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[[画像:Chopstick.JPG|thumb|260px|right|箸(上にのっている二本の棒が箸、下は箸置き)]]
'''箸'''(はし)または'''チョップスティックス'''({{lang-en-shortzh|chopsticks筷子}})とは、[[東アジア]]地域を中心に広く用いられている[[食器]]・[[道具]]の一種であり、二本一対になった棒状のものを片手で持つ[[食器]]のことでありもの食べ物を挟んで移動させるために用いことが出来る。多く古代場合、[[中国]]などの器にあるで発祥し、今は[[料理東アジア]]地域掴んで別の皿や自分の口中心持って行ために用いられ、食器の一種に位置づけられる。材質には各種の[[木]]、[[竹]]、[[金属]]、[[プラスチック]]、[[象牙]]などがあり、[[口腔|口]]中を傷つけないように尖った部分を削るか、[[漆]]などで覆われている。
 
== 主な特徴 ==
箸は、材質や形状などに様々なバリエーションがあるが、同じ長さの2本の棒状のものが1組になっている点はほぼ全ての箸に共通している。多くの場合、模様や装飾の類も[[左右対称]]または合わせて一つの模様になるよう2本に同じ物が施されている。
 
また、箸には通常「先」がある。基本的に棒のどちらか一端のみが食べ物に[[接触]]することが前提となっている。これは棒の一端が細くなっていること、装飾などがないこと、などによって見分けられる。ただし、祝箸の様に先が両端に存在する物もある。
 
多くの場合、[[皿]]などの器にある[[料理]]を掴んで別の皿や自分の口に持って行くために用いられ、食器の一種に位置づけられる。材質には各種の[[木]]、[[竹]]、[[金属]]、[[プラスチック]]、[[象牙]]などがあり、[[口腔|口]]中を傷つけないように尖った部分を削るか、[[漆]]などで覆われている。
 
== 各国の食法と箸 ==
[[画像:Many-chopsticks.jpg|thumb|right|220px|上から、台湾・中国本土・台湾・チベット・ベトナム(越南)・朝鮮半島匙箸・日本夫婦箸・日本の子供用箸・日本の割り箸]]
中国・台湾・[[朝鮮半島]]・ベトナムでは「箸を主に使い、レンゲ(朝鮮半島では朝鮮[[主箸従型]])補助する」という形をとる一方、日本では主にのみ」が使われ、またている。日本の箸は[[澄まし汁]]や[[味噌汁]]といった[[スープ汁物]]にも箸を使用するため、椀を手に持って口に運ぶのも日本だけであるとされる<ref name="isshiki40">一色, 1998年, p.40 “日本だけが純粋な箸食”</ref>。
世界の約3割の人が箸で、4割が[[手]]で、残り3割が[[ナイフ]]・[[フォーク (食器)|フォーク]]・[[スプーン]]で食事をしているとの統計があり、<!--これもソースが欲しいですね。3割の人が常に箸で食事をしているのか、主に箸で食事をするのか、最近1か月以内に箸で食事をしたのか、などこういう統計は勘定の仕方でだいぶ結果が違いそうですので-->これは、食物の違いや調理法に起因するとする見方がある<ref name="isshiki36">一色八郎 『箸の文化史 世界の箸・日本の箸』 新装版, [[御茶の水書房]], 1998年8月, p.36 “世界の食法” ISBN 4-275-01731-5</ref>。粘り気のある[[米]]を主食とする地域や[[麺]]を主食とする中国の一地方では箸、肉類はナイフ、その他は手で食べる地域が多く、また、はさむ食材が多い料理には箸を、突く・乗せる食材が多い料理にはフォークを使う食法が発展したとする。
 
