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{{日本の法令
| 題名=船舶安全法
| 提出区分=閣法
| 効力=現行法
| 種類=[[行政手続法]]
| 所管=([[逓信省]]→)<br>([[運輸通信省 (日本)|運輸通信省]]→)<br>([[運輸省]]→)<br>[[国土交通省]]<br>[海運総局→[[運輸省船舶局|船舶局]]→[[海上交通局]]→[[海事局]]]<br>[[海上保安庁]][[[警備救難部]]]
| 内容=船舶における人命の安全確保
| 関連=[[船員法]] | リンク={{Egov law}}
}}
'''船舶安全法'''(せんぱくあんぜんほう、昭和8年3月15日法律第11号)は、[[船舶]]における人命の安全確保等に関する[[日本]]の[[法律]]である。
== 所管官庁 ==
;主所管
* [[国土交通省]][[海事局]]安全政策課
;共同所管
* 国土交通省海事局検査測度課
* [[海上保安庁]][[警備救難部]]救難課
[[外務省]][[国際法局]]条約課、[[商法]]を所管する[[法務省]][[民事局]]商事課など他省庁と連携して執行にあたる。
== 構成 ==
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#### 3人を超える人の運送の用に供しないものであること。
#### 推進機関として[[船外機]]を使用するものであり、かつ、当該船外機の連続最大出力が長さ5メートル未満の船舶にあっては3.7キロワット以下、長さ5メートル以上の船舶にあっては7.4キロワット以下であること。
#### [[湖]]若しくは[[ダム]]、[[せき]]等により流水が貯留されている[[川]]の[[水域]]であって、面積が50平方キロメートル以下のもの又は次に掲げる要件に適合する川以外の水域で告示で定めるもののみを航行するものであること。
##### [[平水区域]]であること。
##### [[海域]]にあっては、陸地により囲まれており、外海への開口部の幅が500メートル以下で、当該海域内の最大幅及び奥行きが開口部の幅よりも大きいものであり、かつ、外海の影響を受けにくいこと。
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### 国際航海に従事するもの
### 沿海区域を超えて航行するもの
### 平水区域を超えて航行するもののうち、推進機関を有する他の船舶に押されて航行の用に供するもの(沿海区域を[[航行区域]]とする推進機関を有する船舶と結合し一体となつて航行する船舶であって平水区域及び平水区域から最強速力で4時間以内に往復できる区域のみを航行するもの並びに管海官庁が当該船舶の航海の態様等を考慮して差し支えないと認めるものを除く。)
### 危険物ばら積船(危険物船舶運送及び貯蔵規則257条の2の液体油脂ばら積船であって平水区域のみを航行するものを除く。)
### 推進機関を有する他の船舶に引かれ又は押されてばら積みの油([[海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律]]3条2号に規定する油をいう。以下同じ。)の運送の用に供するもの
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また、[[陸上自衛隊]]の使用する船舶([[水陸両用車|水陸両用車両]]を含む。)及び[[防衛大学校]]を含む[[海上自衛隊]]の使用する船舶については、船舶安全法の規定の全部が適用されないこととされているが([[自衛隊法]]109条1項、2項本文)、海上自衛隊の使用する船舶のうち、政令で定める船舶([[自衛艦]]以外の船舶(自衛隊法施行令155条))については、船舶安全法28条の規定中、危険及び気象の通報その他船舶航行上の危険防止に関する部分が適用される(自衛隊法109条2項ただし書)。
== 満載喫水線 ==
'''[[満載喫水線]]'''とは、載貨による船体の海中沈下が許容される最大限度を示す線をいう{{Sfn|神戸大学|2022|p=28}}。
次に掲げる船舶は、国土交通省令の定めるところによって、満載喫水線を標示しなければならない(船舶安全法3条本文)。ただし、潜水船その他国土交通大臣において特に満載喫水線を標示する必要がないと認める船舶はこの限りでない(同条ただし書)。
# 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶
# 沿海区域を航行区域とする長さ24メートル以上の船舶
# 総トン数20トン以上の漁船
国土交通大臣において特に満載喫水線を標示する必要がないと認める船舶は、次のとおりである(船舶安全法施行規則3条)。
