994|month=6|title=日本のお金 近代通貨ハンドブック|pages=162-164|publisher=大蔵省印刷局|isbn=9784173121601}}</ref>、機械等での取扱上の利便性などを考慮したものである<ref>{{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1994|month=6|title=日本のお金 近代通貨ハンドブック|pages=195-196|publisher=大蔵省印刷局|isbn=9784173121601}}</ref>。同時に改刷されたD号券3券種で比較すると縦方向の寸法は同じで、横方向の寸法のみを額面金額が上がるにつれて5mmずつ長くする形式となっている{{Sfn|植村峻|2015|pp=232-234}}。E一万円券以降もこのD一万円券のサイズを踏襲している。
使用色数は、表面10色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様6色、印章1色、記番号1色)、裏面4色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様2色、印章1色)となっている<ref name="d10000"/><ref name="rekigi"/>。[[複写機]]や[[イメージスキャナ]]などでの色分解を困難にするため、なるべく[[原色]]を避け[[中間色]]を多用した印刷となっている{{Sfn|植村峻|2015|pp=246-247}}。
2004年(平成16年)のE号券改刷の直前及び直後にD号券の[[偽札]]が相次いで発見された。
== E号券 ==
[[ファイル:10000 Yenes (Anverso).jpg|right|240px|thumb|表面]]
[[ファイル:10000 Yenes (Reverso).jpg|right|240px|thumb|裏面]]
2004年(平成16年)8月13日の財務省告示第374号「平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」<ref name="e10000">2004年(平成16年)8月13日財務省告示第374号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20040813-0374-14.pdf 平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>で紙幣の様式が定められている。主な仕様は下記の通り。
*'''日本銀行券'''
*'''額面''' 壱万円(10,000円)
*'''表面''' [[福澤諭吉]](紙幣面の人名表記は新字体の「福沢諭吉」)
*'''裏面''' [[平等院]][[平等院#鳳凰堂|鳳凰堂]]の[[鳳凰]]像
*'''印章''' 〈表面〉総裁之印(特殊発光インキ) 〈裏面〉発券局長
*'''銘板''' 国立印刷局製造
*'''記番号仕様'''
**'''記番号色''' 黒色/褐色(製造時期により2種類あり)
**'''記番号構成''' 記号:英字1 - 2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字1文字
*'''視覚障害者用識別マーク''' 左下隅L字・右下隅逆L字(深凹版印刷)
*'''寸法''' 縦76 mm、横160 mm<ref name="e10000"/>
<!--*'''製造実績'''-->
<!--**'''印刷局から日本銀行への納入期間'''-->
<!--**'''記号範囲'''-->
<!--**'''製造枚数'''-->
*'''発行開始日''' [[2004年]](平成16年)11月1日<ref name="e10000"/>
*'''発行中(製造は終了)'''
*'''有効券'''
D号券3券種の発行開始からおよそ20年が経過し、印刷技術の革新や[[複写機]]や[[イメージスキャナ]]、[[コンピュータ]]の[[画像処理]][[ソフトウェア]]などの普及・高性能化を背景に[[2002年]](平成14年)頃から偽造券の発見が急増するようになってきたことや{{Sfn|向山勇|2019|p=3}}{{Sfn|大内聡|2004|p=19}}、諸外国でも新たな偽造防止技術を盛り込んだ紙幣が[[1990年代]]末期以降続々と発行されており、日本だけが旧世代の紙幣の発行を続けると国際的な偽造団による標的となる恐れがあることを踏まえ{{Sfn|植村峻|2015|pp=261-264}}、E一万円券、[[五千円紙幣#E号券|E五千円券]]、[[千円紙幣#E号券|E千円券]]の3券種が同時に改刷された{{Sfn|植村峻|2015|pp=261-264}}。
E号券の中では唯一D号券から肖像が変わらず福澤諭吉のままである{{Sfn|大内聡|2004|pp=21-22}}。これは[[E号券]]の改刷の準備期間が短く、当時全体の6割以上の発行枚数を占めていた一万円紙幣の原版彫刻の時間を短縮するために取られた対応である{{Sfn|大内聡|2004|pp=21-22}}。そのため表面右側に描かれている肖像はD号券の原版を流用しているが、着物の一部分や背景部分など僅かながら手直しが行われている{{Sfn|植村峻|2015|p=265}}。その他の輪郭や地模様は全く新たなデザインとなっている{{Sfn|植村峻|2015|p=265}}。裏面は完全に新たな図案となっており、裏面左側には[[京都府]][[宇治市]]にある平等院鳳凰堂の中堂屋根上に取り付けられていた[[国宝]]の鳳凰像<ref group="注釈">現在平等院鳳凰堂の中堂屋根上に取り付けられているものは複製品となっており、本物は屋内に保管展示されている。</ref>が描かれており{{Sfn|大内聡|2004|pp=22-23}}、右側には地模様として宝相華があしらわれている{{Sfn|植村峻|2015|pp=270-273}}。