[[日本]]、[[中華人民共和国|中国]]、[[大韓民国|韓国]]、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]、[[台湾]]、[[シンガポール]]、[[ベトナム]]、[[タイ王国|タイ]]、[[ラオス]]、[[カンボジア]]、[[モンゴル国|モンゴル]]、[[朝鮮]]、[[台湾]]などで日常的に使われてきた。このうちタイとカンボジアとラオスでは、汁に入った[[麺|麺類]]を食べるときだけ、箸と[[散蓮華|レンゲ]]を使う。その他の料理には[[スプーン]][[フォーク (食器)|フォーク]]を用いるが、蒸した[[もち米]]をちぎり、手で丸めて食べる「カオ・ニャオ」が好まれる地域では手も使う。椀に口を付けず麺も啜らない[[ベトナム]]では、粥や汁物はスプーン(もしくは[[散蓮華|レンゲ]])のみ、[[麺類]]は箸と[[散蓮華|レンゲ]]、一般的な食事には箸とスプーンを用いる(汁物が全くなければ箸のみの場合もある)<!--汁物が全くないというのはほとんどない。またベトナムのスプーン率は高いです-->。[[日本料理]]や[[中華料理]]の世界的な普及により、欧米諸国でも、箸を使える人は少なくない。
では、粥や汁物はスプーン(もしくは[[散蓮華|レンゲ]])のみ、[[麺類]]は箸と[[散蓮華|レンゲ]]、一般的な食事には箸とスプーンを用いる(汁物が全くなければ箸のみの場合もある)<!--汁物が全くないというのはほとんどない。またベトナムのスプーン率は高いです-->。[[日本料理]]や[[中華料理]]の世界的な普及により、欧米諸国でも、箸を使える人は少なくない。
 
世界の約3割の人が箸で、4割が[[手]]で、残り3割が[[ナイフ]]・[[フォーク (食器)|フォーク]]・[[スプーン]]で食事をしているとの統計があり、<!--これもソースが欲しいですね。3割の人が常に箸で食事をしているのか、主に箸で食事をするのか、最近1か月以内に箸で食事をしたのか、などこういう統計は勘定の仕方でだいぶ結果が違いそうですので-->これは、食物の違いや調理法に起因するとする見方がある<ref name="isshiki36">一色八郎 『箸の文化史 世界の箸・日本の箸』 新装版, [[御茶の水書房]], 1998年8月, p.36 “世界の食法” ISBN 4-275-01731-5</ref>。全体的に見ると「粘り気のある強い[[米]]・炒め物・魚・鍋料理よくとする地域や[[麺]]では箸、肉・野菜・スープセットでとす中国の一は箸、肉類はナイフ・フォーク・スプーンその他は手で[[麺料理]]をほとんど食べない地域が多く、では手」のように分かれている。また、はさむ食材が多い料理には箸を、突く・乗せる食材が多い料理にはフォークを使う食法が発展したとする。
中国や朝鮮では匙を主に使う匙主箸従型である一方、日本では主に箸が使われ、また[[澄まし汁]]や[[味噌汁]]といった[[スープ]]にも箸を使用するため、椀を手に持って口に運ぶのも日本だけであるとされる<ref name="isshiki40">一色, 1998年, p.40 “日本だけが純粋な箸食”</ref>。
 
=== 日本 ===
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==== アイヌの箸 ====
{{Main2For2|神事に用いる箸のうち、イクパスイ(捧酒箸)・キケウㇱパスイ(削りかけつき捧酒箸)|イクパスイ}}
[[ファイル:MapOfAinuLanguage-Chopsticks.svg|サムネイル|300px|アイヌ語圏における箸の名称]]
[[アイヌ]]の人々が日常使用している箸は「{{lang|ain-kana|パスイ}}({{lang|ain-lant|pasuy}})」あるいは「{{lang|ain-kana|イペパスイ}}({{lang|ain-latn|ipe-pasuy}})」と呼ばれ、和人のものと同様で、箸の周囲に彫刻や頭部に鎖を彫りつけたものもある<ref name="ainu">[http://www.welcome.city.sapporo.jp/pirka/pasuy/index.html パスイ[pasuy]箸]{{リンク切れ|date=2016年5月}}, [[札幌市アイヌ文化交流センター]], 2009年5月1日.</ref>。また死者にも新品を副葬品として持たせる<ref name="isshiki71">一色, 1998年, p. 71 “アイヌ民族のイペパスイ(箸)”</ref>。特に、{{lang|ain-kana|オンコ}}([[イチイ]])から作った箸の頭部に小刀({{lang|ain-kana|マキリ}})で鈴状の飾りを掘り出した箸は「{{lang|ain-kana|トゥムシコヮパスイ}}」「{{lang|ain-kana|ドムシコッパスイ}}」と呼ばれ、子どもが1歳になったときのお祝いに与えられる。使っているうちにこの箸を壊すことは元気に育っている証拠とされる<ref name="isshiki71" />。
 
