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{{Portal クラ混同|ハック音楽ブトガラ}}
{{生物分類表
'''植村 泰一'''(うえむら やすかず、[[1934年]] - )は、[[日本]]の[[フルート]]奏者・指導者。[[日本フルート協会]]副会長。
|名称 = ハシブトガラス
|色 = 動物界
|画像 = [[file:Jungle Crow 20171021 Aomori Prf Japan IMG 4540.jpg|250px]]
|画像キャプション = 枝にとまるハシブトガラス
|界 = [[動物|動物界]] {{Sname||Animalia}}
|門 = [[脊索動物|脊索動物門]] {{Sname||Chordata}}
|亜門 = [[脊椎動物|脊椎動物亜門]] {{Sname||Vertebrata}}
|綱 = [[鳥類|鳥綱]] {{Sname||Aves}}
|目 = [[スズメ目]] {{Sname||Passeriformes}}
|科 = [[カラス科]] {{Sname||Corvidae}}
|属 = [[カラス属]] {{Snamei||Corvus}}
|種 = '''ハシブトガラス''' <br />''C. macrorhynchos''
|下位分類名 =
|下位分類 = 本文参照
|学名 = ''[[wikispecies:Corvus_macrorhynchos|Corvus macrorhynchos]]''<br />[[:en:Johann_Georg_Wagler|Wagler]], [[1827年|1827]]
|和名 = ハシブトガラス
|英名 = [[:en:Large-billed_crow|Large-billed crow]]
|生息図 = [[ファイル:Corvus macrohynchos map.jpg|250px]]
|生息図キャプション = 分布域
}}
'''ハシブトガラス'''([[学名]]:''Corvus macrorhynchos'')は[[カラス科]][[カラス属]]の[[鳥類|鳥]]である。
 
==人物・来歴 形態 ==
全体に黒色の鳥であるが、特に羽には紫色の金属光沢を持つ。雌雄同色で性別による差は出ない。全長57cm、大きさは翼長33-38cm、嘴峰([[くちばし]]の長さ)60mm程度<ref name="新版鳥類原色大図説(1980)">[[黒田長礼]] (1980) 『新版鳥類原色大図説』. [[講談社]], 東京. {{doi|10.11501/12602105}} ([[国立国会図書館デジタルコレクション]])</ref><ref name="日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)">[[清棲幸保]] (1978) 『日本鳥類大図鑑増補改訂版 Ⅰ』. [[講談社]], 東京. {{doi|10.11501/12602099}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。
父は、[[東宝]]の前身の一つ[[P.C.L.映画製作所]]の創立者の一人[[植村泰二]]、伯父は第3代[[経済団体連合会]]会長を務めたの[[植村甲午郎]]。
                フルートを[[川崎優]]、ガストン・クリューネル、[[オーレル・ニコレ]]に、作曲を[[清瀬保二]]に師事。[[東京音楽大学]]にて学長及び理事長を務めた。門下生には著名なフルーティストも多い。また、植村の奏でるフルートの音色は深く、暖かみのある優しい音色である。
 
脚は4本の指のうち3本が前を向き、1本は後ろ向きに生える三前趾足と呼ばれるタイプある。この生え方はカラス類に限らず、スズメ目では多くの種に共通する<ref name="フランク鳥類学(2009)">フランク・B・ギル 著, [[山階鳥類研究所]] 訳, [[山岸哲]] 監修 (2009) 鳥類学. 新樹社, 東京. {{isbn|978-4-7875-8596-7}}. {{国立国会図書館書誌ID|000010635617}}</ref>。卵は長径40-55mm、短径29-33mmで重量は1個20g内外である<ref>福田道雄 (2015) ハシブトガラス ''Corvus macrorhynchos''の卵サイズ. 山階鳥類学雑誌 47(1), p.40-42. {{doi|10.3312/jyio.47.40}}</ref>。
*[[1954年]]、[[東京芸術大学]]別科卒業、[[1957年]]、[[慶應義塾大学]]文学部卒業。
*[[1959年]]、第1回リサイタルを行い[[NHK交響楽団]]へ入団。
*[[1964年]]から[[1966年]]まで、[[パリ国立高等音楽・舞踊学校|パリ音楽院]]、[[フライブルク大学]]へ留学。
*[[1990年]]、NHK交響楽団を定年退職。
 
