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{{観点|date=2011年3月}}
'''栄養素'''(えいようそ、nutrient)とは、
* (栄養学等)[[栄養]]のために摂取する物質を要素として指す言葉<ref name="名前なし-1">広辞苑第五版</ref>。[[蛋白質]]、[[脂肪]]、[[炭水化物]]の'''三大栄養素'''のほかに、[[ミネラル|無機質]]、[[ビタミン]]などを指す<ref>広辞苑第五版< name="名前なし-1"/ref>。
* (生物学等)栄養のために摂取される物質<ref name="印刷岩波生物学事典">{{Cite book|和書
|year = 1996
|title = 岩波生物学事典
|publisher = 岩波書店
|id = ISBN 4-00-080087-6
}}</ref>。
 
生物学等では、「栄養素」と言うと、生物が代謝する目的で外界から吸収する物質のことを指している。栄養素は生体内で[[代謝]]され、生体内物質の原料や[[エネルギー]]を産生するのに利用される<ref name="印刷岩波生物学事典" /><ref name="世界大百科事典">参照文献:『世界大百科事典』</ref><ref name="岩波理化学辞典">[[長倉三郎]]ら編、「栄養」、『岩波理化学辞典』、第5版CD-ROM版、岩波書店、1999年</ref>とされる。
[[栄養学]]等では、上記の(生化学等での栄養素の他に)健康を維持するための食事由来の成分を含めて栄養素としている<ref>正式には食事摂取基準の「策定栄養素」と呼ばれる。; [httphttps://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html 日本人の食事摂取基準について]、日本国 厚生労働省、2005。また記事 [[栄養素 (栄養学)]]に詳しい。</ref>。
 
==栄養学等の説明==
{{main|栄養素 (栄養学)}}
 
 
 
==生物学等の説明==
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===栄養素の分類===
動物が食餌を捕食することはごくありふれた行動であるが、[[ルイ・パスツール]]が[[アルコール発酵]]で証明したようにしたように、[[ウイルス]]等少数の例を別にするならば、生物が成長・繁殖細する為の物質は体外から取り込む必要があるし、生命活動を維持する為のエネルギーも生態系からの取り込みに依存している。この様な生物の外界に依存する仕組みが[[栄養]]の本質である。しかし、酸素の有無以外にも[[熱水噴出孔]]のような[[極限環境微生物#極限環境とは|極限環境]]を含めて生物はあらゆる環境下にも生息しており、栄養素として取り込んだ物質を代謝して細胞や組織を構築する方法やエネルギー産生の方法もいろいろな方式が存在する。言い換えると生物が環境に適応する方法の一つとして取り込む物質を変化させるので、栄養素とされる物質も千差万別であり[[有機化合物]]であったり[[無機化合物]]であったりもする。分類的には有機化合物である栄養素は有機栄養素とよばれ、無機化合物である栄養素は無機栄養素ないしは栄養塩類とも呼ばれる。有機栄養素(ゆうきえいようそ、Organic nutrient)と呼ばれるものには、[[炭水化物]]、[[脂]]、[[たんぱく質]](もしくは構成要素の[[アミノ酸]])、[[ビタミン]]などがある。また、[[ミネラル]]のような一部の無機化合物も栄養素である。
 
栄養素が必要とされるのは、その物質が生体内の需要を生合成で賄うことができず、外部からの取り込みに頼ることが理由となる。需要量の点から栄養素を分類すると需要量の多い'''主要栄養素'''(しゅよう えいようそ、macronutrient)とそれとは相対的に少量の摂取で済む'''微量栄養素'''(びりょうえいようそ、micronutrient)からなる。すなわち栄養素としてとりこまれる物質の比率は生物種によって異なるだけでなく、生物の置かれた環境や個体の成長段階によっても変化する。しかし、細胞を構築するための物質やエネルギー産生の為の物質はその必要量も多く、'''主要栄養素'''(しゅよう えいようそ、macronutrient)と呼ばれる。その一方、調節機構にかかわる物質は存在自体が少量な為、栄養素としての取り込み量も少量である。そのような栄養素は'''微量栄養素'''(びりょうえいようそ、micronutrient)と呼ばれる。すなわち、生物の構成要素として[[たんぱく質]]、[[核酸]]、[[糖類]]は生物種によらず普遍的に利用されているので、それらの構成元素である[[炭素]]、[[水素]]、[[窒素]]、[[酸素]]、[[リン]]そして[[硫黄]]は主要栄養素を構成する元素である。また細胞内外に存在しさまざまな働きをする[[カルシウム]]、[[食塩]]([[ナトリウム]]と[[塩素]])、[[マグネシウム]]、[[カリウム]]などの[[電解質]]も主要栄養素を構成する元素に含められる場合がある。微量栄養素で注意すべきは、単に生物体から検出されたからといって微量栄養素なのか単なる汚染なのかは識別することはできず、成長に必要な因子であるかどうかが明確になる必要がある<ref group="注">検出感度が飛躍的に向上したため、今日では周期表のほとんどの微量元素を生体試料から検出することが可能になっている。一部のサプリメントには体内で検出されることをもって栄養素であると主張する根拠に欠ける商品もある。</ref>。
 