偽造防止技術には[[二千円紙幣|D二千円券]]に新たに採用されたもののほとんど<ref group="注釈">マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、潜像模様、パールインク等。</ref>が採用されたのに加え、新たに表から見て右側に用紙を薄くしてすき入れした「すき入れバーパターン」と、見る角度によって像(金属箔に刻まれた絵柄)が変わる「[[ホログラム]]」が採用された{{Sfn|大内聡|2004|pp=19-20}}。E一万円券には肖像の右側付近に縦棒のすき入れが3本入っており、ホログラムの像は光の入射角により[[サクラ|桜花]]、日本銀行行章、額面金額の「10000」の数字などが確認できる{{Sfn|植村峻|2015|pp=275-277}}。[[ルミライト印刷|特殊発光インキ]]については表面の印章および地紋の一部に[[紫外線]]発光インクを採用しており、[[ブラックライト]]を照射すると表面の印章「総裁之印」及び表面・裏面の地模様の一部がオレンジ色に発光する{{Sfn|植村峻|2015|pp=275-277}}。ミニ改刷後のD号券と異なり裏面の印章「発券局長」は発光しない。なおD二千円券で採用された光学的変化インクは使用されていない。
公式に発表されていないが、表面と裏面に「ニ」「ホ」「ン」(日本)の[[片仮名]]がシークレットマーク(暗証)として入っていることが確認できるほか{{Sfn|植村峻|2015|pp=270-273}}、D二千円券に引き続いて[[ユーリオン]]も採用されている。さらにホログラムの上下にも[[日本の漢字|漢字]]で「日」「本」の文字が刻まれている。
記番号は発行当初黒色で印刷されていた<ref name="e10000"/>が、129億6千万枚を発行して同色刷の記番号の組合せが枯渇したため、[[2011年]](平成23年)[[7月19日]]発行分から褐色(暗い黄赤)記番号の券が発行されている<ref name="e10000-ka">2011年(平成23年)4月26日財務省告示第141号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/KO-20110426-0141-14.pdf 平成二十三年七月十九日から発行を開始する日本銀行券壱万円及び千円の様式を定める件]」</ref><ref>[http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110426a.htm/ 日本銀行券一万円券および千円券の記号および番号の印刷色変更について] - 日本銀行、2011年4月26日</ref>。記番号の組み合わせの枯渇による記番号の色の変更は一万円紙幣では史上初であった<ref group="注釈">[[千円紙幣]]では前例あり。</ref>。
[[2024年]]([[令和]]6年)7月にF一万円券が発行されるのを前に、[[2022年]](令和4年)9月までにE一万円券を含むE号券3券種の製造が終了した<ref>{{Cite web|和書|title=福沢諭吉の1万円札、製造終了…渋沢栄一の新紙幣は6月から量産中 |website=[[読売新聞]]オンライン |publisher=[[読売新聞社]] |date=2022-11-04 |url=https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221104-OYT1T50200/ |accessdate=2022-11-05}}</ref>。
E一万円券の変遷の詳細を整理すると下表の通りとなる。
{|class="wikitable" style="font-size:80%;"
|-
!発行開始
!記番号色
!変更理由
|-
|2004年(平成16年)11月1日<ref name="e10000"/>||黒色<ref name="e10000"/>||
|-
|2011年(平成23年)7月19日<ref name="e10000-ka"/>||褐色<ref name="e10000-ka"/>||記番号の組み合わせ枯渇
|}
[[視覚障害者]]が[[皮膚感覚#触覚|触覚]]で券種を識別できるようにした識別マークについては[[#D号券|D一万円券]]、[[五千円紙幣#D号券|D五千円券]]、[[千円紙幣#D号券|D千円券]]で採用されていた透かしによるものから変更され、紙幣の表面下端の左右に[[凹版印刷|深凹版印刷]]によりインクを盛り上げて凸凹を感じられるようにした方式が取られている{{Sfn|大内聡|2004|p=20}}。E一万円券には「左下隅L字・右下隅逆L字」の識別マーク<ref group="注釈">このほか、E五千円券は「八角形」、D二千円券は[[点字]]の「に」を模した「丸印が縦に3つ」、E千円券は「横棒」の識別マークである。</ref>が施されている{{Sfn|大内聡|2004|p=20}}。また[[国立印刷局]]により[[スマートフォン]]で金種の判別・読み上げができる[[モバイルアプリケーション|アプリ]]「言う吉くん」を提供されている<ref>[https://www.npb.go.jp/ja/intro/ninsiki/iukichi/index.html お札識別アプリ「言う吉くん」]</ref>。
[[透かし]]は肖像と同じく福澤諭吉である。紙幣用紙は[[ミツマタ|三椏]]や[[マニラアサ|マニラ麻]]などを調合したものが用いられている{{Sfn|大内聡|2004|pp=19-20}}。
使用色数は、表面14色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様10色、印章1色、記番号1色)、裏面7色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様5色、印章1色)となっている<ref name="e10000"/>。基調となる色はD号券と同系統の色調を受け継いでおり、E一万円券は[[#D号券|D一万円券]]と同じく[[茶色|褐色]]系の色合いとなっている{{Sfn|植村峻|2015|p=273}}。