<gallery>
==著書==
Corvus macrorhynchos (looking back).JPG|全体に黒色だが、羽部分に紫色の金属光沢が目立つ
===単著===
ハシブトガラス(顔1).JPG|頭部は黒色
*『アルテス・フルート奏法 第一巻 レッスンの実際』
Jungle Crow 20090211 face4.jpg|上の嘴が大きく、先端への曲がりも急である。
===訳書===
三前趾足 スズメ目(カラス).jpg|脚部。三前趾足である。
*『アルテス・フルート奏法』1・2巻
ハシブトガラスの瞬膜.jpg|瞬膜
*オーレル・ニコレ著『フルート奏法―現代音楽のための』(共訳)
Corvus macrorhynchos MHNT.ZOO.2010.11.170.6.jpg |卵は白色でまだら模様が入る
:など
</gallery>
 
=== 類似種 ===
==悪魔が来りて笛を吹く==
[[ハシボソガラス]]は本種よりもやや小さく、嘴の曲がりが小さい、額(嘴の上)が出っ張っていないことなどで判別できる。南西諸島などに分布する種は本種よりも小さいものが多い<ref name="新版鳥類原色大図説(1980)"/><ref name="日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)"/>。
[[横溝正史]]のミステリ小説「[[悪魔が来りて笛を吹く]]」にフルート曲が登場するのは、横溝が隣家の植村の練習を聴いて着想したものである。その後この作品が1979年に映画化された際、テーマ曲「黄金のフルート」を吹いたのもまた植村だった。
 
== 生態 ==
{{DEFAULTSORT:うえむら やすかす}}
市街地から農村地帯までよく適応している種で、都市部でもよく観察される。ハシボソガラスと比較して都市部の環境により適応していると言われることもあるが、どちらのカラスが多いかは都市によって異なる。どのような要因で比率が決まるのかはよくわかっていない。同一環境においてはハシボソに比べてハシブトの方が飛行高度は高い傾向にあるという<ref>仲村翔太, 森荘大郎, 三上修 (2022) 都市環境において2 種のカラスが観察される高さの違い. Bird Research 18, A31-A37. {{doi|10.11211/birdresearch.18.A31}}</ref><ref>加納歩実, 加藤楓菜, 橋本啓史, 日野輝明 (2024) 名古屋市におけるハシブトガラスとハシボソガラスの生息環境. 日本鳥学会誌 73(1), p.67-73. {{doi|10.3838/jjo.73.67}}</ref>。
[[Category:日本のフルート奏者]]
 
[[Category:1934年生]]
食性は雑食性で木の実から昆虫、鳥の卵や小動物、人間の残飯までさまざまなものを食べる。動物を狙う際には群れで狩りをする事例も報告されている<ref>畠山義彦 (2014) ハシブトガラスの連携行動によるスズメの捕食. BINOS 21, p.15-16. {{doi|10.14929/binos.21.15}}</ref>。ハシブトはハシボソに比べ、肉食傾向が強いと言われる<ref>松原P129,151,175など</ref>。鳥類は歯を持たずに餌を丸呑みするが、代わりに胃の強力な筋肉を使って食物をすりつぶす。一般的な傾向として、胃の筋肉は硬い植物種子をよく食べる鳥が強く、果実食や肉食の種ではそこまで強くないことが知られている<ref name="フランク鳥類学(2009)"/>。ハシボソとハシブトの胃の構造を比較すると、ハシボソの方が相対的に筋繊維が厚く植物食向きの構造だといい、ハシブトの肉食傾向は形態学的な面からも支持されている<ref>徐章拓, 竹田努, 青山真人, 杉田昭栄 (2014) ハシブトガラスとハシボソガラスの腺胃および筋胃の比較形態. 日本鳥学会誌 63(2), p.289-296. {{doi|10.3838/jjo.63.289}}</ref>。胃のほか、嘴の強さ、舌の微細構造なども肉食種に近いという<ref>刘利, 鎌田直樹, 杉田昭栄 (2012) ハシブトガラス ''Corvus macrorhynchos''の舌表面に見られる微細構造. 日本鳥学会誌 61(1), p.77-83. {{doi|10.3838/jjo.61.77}}</ref>。
{{classic-stub}}
 
