「交通政策審議会答申第198号」の版間の差分

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'''東京圏における今後の都市鉄道のあり方について交通政策審議会答申第198号'''(きょせいさくしにおけるこぎかいとうしだい198のとしてつどのありかたについて)は、[[国土交通省]]の[[交通政策審議会]]が所管す、その下にある「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」における2年間の検討を経て、[[2016年]]4月20日に行った答申である。目標年次は概ね15年後の[[2030年]]頃としている。答申には『'''東京圏における今後の都市鉄道のあり方について'''』(とうきょうけんにおけるこんごのとしてつどうのありかたについて)という題が付されている。
 
第198号の一部は交通政策審議会の下にある「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会」で[[2021年]]に追加で検討が行われ、'''交通政策審議会第371号'''「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」として同年[[7月15日]]に答申が行われた。
 
== 概要 ==
[[首都圏 (日本)|東京圏]]の鉄道ネットワークにおける答申としては、[[2000年]]に[[運輸政策審議会]]による[[運輸政策審議会答申第18号]](以下「第18号答申」)に続くものであり、第18号答申の目標年次である[[2015年]]を迎えることから、[[2014年]]に国土交通大臣から交通政策審議会に対して諮問(諮問第198号)があり、本答申はこの諮問に対してのものである。
 
まえがき<ref name="toshin">{{Cite web|和書|format=PDF|url=httphttps://www.mlit.go.jp/common/001128563001138591.pdf|title=東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)|work=交通政策審議会|publisher=国土交通省|date=2016-04-20|accessdate=2016-04-24}}</ref>では、これまでの鉄道整備によって、「ネットワークの稠密性やサービス水準について世界に誇るべき水準になってきたところである。」としているが、一方で、「東京圏の都市鉄道を取り巻く環境は大きく変化している。」としており、本答申は、より質の高い東京圏の都市鉄道ネットワークを構築していく観点から行われた。
 
本答申では、「東京圏の都市鉄道が目指すべき姿」として、以下の6項目を取り上げている<ref name="toshin" />。
 
; 1. 国際競争力の強化に資する都市鉄道
: 国際的な都市間競争の激化に対して、経済活動を支える基盤である交通においてもその機能強化を図ることが重要である。具体的には「航空・新幹線との連携強化」「国際競争力強化の拠点となるまちづくりとの連携強化」を挙げている。
; 2. 豊かな国民生活に資する都市鉄道
: 国民生活をさらに豊かなものにするため、サービス水準の引き上げが必要である。具体的には「混雑の緩和」「速達性の向上」「シームレス化」を推進すべきとしている。
; 3.まちづくりと連携した持続可能な都市鉄道
: 今後予想される急激な人口減少や高齢化に対応し、質の高いサービスを持続的に供給するためにはまちづくりとの連携を図ることが重要である。具体的には「ユニバーサルデザイン化」「郊外部のまちづくりとの連携強化」「エコデザイン化」を推進すべきとしている。
; 4.駅空間の質的進化 〜次世代ステーションの創造〜
: 具体的には「駅まちマネジメント(駅マネ)の推進」「更なるバリアフリー化の推進」「更なる外国人対応の推進」「分かりやすく心地よくゆとりある駅空間の形成」「まちとの一体性の創出」を挙げ、特に[[2020年]]に行わ開催される[[2020年夏季東京オリンピック|東京オリンピック]]・[[2020年東京パラリンピック|パラリンピック]]への対応として、前3項目については早急に取り組むべきとしている。
; 5. 信頼と安心の都市鉄道
: 具体的には「遅延の見える化」、「鉄道事業者における取組の促進」、「鉄道利用者との協働」「鉄道利用者への情報提供の拡充」を挙げている。
; 6. 災害対策の強力な推進と取組の「見える化」
: 具体的には、「災害対策の見える化」、「ハード・ソフト両面からの強力な災害対策の推進」を挙げている。
 
== プロジェクト ==
{{Wide image|KoutsuSeisakuShigikai198 Tokyo.png|700px|答申の付図「東京圏鉄道網図」}}
本答申では機能別に「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」「駅空間の質的進化に資するプロジェクト等」の3種類に分類している。
 
第18号答申では、整備対象とする路線について「目標年次までに開業することが適当な路線」(A1)、(A1)・「目標年次までに整備着手することが適当である路線」(A2)、(A2)・「今後整備について検討すべき路線」(B)(B)とランク付け<ref>{{Cite web|和書|url=httphttps://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tosin/kotumo/kotumo4_.htm|title=III 整備計画|work=東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(答申)|publisher=国土交通省|date=2000-01-27|accessdate=2016-04-21}}</ref>されていたが、本答申ではランク付けは行わない<ref>{{Cite web|和書|url=http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/040800319/?P=2|title=東京圏鉄道網、新答申案に路線事業24件 (2/2)|work=日経コンストラクション|publisher=日経BP|date=2016-04-11|accessdate=2016-04-21}}</ref>。またなお、第18号答申では着工済みの区間もA1の中に含まれていたが、本答申では既に着工済みの区間([[神奈川東部方面線]]の新設、[[小田急小田原線]]・[[東北沢駅]] - [[梅ヶ丘駅]]間の複々線化等)は対象から外している。
 