この他に、酒を用いる神事で[[カムイ]](神)に酒を捧げるために用いられる[[へら]]状の一本箸「[[イクパスイ]]({{lang|ain-latn|iku-pasuy}}:捧酒箸)」、これに削り装飾が施され[[イオマンテ]]など重要な儀礼で使用される「{{lang|ain-kana|キケウㇱパスイ}}({{lang|ain-latn|kike-us-pasuy}}:削りかけつき捧酒箸)」や、神が食べるのに用いる削り装飾が施された二本箸である「{{lang|ain-kana|カムイイペパスイ}}({{lang|ain-latn|kamuy ipe pasuy}})」、「{{lang|ain-kana|マラプトパスイ}}({{lang|ain-latn|marapto pasuy}}客人である神の箸)」などの神用箸がある<ref name="isshiki71" /><ref name="ainu2">[http://www.ainu-museum.or.jp/nyumon/gireigu/ikupasuy.html イクパスイ[捧酒箸]], [[アイヌ民族博物館]].</ref><ref name="ainu3">[http://www.ainu-museum.or.jp/nyumon/iyomante/iy28_jun163.html I-16-(3) キケウシパスイとカムイイペパスイ], [[アイヌ民族博物館]].</ref><ref name="ainu4">[https://archive.is/20121219135116/http://www.frpac.or.jp/kodomo/html/bunka/dougu/dougu_03_pasui.html イオマンテ[道具編]パスイ類](2012年12月19日時点の[[archiveArchive.is|アーカイブ]]), 財団法人[[アイヌ文化振興・研究推進機構]].</ref>。
 
==== 沖縄の箸 ====
{{Main|赤黄箸}}
沖縄の食堂などでは手元を赤、箸先を黄色に塗った竹塗箸の赤黄箸が用いられている<ref>{{Cite web |和書|url=https://niac.or.jp/katudo/nl/NL114.pdf|title=二アックニュースレター114号 |publisher=一般財団法人南西地域産業活性化センター |accessdate=2021-05-11}}</ref>。
 
=== 中国、ベトナム ===
[[File:Chopsticks.jpg|thumb|right|200px|象牙製の箸]]
[[中国]]では、[[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]まで[[青銅]]製の箸が用いられたが、その後代には[[重金属]]の[[毒性]]を避けて使われなくなった。中国では、家族や来客に自分の箸で大皿から取り分けるのが親愛の情の表現とされてきた。このため日本よりも長めの箸が使われるとされる<ref name="isshiki135">一色, 1998年, p. 136 “世界の箸”</ref>。先もその反対側も若干細くなっているが、日本の箸に比べてそれほど細くはなっていない。[[円柱 (数学)|円柱]]型や[[角柱|四角柱]]型が多く、また四角柱型のものも、食べ物を挟む部分はたいてい円柱型をしている。最も高級なものは[[翡翠]]や[[象牙]]を用いるが、普通は竹や木を用いる。またプラスチック製の箸を用いることもある。現在は日本向けの割り箸を[[中国]]で製造してきた影響や衛生意識の向上から、中国でも割り箸が広まってきているが[[黒竜江省]]など[[中国東北部]]の[[白樺]]など森林資源の乱伐が懸念されている<ref>[httphttps://www.recordchina.co.jp/group/g619b619-s0-c70-d0000.html 割り箸からみる環境問題(2006年5月12日 レコードチャイナ)]</ref>(「[[割り箸#諸問題]]」も参照)。おかず類に箸を使い、ごはんや汁類に[[散蓮華]]を使う<ref name="名前なし-1">2020年4月12日中日新聞朝刊日曜版1面</ref>。
 