{{Music-bio-stub}}
鳥類ではしばしば知られるが、カラスも消化できないものは糞として出すだけでなく、ペリットとして口から排出する。ペリットを分析することにより食性を推測することもできる<ref>後藤三千代, 鈴木雪絵, 永幡嘉之, 梅津和夫, 五十嵐敬司, 桐谷圭治 (2015) 庄内地方におけるカラス3種のペリットの内容物から見た食性. 日本鳥学会誌 64(2), p.207-218. {{doi|10.3838/jjo.64.207}}</ref>。ハシブトは幾らかの[[貯食行動]]を行うとされる。神奈川県での観察では貯食場所は常緑針葉樹の樹冠部であった<ref>水野歩, 丸山温, 相馬雅代 (2019) ハシブトガラスの貯食行動における貯食場所の選好性. 日本鳥学会誌 68(1), p.67-71. {{doi|10.3838/jjo.68.67}}</ref>。
 
ハシボソとは鳴き声が異なる。ハシブトの方が全体的に低音であり、これは発声器官が全体的に大きいからだという<ref>塚原直樹, 小池雄一郎, 青山真人, 杉田昭栄 (2007) ハシボソガラス ''Corvus corone''とハシブトガラス ''C. macrorhynchos''の鳴き声と発声器官の相異. 日本鳥学会誌 56(2), p.163-169. {{doi|10.2326/jjo.56.163}}</ref>。日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)ではハシボソの鳴き声はハシブトより濁っていると表現している<ref name="日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)"/>。機械で録音する場合、ハシボソよりもハシブトの方が周囲の音に負けずに録音しやすい<ref>澁谷尚志, 横田康成 (2009) ハシボソガラスの鳴き声のスペクトログラム解析,および検知. 電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) 129(12), p.2144-2151. {{doi|10.1541/ieejeiss.129.2144}}</ref>。
 
雌雄のつがいのほか、しばしば大規模な群れを作り行動する。鳴き声の他に毛づくろいなどの個体間のコミュニケーションが知られており、群れの中での優劣も観察されている。カラスのコミュニケーションについては伊澤(2017)の[[総説論文]]が詳しい<ref>伊澤栄一 (2017) カラスのコミュニケーション:聞く・見る・触れる. 動物心理学研究 67(1), p.11-18. {{doi|10.2502/janip.67.1.2}}</ref>。
 
繁殖期は晩春から初夏にかけてである。雌雄ともにこの時期に生殖腺が良く発達し、この傾向は成鳥だけでなく幼鳥でも見られるという<ref>青山真人, 祝暁波, 塚原直樹, 渡邊潤, 杉田昭栄 (2007) 関東地方におけるハシブトガラスCorvus macrorhynchosの生殖腺の季節変動. 日本鳥学会誌 56(2), p.157-162. {{doi|10.2326/jjo.56.157}}</ref>。樹上営巣型で、地上から5m-20m程度の位置に巣を作る。落葉樹よりも常緑樹を選ぶ傾向が強いという報告が多いが、常緑であれば広葉樹と針葉樹間での差は見られなかった<ref>森下英美子, 松原始 (2018) 山地の森林におけるハシブトガラスの生息密度と環境選好. 日本鳥学会誌 67(1), p.87-99. {{doi|10.3838/jjo.67.87}}</ref>。巣は枯枝を集めて作ったものでハシボソのものに酷似しており見分けるのは困難である。1つの巣への産卵は4個前後で抱卵は雌だけが行い、孵化までの期間は約3週間である<ref name="巣と卵図鑑(1999)">黒田長久 監修, 柿澤亮三・小海途銀次郎 著(1999)『巣と卵図鑑:日本の野鳥』. 世界文化社, 東京. {{ISBN|4-418-99404-1}} {{doi|10.11501/14220286}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>
 
雛への給餌は雌雄で行い、雛は孵化してから約1か月で巣立つ。その後約4か月程度は家族群で行動し、独立する。若鳥は約3年間群れで行動し、その間にペアになり、縄張りを構える。
 
換羽は初夏から秋にかけてで、開始および終了はハシボソより若干遅い<ref>西教生, 高瀬裕美 (2008) ハシボソガラスとハシブトガラスの風切羽および尾羽の換羽. Bird Research 4, S1-S8. {{doi|10.11211/birdresearch.4.S1}}</ref>。ストレスを受けると自然な換羽ではなく、自ら羽毛を引き抜く自傷行動がしばしばみられる。繊細な鳥であり、人間に捕獲されるなどの興奮時には心拍数が増大し、安静時の心拍数に戻るには90分もかかる。これはハシボソの50分に比べても長い。安静時の心拍数は毎分200回前後だという<ref>白井正樹, 臼木大翔, 那須崇史, 山本麻希 (2022) ハシボソガラスおよびハシブトガラスの保定に対する心拍応答. ペストロジー 37(2), p.83-86. {{doi|10.24486/pestology.37.2_83}}</ref>。
 