別の観点から見ると、栄養形式を主要栄養素の種類で大きく二つに分類することができる。その場合、[[二酸化炭素]]、[[水]]の他に無機栄養素だけで十分な[[独立栄養]]の場合とそれに加えて[[有機物]]から成る有機栄養素をも必要とする[[従属栄養]]の場合とが存在する。前者の代表が[[植物]]であり、多くの生物種は後者の方式を利用している。[[独立栄養]]か[[従属栄養]]かの違いは絶対的ではない場合もあり、[[ヤドリギ]]や[[食虫植物]]などでは環境変化に応じて二つの栄養形式を使い分けている<ref name="岩波理化学辞典" /><ref>長倉三郎ら編、「独立栄養」、「従属栄養」、『岩波理化学辞典』、第5版CD-ROM版、岩波書店、1999年</ref><ref>佃 弘子、「栄養」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref>。
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[[画像:Justus von Liebig.jpg|frame|[[ユストゥス・フォン・リービッヒ]]]]
[[1843年]]にドイツの農芸化学者 [[ユストゥス・フォン・リービッヒ]]は植物の無機栄養説を提唱した際、経験則として最少養分律という法則を提唱した。すなわち、
:「生物(植物)がどれだけ生長できるかは必要な元素のうち最も不足しているものの量で決められる」
というものである。その後マイヤー(A. Meyer)やウォルニー(M. E. Wollny)らの研究により栄養素も含めた、全ての成長因子に関して成り立つことが解明された。一般には壁板の高さが異なる樽から水があふれ出す、「ドベネックの樽」の説明が有名である
<ref>茅野 充男、「最小養分律」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref>(記事 [[リービッヒの最小律]]に詳しい)。
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このような「食うか食われるか」の関係以外にも生物が栄養素を得る関係も存在する。たとえば共生生物の産物を栄養素とする[[栄養共生]]がしられており、例えば、マメ科植物と根粒菌との関係があげられる。この[[根粒]]による窒素固定は世界経済に年間100億ドル分の合成窒素肥料を節約させていると推定されている<ref>{{cite journal | author=Fox, JE, Gulledge, J, Engelhaupt, E, Burrow, ME, and McLachlan, JA | title=Pesticides reduce symbiotic efficiency of nitrogen-fixing rhizobia and host plants | journal=[[PNAS|Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA]] | year=2007 | volume=104 | pages=10282-10287}}</ref>(記事 [[窒素固定#生物学的窒素固定|窒素固定]]に詳しい)
 
また従属栄養生物で消化共生と呼ばれる関係がしられている。例を挙げるならば[[シロアリ]]類は自らの消化作用ではなく、後腸に生息する[[原生動物]]の超鞭毛虫類(Trichonympha,Trichomonas(Trichonympha, Trichomonasなど)や[[細菌]]が[[木質]]を分解した生産物や腐朽菌が分解した植物質を栄養素として利用している。あるいは草食獣では[[ルーメン|反芻胃]]に生息する細菌や原生動物の[[繊毛虫]]など多種の微生物が食餌に含まれる[[セルロース]]や[[デンプン]]を栄養素として増殖している。これら微生物自体を消化したり代謝産物を利用しているのである。つまり、セルロースの分解産物である炭化水素のみならず代謝によって生産される低級脂肪酸、尿素などの非タンパク質態窒素が同化したタンパク質、あるいは微生物が炭水化物より生成する低級脂肪酸などを栄養素として利用することによりエネルギー源・炭素源のほとんどをまかなっている。さらにビタミン類も微生物類より利用することがられている<ref name='"CD-ROM岩波生物学事典'">{{Cite book|和書
|author = 八杉龍一ら編
{{Cite book|和書
|author = 八杉龍一ら編
|year = 1988
|title = 岩波生物学事典 第4版CD-ROM版
|publisher = 岩波書店
|id = ISBN
}}</ref><ref>『岩波生物学事典CD-ROM版』の中の特に「消化共生」「栄養交換」の項目< /ref> <ref>森本 桂、「シロアリ(白蟻)」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref><ref>佃 弘子、「共生栄養」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref>。
}}
</ref>
<ref>『岩波生物学事典CD-ROM版』の中の特に「消化共生」「栄養交換」の項目< /ref> 森本 桂、「シロアリ(白蟻)」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref><ref>佃 弘子、「共生栄養」、『世界大百科事典』、平凡社、1998年</ref>。
 