# 水中翼船、エアクッション艇その他満載喫水線を標示することがその構造上困難又は不適当である船舶
# 引き船、海難救助、しゅんせつ、測量又は漁業の取締りにのみ使用する船舶その他の旅客又は貨物の運送の用に供しない船舶(漁船を除く。)であって国際航海に従事しないもの(通常は国際航海に従事しない船舶であって、臨時に単一の国際航海に従事するものを含む。)
# 小型兼用船であって次に掲げるもの
## 漁ろうをしない間の航行区域が平水区域であるもの
## 漁ろうをしない間の航行区域が沿海区域であって長さ24メートル未満のもの
# 臨時変更証を受有している船舶であって次に掲げるもの
## 船舶安全法施行規則19条の2第1号又は第2号に該当する船舶
## 平水区域を航行区域とする船舶で沿海区域を航行し他の平水区域に回航されるもの
# 臨時航行許可証を受有している船舶
# 試運転を行なう場合の船舶
# 平水区域を航行区域とする旅客船であって、臨時に短期間沿海区域を航行区域とすることとなるもの(第4号ロに掲げるものを除く。)のうち管海官庁が安全上差し支えないと認めるもの
満載喫水線の位置は、[[満載喫水線規則]](昭和43年運輸省令第33号)及び[[船舶区画規程]](昭和27年運輸省令第97号)の定めるところによる(船舶安全法9条1項、船舶安全法施行規則11条)。
== 無線通信 ==
船舶は、国土交通省令の定めるところによって、その航行する水域に応じ、[[電波法]]による[[無線電信]]又は[[無線電話]]であって、船舶の堪航性及び人命の安全に関し陸上との間において相互に行う[[無線通信]]に使用し得るもの('''無線電信等''')を施設することを要する(船舶安全法4条1項本文)。ただし、航海の目的その他の事情によって、国土交通大臣において、やむを得ない又は必要がないと認めるときは、この限りでない(同項ただし書)。
無線電信等の施設が免除される船舶は、次に掲げるいずれかの船舶であって、管海官庁が許可したものである(船舶安全法施行規則4条1項)。
# 臨時に短期間、船舶安全法4条1項の規定の適用を受けることとなる船舶
# 発航港から到達港までの距離が短い航路のみを航行する船舶
# 母船の周辺のみを航行する搭載船
# 推進機関及び帆装を有しない船舶であって次に掲げるもの
## 危険物ばら積船
## 特殊船
## 推進機関を有する他の船舶に引かれ又は押されてばら積みの油の運送の用に供するもの
# 潜水船、水中翼船、エアクッション艇その他特殊な構造を有する船舶であつて、無線電信等を施設することがその構造上困難又は不適当なもの
# 無線電信等に代わる有効な通信設備を有する船舶
船舶安全法4条1項の規定は、同法2条2項に掲げる船舶その他無線電信等の施設を要しないものとして国土交通省令で定める船舶には適用されない(船舶安全法4条2項)。国土交通省令で定める船舶は、次のとおりである(船舶安全法施行規則4条の2)。
# 臨時航行許可証を受有している船舶
# 試運転を行う場合の船舶
# 湖川港内の水域(告示で定めるものを除く。)のみを航行する船舶
# 推進機関及び帆装を有しない船舶(危険物ばら積船(危険物船舶運送及び貯蔵規則257条の2の液体油脂ばら積船であつて平水区域のみを航行するものを除く。)、特殊船及び推進機関を有する他の船舶に引かれ又は押されて人又はばら積みの油の運送の用に供するものを除く。)
なお、海上における無線通信については、海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)の実施により、'''[[海上における遭難及び安全に関する世界的な制度|GMDSS]]'''と呼ばれる海上無線通信システムが用いられている{{Sfn|神戸大学|2022|p=22}}。
== 船舶の検査 ==
船舶所有者は、船舶の施設、満載喫水線、無線電信等について、国土交通省令の定めるところによって、次の区別による検査を受けなければならない(船舶安全法5条1項)。
* '''定期検査''' - 初めて航行の用に供するとき又は10条に規定する有効期間が満了したときに行う精密な検査
* '''中間検査''' - 定期検査と定期検査との中間において国土交通省令の定める時期に行う簡易な検査
* '''臨時検査''' - 2条1項各号に掲げる事項又は無線電信等について国土交通省令で定める改造又は修理を行うとき、9条1項の規定によって定められた満載喫水線の位置又は船舶検査証書に記載した条件の変更を受けようとするときその他国土交通省令の定めるときに行う検査
* '''臨時航行検査''' - 船舶検査証書を受有しない船舶を臨時に航行の用に供するとき行う検査
* '''特別検査''' - 前各号のほか一定の範囲の船舶について2条1項の国土交通省令又は国土交通省令・農林水産省令に適合しない虞があることによって国土交通大臣において特に必要があると認めたときに行う検査