カラスの知能は一般の5〜7歳児と同程度であるという説も存在しており、実際にIQテストなどによる証明が行われている<ref>{{Cite web|和書|title=ANIMALive(アニマライブ)動物と生きる|url=https://animalive.me/|website=ANIMALive|accessdate=2021-10-05|language=ja|last=ANIMALive.me}}</ref>。知能の高さ故に「遊ぶ」という概念を持っており、木の枝にジャンプで届くかどうかのチャレンジを幾度となく繰り返すなど、捕食や採餌とは関係のない、つまり生存には直接の必要がない行動をとっている様子も確認されている<ref>{{Cite book|title=Karasu no kyōkasho|url=https://www.worldcat.org/oclc/945180101|publisher=Kōdansha|date=2016|___location=Tōkyō|isbn=978-4-06-293357-5|oclc=945180101|first=Hajime|last=Matsubara|last2=松原始.}}</ref>。
 
夜間人が立ち入る事の無いよく茂った森に集団ねぐらをとる習性があり、冬期には特に多数が集まる。
 
頭のいいカラスは、雪を水の代わりに浴びる「雪浴び」や、アリを羽毛になすりつけたり、巣の上に伏せてアリにたからせる「蟻浴(アリの持つ蟻酸によって、ハジラミを退治している)」、銭湯の煙を浴びる「煙浴」、[[洗濯用洗剤]]などの粉洗剤を浴びる「薬浴」など、いろいろな入浴方法を実践している<ref>戸塚 学・箕輪 義隆 『身近な野鳥観察ガイド』 (文一総合出版)、 2012年</ref>。
 
寿命は飼育下では約20年、野生下では約10年~20年とされる。
 
==分布==
[[ユーラシア大陸]]東部([[東洋区]]、[[旧北区]]東部)に分布する。[[日本]]では[[留鳥]]として、[[小笠原諸島]]を除き全国で、[[低地]]から[[山地]]まで幅広く分布する<ref name="日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)"/>。
 
本州中部における垂直分布の限界標高は概ね2,500m前後でないかと推定されており、1930年ごろの夏季を中心とした調査では幾つかの山塊のこの標高で数羽程度が確認されている<ref name="日本鳥類大図鑑増補改訂版(1978)"/>。2000年代の調査ではハシボソと共に分布がやや拡大している<ref>小林真知, 中村雅彦 (2006) 本州中部の高山帯に生息するカラスの分布と個体数. 山階鳥類学雑誌 38(1), p.47-55. {{doi|10.3312/jyio.38.47}}</ref>。登山客が出す生ごみや[[地球温暖化]]の影響が言われれるが、詳しい要因はよくわかっていない。
 
== 人間との関係 ==
=== 都市の鳥 ===
[[スズメ]]、[[ハト]]類、[[ツバメ]]などと並び都市近郊でもよく見られる鳥で、日本の都市部においては最も身近な鳥の一つである。なお、生態節の通りハシボソとどちらが優勢になるかは都市によって異なる。東京近郊などは本種が圧倒的に優勢だとされる。
 
ねぐらは大きな都市公園や神社仏閣に残る鎮守の森のような幾らかまとまった森林である。
 
=== 獣害 ===
悪食で人の食べ残した生ごみを群れであさる姿がよく観察される。袋を破いて中身を引っ張り出して食べるので、公衆衛生および景観的な面で嫌われる。被害増の背景には、ゴミ袋の色が影響しているのでないかという説があり、黒色から透明にすることによって中身が見えるようになったことが一因ではないかとする。
 
[[4色型色覚]]であるカラスの目の特性を逆手にとり、[[紫外線]]を遮断する特殊な[[顔料]](企業秘密)を混ぜ、カラスには中身をわからなくした黄色い[[ポリエチレン]]の[[ゴミ袋]]を、[[大倉工業]]と[[三井化学]]が[[宇都宮大学]][[農学部]][[杉田昭栄]]教授の協力で開発した。コストは従来のゴミ袋よりも高いが、[[大分県]][[臼杵市]]や[[東京都]][[杉並区]]などで試験的に導入されている。
 