その代わりに、答申の「課題」の項目に意見が付けられており、「事業性に課題がある」(費用便益比(B/C)が1.0を下回る)、「収支採算性に課題がある」(B/Cは1.0を上回るものの、累積資金収支が黒字とならない)と前置きされている路線も少なくないものの、いくつかの路線は前向きな意見が付けられている。
 
*「事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において事業計画の検討の深度化を図るべき」([[羽田空港アクセス線]])
*「事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」([[蒲蒲線|新空港線]]・[[矢口渡駅]] - [[京急蒲田駅]]・[[東京メトロ有楽町線|東京8号線(有楽町線)]]・[[豊洲駅]] - [[住吉駅 (東京都)|住吉駅]]・[[都営地下鉄大江戸線|東京12号線(大江戸線)]]・[[光が丘駅]] - [[大泉学園町]])
* 「事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において具体的な調整を進めるべき」([[多摩都市モノレール線]]・[[上北台駅]] - [[箱根ケ崎駅|箱根ヶ崎駅]]・[[多摩センター駅]] - [[町田駅]])
* 「事業化に向けて(横浜・川崎)両市が協調して、費用負担のあり方や事業主体等を含めた事業計画について、合意形成を進めるべき」([[横浜市営地下鉄ブルーライン|横浜3号線]]・[[あざみ野駅]] - [[新百合ヶ丘駅]])
 
また、[[都心部・臨海地域地下鉄構想]]([[東京駅]] - [[国際展示場駅|新国際展示場駅]])については、小委員会による検討では、原計画([[銀座駅|新銀座駅]] - 新国際展示場駅)では他のネットワークとつながっていないため事業性に課題があるという結果だったが、小委員会の提案<ref>{{Cite web|和書|format=PDF|url=https://www.mlit.go.jp/common/001131789.pdf|title=交通政策審議会 陸上交通分科会 鉄道部会 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会(第20回)|page=18|publisher=国土交通省|date=2016-04-07|accessdate=2016-05-17}}</ref>により、[[秋葉原駅]] - 東京駅の延伸計画がある常磐新線([[首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス|つくばエクスプレス]])との一体整備および[[相互直通運転]]が盛り込まれた。
 
このうち、東京都に関連する5路線6区間(羽田空港アクセス線、新空港線、東京8号線延伸、大江戸線延伸および多摩都市モノレールの南北2区間)の事業化に向けて、都では2018年度予算で「鉄道新線建設等準備基金」を創設、都が保有する[[東京地下鉄|東京メトロ]]株式から得られる配当を充当する方針を示した<ref>{{Cite news|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26185890W8A120C1EA4000/|title=都予算案、鉄道新設へ基金 財政需要25年で15兆円増 |newspaper=日本経済新聞 電子版|date=2018-01-26|accessdate=2018-01-31}}</ref>。また、横浜3号線([[横浜市営地下鉄ブルーライン|ブルーライン]])の延伸については、2019年1月23日、横浜・川崎両市長が記者会見で事業化を正式に発表した<ref>{{Cite news|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40359510T20C19A1CZ8000/|title=横浜市営地下鉄、小田急新百合ケ丘駅へ延伸 30年開通 |newspaper=日本経済新聞 電子版|date=2019-01-23|accessdate=2019-01-23}}</ref>。
 
東京8号線の延伸、[[東京メトロ南北線#延伸計画(都心部・品川地下鉄構想)|都心部・品川地下鉄構想]]([[白金高輪駅]] - [[品川駅]])、都心部・臨海地域地下鉄構想については、2021年に検討が行われ、東京8号線の延伸、都心部・品川地下鉄構想については東京メトロの既存路線との関連が深いことから、東京メトロを事業主体とした上で完全民営化に影響を及ぼさないように支援を検討すべきであるとした<ref>{{Cite news|url=https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210715-OYT1T50121/|title=東京メトロ上場、審議会が「GO」…有楽町線・南北線の延伸に着手へ |newspaper=読売新聞|date=2021-07-15|accessdate=2021-07-16}}</ref>。都心部・臨海地域地下鉄構想は、引き続き検討課題とされている。
 
