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{{出典の明記| date = 2018年10月}}
{{正確性|date=2007年4月}}
{{観点|date=2022年9月}} <!-- フィクション世界の観点に偏っており、物理学者により検討される理論を出典としていない・言及していない -->
'''恒星船'''(こうせいせん)とは、[[恒星]]間を航行する能力を有する[[宇宙船]]の総称で、'''恒星間宇宙船'''(こうせいかんうちゅうせん)ともいう。
== 概要 ==
一口に恒星間を航行する方法と言ってもその方法は様々である。
一口に「恒星間を航行する」方法と言っても、その方法や考え方は様々である。例えば有人宇宙船の場合は、その航行に要する時間的なスケールによってもその構造や機能は全く異なる。しかし、太陽系に最も近い恒星でさえ4[[光年]]あまり離れている以上、その長期にわたる航行には、快適な居住スペースが必須である。これは重力の無い、もしくは弱い環境下に人間が長時間おかれると、生体機能に支障をきたすためである。もちろん、寿命の問題や精神衛生面の問題もある。これらの問題をクリアするためには、現在の科学では実現不可能な複数の高いハードルが存在している。▼
▲
無人の恒星間宇宙船の場合は機械部品の磨耗や化学的・電気的な劣化による時間的制約があるため、太陽系外縁部到達に数十年{{efn|この期間は[[ボイジャー計画]]におけるもの}}という現在の技術レベルでは低速に過ぎる。
なお現在の[[物理学]]の制限を脱し、[[エネルギー保存の法則|エネルギー保存則]]や[[運動量保存の法則|運動量保存則]]や[[光速]]<!--形而上学な文学的表現で脱線気味なので:(時空すなわち[[因果律]])-->を破ることも想像されてはおり、フィクション(特に[[サイエンス・フィクション]])の世界ではよく使われる。ただ、この辺りは忌憚なく言うと「物語を[[因果律]]を超えて成立させるための詭弁」の域にあり、既知の物理学の領域外である(→[[超光速航法]])。▼
▲
== 方法 ==
恒星船には有人か無人かという分類と、超光速か否かという分類がある。
有人・無人の問題は恒星船に大きな違いをもたらすが、無人の場合なら運行に致命的な
ここでは主に有人恒星船をとりあげる。なお、無人恒星船の可能性及び問題点に関しては
▲なお、無人恒星船の可能性及び問題点に関しては、[[サイエンス・フィクション|SF]]ではあるが、[[ジェイムズ・P・ホーガン]]の「'''[[造物主の掟|造物主(ライフメーカー)の掟]]'''」冒頭の描写が興味深い。
寿命が限られ
▲=== 低速有人恒星船 ===
▲限られた寿命を持つ人類を、それも重力が無ければ生理機能に悪影響を受けるという脆弱性をそのままに、低速で航行する有人恒星船に乗せて宇宙を旅行させる場合に、もっとも大きなファクターとなるのは[[時間]]である。
==== 冷凍・冬眠 ====▼
▲隣星の[[ケンタウルス座アルファ星]]まで、地球の惑星軌道から直接太陽系外に脱出することのできる[[宇宙速度#第三宇宙速度|第三宇宙速度]]なら772世紀少々かかる計算で、容易に行き交うことは難しい。光速に限り無く近い亜光速航行ですら数年の歳月を要する事を考えれば、その間はクルーが快適に生活出来る方法を考えなければ、恒星間航行は不可能だといえる。
人間を恒星船に乗せて飛ばす場合、その人間の扱いに関して
これには倫理的な問題もさる事ながら、安全性の確保に問題がある。たとえ冷凍したとしても、宇宙空間の[[素粒子]]や[[放射線]]は無遠慮に宇宙船を貫通して行き、衝突の際にはエネルギーを発生させる。この過程で凍結された人体は部分解凍と再凍結を繰り返し、また衝突した時のエネルギーは有機分子を変性させる可能性もあるため、人体を構成する分子構造が破壊される危険性がある。生命活動を行っている状態なら、少々の破壊は自己治癒するが、凍結されている場合は破壊される一方であるため、この問題はより顕著となる。▼
▲==== 冷凍 ====
▲人間を恒星船に乗せて飛ばす場合、その人間の扱いに関しても色々な方法がある。現在の科学で、比較的実現へのハードルが低いのは、人間自身を冷凍して、限り無く無人恒星船に近付けて打ち上げる方法だ。この方法は[[冬眠船]]とも呼ばれている。