本法施行地において製造する長さ30メートル以上の船舶の製造者は、2条1項の規定の適用がある船舶について船体、機関及び排水設備、3条の船舶について満載喫水線に関し、船舶の製造に著手した時から国土交通省令の定めるところによって検査('''製造検査''')を受けなければならない(船舶安全法6条1項)。ただし、国土交通大臣において、やむを得ない又は必要ないと認めるときは、この限りでない(同項ただし書)。
なお、上記の検査がいずれも'''強制検査'''であるのに対し、本法施行地において製造する長さ30メートル未満の船舶の製造者による製造検査(船舶安全法6条2項)、船舶の所要施設に係る特定の物件の製造者等による予備検査(同条3項)、船舶の所要施設に係る規定が適用されていない船舶又は当該船舶に備え付ける物件について定期検査又は予備検査に準じて予め受ける準備検査は、いずれも'''任意検査'''とされている{{Sfn|神戸大学|2022|p=35}}。
国土交通大臣の登録を受けた'''[[船級協会]]'''の検査を受け、船級の登録をした非旅客船は、その船級を有する間、船舶安全法2条1項各号に掲げる事項、満載喫水線及び無線電信等に関し、特別検査以外の管海官庁の検査に合格したものとみなされる(船舶安全法8条)。
管海官庁の検査又は検定を受けた者が検査又は検定に対して不服があるときは、検査又は検定の結果に関する通知を受けた日の翌日から起算して30日以内に、国土交通大臣に対し、再検査又は再検定を申請することができる(船舶安全法11条1項)。管海官庁の検査又は検定若しくは再検査又は再検査に対して不服があるときは、その取消しの訴え([[取消訴訟]])を提起することができる(同条2項)。管海官庁の検査又は検定に対して不服がある者は、これらの手段によってのみこれを争うことができるため(同条4項)、[[行政不服審査法]]の規定は適用されない{{Sfn|神戸大学|2022|p=40}}。
管海官庁は、定期検査に合格した船舶に対しては、航行区域(漁船については従業制限)、最大搭載人員、制限汽圧及び満載喫水線の位置を定め、'''船舶検査証書'''及び'''船舶検査済票'''(小型船舶に限る。)を交付しなければならない(船舶安全法9条1項)。船舶検査証書を受有しない船舶を航行の用に供したときは、罰則の対象となる(同法18条1項1号)。船舶検査証書を受有しない船舶を航行の用に供するときは、臨時航行検査を受けて、'''臨時航行許可証'''の交付を受けなければならない(同法5条1項4号、9条2項)。
船舶検査証書の有効期間は、5年間である(船舶安全法10条1項本文)。ただし、旅客船を除き、平水区域を航行区域とする船舶又は小型船舶であって国土交通省令で定めるものについては、6年間である(同項ただし書)。
もっとも、次に掲げる場合における船舶検査証書の有効期間は、従前の船舶検査証書の有効期間(2号にあっては、当初の有効期間。)の満了日の翌日から起算して5年を経過する日までとなる(同条4項)。
# 従前の船舶検査証書の有効期間満了日前3月以内に受けた定期検査に係る船舶検査証書の交付を受けたとき
# 2項又は3項の規定によって、従前の船舶検査証書がなおその効力を有することとされたとき
船舶検査証書は、中間検査、臨時検査又は特別検査に合格しない船舶については、これに合格するまでその効力が停止される(同条5項)。
船級協会の検査を受けて船級の登録をした非旅客船が受有する船舶検査証書は、その船舶が当該船級の登録を抹消され、又は旅客船となったときは、その有効期間が満了する(同条6項)。
船舶の検査に関する事項を記録するため、管海官庁は、最初の定期検査に合格した船舶に対し、'''船舶検査手帳'''を交付しなければならない(船舶安全法10条ノ2)。
== 管海官庁の権限 ==
管海官庁は、船舶安全法に基づき、次に掲げる行為をする権限を有する(同法12条)。
# 船舶等に対する[[臨検]]
# 船舶所有者、船長等に対し、船舶の堪航性及び人命の安全に関し、国土交通省令の定めるところによって届出をさせる
# 本法又は本法に基づく命令に違反した事実があると認めるときは、船舶の航行停止その他の処分
船舶乗組員20人未満の船舶にあってはその2分の1以上、その他の船舶にあっては乗組員10人以上が、国土交通省令の定めるところによって、当該船舶の堪航性又は居住設備、衛生設備その他の人命の安全に関する設備について重大な欠陥がある旨を申し立てた場合、管海官庁は、その事実を調査し、必要があると認めるときは、船舶の航行停止その他の処分をしなければならない(船舶安全法13条)。
== 脚注 ==
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* [[海上タクシー]]
* [[船舶等型式承認規則]]
* [[便宜置籍船]]
==外部リンク==
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