畜産用の濃厚飼料([[トウモロコシ]]や[[ソルガム]]を主原料とする高栄養飼料)も食べに来る。畜産農家では養鶏場における[[鳥インフルエンザ]]のほか、飼育鳥獣の感染症対策が課題である。ペリットの分析では、低確率であるがサルモネラの保菌者となっているカラスがいることが分かっており<ref>山口英美, 長雄一, 貞國利夫 (2020) 国内のねぐらにおけるカラス群のサルモネラ感染状況の通年モニタリング. 日本野生動物医学会誌 25(1), p.1-7. {{doi|10.5686/jjzwm.25.1}}</ref>、養鶏以外のウシやブタにもリスクのある感染症がある。また、穀類や果物はよく食べる。
 
電力設備の絶縁用のシリコンオイルを食べた例もある<ref>屋地康平, 松木吏弓, 北村亘, 畔柳俊幸, 足立和郞 (2013) ペリットのDNA解析が明らかにしたハシブトガラスのシリコーン採食. 日本鳥学会誌 62(1), p.45-51. {{doi|10.3838/jjo.62.45}}</ref>。
 
ただし、都市の環境は必ずしも本種にとって最適ではないと見られ、都市部の個体は郊外に住むものよりも小さいことが多い。特に雌では顕著である<ref>吉原正人, 鈴木馨, 梶光一 (2016) 都心と郊外のトラップで捕獲されたハシブトガラスの体格・栄養状態の比較. 日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 52(3), p.134-144. {{doi|10.20652/abm.52.3_134}}</ref>。東京都心の公園での観察の結果、本種の死骸が最も増えるのは春であり、これは餌が少ないからではないかとみられる<ref>松田道生 (2005) 六義園におけるハシブトガラスの死体の数・2002年. Bird Research 1, S9-S13. {{doi|10.11211/birdresearch.1.S9}}</ref>。
 
晩春から初夏にかけての繁殖期の親鳥は非常に神経質になり、営巣木に近づくものを執拗に攻撃し追い払う。時に人間がこの対象になることがある<ref>{{Cite web|和書|title=全力で雛を守るため人を攻撃するカラス 4〜8月は注意 対策はあのポーズ|url=https://weathernews.jp/news/202504/090095/|accessdate=2025-07-01|publisher=ウェザーニュース}}</ref>。
 
=== 食用・狩猟 ===
肉は食用にできる。[[昭和時代]]の岡山県の丘陵地帯では、他の野鳥と共にカラスを捕まえて食べることもあったという。カラスを捕まえる際はただ単にわなを仕掛けるだけでなく、罠の近くに囮の個体もおいておびき寄せた。ただし、不吉な鳥や畑に肥料としてまいた人糞を食べる不潔な鳥だとして食べない人も多かったという<ref>鶴藤鹿忠ほか編 (1985) 聞き書 岡山の食事(日本の食生活全集33). 農山漁村文化協会, 東京. {{isbn|978-4540850462}} {{doi|10.11501/12170381}}</ref>。
 
単に食うだけでなく、カラスを食べることで薬効があると信じられていた。江戸時代の『水谷禽譜』によれば、特にカラスの黒焼きはあらゆる病気に効くと言われたという。黒焼きを作るときは、カラスの腹を裂いて内臓の代わりに人参を詰め、塩を塗りこみ壺の中で焼いた。人参の代わりに紅花を詰めると金瘡(刃物での切り傷)に効くという<ref name="水谷禽譜第2巻"/>。これらは朝鮮の薬膳料理の[[サムゲタン]]に似たようなものだったようである。
 
現在でも狩猟鳥獣46種の一つであり、「[[鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律]]」(平成十四年法律第八十八号、通称:鳥獣保護法)<ref name="鳥獣保護法">[https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000088 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)] e-gov 法令検索. 2025年8月2日閲覧</ref>に従い、狩猟免許を取得し都道府県の名簿に登載されれば、亜種も含めて冬季に決められた区域内と手法で狩猟ができる。狩猟鳥獣一覧を定めだ鳥獣保護法施行規則の第3条別表第二<では、本種の他にハシボソガラスと[[ミヤマガラス]]がカラス科として狩猟鳥獣に指定されている<ref name="鳥獣保護法施行規則">[https://laws.e-gov.go.jp/law/414M60001000028 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(平成十四年環境省令第二十八号)] e-gov法令検索. 2025年8月2日閲覧</ref>。
 