▲これには倫理的な問題もさる事ながら、安全の確保に問題がある。たとえ冷凍したとしても、宇宙空間の[[素粒子]]や[[放射線]]は無遠慮に宇宙船を貫通して行き、衝突の際にはエネルギーを発生させる。この過程で凍結された人体は部分解凍と再凍結を繰り返し、また衝突した時のエネルギーは有機分子を変性させる可能性もあるため、人体を構成する分子構造が破壊される危険性がある。生命活動を行っている状態なら、少々の破壊は自己治癒するが、凍結されている場合は破壊される一方である。
また凍結に至らず一定温度に冷却しながら人工的な[[冬眠]]状態=[[コールドスリープ]]によって代謝量を極端に下げ老化を防ぎ寿命を延長しようというアプローチも存在する。{{要出典範囲|2010年代において短期間であれば実用化の目途も立っている|date=2022年9月19日 (月) 04:03 (UTC)}}。ただしこちらは人間の生存に必要な資源を必要最小限にしようというアプローチであり、冬眠中は緩やかであるにせよ代謝を行っているので無制限に寿命を延長できるわけでもない。そのため、恒星間航行に適用するためにはより強力な推進機関の開発も必要となっている。
▲このため、できるだけ短い期間で目的地に到着させて被曝量を減らすか、何らかの[[シールド (サイエンス・フィクション)|シールド]]で凍結人体を確実に守る必要があるが、前者は[[化学ロケット]]では速度に問題があるし、後者はより技術的な進歩を待たなければならない。
==== 遺伝子搬船 ====
『[[断絶への航海]]』
* 遺伝子データのみを搬送し必要時にのみ有機体として再生する方法。
* 凍結精子及び卵もしくは凍結受精卵を搬送し、想定される目的地到着期間を前倒しで解凍受精さ
しかし、[[冬眠船]]と同様の倫理上の問題、宇宙船外的素粒子による被爆問題以上に、有機化技術
==== 世代交代 ====
凍結なら
SF作品としては、[[ロバート・A・ハインライン]]の[[SF小説]]『[[宇宙の孤児]]』
これは航行期間にもよるが、到達時に目的を果たせる
もし、[[慣性]]や[[遠心力]]に頼らない人工重力を船内に発生させる「人工重力場発生装置」なるものが発明されたなら、居住スペースはもっとコンパクトに出来るだろうが、そのような装置が作れるのであれば、むしろそれは「上も下も無い宇宙空間で、無限に一定方向に落下し続ける」(言い替えるなら「亜光速にまで加速する」)事が可能であろうから、推進エンジンに利用されると思われる。そのアイディアは[[ジェイムズ・P・ホーガン]]の[[星を継ぐもの|『巨人たちの星』シリーズ]]で採用されている。
==== 人体改造 ====
[[遺伝子工学]]や[[サイボーグ]]技術の発展に伴い
===
==== [[バ
[[ファイル:Bussard Interstellar Ramjet Engine.jpg|thumb|バサード・ラムジェットを利用した宇宙船(想像図)]]
<!--stub-->
宇宙空間には
ラムスクープと呼ばれる収集用の磁場を発生させる枠は、水素分子だけを捉え質量の大きな微小天体は素通りさせてしまうザルのようなものが想定されていて、宇宙船本体はザルの中心にぶら下がる構造となる。
このシステムの問題は星間物質を集めるための磁場
===== レーザー推進 =====
▲このシステムの問題は星間物質を集めるための磁場(ラムスクープ)の直径が[[惑星]]なみの大きさになる事、ラムスクープを形成するためのエネルギー、そして磁場が船内の機器や人体に与える影響である。{{要出典範囲|date=2011年7月|星間水素密度が見積もりより遥かに薄く、1970年代にはバサード・ラムジェットは現実的には不可能であることがわかっている}}。
{{See also|レーザー推進}}
===== [[マグネティックセイル]] =====
バサード・ラムジェットに関連した考えとして、加速と同規模のエネルギーを必要とする"減速"のため、同様に巨大な磁場を展開して、星間物質の抵抗を宇宙船の[[ブレーキ]]として利用しようというアイデアも提案されている
==== 重力加速 ====
#適切な天体がスイングバイに利用できる位置に存在すること。
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が必要となる。
=== 超光速恒星船 ===
==== 超光速航法 ====
{{see|[[超光速航法]]}}
==== 亜空間航行・超空間跳躍 ====