== F号券 ==
[[File:一万円紙幣 F号券 表面.jpg|右|240px|thumb|表面]]
[[File:一万円紙幣 F号券 裏面.jpg|右|240px|thumb|裏面]]
2023年(令和5年)12月15日の財務省告示第314号「令和六年七月三日から日本銀行が発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」<ref name="f10000">2023年(令和5年)12月15日財務省告示第314号「[https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/kokuji/kokuji314.pdf 令和六年七月三日から日本銀行が発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件]」</ref>で紙幣の様式が定められている。主な仕様は下記の通り。
*'''日本銀行券'''
*'''額面''' 壱万円(10,000円)
*'''表面''' [[渋沢栄一]]
*'''裏面''' [[東京駅]](丸の内駅舎)
*'''印章''' 〈表面〉総裁之印(特殊発光インキ) 〈裏面〉発券局長
*'''銘板''' 国立印刷局製造
*'''記番号仕様'''
**'''記番号色''' 黒色
**'''記番号構成''' 記号:英字2文字+通し番号:数字6桁+記号:英字2文字
*'''視覚障害者用識別マーク''' 左右隅に斜線の連続模様(深凹版印刷)
*'''寸法''' 縦76 mm、横160 mm
<!--*'''製造実績'''-->
<!--**'''印刷局から日本銀行への納入期間'''-->
<!--**'''記号範囲'''-->
<!--**'''製造枚数'''-->
*'''発行開始日''' [[2024年]]([[令和]]6年)[[7月3日]]<ref>{{Cite web|url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2023121200693&g=eco|title=新紙幣、来年7月3日発行 1万円札など20年ぶり刷新|accessdate=2023-12-14|publisher=時事.com}}</ref><ref name="jiji">[https://www.jiji.com/jc/article?k=2023062400014&g=eco 新紙幣、来年7月にも発行 財務省と日銀] 時事通信 2023年06月24日00時36分</ref>
*'''発行中'''
*'''有効券'''
[[2024年]](令和6年)7月3日に<ref>{{Cite web |url=https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/index.html |title=新しい日本銀行券特設サイト|TOPページ |publisher=独立行政法人 国立印刷局 |language=ja |accessdate=2024-07-03}}</ref>、偽造抵抗力の強化や[[ユニバーサルデザイン]]への対応など目的として{{Sfn|向山勇|2019|p=3}}一万円券・[[五千円紙幣#2024年度発行予定の新紙幣|五千円券]]・[[千円紙幣#2024年度発行予定の新紙幣|千円券]]の3券種が同時に改刷された<ref name="mof20190409">{{Cite web|和書|title=新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します|url=https://www.mof.go.jp/policy/currency/bill/20190409.html|website=財務省|accessdate=2019-04-09|language=ja}}</ref>。
刷新後の一万円券は[[#D号券|D一万円券]]・[[#E号券|E一万円券]]と同様の褐色系を基調とした色合いで{{Sfn|向山勇|2019|p=9}}、肖像が[[実業家]]の渋沢栄一、裏面は[[2012年]](平成24年)に復原された[[JR]]東京駅丸の内駅舎の図柄である<ref name="nikkei20190409">{{Cite web|和書|title=政府、紙幣刷新へ 1万円札は渋沢栄一|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43505090Z00C19A4MM8000/|website=日本経済新聞|accessdate=2019-04-09|language=ja}}</ref>。渋沢の肖像は、70歳の[[古希]]に撮影された写真を原画としているが、躍動感や若々しさを表現するため、原画の写真とは異なり60歳代前半の姿に改変した風貌が描かれている<ref>{{Cite web|和書|title=新しい日本銀行券特設サイト|url=https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/shokai/|website=国立印刷局|accessdate=2023-04-24|language=ja}}</ref>。また、表面の左下には[[ヤマザクラ|山桜]]の花があしらわれている<ref name="新しい日本銀行券2024">{{Cite report|和書| author = 日本銀行金融研究所貨幣博物館| authorlink = 貨幣博物館| title = 新しい日本銀行券2024 匠の技とデザイン| date = 2023-11| ref = harv}}</ref>。一方、裏面については左側に[[丸の内オアゾ]]前付近から見た丸の内駅舎北ドームとその左脇に[[街路樹]]の[[カシ|樫]]の木が、右下には[[東京中央郵便局]]屋上から俯瞰した丸の内駅舎の全体像が描かれるデザインである<ref name="新しい日本銀行券2024"/>。日本銀行券において[[民間人|民間]][[企業]](ただし、その前身は[[日本国有鉄道]](国鉄)という[[公共企業体]]であり、更にその前身は[[鉄道省]]という[[官庁]]であった。)が管理運営する営利施設が紙幣の図柄の題材となるのはこれが初めてである。