[[中国]]では、[[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]まで[[青銅]]製の箸が用いられたが、その後代には[[重金属]]の[[毒性]]を避けて使われなくなった。中国では、家族や来客に自分の箸で大皿から取り分けるのが親愛の情の表現とされてきた。このため日本よりも長めの箸が使われるとされる<ref name="isshiki135">一色, 1998年, p. 136 “世界の箸”</ref>。先もその反対側も若干細くなっているが、日本の箸に比べてそれほど細くはなっていない。[[円柱 (数学)|円柱]]型や[[角柱|四角柱]]型が多く、また四角柱型のものも、食べ物を挟む部分はたいてい円柱型をしている。最も高級なものは[[翡翠]]や[[象牙]]を用いるが、普通は竹や木を用いる。またプラスチック製の箸を用いることもある。現在は日本向けの割り箸を[[中国]]で製造してきた影響や衛生意識の向上から、中国でも割り箸が広まってきているが[[黒竜江省]]など[[中国東北部]]の[[白樺]]など森林資源の乱伐が懸念されている<ref>[http://www.recordchina.co.jp/group/g619.html 割り箸からみる環境問題(2006年5月12日 レコードチャイナ)]</ref>(「[[割り箸#諸問題]]」も参照)。おかず類に箸を使い、ごはんや汁類に[[散蓮華]]を使う<ref name="名前なし-1">2020年4月12日中日新聞朝刊日曜版1面</ref>。
 
中国では「{{lang|zh|筷子}}({{pinyin|kuàizi}}, クァイツ)と呼ばれ、日本で用いられる「箸」({{pinyin|zhù}}, チュ)という語や漢字は現在も[[閩語]](びんご、広義の[[福建語]])では口語として用いられる([[莆仙語]]の対照表を参照)が、基本的に古語である。「筷子」は[[宋 (王朝)|宋]]・[[元 (王朝)|元]]の頃、「立ち止まる」という意味の「住」や「佇」と同じ発音である「箸」の語を嫌った船乗りが逆の「早い」と言う意味の「快」を用いて「快児」({{pinyin|kuài ér}}, クァイル)といい改め、後に[[竹部|竹冠]]を加えた「{{lang|zh|筷}}」の字を当てて、滞りのない航海を願ったことから来たものとされる<ref name="isshiki135" /><ref>[[橋本慶子]] 『箸の物語 青山学院女子短期大学学芸懇話会シリーズ 16』, [[青山学院女子短期大学]]学芸懇話会, 1990, (8).</ref><ref>[[石毛直道]] 『食事の文明論』, [[中央公論新社]], 1982, 第7章. ISBN 4-12-100640-2</ref>。また、「早く」子宝に恵まれるようにとの語呂合わせで娘が嫁ぐときに「{{lang|zh|筷子}}」を持たせる風習も一部にある。
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[[モンゴル国|モンゴル]]では箸はサバハと呼ばれ、蒙古刀(ホタクッ)の鞘(ヘト)に格納されている(刀と一体化した工芸箸は[[日本刀]]の[[笄]][[櫃孔]]に装着する割れ笄も含め東アジアで広く見られる)<ref name="isshiki135">一色, 1998年, p. 136 “世界の箸”</ref><ref>一色八郎, 『箸』, [[保育社]], 1991, [https://books.google.co.jp/books?id=SD6TBTMtVyEC&lpg=PP1&pg=PP8&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=&f=false p. 1 “世界の箸”]. ISBN 978-4-586-50816-7</ref>。しかし、[[騎馬民族]]はあまり箸を使わずナイフで切って食べる<ref name="isshiki36" />。[[タイ王国|タイ]]・[[マレーシア]]、[[インドネシア]]、[[フィリピン]]、及び[[ヨーロッパ]]、[[アメリカ大陸]]は匙食文化圏であるとされるが、タイ北部山地の[[リス族]]は箸食である<ref name="isshiki36" /><ref name="nakao2005-635">[[中尾佐助]] 『中尾佐助著作集 料理の起源と食文化 (2)』, 北海道大学図書刊行会, 2005年9月, p. 635. 「第IV部 台所と調理の文化 共食器の文化、個人食器の文化 共食器の時代」 ISBN 978-4-8329-2881-7.</ref>。
 
