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|portal1=文学
}}
『'''怒りの葡萄'''』(いかりのぶどう
==物語==
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[[オクラホマ州]]の農家の息子である主人公の[[トム・ジョード]]は、その場の激情で人を殺し、4年間の懲役刑から仮釈放で実家に戻ってきた。彼の家族の農場はダストボウルで耕作不能となり、生活に窮した家族は、オクラホマを引き払い、仕事があると耳にした[[カリフォルニア州]]に一族あげて引っ越そうとしているところだった。トムは一族や、[[説教家|説教師]]のジム・ケイシーなどとともに、カリフォルニアへの旅に合流した。物語の前半では、すべての家財を叩き売って買った中古車でジョード一家が[[国道66号線 (アメリカ合衆国)|ルート66]]を辿る旅が描かれる。
祖父や祖母は、アリゾナ砂漠やロッキー山脈を越えてゆく過酷な旅に体力が耐えられず車上で死亡し、従兄弟も逃亡する。そして、そのような苦難の旅の末、一家は人間らしい生活ができると思っていたカリフォルニアに辿り着く。しかし、当時のカリフォルニアには、[[大恐慌]]と[[機械化農業]]のために土地を失った多くのオクラホマ農民が既に流れついていたため[[相対的過剰人口|労働力過剰]]に陥っており、ジョード家の希望は無惨に打ち砕かれる。移住者たちは、
==登場人物==
;トム・ジョード・ジュニア
:主人公。アメリカでは父と同じ名を息子につけることがよくあり、その場合、父をシニア、息子をジュニアと呼んで区別する。
:30歳前後の背が高く、鳶色の眼をした青年。ぶっきらぼうだが心根は優しい。
;ママ・ジョード(おっかあ)
:母親。名前は明らかにされない。
:穏やかで暖かみのある顔立ちをしており、芯が強く一家の大黒柱的存在。
;パパ・ジョード(おやじ)
:父親。本名トム・ジョード・シニア。生涯を、オクラホマの[[トウモロコシ]]畑で働き通してきた老農夫。50歳。
:筋骨たくましいがっしりとした体形。カリフォルニア移住の間に起こった様々な出来事に憔悴し、一家の実権を母親に譲ることとなる。
;ジョン伯父
:パパ・ジョードの兄。60歳前後。酒飲みで好色。
;ジム・ケイシー
:元・[[説教師]]。[[
:禿げ上がったぎょろりとした目つきの鷲鼻の男。ジョード一家とともにカリフォルニアへ向かう。
;アル・ジョード
:ジョード
;ローザシャーン(ローズ・オブ・シャロン)
:ジョード家長女(トムの妹)。コニーの妻。妊娠している。18歳。
;コニー・リバース
:ローザシャーンの夫。19歳。カリフォルニアに到着してすぐ、逃げ出して行方不明になる。
;ノア・ジョード
:ジョ
;祖父ウィリアム
:トムの祖父。生涯を過ごしてきたオクラホマの農場を離れることを非常に惜しみ、カリフォルニアへの旅の
;祖母
:ウィリアムの妻。アリゾナ砂漠を渡る苛酷な旅に耐え切れず、車上で死ぬ。
;ルーシー
:ジョード家の末娘(トムの妹)。12歳。
;ウィンフィールド
:ジョード家の末子(トムの弟)。10歳。
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本作は、奇数章に作者の[[ジョン・スタインベック|スタインベック]]の評論、偶数章にジョード一家の物語を整然と配置した構成を取っている。このような構成を取ることによって、本作は単純な「ジョード一家の物語」という枠を超えて、当時の[[大恐慌]]下のアメリカ社会に対する直接的な告発ともなっている。
作者のスタインベックは[[キリスト教]]文学、とりわけ[[聖書]]に決定的な影響を受けた作家である。本作でジョード一家が貧しい[[オクラホマ州|オクラホマ]]から、乳と蜜の流れる、豊饒な「約束の地」である[[カリフォルニア州|カリフォルニア]]に脱出するところは、[[旧約聖書]]のエクソダス
このように本作は、一見「[[プロレタリア文学|社会主義小説]]」とも評される内容であるが(実際、出版当時そのような論評が数多く見られた)、それだけにおさまらない、きわめて深い内容を持つ作品である。
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==タイトルの意味==
「葡萄」とは、神の怒りによって踏み潰される「人間」のことを意味すると一般に解釈されている。
{{
なお、怒りの葡萄(grapes of wrath)という表現は、同じく[[ヨハネの黙示録]]に題材を得たアメリカの女流詩人[[ジュリア・ウォード・ハウ]]の1862年出版の『共和国の戦いの歌』([[リパブリック賛歌]]
==反響==
本作品は出版当時、アメリカ全土
保守層からは目の敵にされ、カリフォルニア州では出版から
発表翌年の[[1940年]]には[[ジョン・フォード]]監督、[[ヘンリー・フォンダ]]主演により映画化され、[[ニューヨーク映画批評家協会賞]]の作品賞、監督賞、また[[アカデミー賞]]の[[アカデミー監督賞|監督賞]]、[[アカデミー助演女優賞|助演女優賞]]([[ジェーン・ダーウェル]])を受賞している。詳細については『[[怒りの葡萄 (映画)]]』を参照。
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==「図書館の権利宣言」の誕生==
本書は非難も強く、除去する図書館も続出した。こうした事態に対応し、図書館の読者の知的自由を守る決意として
==日本語訳==
*[[新居格]]訳 第一書房(上下) 1940
*[[大久保康雄]]訳 六興出版社(上下) 1951、のち新潮文庫(上中下) 1955、改版
*[[石一郎]]訳
*[[大橋健三郎]]訳 岩波文庫(上中下) 1961
*[[野崎孝]]訳
*[[谷口陸男]]訳 講談社文庫(上下) 1972
*[[黒原敏行]]訳 ハヤカワepi文庫(上下) 2014
*[[伏見威蕃]]訳 新潮文庫(上下) 2015
==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|3}}
==関連項目==
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*[[砂漠化]]
*[[ダストボウル]]
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:いかりのふとう}}
[[Category:1939年の小説]]
[[Category:ピューリッツァー賞受賞作]]
[[Category:ジョン・スタインベックの小説]]
[[Category:環境問題]]
[[Category:アメリカ合衆国の社会主義]]
[[Category:アメリカ合衆国の労働運動]]
[[Category:貧困を題材とした小説]]
[[Category:農業を題材とした
[[Category:1930年代を舞台とした作品]]
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