=== 植物と栄養素 ===
{{main|肥料栄養素 (植物)}}
[[Image:Intertidal greenalgae.jpg|thumb|300px|right|富栄養化が見られる波打ち際の緑藻の帯。この岸(おそらく小さな入り江)は大量の硝酸塩やリモニアなどの酸塩といった栄養素の供給源が近くにあることが原因となっている。]]
 
植物が大量に消費吸収する元素は[[炭素]]、[[水素]]および[[酸素]]である。これらの元素は環境中では[[水]]や[[二酸化炭素]]として存在している。そしてエネルギーは[[太陽光]]より供給されている。しかし、多くの場合において水、二酸化炭素、太陽光は栄養素には分類されていない<ref name="CD-ROM岩波生物学事典" /><ref name="世界大百科事典" />。
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植物が必要とするたんぱく質や核酸の原料となる窒素、リン、カリウムあるいは硫黄もまた比較的多量に必要とされる。それが理由によりこれらの元素は植物の主要栄養元素と呼ばれている。[[頭字語|アクロニム]]化してCHNOPSと表記されることもある。これらの栄養素は無機化合物(たとえば、[[硝酸]]、[[リン酸]]、[[硫酸]])の場合もあれば有機化合物(例えば、[[炭水化物]]、[[脂肪]]、[[たんぱく質]])の場合もある。二元素分子の[[窒素]]も植物の場合はしばしば利用されている。
 
これら以外の植物が生命活動や成長に必要とされる元素については、記事 [[肥料]]や[[微量栄養素 (植物)]]に詳しい。
 
農作物のような植物種では微量栄養素の幾つかも含めて主要栄養素に合一されている。すなわち炭素, 水素、酸素、リン、 カリウム、窒素、硫黄、カルシウム、鉄そしてマグネシウムである<ref group="注">英語圏では栄養素元素表を学生が暗記する為に(C. Hopkinsのコーヒーマグという読みから転じた)アクロニムC. HOPKiN'S CaFe Mgが使用される。すなわち炭素('''C'''arbon), 水素('''H'''ydrogen)、酸素('''O'''xygen)、リン('''P'''hosphorus)、 カリウム(Potassium; '''K''')、窒素('''N'''itrogen)、硫黄('''S'''ulfur)、カルシウム('''Ca'''lcium)、鉄(Iron; '''Fe''')そしてマグネシウム(Magnesium; '''Mg''')</ref>。
特定の作物によってはケイ素、塩素、銅、亜鉛、モリブデンなどが主要栄養素に統合されることがあるが、他の多くの植物の場合には微量栄養素に合一されている。
 
植物栄養素が環境中に過剰供給されると、たとえば緑藻の大量発生など引き起こされる。富栄養化のプロセスが進行するにつれ生物生息数と微量で十分な栄養素のアンバランスが発生する。そうなるともはや環境中の生物群にとっては過剰供給された栄養素は有害となってしまう。たとえば、夜間においては[[水の華]]は魚類が呼吸する酸素を使い果たしてしまう。これらの栄養素は下水や(肥料を過剰散布された)農場からの排水によって引き起こされる。特に窒素とリンとが植物における成長の律速因子であり、人為的に環境中に放出されると富栄養化を引き起こす。
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* 佃 弘子、辻 英夫、「栄養素」、『[[世界大百科事典]]』、平凡社、1998年<ref name="世界大百科事典">参照文献:『世界大百科事典』</ref>
* 八杉龍一ら編『岩波生物学事典』第4版、岩波書店、1996年
* 八杉龍一ら編『岩波生物学事典』第4版CD-ROM版、岩波書店、1998年
 
==出典・註脚注==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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==関連項目==
* [[食物 (栄養学)|食物]]
* [[代謝]]
* [[栄養]]
 
==外部リンク==
* [https://fooddb.mext.go.jp/ 食品成分データベース|文部科学省]
* [https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/guide.html 栄養素と食事バランスガイドとの関係|農林水産省]
* [https://www.med.or.jp/forest/health/eat/03.html 6つの基礎食品群と栄養素|日本医師会]
* [https://saturday-jp.com/ 栄養素成分まとめ]
* [https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/kyouzai/files/eiyouseibun_handbook.pdf 栄養成分表示ハンドブック|東京都福祉保健局]
 
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[[Category:栄養素|*]]