[[イスラム教]]、[[ヒンドゥー教]]圏では食事に道具を使うことは汚れたことであり、手で食べることが最も清浄であるとされるため、これらの宗教圏は基本的に[[手食文化]]圏である<ref name="isshiki36" />
<!--東南アジアの他の国はどうか? 中央アジアの他の国はどうか?-->
 
== 歴史 ==
古い時代の箸が発見されにくいのは、木や竹でできた箸は腐りやすく、また単なる木切れか箸かの区別もしにくいためと考えられる。

」というものの最古例としては、中国の[[殷墟]](紀元前 14 世紀ごろ - 紀元前 11 世紀ごろ)からの[[青銅]]製の長さ 26 cm、太さ 1.1 - 1.3 cm の箸六本の出土が報告されているが、食事用ではなく菜箸のような調理器具であったとされる<ref>{{zh icon}} {{lang|zh|嚴志斌 洪梅編著}} 『{{lang|zh|殷墟青銅器︰青銅時代的中國文明}}』 上海大学出版社、2008年08月、p. 48、“{{lang|zh|第二章 殷墟青銅器的類別與器型 殷墟青銅食器 十、銅箸 這三双箸長26、粗細在1.1-1.3厘米之間,出土于西北崗1005号大墓。[[陳夢家]]認為這種箸原案有長形木柄,應該是烹調用具。}}” ISBN 7-81118-097-9 {{OCLC|309392963}}</ref><ref name="ohta49">太田昌子 『箸の源流を探る 中国古代における箸使用習俗の成立』 [[汲古書院]]、2001年9月、p. 49-65 “第三章 中国古代における箸の出土について(一)——殷・春秋・戦国時代——” ISBN 4-7629-2661-2</ref>。
 
[[殷]]の[[帝辛|帝辛(紂王)]](紀元前1100年ごろ)が象箸([[象牙]]の箸)を使用したという逸話が『[[史記]]』巻38 宋微子世家<ref>{{Cite wikisource|title=史記/卷038|author=司馬遷|wslanguage=zh}} 「{{Lang|zh-tw|紂始為象箸, 歎曰:“彼為象箸,必為玉杯;為杯,則必思遠方珍怪之物而禦之矣。輿馬宮室之漸自此始,不可振也。”}}」</ref>、および『[[韓非子]]』喩老篇<ref>{{Lang|zh-tw|{{Cite wikisource|title=韓非子/喩老|author=韓非子|wslanguage=zh}}}} 「{{Lang|zh-tw|昔者紂為象箸而箕子怖。以為象箸必不加於土鉶,必將犀玉之杯。象箸玉杯必不羹菽藿,則必旄象豹胎。旄象豹胎必不衣短褐而食於茅屋之下,則錦衣九重,廣室高臺。}}」</ref>にあるが、悪逆非道ぶりを表すための作り話の一つとも言われる<ref name="isshiki48">一色, 1998年, p.48 “中国の箸とその伝来”.</ref><ref name="ohta1">太田昌子 『箸の源流を探る 中国古代における箸使用習俗の成立』 [[汲古書院]]、2001年9月、p. 1-23 “第一章 中国古代における箸使用の定着について——古代文献よりみた定着年代の考察——” ISBN 4-7629-2661-2</ref>。
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[[中国文明|中国文化]]が周辺地域に影響力を及ぼすと共に(周辺地域の[[民族]]が外交的に中国・[[漢民族]]から野蛮人と見られたくないこともあって)、他の国でも使われるようになっていった。[[楽浪郡]]の遺跡からも箸と匙が見つかっている<ref name="isshiki159">一色, 1998年, p. 159 “食事器具(匙・箸)の推移概要”. [[石毛直道]] 『食事の文明論』, [[中央公論新社]], 1982, p. 125. ISBN 4-12-100640-2 からの引用。</ref>。
 