=== 鉄道ネットワーク ===
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;"
|-
! # !! プロジェクト名 !! 区間 !! 備考 !! 第18号答申<ref>{{Cite web|和書|format=PDF|url=httphttps://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha00/koho00/tosin/kotumo/images/kotumo.pdf|title=具体的路線|work=東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(答申)|publisher=国土交通省|date=2000-01-27|accessdate=2016-04-21}}</ref>
|-
! colspan="5" style="background:#eef0ff;text-align:center" | 国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト
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! style="background:#eef0ff;|1
| [[都心直結線]]の新設 || [[押上駅]] - [[東京駅|新東京駅]] - [[泉岳寺駅]] || [[京成押上線]][[京急本線]]と[[相互直通運転]]を行う || <ref group="注">「東京1号線([[都営地下鉄浅草線|都営浅草線]])の東京駅接着」(A2)(A2)として、[[日本橋駅 (東京都)|日本橋駅]] - [[宝町駅 (東京都)|宝町駅]]間で東京駅に接着するとしていた。</ref>
|-
! style="background:#eef0ff;|2
| (a)(a)[[羽田空港アクセス線]]の新設及び<br />(b)(b)[[京葉線]]・[[東京臨海高速鉄道りんかい線|りんかい線]]相互直通運転化 || (a)(a)[[田町駅 (東京都)|田町駅]]付近・[[大井町駅]]付近・[[東京テレポート駅]] - [[東京貨物ターミナル駅]]付近 - [[東京国際空港|羽田空港]]<br />(b)(b)[[新木場駅]] || (a)(a)[[東海道線 (JR東日本)|東海道線]]・[[埼京線]]・りんかい線と相互直通運転を行う || <ref group="注">「東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の新設」(B)(B)として、東京テレポート駅 - 羽田空港間が取り上げられ、「[[大崎駅]]方面からの直通ルートについても併せ検討する」としていた。</ref>
|-
! style="background:#eef0ff;|3
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! style="background:#eef0ff;|4
| 京急空港線[[羽田空港第1・第2ターミナル駅|羽田空港国内線ターミナル駅]]引き上げ線の新設 || 羽田空港国内線ターミナル駅 || 京急[[品川駅]]において改良(2面4線化)を行う || -
|-
! style="background:#eef0ff;|5
| [[首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス|常磐新線]]の[[首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス#東京方面への延伸計画|延伸]] || [[秋葉原駅]] - [[東京駅]](新東京駅) || || B
|-
! style="background:#eef0ff;|6
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! 15
| [[総武快速|総武線]]・京葉線接続新線]]の新設 || 新木場駅 - [[市川塩浜駅]] - [[津田沼駅]] || 新木場駅 - 市川塩浜駅複々線化 || A2
|-
! 16
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! 18
| 区部周辺部環状公共交通の新設 || [[葛西臨海公園駅]] - [[赤羽駅]] - [[田園調布駅]] || 通称・[[メトロセブン]](葛西臨海公園駅 - 赤羽駅)[[エイトライナー]](赤羽駅 -  田園調布駅) || B
|-
! 19
| (a)(a)[[東海道貨物線#東海道貨物支線貨客併用化|東海道貨物支線貨客併用化]]及び<br />(b)(b)[[川崎アプローチ線]]の新設 || (a)(a)品川駅・東京テレポート駅 - [[浜川崎駅]] - [[桜木町駅]]<br />(b)(b)浜川崎駅 - [[川崎新町駅]] - [[川崎駅]] || (a)(a)一部区間で路線新設<br />(b)(b)浜川崎駅 - 川崎新町駅は[[南武線]]の改良川崎新町駅 - 川崎駅は路線の新設 || B
|-
! 20
| (a)(a)[[小田急小田原線]]の複々線化及び<br />(b)(b)[[小田急多摩線]]の[[小田急多摩線#相模原延伸計画|延伸]] || (a)(a)[[登戸駅]] - [[新百合ヶ丘駅]]<br />(b)(b)[[唐木田駅]] - [[相模原駅]] - [[上溝駅]] || || A2・B<ref group="注">A2(小田原線複々線化)B(唐木田駅 - [[横浜線]]・[[相模線]]方面)</ref>
|-
! 21
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! 22
| [[横浜市営地下鉄ブルーライン|横浜3号線]]の[[横浜市営地下鉄ブルーライン#延伸計画|延伸 ]]|| [[あざみ野駅]] - 新百合ヶ丘駅 || || A1・A2<ref group="注">A1(あざみ野駅 - [[すすき野]]付近)A2(すすき野付近 - 新百合ヶ丘駅)</ref>
|-
! 23
| [[横浜市営地下鉄グリーンライン#延伸計画|横浜環状鉄道]]の新設 || [[日吉駅 (神奈川県)|日吉駅]] - [[鶴見駅]]、[[中山駅 (神奈川県)|中山駅]] - [[二俣川駅]] - [[東戸塚駅]] - [[上大岡駅]] - [[根岸駅 (神奈川県)|根岸駅]] - [[元町・中華街駅]] || || A2
|-
! 24
| [[相鉄いずみ野線|いずみ野線]]の[[相鉄いずみ野線#今後の展望計画|延伸]] || [[湘南台駅]] - [[倉見駅]] || || B<ref group="注">終点側は「相模線方面」と記載。</ref>
|}
 
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== 外部リンク ==
* [httphttps://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s304_arikata01.html 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会]
* [https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s304_tokyochikatetsunetwork.html 東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等に関する小委員会]
 
{{Succession
|title= 東京圏の鉄道整備基本計画
|years= [[2016年]]: 交通政策審議会答申第198号
|before= [[2000年]]: [[運輸政策審議会答申第18号]]
|after= -
}}
 
{{DEFAULTSORT:きよせいさくしにおけるこんこのとしてつきかいとうのありかしんにつ198こう}}
[[Category:関東地方の交通]]
[[Category:未開業日本の鉄道|*計画]]
[[Category:審議会首都圏]]
[[Category:2016年の日本]]
[[Category:2016年の鉄道]]