俗に言う「[[テレポーテーション]]」である。現代科学でも、物質ストリームによるテレポーテーション現象は確認されている。[[量子もつれ|エンタングルメント]]という状態にある原子構造が、未解明の相互作用によって片方の変化がもう片方に影響する現象であり、人間がパッと消えてパッと現れるというものではなく、原子レベルで同じ構造体が変化を同じくするという現象である。この現象は生前の[[アルベルト・アインシュタイン|アルバート・アインシュタイン]]が光子で確認し「spooky(オバケみたい)だ」と評したとされる。
これを非常に莫大な確率の問題を解決して行けば、やがては送受信関係にある転送装置間で原子レベルに分解・再構築する事も可能になるかも知れないが、同じ方法で宇宙船を何も無い遥か先の天体近くで再構成させるのは、確実に原子の流れをコントロール出来ない事には
上記のような不確実な[[量子テレポーテーション]]が恒星間航行に使用されるとは考えにく
一般的に[[ブラックホール]]と[[ホワイトホール]]や[[ワームホール]]はSFファンには
このような航法では、時空間的な特異現象を利用するか、
=== 恒星エンジン ===
{{see|:en:Stellar engine}} <!-- 日本語版で恒星エンジンはこの節へのリダイレクトとしているため、内容充実し単独記事として分割された頃には単独記事へのリンクに変更 -->
恒星エンジンとは、「宇宙船を用いて人類が太陽系を脱出する」上記の方法とは全く異なり、「太陽系その物を移動させる」事により他の恒星系を目指すアイデアである。
具体的には、太陽が放出するエネルギーを利用して巨大な推進力を発生させ、太陽自体を[[天球]]上で移動させることにより、太陽系を構成する全ての惑星や小天体も太陽の重力に引かれる形で天球上を移動していくというもので、この方法を用いる場合、人類は地球に居住したまま他の恒星系を目指すことが可能となるため、一般的な恒星船が内包する乗組員の生命維持の問題はひとまず回避されることになる。
[[太陽系]]は[[天の川銀河]]内を約2億3000万年という極めて長い時間を掛けて公転しているが、これ程長い時間軸になると、公転軌道上で[[超新星爆発]]やそれに伴う[[ガンマ線バースト]]、[[ブラックホール]]などの太陽系にとって破局的な事象や巨大天体と遭遇する可能性も予測される。恒星エンジンは元々はこうした事象から太陽系全体を回避する為に考案されたもので、古くは[[TsAGI|ソ連中央航空流体力学研究所]]の{{仮リンク|レオニード・シュカドフ|en|Leonid Shkadov}}により1987年に提案された、太陽を半分程度被う半球型の超巨大[[太陽帆]]を構築することで、太陽が放射する[[太陽風]]の半分程度を受動的に推力に転換する'''シュカドフ・スラスター'''が著名であった。シュカドフ・スラスターは[[ダイソン球]]を構築可能な恒星文明であれば十分に実現可能なアイデアであるとされており、シュカドフ・スラスターは'''クラスAの恒星エンジン'''、ダイソン球は'''クラスBの恒星エンジン'''(ただし、ダイソン球自体は推力は発生させないが)と分類されるようになった。
▲これを非常に莫大な確率の問題を解決して行けば、やがては送受信関係にある転送装置間で原子レベルに分解・再構築する事も可能になるかも知れないが、同じ方法で宇宙船を何も無い遥か先の天体近くで再構成させるのは、確実に原子の流れをコントロール出来ない事にはまず無理だと考えられている。
しかし、シュカドフ・スラスターは太陽風から転換された推力が太陽系惑星を破壊してしまうことを防ぐため、太陽の自転軸の両極側にしか配置することが出来ず、太陽系を自転軸の平行方向にしか動かすことが出来ない上に、太陽系全体が20[[メートル毎秒]]の速度を得るには100万年、20キロメートル毎秒の速度まで加速するには10億年を要するという加速力の鈍さも欠点として指摘された。こうした欠点を克服するために、ダイソン球からもエネルギーを得る形でより能動的に推力を発生させる'''クラスCの恒星エンジン'''の可能性が模索されるようになり、2019年には教育用[[YouTube]]チャンネルの[[Kurzgesagt - In a Nutshell]]から依頼を受ける形で、{{仮リンク|イリノイ州立大学|en|Illinois State University}}のマシュー・E・カプランにより、太陽風とダイソン球からのエネルギー供給により稼働する巨大な[[バザード・ラムジェット]]を用いて、500万年で太陽系全体に200キロメートル毎秒の推力を与えられる'''カプラン・スラスター'''が考案された<ref>{{cite web|url=https://sites.google.com/view/m-caplan-stellar-engines/startseite|title=M. Caplan – Stellar Engines: Design Considerations for Maximizing Acceleration, 2019|accessdate=2022-09-18}}</ref>。