児童教育研究家の[[一色八郎]]は、日本で1膳の「唐箸」を食事に使い始めたのは、[[5世紀]]頃で、[[6世紀]]中頃に[[仏教]]とともに[[百済]]から伝来し、[[朝廷 (日本)|朝廷]]の供宴儀式で箸を採用したのは[[聖徳太子]]で、[[607年]][[遣隋使]]として派遣された[[小野妹子]]一行が持ち帰った箸と匙をセットにした食事作法を取り入れたものと言っている<ref name="isshiki54">一色, 1998年, p. 54 “聖徳太子と箸食制度”.</ref>が文献や出土品からは確認できない。
 
平安時代になると市街地の遺跡からも箸が出土しており、[[庶民]]にまで浸透していたことがうかがえる<ref name="k233">[[手食文化#北岡2011|北岡2011]]、pp.233-234。</ref>。箸であることが確実視されている日本最古の箸の出土品は7世紀後半の[[板蓋宮]]跡および[[藤原宮]]跡からの出土品である<ref name="isshiki55">一色, 1998年, p. 55 “二本箸の起源”.</ref>。
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[[Image:Meshi.JPG|thumb|right|日本食での配膳例。箸は手前から見て水平に、箸先は通常左向きに置かれる。]]
[[image:Chinese Cutlery.jpg|thumb|right|中国風セッティング。箸は手前から見て箸先を向こうに向けて置かれる。]]
[[File:Marcosticks-Standard Grip-using chopsticks.png|thumb|right|正しい箸の持ち方]]
 
箸は通常、他の食器と共に食卓の上におかれる。日本では箸先を左にして横向きに置かれ、現代の中国では箸先を向こうにして縦に置かれるが、[[陝西省]]長安県の南里王村に存在する[[唐]]中期の壁画や[[敦煌]][[莫高窟]]の壁画では、箸が横向きに置かれた姿で描かれており、少なくとも唐の時代までは箸は横向きで置かれていたと考えられる<ref>[[#cho|張 2013]],第六章 1.箸はなぜ縦向きに置くのか(1841-/2623)</ref>。現代の[[中国]]の箸を縦に置く風習は[[宋 (王朝)|宋]]の頃から定着し始めた<ref>[[#cho|張 2013]],第六章 1.箸はなぜ縦向きに置くのか(1873-/2623)</ref>。
 
箸は右手に持つことが作法とされる左利き場合作法について必ずし[[嫌い箸]]右手参照のこは限らない)。一本を鉛筆を持つ要領で持ち(親指・人差指・中指で抓んだ状態)、もう一本を中指と薬指の間に挟む(主に親指の付け根と薬指の先の2点で固定する)と、伝統的で正しいとされている箸の持ち方になる{{r|方法}}。親指・人差指・中指で持っている方を動かし、薬指で支えている方は動かさない<ref name=方法>{{citeCite web|和書|url= https://www.olive-hitomawashi.com/family/2019/07/post-69.html|title= 正しいお箸の使い方子供に教えてる?|work=オリーブオイルをひとまわし|accessdate=2022年12月17日}}</ref>。
 