=== 種の保全状況 ===
日本においては本種を絶滅危惧種等に指定している都道府県は無い<ref>[http://jpnrdb.com ホーム > 種名検索] 日本のレッドデータ検索システム. 2025年2月20日閲覧.</ref>。
 
=== 象徴 ===
本種が分布する[[東アジア]]地域には3本の脚を持つ[[三足烏]]伝説が広く伝わっており、しばしば太陽の神として描かれる。日本においても[[八咫烏]]が[[神武天皇]]の道案内を務めたという伝説がある。神の使者としても描かれるが、カラスを使いに出すとトラブルが発生し、失敗したという内容の伝説が各地でしばしば見られる。[[済州島]]に伝わる伝説には以下のようなものがある。神様が人間の寿命を書いた紙をカラスに持たせたが、カラスはこれを落としヘビが紙を食べてしまった。カラスは寿命の紙をトンビが盗んだと思い大喧嘩をした。結果、人間の寿命は不規則に長短が生まれ、ヘビは長寿の象徴となり、カラスとトンビは仲が悪いのだという<ref>[[伊藤亜人]]監訳, 川上新二 編訳 (2006) 『韓国文化シンボル事典』. [[平凡社]], 東京. {{isbn|4-582-13601-X}}</ref>。[[アイヌ]]に伝わる伝説では、神はアイヌが飢えないように山と川に動物の骨を置くようにカラスに命じたが、カラスはこれを怠り神の怒りを買ったという<ref>[[ジョン・バチェラー|ジョン・バチラー]] 著, 安田一郎 訳 (1995) 『アイヌの伝承と民俗』. [[青土社]], 東京. {{ISBN|4-7917-5357-7}} {{doi|10.11501/13302378}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。
 
アイヌの伝説に見られるように狩猟や農作物の豊凶の占いにカラスを使うということもアジア各地で見られる。餅を投げるものや早生晩生の各品種を並べて、カラスがどれを食べたかによってその年に植える品種を決めるなどした。日本ではこれを「オトグイ」(御烏喰)などと呼び、広島県の[[厳島神社]]のほか、東北地方に至るまで各地で見られる。
 
== 呼称 ==
「カラス」は[[カケス]]などと同じく「ス」で終わる鳥である。この「ス」は鳥を指しているのではないかと言われる。同じように言われる接尾語に「スズメ」、「カモメ」、「ツバメ」などの「メ」がある。前半の「カラ」は「黒い」という体色に由来する説、「カァカァ」という鳴き声に由来する説の2つが有力であり、研究者によっても見解が異なる。「やまがらす」「さとがらす」の名前は古くから文献に出てきており、このうち「やまがらす」が本種だったと見られている<ref>菅原浩, 柿澤亮三 編 (2005)『鳥名の由来辞典』. [[柏書房]]. {{isbn|4-7601-2659-7}}</ref>。「はしぶとがらす」は江戸時代の文献に確認できるとされ、実際に同時代の『大和本草』には「ハシブト」などの文字が確認できる。同時代の『水谷禽譜』では「ハシブトガラス」「ヤマガラス」「ミヤマカラス」は同一種である旨が書かれている。ただし「ミヤマカラス」には別名「ダケカラス」と呼ばれるハシブトとは別種のものもあるとされた<ref name="水谷禽譜第2巻"/><ref name="大和本草巻乃十五(1709)"/>。
 
カラスの漢字表記は科+「烏」で「鳥」という字とよく似ていることで知られる。江戸時代までは『慈烏』という字もよく当てられており、文献などではしばしば目にする。これは雛から若鳥のうちは親に食べさせてもらっても、ある程度大きくなると逆に年老いた親に餌を与えるように見えるという生態的な点から、慈悲深い鳥だという意味で名付けられたと説明されることが多く、『水谷禽譜』や『大和本草』ではそのように説明している<ref name="水谷禽譜第2巻">[[水谷豊文]] (発行年不明)『水谷氏禽譜 二』. (写本。国立国会図書館所蔵 請求番号寅-12) {{doi|10.11501/2553655}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref><ref name="大和本草巻乃十五(1709)">[[貝原篤信]](1709)大和本草 巻乃十五 巻乃十六. (国立国会図書館所蔵 請求記号:特1-2292イ){{doi|10.11501/2557370}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。ただし、実際には大きくなった若鳥は親鳥と見分けがつきにくく、親に餌を与えているように見えるというのは勘違いと言われることも多い。また、薬用節の通り薬としていろいろな利用が出来たことも幾らか影響があるとみられる。
 