表面の肖像画・透かし・額面の基本的なレイアウトは変更されていないものの、D号券・E号券では[[漢数字]]で額面が記載されていた箇所に[[アラビア数字]]で「10000」と大きく描かれ、漢数字による額面の「壱万円」は左上隅に、従来右上隅にあった「10000」の額面は右下隅に入れ替わる形で配置されている。裏面の右上隅のアラビア数字も非常に大きく描かれており、従来の日本銀行券とは印象が大きく異なる。
記番号も8桁または9桁の形式から「AA000001AA」のような形式の10桁に変更された<ref name="nikkei20190409"/><ref group="注釈">B号券からE号券までの紙幣では全券種ともに製造番号の両端の英字が各1桁、つまり「A000001A」から始まっていた。「Z900000Z」まで使い果たすと左側の英字だけ「AA」と2桁に変わるが、右端の英字は必ず1桁であったため最終番号は「ZZ900000Z」となり、それを使い果たすと文字色を変更して「A000001A」に戻る形式だった。新紙幣では1桁制が廃止され両端とも初めから2桁の英字、すなわち「AA000001AA」から製造開始される形となった。</ref>。
公表されている新たな偽造防止技術としては、高精細すき入れ模様とストライプタイプの[[ホログラム]]が導入された{{Sfn|向山勇|2019|p=6}}。高精細すき入れは、渋沢栄一の肖像の透かしの背後に緻密な格子模様をすき入れたものである<ref name="finance202110">{{Cite web|和書|url=https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202110/202110d.pdf |title=新日本銀行券印刷開始式について |work=広報誌 ファイナンス |author=西方建一、堀納隆成 |publisher=財務省 |year=2021 |month=10 |accessdate=2021-11-22|ref = harv}}</ref>。ホログラムの図柄は3Dホログラムで、見る角度によってホログラムの図柄の渋沢栄一の肖像の顔の向きが連続的に変化して回転しているように見えるものであり、紙幣の偽造防止対策として採用されるのは世界初である<ref name="finance202110"/>。また、ホログラムにはこの他に複数の山桜の花と[[富士山]]、額面金額の「10000」の数字などの図柄が確認できる<ref name="新しい日本銀行券2024"/>。この他、E号券でも搭載されていた、[[マイクロ文字]]、[[ルミライト印刷|特殊発光インキ]]、[[凹版印刷|深凹版印刷]]、[[潜像]]模様、パールインク、すき入れバーパターン等の偽造防止技術も引き続き採用されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/n_note/data/n_note1.pdf |title=偽造防止技術~4つの「分かる」~ |work= |author= |publisher=日本銀行 |year= |month= |accessdate=2022-02-11|ref = harv}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/n_note/data/n_note3.pdf |title=新しい日本銀行券と現行の日本銀行券の比較 |work= |author= |publisher=日本銀行 |year= |month= |accessdate=2022-02-11|ref = harv}}</ref>。マイクロ文字については、E号券と比較すると大幅に減らされており、凹版印刷で表裏各3ヶ所、合計6ヶ所「NIPPON GINKO」の文字が入っている程度となっている。潜像模様については、傾けると表面に「10000」、裏面に「NIPPON」の文字が見える仕掛けになっている。[[ルミライト印刷|特殊発光インキ]]については表面の印章および地紋の一部に[[紫外線]]発光インクを採用しており、[[ブラックライト]]を照射すると表面の印章「総裁之印」がオレンジ色に発光する(裏面の印章「発券局長」は発光しない)他、表面地模様の一部が黄橙色~緑色(グラデーション)に、裏面の地模様の一部が黄橙色に発光する。
視覚障害者のための識別マークは券種識別性向上のため形状が変更され、左右隅に深凹版印刷による11本の斜線の連続模様が配置されている{{Sfn|向山勇|2019|p=6}}。また券種ごとにホログラムや透かしの位置を変えるなど識別マーク以外でも区別しやすいよう考慮されている{{Sfn|向山勇|2019|p=6}}。
券面の寸法については変更すると[[自動販売機]]や[[現金自動預け払い機|ATM]]などの紙幣取扱機器への影響が大きいため、従来通りとなっている{{Sfn|向山勇|2019|p=9}}。
[[2019年]](平成31年)[[4月9日]]に改刷が発表され<ref name="mof20190409"/>、[[2021年]](令和3年)[[9月1日]]より新一万円券の製造が開始された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.npb.go.jp/ja/news/20210902_kaishi/|title=印刷開始式を開催しました。|publisher=国立印刷局|accessdate=2021-09-30}}</ref>。発行予定日の5年も前に改刷が発表され2年半以上前から製造が開始されたのは、前回のE号券への改刷時に準備期間が短かったために自動販売機やATMの改修が間に合わず半数程度しか対応できなかった反省から{{Sfn|向山勇|2019|p=10}}、自動販売機やATMその他の新紙幣を扱う各種機器の改修の際にテストを入念にし、障害やトラブルが起きないようにするためとされる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASP916DKBP91ULFA00J.html|title=新1万円札の実物を初披露、流通は24年度上期めど|publisher=朝日新聞デジタル|accessdate=2021-09-02}}</ref>。