伝統的で正しいとされている持ち方をした場合、二本が 2 - 3 cm の隙間を隔てたまま平行にでき、手のひら側の箸同士は常に間隔が空いた状態となる。また、二本を大きく開かない限りは接触しない。伝統的で正しいとされている持ち方ができているかどうかは、鶏の卵を掴み、垂直に持ち上げられるかどうかや、[[鶉]]の[[卵]]大のものを掴んだ際、二本が平行に近いかたちとなっているかでもおおむね判断できる。
 
なお、箸を使う国の中で、箸のみを使って食事をする作法が確立されているのは日本だけといわれる。[[和食]]では椀に直接口をつけて汁を飲むことが許容されているため[[スープ|汁物]]を箸だけで食べるが、中華料理では汁物を食べる際に[[散蓮華|レンゲ]]を使用し、朝鮮料理ではごはんには匙を、おかずなど副菜をつまんだり麺類を食べたりするときに箸を使うのが一般的である。
 
[[マナー]]の悪い箸の使い方のことを[[嫌い箸]]と言うが、これらのマナーもまた、箸を使う国によって異なるようである。
 
{{See|[[:en:Chopsticks|Chopsticks]]}}
 
日本では1984年、社団法人公共広告機構(現 [[ACジャパン|AC ジャパン]])により、[[一色八郎]]指導による子供の箸使い教育、嫌い箸をテーマにした「しつけのはしばし」というキャンペーンが行われ、これに対する投書を元にした投書集も刊行された<ref name="isshiki184">一色, 1998年, p. 184 “キャンペーン「しつけのはしばし」”.</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20080924171822/http://www.ad-c.or.jp/campaign/work/1984/ しつけのはしばし-1984年度作品](2008年9月24日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]), ACジャパン.</ref>。
 
古来から日本の家庭の箸の使い方で特徴的なのは、[[属人器]]であり、各人の専用の箸([[茶碗]]も)が家庭内で定められていることである。これは中国の多くの地域([[漢族]]の地域など)や朝鮮などでは行なわれないことである。ただし、日本においても全ての家庭で行なわれているわけではない。<!--中国でも民族によっては各人専用の箸を定めていると思う-->
 
また、[[オロチョン族]]など[[北東アジア]]北部の一部の[[狩猟]][[民族]]には、[[民族衣装]]を着た際、ナイフとともに獣骨で作った箸を[[腰]]の脇に差して携える[[習慣]]がある。
 
=== 取り箸 ===
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香港では香港医学会を中心に「{{lang|zh-hk|公筷公羹 安全衛生}}」キャンペーンが2005年から繰り広げられている<ref>{{lang|zh-hk|[http://www.hkma.org/chopsticks/index.htm 公筷公羹 安全衛生], 香港醫學會.}}</ref>。取り箸・共用匙の使用は2003年には46%だったが、2005年には65%に増加した<ref>{{en icon}} [https://web.archive.org/web/20070323043518/http://www3.news.gov.hk/ISD/ebulletin/en/category/healthandcommunity/061222/html/061222en05008.htm Survey respondents clean up their acts](2007年3月23日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]), Hong Kong's Information Services Department(政府新聞處), December 26, 2006.</ref>。シンガポールでも新型肺炎以降、レストランにおける{{lang|zh-hk|公筷公勺}}の使用が強化された。元々生活が洋式化されており、これが取り箸・共用匙の利用が促進される一因となっている。一方、中国では新型肺炎後、中高級ホテル・レストランでの{{lang|zh-hk|公筷公勺}}の使用が推進されたが、罰則もなく利用者も必要性を感じないため2005年時点では徐々に廃れていっていることが懸念されている<ref name="cctv050902" />。
 
