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{{出典の明記|date=2021-09}}
'''排気再循環'''(はいきさいじゅんかん、
== 概要 ==
内燃機関において、燃焼後の排気ガス中には[[酸素]]は含まれていないか、もしくは希薄な状態にある。この排気を[[吸気]]と混ぜると吸気中の酸素濃度が低下する
* [[大気]]より酸素濃度が低い状態での燃焼によ
* 燃焼温度の低下は、[[シリンダーブロック|シリンダ]]および[[燃焼室]]壁面や[[ピストン]]表面からの[[熱|熱エネルギー]]放散を低減
* [[ガソリン機関]]では部分負荷時にEGRを導入すると、EGRを導入しない場合
EGRによる還流量は、ガソリン機関の場合、吸気量の最大15 %程度であり、車両環境や走行条件に応じて常に最適量に制御される。車両重量に比してエンジン出力の小さい大型[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]車両では、比較的高負荷において
== 歴史 ==
EGRは、[[三元触媒]]が実用化される以前の[[1970年代]]に、ガソリン機関において[[三元触媒|酸化触媒]]では浄化できないNO<sub>x</sub>の低減対策として導入された。しかし、還流量や燃料噴射量を精密に制御できない場合には、燃焼を安定させるために吸気[[空燃比|混合比]]を高く(リッチに)設定せざるを得ず、
原理上[[スロットル]]バルブ
== 技術 ==
[[File:EGR Renault Energy dCi 130.JPG|thumb|right|[[:en:Renault R-Type engine|ルノー・R9M型エンジン]]の外部LPL-EGRシステム。下部から順に、EGRクーラ、EGRバルブ、吸気ダクト(コンプレッサ前)]]
[[File:EGR Volkswagen 2.0 TDI.JPG|thumb|right|[[
実用化されているEGR手法には、大きく分けて「内部EGR
理論上、EGR量を変えて === 内部EGR ===
{{seealso|バルブオーバーラップ}}
内部EGRは、バルブオーバーラップの利用や排気バルブの閉時期を調整することで排気ガスを再循環させる手法である。
もっとも多く用いられるのはバルブオーバーラップの利用で、吸排気ポートの圧力差により排気ガスを再循環する方法である。しかし圧力差が不安定であるため、EGRの制御には限度がある。それ以外の手法としては、排気バルブの閉弁を吸気工程途中まで遅らせることで排気ポートからの再導入(排気遅閉じ・吸気遅開き)、排気工程で吸気バルブを早期に開弁することで吸気ポートに排ガスを逆流させての再吸気、吸気工程で排気バルブの一時開弁、排気バルブを排気工程途中で閉弁し排気ガスを残留させるなど多岐にわたる。この中で多く用いられているのは排気遅閉じ・吸気遅開きである(後述)。これらは外部装置ではなく動弁系で対応できるため、スペースを抑えられ、構造も単純化できる利点がある。運用上においても、高温の排気ガスに晒されたりカーボン等の堆積により動作不良を起こす可能性がある外部EGR装置と比べ、ロバスト性に長けるというメリットがある。
排ガス清浄性ではNO<sub>x</sub>低減があるが、外部EGRに比べると[[炭化水素]](HC)低減への効果が大きいとされる。これは内部EGRで再導入される排気工程末期の排気ガスには、消炎領域で発生する未燃焼ガス(HC)が多く含まれるためで、それを再燃焼させることでHCが低減されるためである。
古くからバルブオーバーラップを広くとった場合に一定負荷領域での省燃費性(主にポンピングロス低減から)や排ガス清浄性が良好となることは知られており、EGRとしての利用は考えられていたが、固定バルブタイミングでは変動する負荷や回転数に対応できず限定的な利用に留まっていた。しかし[[可変バルブタイミング機構|可変バルブ機構]]の登場により、[[バルブタイミング]]を変化させることでオーバーラップ量や排気の閉弁時期を変化させることが可能となり、内部EGRを状況に合わせて利用できるようになった。これが可変バルブ機構を採用する理由の一つとなっている。特に吸気側に加え排気側にも可変バルブタイミングを採用した場合は、より積極的な排気の導入が可能となる。例えば排気カムを遅角することで吸気工程の途中まで排気バルブを開いておくことが可能であり、更に吸気カムも遅角し遅開きとすることでオーバーラップを最小限にしつつEGRを行うことが可能である。この手法はカム位相が吸排気同時に変化してしまう[[OHV]]や[[SOHC]]で利用できる。内部EGRに対しては吸気側より排気側の制御が有効であるため、一部ではあるが排気側のみを可変バルブタイミングとするケースや、排気側を可変バルブタイミングとすることで外部EGR装置を省くケースがある。