▲上記のような不確実な[[量子テレポーテーション]]が恒星間航行に使用されるとは考えにくい。一方の空間を操作する方法に至っては、数学的モデル上では亜空間や異次元は存在するものの、物理現象として空間の歪みなり穴なりを発見した事例は無く、これらを移動に利用できるかは未知数である。
== 動力源 ==
▲一般的に[[ブラックホール]]と[[ホワイトホール]]や[[ワームホール]]はSFファンにはお馴染みだが、ブラックホールは物質を吸い込む際に素粒子レベルにまで分解してしまうし、数学モデル上で存在が指摘されているホワイトホールで分解された素粒子が再構築されて吐き出されるとは考えにくい。たとえ再構築されても、ブラックホールの高重力で潰されている最中の状態で再構築されても技術的有用性は低い。ワームホールも同様である。
現在、恒星間航行を可能にする宇宙船の動力となる高エネルギー源として、もっとも有望視されているのは[[反物質]]である。加速器によって生成した反粒子を十分に冷却した状態で反応させる事により、安定した反物質
[[ダイソン球]]と呼ばれる、恒星を巨大な人工構造物で覆って、恒星から発生するエネルギーを利用する超巨大な構造物のアイデアがあるが、これを利用して恒星の発するエネルギーをすべて反物質製造に費
▲このような航法では、時空間的な特異現象を利用するか、まさにその特異現象を人工的に起こす必要がある。しかし前者はそのような現象が起きている場所まで到達できなければならず、後者に至っては、天体が発生させるような超高エネルギーを必要とする。
しかしながら、[[宇宙エレベーター]]や軌道上の工場衛星なども実用化されていない現在の技術水準では、直径750mの人工惑星200個を太陽の公転軌道に乗せることも非常に難しいのが現状である。
▲現在、恒星間航行を可能にする宇宙船の動力となる高エネルギー源として、もっとも有望視されているのは[[反物質]]である。加速器によって生成した反粒子を十分に冷却した状態で反応させる事により、安定した反物質(反水素)が生成できる事は確認されており、これを安全に保存できるなら、将来的なエネルギー源(正しくはエネルギーを保有する方法)として利用できる可能性がある。ただし、現代の技術水準では1gの反物質を製造するには巨大加速器を100億年にわたって反物質の製造に専念させる必要がある。
== 脚注 ==
▲[[ダイソン球]]と呼ばれる、恒星を巨大な人工構造物で覆って、恒星から発生するエネルギーを利用する超巨大な構造物のアイデアがあるが、これを利用して恒星の発するエネルギーをすべて反物質製造に費やせるなら、数年~数十年程度で恒星間航行に必要な動力が得られると云う計算がある。そこまで大掛かりな装置で無くとも、[[公転軌道]]上に直径750m程の大きな粒子加速器付きの人工惑星(形状としては、太陽に向いた巨大[[アサガオ]]のような物)を200個設置すれば、約20年程で恒星間航行が可能になるのに十分な反物質20トンが蓄えられるという。
=== 注釈 ===
<references group="注釈" />
=== 出典 ===
<references />
== 参考資料 ==
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* [[恒星間航行]]
* [[宇宙飛行#恒星間宇宙航行|宇宙飛行]]
*[[疑似科学]]
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:こうせいせん}}
[[Category:架空の宇宙船]]
[[Category:宇宙機の推進方法]]
[[Category:原子力ロケット]]
[[Category:仮説]]
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