朝鮮料理では{{仮リンク|バ[[パンチャン|ko|반찬}}]]({{lang|ko|반찬, 飯饌}})や[[チゲ]]は通常直箸直匙であるが、朝鮮料理の世界化を目指す上で取り箸や共用匙の使用を薦める意見もある<ref>{{ko icon}} [https://web.archive.org/web/20120731113511/http://www.ukopia.com/ukoCorner/?page_code=read&uid=127092 {{lang|ko|한식이 세계화가 안되는 진짜 이유}}](2012年7月31日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]), uKopia, 2009-05-11.</ref>。
 
=== 付属品 ===
箸の付属品に、箸置、箸箱、箸筒、箸立、箸袋などがある<ref name="katsuta">{{Cite web journal|和書|author=勝田春子 |date=1991-01 |url=httphttps://dspace.bunka.repo.nii.ac.jp/dspacerecords/bitstream/10457/2257/1/001031122_10.pdf314 |title=食文化における箸についての一考察 : わが国における箸の変遷 (第3報) (明治時代昭和時代) |journal=研究紀要 |ISSN=02868059 |publisher=学校法人文化女子大研究紀要編集委員会 |issue=22 |pages=103-113 |hdl=10457/2257 |CRID=1050282812793347328 |accessdate=20192023-1112-1506}}</ref>。
 
; [[箸置き|箸置]]
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[[火鉢]]の[[炭]]を取り扱うときの金属製の箸を[[火箸]](ひばし)という。
 
また日本で箸は、[[火葬]]された遺骨を[[骨壷]]に移す、骨上げ(こつあげ)、骨拾い(こつひろい)のときにも使われる。そのときの骨箸(コツバシ)は、それぞれ長さの違う竹と木でできた特別なものを用い、参列者同士で遺骨を箸から箸へ受け渡す。日本で長さや材質など仕様が異なる箸を組み合わせて使ってはいけない、また箸から他の箸へ料理を渡してはいけないというマナーは、このことを連想させるために生まれたと言われる。
 
== 慣用表現 ==
158 ⟶ 148行目:
*また古事記には、[[神功皇后]]の[[三韓征伐]]の渡海過程における[[神託]]のひとつとして、箸と柏の葉で皿を沢山作ってそれらを海の上に散らし浮かべてから船出するよう告げられる神話がある。
*[[卑弥呼]]に比定されることもある[[倭迹迹日百襲媛命]]は夫の[[大物主]]の本体が蛇であることを知って驚き、夫に恥をかかせたことを悔いて倒れこみ、箸が陰部に刺さって死んだと[[日本書紀]]に記されている。詳細は[[箸墓古墳]]を参照。このことから4世紀には日本で箸が使われていたのではないかとする説もある<ref>一色, 1998年, p.9 “箸墓古墳と三輪山”</ref>。
*[[多賀大社]]杉坂の御神木、[[高尾山#スギ|高尾山の飯盛杉]]、[[教行寺 (高槻市)]] の御箸杉など、貴人や高僧が食事に用いた箸を地面に刺され突き立て箸がところ、根付いて大木や神木になったとする[[箸立伝説]]が日本各地にある<ref>一色, 1998年, p.11 “箸杉信仰(箸立信仰)”. [[本田総一郎]]『箸の本』, [[柴田書店]], 1978年, ASIN B000J8P4P4 第三章からの引用.</ref>。これに関連して、山中で食事をする場合は家から箸を持ち込まず、周辺の枝を折って即席の箸として用い、使用後は速やかに折って捨てるものだとする伝承も存在した<ref>[http://kigiyamabo.my.coocan.jp/test/hashitate.htm 箸立伝説]</ref>。
 
== 箸の日、御箸祭、箸関連行事 ==
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* [http://www.sake-asaka.co.jp/blog/2005/12/vol114.html 箸の発明とそれから]
* [http://kokusai-hashi.org/ 國際{{JIS2004フォント|箸}}學會]
* [http://www.hashi-bunka.jp/ 日本箸文化協会]
* [http://www.hashikyu.com/motikata.html お箸の正しい持ち方]
* {{Kotobank|2=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典}}
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[[Category:箸|*]]
[[Category:食器]]