一方で、外部EGRに比べ、ガス量の制御性や導入量では劣り、導入ガスの温度が高いというデメリットが存在する。この温度が高いというのは外部EGRとの比較した場合の比較であり、燃焼温度はEGR未導入時と比較すると低い。これにより[[6ストローク機関]]の競技用エンジンでは、エンジン温度の低下を防いでいる。
=== 外部EGR ===
排気バルブからのガスの引き戻しではなく、排気経路と吸気経路を配管等で接続することでガスの再循環を行い、中間に設けた制御[[バルブ]]の開度や開弁時間を変化させて開閉および流量調整を行う。また経路中に熱交換部位を設けることでガスの冷却が可能となる。一方で流入経路は常に排ガスに晒されるため、カーボン等が堆積しやすく、制御バルブなどの可動部の固着で動作不良が生じる場合がある。
高温のEGR導入による吸気充填効率の低下が無視出来ないため、今日の外部EGRを採用する殆どの機関は熱交換器によるEGR冷却機構を持つ(クールドEGR、クールEGR)<ref name=Isuzu_tech> {{cite web|url=http://www.isuzu.co.jp/technology/d_databook/tech/tech_03.html|title=吸気系の制御を行うエアマネジメント技術|publisher=[[いすゞ自動車]] |accessdate=2007年7月25日 }}</ref>。多くはエンジン冷却水を冷却材として用い、熱交換器で吸収した熱は[[ラジエーター]]により排熱するが、これによりラジエーターに必要な放熱量は最大で30%程度増加する。これは冷却ファンの大型化その他による重量増を招く<ref name=Hino_PR>{{cite web|url=http://www.hino.co.jp/j/corporate/newsrelease/pressrelease/backnumber/2003/hnt_release20030918.html|title=日野自動車プレスリリース NO.03-028 2003年9月18日|publisher=[[日野自動車]] |accessdate=2007年1月16日 }}</ref>。▼
▲高温のままでのEGR導入
ガソリン機関では本格的なクールドEGRを採用することはあまり多くはなかったが、[[日本車]]では[[トヨタ・プリウス|トヨタ・プリウス(ZVW30)]]の[[トヨタ・ZRエンジン|2ZR-FXE型]]、[[レクサス・RX|レクサス・RX(GYL1#)]]の[[トヨタ・GRエンジン|2GR-FXE型]]、[[マツダ・デミオ|マツダ・デミオ(DE)]]の[[マツダ・SKYACTIV-G|P3-VPS型]]など燃費を重視した車両から採用されはじめ、その後は軽自動車を含め多くの機種に採用されるようになった。また、外部EGR装置を備えた一般的なガソリン機関においても、EGR装置に簡易的な熱交換部位を設けたり、流入経路を工夫するなど、クールドEGRとは言えないまでも何らかの形でガス温度の低下を図っている場合も多い。クールドEGRは[[ノッキング]]対策にも有効であり、従来は[[点火時期]]を遅角([[熱効率]]悪化)させることでノッキングを回避していた領域においても点火時期を維持する事ができ、省燃費性の向上には欠かせない技術となっている。▼
▲ガソリン機関では本格的なクールドEGRを採用することはあまり多く