[[大正時代]]に出版された『狩猟鳥類ノ方言』には多数の地方名が載っているが、系統としてはそれほど多くない。本種で特徴的なのが「クソガラス」「クソクイガラス」などの名前で西日本を中心に広く見られる<ref name="狩猟鳥類ノ方言(1921)"/>。これは前述のように肥料として撒いた人糞を食べることから来ていると見られるが、山形県の「クソガラス」は肉に臭気があるからだという<ref>石澤健夫 (1922) 山形県村山地方鳥類方言. 鳥 3(12-13), p.149-152. {{doi|10.3838/jjo.3.12-13_149}}</ref>。分布地や生態に因んだ名前としてはほかに「地からす」、「ノガラス」、「ムラガラス」、「ヤマガラス」などがあり、古い名前と言われる「ヤマガラス」は大阪や沖縄で確認されている。形態的な命名としては「オオガラス」、「クチブト」などがある。変わった名前として神奈川県西部の「ベンケイ」がある。ハシボソガラスと区別せずカラス全般を指して「カラス」も広く見られ、これがなまった「ガラー」「ガラサー」(鹿児島県)、「イソ」(愛知県海部郡)、「ガアガ」(富山県)などもある<ref name="狩猟鳥類ノ方言(1921)">農商務省 編 (1921) 『狩猟鳥類ノ方言』. 日本鳥学会, 東京. {{doi|10.11501/961230}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。
 
種小名 ''macrorhynchos''「大きな嘴」という意味で和名と同じである<ref>内田清一郎, 島崎三郎 (1987) 『鳥類学名辞典―世界の鳥の属名・種名の解説/和名・英名/分布―』. [[東京大学出版会]], 東京.{{isbn|4-13-061071-6}} {{doi|10.11501/12601700}}(国立国会図書館デジタルコレクション)</ref>。和名の方が先であるとみられるが、種小名にどれほど影響したのかは分かっていない。。
 
==日本国内で見られる亜種==
[[File:Corvus macrorhynchos osai in Ishigaki, Okinawa.jpg|thumb|オサハシブトガラス(石垣市)]]
;ハシブトガラス
:''Corvus macrorhynchos japonensis'' Bonaparte, 1850
:[[北海道]]から[[九州]]にかけて分布する。
;チョウセンハシブトガラス(朝鮮~)
:''Corvus macrorhynchos mandshuricus'' Bturlin, 1913
:[[対馬]]付近に分布し、亜種ハシブトガラスよりやや小型。
;リュウキュウハシブトガラス(琉球~)
:''Corvus macrorhynchos connectens'' Stresemann, 1916
:[[奄美群島]]以南の[[南西諸島]]に分布し、亜種ハシブトガラスよりやや小型。
;オサハシブトガラス(長~)
:''Corvus macrorhynchos osai'' Ogawa, 1905
:[[八重山列島]]に分布し、亜種ハシブトガラスより小型。
 
==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
<references />{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* 松原始 『カラスの教科書』 〈雷鳥社〉、2012年。
 
== 関連項目 ==
{{Commons|Corvus macrorhynchos}}
{{Wikispecies|Corvus macrorhynchos}}
 
== 外部リンク ==
* [https://db.kahaku.go.jp/webmuseum 標本・資料統合データベース > 動物研究部 > 鳥類] [[国立科学博物館]]の標本データベース
* [https://ornithology.jp/secretariat.html 日本鳥学会] 鳥類の学会で学術論文の和文誌『[https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjo/_pubinfo/-char/ja 日本鳥学会誌]』と英文誌『[https://www.jstage.jst.go.jp/browse/osj Ornithological Science]』を発行しており、前身の雑誌である『[https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjo1915/_pubinfo/-char/ja 鳥]』も含め本項でも多数参考にしている。いずれの雑誌も[[J-STAGE]]にて無料公開されている。
* [https://www.yamashina.or.jp 山階鳥類研究所] 和文誌『[https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jyio/_pubinfo/-char/ja 山階鳥類学会誌]』を発行しており、本項でも一部参考にしている。雑誌はJ-STAGEにて無料公開されている。
 
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[[Category:カラス属]]
[[Category:狩猟鳥]]
[[Category:日本の鳥類]]