一万円券製造開始時に発表された新一万円券の見本のデザインでは、2019年(平成31年)4月の改刷発表当時に公表された当初のラフスケッチから<ref name="mof20190409"/>の変更点として、表面の額面金額の大きなアラビア数字「10000」の下の発行元銀行名「日本銀行」の文字の更に下に「BANK OF JAPAN」の発行元銀行名の英語表記が追加されているほか、視覚障害者のための識別マークの斜線が9本から11本に増やされている<ref name="new10000">{{Cite web|和書|url=https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/n_note/data/n_note10000b.pdf |title=新しい日本銀行券の外観 - 新一万円券|publisher=日本銀行|accessdate=2021-09-30}}</ref>。発行元銀行名の表記について、ローマ字の「NIPPON GINKO」の表記は従来の日本銀行券でも採用されている券種が多かったが、英語の「BANK OF JAPAN」の表記は日本銀行券史上初となる。
使用色数は、表面13色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様9色、印章1色、記番号1色)、裏面8色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様6色、印章1色)となっている<ref name="f10000"/>。
2024年7月3日、予定通り発行開始した<ref name="nhk20240703">{{Cite web|和書|title=20年ぶり新紙幣発行始まる 銀行には両替で多くの利用客|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240703/k10014499941000.html|website=日本放送協会|date=2024-07-03|accessdate=2024-07-04|language=ja}}</ref>。
== その他一万円紙幣に関する事項 ==
*紙幣に表記されている「壱」は[[大字 (数字)|大字]]であり、過去の紙幣ではよく採用されていたが、発行中の紙幣で大字が記されている紙幣は、当券と[[二千円紙幣]](弐千円)のみである<ref group="注釈">ただし、現在も有効券となっている紙幣を含めた場合はこの限りではない。</ref>。これは日本の法令上大字を使用することが規定されているのが壱、弐、参、拾のみであり<ref>{{Cite web|和書|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=141AC0000000053#137 |title=公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第37条第3項|publisher=e-Gov |date=2011-6-24 |quote=2011年7月15日施行分|accessdate=2019-12-24}}:数量、年月日及番号ヲ記載スルニハ'''壱弐参拾ノ字ヲ用ウヘシ'''</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211M10000040043 |title=大正十一年大蔵省令第四十三号(会計法規ニ基ク出納計算ノ数字及記載事項ノ訂正ニ関スル件)|publisher=e-Gov |date=1950-5-22 |quote=1950年4月1日施行分|accessdate=2019-12-24}} 第1条:会計法規ニ基ク出納計算ニ関スル諸書類帳簿ニ記載スル金額其ノ他ノ数量ニシテ「一」、「二」、「三」、「十」、「廿」、「卅」ノ数字ハ'''「壱」、「弐」、「参」、「拾」、「弐拾」、「参拾」ノ字体ヲ用ユヘシ'''但横書ヲ為ストキハ「アラビア」数字ヲ用ユルコトヲ得</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322M40000010094#128 |title=戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)第31条第2項 |publisher=e-Gov |date=2017-9-25 |quote=2017年9月25日施行分|accessdate=2019-12-24}} :年月日を記載するには、'''壱、弐、参、拾の文字を用いなければならない。'''</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326M50000040020#60 |title=小切手振出等事務取扱規程(昭和二十六年大蔵省令第二十号)(昭和40年大蔵省令第20号) 附則第2項 |publisher=e-Gov |date=1965-4-1 |quote=1965年4月1日施行分|accessdate=2019-12-24}}:小切手の券面金額は、当分の間、所定の金額記載欄に、漢数字により表示することができる。この場合においては、「一」、「二」、「三」及び「十」の字体は、それぞれ'''「壱」、「弐」、「参」及び「拾」の漢字を用い'''、かつ、所定の金額記載欄の上方余白に'''当該金額記載欄に記載の金額と同額をアラビア数字で副記'''しなければならない。</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023#463 |title=商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第48条第2項 |publisher=e-Gov |date=2019-9-17 |quote=2019年10月1日施行分|accessdate=2019-12-24}}:金銭その他の物の数量、年月日及び番号を記載するには、'''「壱、弐、参、拾」の文字を用いなければならない'''。ただし、横書きをするときは、[[アラビア数字|アラビヤ数字]]を用いることができる。</ref>、この条件に該当する紙幣がここに挙げたもののみだからである。