また、[[ターボチャージャー]]等の[[過給機]]を備えた機関で高負荷時にEGR導入を行おうとすると、吸気管圧力の方が排気管のそれより高くなり、単純なバルブの開閉だけでは導入できない事態を生ずる。このため、EGR制御バルブに[[チェックバルブ|逆止弁]]機能を設ける<ref name=Isuzu_tech />、ターボチャージャーの[[可変ノズルターボ|可変ノズル]]を制御して背圧を高める、吸気行程中に排気バルブを僅かに開放し排気ポート内の他シリンダからの燃焼済ガスを再吸入する等の対策が採られている<ref name=Hino_PR />。更に近年では、低圧EGR(LPL-EGR、'''L'''ow '''P'''ressure '''L'''oop-EGR)という対策も存在する。これは、従来のEGR(高圧EGR)は排気タービン手前から吸気コンプレッサ後に排気ガスを還す形であるが、低圧EGRでは排気タービン後から吸気コンプレッサ手前に還すものであり、過給圧の影響を受けずにEGRの導入を可能とするものである。EGRクーラでの冷却によって生ずる凝縮水がコンプレッサを損傷させる等、主に信頼性の面での課題が存在したが、近年になって実用化された。ガソリン機関における低圧EGRの初採用例は、2014年7月に[[モデルチェンジ|マイナーチェンジ]]を行った[[日産・ジューク]]の[[日産・MRエンジン|MR16DDT型]]である。▼
[[ターボチャージャー]]等の[[過給機]]を備えた機関で高負荷時にEGR導入を行おうとすると、吸気管内圧力が排気管内圧力よりも高くなり、単純なバルブの開閉だけでは導入できない事態が発生する。このため、EGR制御バルブに[[チェックバルブ|逆止弁]]機能を設ける<ref name=Isuzu_tech />、ターボチャージャーの[[可変ノズルターボ|可変ノズル]]を制御して背圧を高める、吸気行程中に排気バルブをわずかに開放し、排気ポート内の他シリンダからの燃焼済ガスを再吸入する等の対策が採られている<ref name=Hino_PR />。
== 関連項目 ==▼
*[[自動車排出ガス規制]]▼
*[[ダイリューテッドバーン]]▼
*[[バルブオーバーラップ]]▼
*[[ポンピングロス]]▼
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EGR経路上に「改質器」を置き、排気ガスと燃料を[[触媒]]に反応させて[[水素]]を生成し、これを吸気側に戻して筒内燃焼を促進させる「燃料改質エンジン」の研究が進められている。2025年の実用化を目指す[[日産自動車]]は、改質器内部の触媒に[[ロジウム]]を主成分としたものを採用。2019年に試作した直列4気筒ガソリンエンジンでは3.6パーセントの燃費抑制効果が確認された<ref>{{Cite news |url=https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/column/15/198610/041200095/ |title=注目集まる「燃料改質エンジン」とは何か |author=清水直茂 |newspaper=日経 xTECH |publisher=[[日経BP]] |date=2016-04-13 |accessdate=2019-11-30 }}</ref><ref>{{Cite news |url=https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03243/ |title=日産が燃料改質エンジン量産に前進、世界最高効率への切り札 直列4気筒に |author=清水直茂 |newspaper=日経 xTECH |publisher=日経BP |date=2019-11-26 |accessdate=2019-11-30 }}</ref>。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{Reflist}}
▲== 関連項目 ==
▲* [[自動車排出ガス規制]]
▲* [[ダイリューテッドバーン]]
▲* [[バルブオーバーラップ]]
▲* [[ポンピングロス]]
== 外部リンク ==
*[
{{自動車部品}}
{{デフォルトソート:はいきかすさいしゆんかん}}
[[Category:
[[Category:自動車エンジン技術]]
[[Category:自動車環境技術]]
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