*紙幣流通総枚数に占める一万円紙幣の割合は他券種と比べて圧倒的に多い89%([[2018年]](平成30年)現在)<ref name="ARC WATCHING">{{Cite web|和書|url=https://arc.asahi-kasei.co.jp/member/watching/pdf/w_298-10.pdf|title=新1万円札は使われるのか|publisher=ARC WATCHING 2019年6月号|accessdate=2021-09-25}}</ref>で、[[キャッシュレス社会|キャッシュレス化]]が進みつつある[[2010年代]]以降も一万円紙幣の流通枚数は継続的に大きく増加し続けている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.iima.or.jp/docs/column/2021/ei2021.4.pdf |title=新たな1万円札と「キャッシュレス化」 |publisher=公益財団法人 国際通貨研究所 |date=2021-04 |accessdate=2021-09-26}}</ref>。最高額面の券種が大半を占める反面、[[五千円紙幣]]や[[二千円紙幣]]といった中額面紙幣の流通枚数が極端に少ないが、このような傾向は[[先進国]]の中では日本のみであり日本以外ではあまり見られない<ref name="finance201906">{{Cite web|和書|url=https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201906/201906c.pdf|title=広報誌 ファイナンス |publisher=財務省|date=2019-06 |accessdate=2021-09-26}}</ref>。なお市中での一万円紙幣の流通金額は97兆円である([[2019年]](令和元年)5月7日現在)<ref name="ARC WATCHING"/>。
*世界では、一万円紙幣やそれ以上の金額に相当する程度の最高額紙幣(100[[アメリカ合衆国ドル|米ドル]]紙幣や200・100[[ユーロ]]紙幣<!--、100[[人民元]]紙幣 ※100人民元は日本円で1700円程度なのでコメントアウト-->など)は、支払時に[[偽札]]かどうかをチェックされたり受け取りを拒否されたりすることも多く、キャッシュレス化の進展もあって高額紙幣の廃止論も高まってきている<ref name="ARC WATCHING"/>。ただしこれらの国・地域では[[電子決済|キャッシュレス決済]]の普及以前からの市中での最高額紙幣の使用は一般的ではない状況である。例えばアメリカでは20ドル紙幣と1ドル紙幣、ユーロ圏では50ユーロ紙幣と20ユーロ紙幣が市中での流通枚数が多い<ref name="finance201906"/>。日本のように、先述の通り中額面紙幣の流通枚数が極端に少ない一方で流通枚数の圧倒的多数を一万円紙幣が占めており<ref name="finance201906"/><ref name="ARC WATCHING"/>、日常的にも一万円紙幣が差支えなく使用されている状況とは事情が異なることに留意する必要がある。なお現在発行中で世界一高額な紙幣は、日本円で10万円程度に相当する1,000[[スイス・フラン]]紙幣である(現在発行されていないが有効な紙幣も含めれば、2014年の発行停止当時日本円で80万円程度に相当した1万[[シンガポールドル]]紙幣)。
*小売店や飲食店では、一万円紙幣で支払うと店員が「一万円入ります」と声を掛けることがある。これは釣り銭を巡る客とのトラブル防止のためというのが最大の理由とされる。[[1970年代]]のファストフード店に由来するという[[仮説]]が有力であり、当時発行されていたC一万円券と[[五千円紙幣#C号券|C五千円券]]の肖像画がいずれも聖徳太子であったことから、釣り銭ミスを防止のためにその慣習が生まれたという<ref>{{cite web|url= https://otonanswer.jp/post/85631/|
title=少額商品に1万円札→店員「1万円入ります」と大声、その目的は?いつから習慣?|date=2021年3月24日|accessdate=2024年6月8日}}</ref>。
**D号券・E号券では五千円紙幣との肖像は異なるが、一万円紙幣は最高額面の紙幣なので、この声出しは[[キャッシュレジスター|レジ]]精算時に高額紙幣を受け取ったときの声出しを店員に徹底して意識付けさせることや、管理責任者が高額紙幣による精算があったことを認識しやすくなるという効果が考えられる。また高額紙幣ということで、五千円紙幣に対しても稀に同様の対応を取る場合がある。
*流通紙幣の耐用年数は平均で4 - 5年程度とされ、使用頻度が高く釣り銭などのやりとりが多い[[五千円紙幣]]・[[千円紙幣]]の1 - 2年よりかなり長い<ref>[http://www.npb.go.jp/ja/intro/tokutyou/index.html お札の特長] 独立行政法人国立印刷局。 </ref>。
*日本では、[[通貨偽造|偽造通貨]]は日常的に見かけるほど出回っておらず、偽造通貨が見つかるとニュースになるほどであり、世界的に見ても日本円の偽造通貨は非常に少ないが、その中では最も多い金種は一万円紙幣である。
*現在発行されていない旧紙幣のC号券・D号券は現存数が非常に多いため、珍番号やエラーなどの条件がない限り古銭商が買い取りすることはほぼない。
== 未発行紙幣 ==
;'''B壱万円券'''
:[[1953年]](昭和28年)に下図案が公表されるも、終戦直後の急激な[[インフレーション]]による社会的混乱の記憶が生々しい時期であったこともあり、インフレーションを助長するとの懸念から高額紙幣の発行に対する反対意見が非常に根強く、最終的に白紙となり製造や発行には至らなかった{{Sfn|植村峻|2015|pp=215-216}}。表面には[[笏]]無しの[[聖徳太子]]の肖像と[[法隆寺]]西院伽藍全景、裏面には[[鳳凰]]が双向する図柄が描かれ、[[透かし]]は法隆寺夢殿であった<ref>{{Cite news | title = 一万円札年末にお目見え | newspaper = 朝日新聞 朝刊 | ___location = 東京 | pages = 7 | date = 1953-09-03 | url = | accessdate = }}</ref>。再検討の結果のちにC号券として1957年(昭和32年)に[[五千円紙幣]]が、1958年(昭和33年)に一万円紙幣がそれぞれ発行されている<ref>{{Cite news | title = 「一万円札」発行へ | newspaper = 朝日新聞 朝刊 | ___location = 東京 | pages = 7 | date = 1955-12-30 | url = | accessdate = }}</ref>。寸法は縦84mm、横180mmの大型の券面であった<ref name="rekishi198"/>。B壱万円券で予定されていたデザインのうち、法隆寺夢殿の透かしおよび裏面の鳳凰の図案は[[#C号券|C一万円券]]の図柄として<ref name="rekishi198"/>、笏無しの聖徳太子の肖像は[[五千円紙幣#C号券|C五千円券]]の透かしの図柄としてそれぞれ活用されている。
== さらに高額の未発行紙幣 ==
;'''D五万円券'''・'''D拾万円券'''
:それぞれ[[野口英世]]・聖徳太子の肖像のデザインで、D号券改刷の際に発行が検討されていた<ref>{{Harvtxt|北|2007|pp=7-9}}</ref>。裏面の図柄は、五万円券が[[猪苗代湖]]と[[磐梯山]]の風景、拾万円券が[[法隆寺]]金堂の[[鳳凰]]の彫刻、および法隆寺と[[奈良盆地]]の山並みの風景がそれぞれ検討されていた<ref>{{Cite journal|和書|date = 1988-12-06|title = 追跡・聖徳太子拾万円札プラン 日の目見なかったデザイン再現|journal = アエラ|pages = 6}}</ref>。なお野口英世は後年、[[千円紙幣|E千円券]]の肖像として起用されている。
== 変遷 ==
概ね20年程度の間隔で改刷が行われ、図柄を改めると同時に最新の偽造防止技術を導入することで偽造防止力を確保している。
* [[1958年]]([[昭和]]33年)[[11月20日]]:C一万円券の様式を制定<ref name="c10000"/>。
* 1958年(昭和33年)[[12月1日]]:'''C一万円券'''発行開始<ref name="c10000"/>。図柄は[[聖徳太子]]と[[鳳凰]]。
* [[1984年]](昭和59年)[[6月25日]]:D一万円券の様式を制定<ref name="d10000"/>。
* 1984年(昭和59年)[[11月1日]]:'''D一万円券'''発行開始<ref name="d10000"/>。図柄は[[福澤諭吉]]と[[キジ|雉]]。大蔵省銘で記番号は黒色。
* [[1986年]](昭和61年)[[1月4日]]:C一万円券の日本銀行からの支払停止<ref name="有効"/>。
* [[1993年]]([[平成]]5年)[[6月24日]]:偽造防止力を向上したD一万円券の一部改造券の様式を制定<ref name="d10000-ka"/>。
* 1993年(平成5年)[[12月1日]]:偽造防止力を向上した'''D一万円券'''の一部改造券発行開始(ミニ改刷)<ref name="d10000-ka"/>。記番号を褐色に変更。
* [[2001年]](平成13年)[[3月30日]]:銘板表記を変更したD一万円券の様式を制定<ref name="d10000-zai"/>。
* 2001年(平成13年)[[5月14日]]:銘板表記を変更した'''D一万円券'''発行開始<ref name="d10000-zai"/>。財務省銘に変更。
* [[2003年]](平成15年)[[6月13日]]:銘板表記を再変更したD一万円券の様式を制定<ref name="d10000-koku"/>。
* 2003年(平成15年)[[7月1日]]:銘板表記を再変更した'''D一万円券'''発行開始<ref name="d10000-koku"/>。国立銘に変更。
* [[2004年]](平成16年)[[8月13日]]:E一万円券の様式を制定<ref name="e10000"/>。
* 2004年(平成16年)[[11月1日]]:'''E一万円券'''発行開始<ref name="e10000"/>。図柄は福澤諭吉と[[平等院]][[平等院#鳳凰堂|鳳凰堂]]鳳凰像。記番号は黒色。表面はD号券と同じ題材だがデザインは異なる。
* [[2007年]](平成19年)[[4月2日]]:D一万円券の日本銀行からの支払停止<ref name="有効"/>。
* [[2011年]](平成23年)[[4月26日]]:記番号の印刷色を変更したE一万円券の様式を制定<ref name="d10000-ka"/>。
* 2011年(平成23年)[[7月19日]]:記番号の印刷色を変更した'''E一万円券'''発行開始<ref name="d10000-ka"/>。記番号を褐色に変更。
* [[2023年]]([[令和]]5年)[[12月15日]]:F一万円券の様式を制定<ref name="f10000"/>。
* [[2024年]](令和6年)[[7月3日]]:'''F一万円券'''発行開始<ref name="mof20190409"/><ref name="jiji"/>。図柄は[[渋沢栄一]]と[[東京駅]]丸の内駅舎。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=北康利|authorlink=北康利|date=2007-03-29|title=福沢諭吉 国を支えて国を頼らず|publisher=[[講談社]]|isbn=978-4-06-213884-0|url=https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000183681|ref={{Harvid|北|2007}}}}
**{{Cite book|和書|author=北康利|date=2010-02-13|title=福沢諭吉 国を支えて国を頼らず|volume=(上)|series=[[講談社文庫]]|publisher=講談社|isbn=978-4-06-276571-8|url=https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205282|ref={{Harvid|北|2010a}}}}
**{{Cite book|和書|author=北康利|date=2010-02-13|title=福沢諭吉 国を支えて国を頼らず|volume=(下)|series=講談社文庫|publisher=講談社|isbn=978-4-06-276572-5|url=https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205283|ref={{Harvid|北|2010b}}}}
* {{Cite book|和書|author=植村峻|year=2015|month=6|title=紙幣肖像の近現代史|publisher=吉川弘文館|isbn=978-4-64-203845-4|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=植村峻|year=2019|month=1|title=日本紙幣の肖像やデザインの謎|publisher=日本貨幣商協同組合|isbn=978-4-93-081024-3|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=利光三津夫、 植村峻、田宮健三|year=2004|month=6|title=カラー版 日本通貨図鑑|publisher=日本専門図書出版|isbn=978-4-93-150707-4}}
* {{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1994|month=6|title=日本のお金 近代通貨ハンドブック|publisher=大蔵省印刷局|isbn=978-4-17-312160-1}}
* {{Cite book|和書|author=大蔵省印刷局|year=1984|month=11|title=日本銀行券製造100年・歴史と技術|publisher=大蔵省印刷局|isbn=}}
* {{Cite book|和書|author=日本銀行調査局|year=1975|title=図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨|publisher=東洋経済新報社|isbn=}}
* {{Cite web|和書|url=https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1006485_po_f1608c.pdf?contentNo=1&alternativeNo= |title=新日本銀行券の発行(改刷)について |work=広報誌 ファイナンス |author=大内聡 |publisher=財務省 |year=2004 |month=08 |accessdate=2021-09-26|ref = harv}}
* {{Cite web|和書|url=https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201906/201906c.pdf |title=新しい紙幣・硬貨発行の意義と最新技術 |work=広報誌 ファイナンス |author=向山勇 |publisher=財務省 |year=2019 |month=06 |accessdate=2021-09-28|ref = harv|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200814214803/https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201906/201906c.pdf|archivedate=2020-08-14}}
== 関連項目 ==
* [[一万円硬貨]]([[日本の記念貨幣|記念貨幣]]のみ)
== 外部リンク ==
{{commonscat|10000 Yen banknotes of Japan}}
* [https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/issue.htm#p01 現在発行されている銀行券・貨幣 : 日本銀行 Bank of Japan]
* [https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/past_issue/pbn_10000.htm 一万円券 : 日本銀行 Bank of Japan]
{{日本銀行券}}
{{日本の通貨}}
{{デフォルトソート:いちまんえんしへい}}
[[Category:日本銀行券]]
[[Category:10000円|しへい]]
[[Category:聖徳太子]]
[[Category:福澤諭吉]]
[[Category:渋沢栄一]]
[[Category:東京駅]]
|