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{{日本の法令
|題名= 刑法
|提出区分=閣法
|効力= 現行法
|種類= 刑法
|所管= ([[司法省 (日本)|司法省]]→)<br>([[法務庁]]→)<br>(法務府→)<br>[[法務省]][[[検務局]]→[[法務省刑事局|刑事局]]]
|内容= 主な犯罪の成立要件とそれに対する刑罰
|関連= [[軽犯罪法]]
|リンク= {{Egov law}}
|ウィキソース= 刑法 (日本)
}}
{{日本の刑法}}
{{ウィキプロジェクトリンク|刑法 (犯罪)}}
'''刑法'''(けいほう、明治40年法律第45号
[[1907年]]([[明治]]40年)4月24日に公布、[[1908年]](明治41年)10月1日に[[施行]]された。主務官庁は[[法務省]][[法務省刑事局|刑事局]]刑事課および[[管理官|刑事法制管理官職]]。
現行刑法は、第1編の'''総則'''(第1条 - 第72条)と、第2編の'''罪'''(第73条 - 第264条)の2編によって構成されている。とはいえすべての刑罰法規が刑法において規定されているものではなく、[[刑事特別法]]ないし[[特別刑法]]において規定されている犯罪も多い。
== 概要 ==
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==== 場所的適用範囲 ====
[[日本]]の刑法では[[b:刑法第1条|刑法1条]]で[[属地主義]]を採用しており、この属地主義の立場を
==== 時間的適用範囲 ====
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=== 刑罰 ===
第2章 - 第6章では、[[死刑]]・[[
令和7年([[2025年]])6月1日に改正刑法が施行されたが、この改正以前は[[法定刑]]として[[懲役刑]]及び[[禁錮刑]]が定められており、令和4年([[2022年]])6月17日に公布された"刑法等の一部を改正する法律"に基づき拘禁刑に一本化された<ref> {{cite web|url=https://www.kanpo.go.jp/old/20220617/20220617g00129/20220617g001290010f.html|title=インターネット版官報 令和4年6月17日 号外第129号|accessdate=2025年6月7日|page=10|publisher=国立印刷局}} </ref>。
=== 犯罪の不成立、刑の減免 ===
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ここでは、[[殺人罪 (日本)|殺人罪]]や[[窃盗罪]]、[[放火罪]]など各種の犯罪類型や、その[[未遂|未遂罪]]を処罰するかどうかなどを規定する。これら各犯罪の[[構成要件]]等について研究するのが講学上の[[刑法各論]]である。
条文の配列は、基本的に「[[国家的法益]]に対する罪」(第2章{{efn|かつて第1章には国家的法益に対する罪の筆頭として「皇室ニ対スル罪」が設定され、[[大逆罪]]などの規定があったが、[[日本国憲法]]施行に伴う刑法の改正で削除され、現在は存在しない。下の「沿革」節も参照。}} - 第7章)、「[[社会的法益]]に対する罪」(第8章 - 第24章)、「[[個人的法益]]に対する罪」(第26章 - 第40章)の順になっている。ただし、保護法益に対する考え方の違いもあり、全ての犯罪類型がこの順序に従って並んでいるわけではない。例えば、[[国家|国家的]][[法益]]に対する罪である「汚職の罪」は第25章に位置しており、また、[[今日]]では一般的に[[個人|個人的]]法益に対する[[犯罪|罪]]だと解されている「わいせつ、
[[日本]]の刑法典の各則([[犯罪|罪]])は、犯罪を包括的に規定しているために条文数が少なく、また法定刑の幅が広く規定されているのが特徴である。
{{
== 沿革 ==
=== 古代 ===
[[日本の上代文学史|上代]]には[[大祓詞]](おおはらえのことば)では、[[身体障害]]、[[病気|疾病]]、[[自然災害]]も含んだ[[天つ罪・国つ罪]](あまつつみ・くにつつみ)の観念があり、これらは祓(はらえ)により浄化された。しかし、公開刑の[[死刑]]、[[財産|財産刑]]、[[没収]]、[[日本における追放刑|追放]]なども存在したとされる。[[大化の改新]]ののち、[[大陸]]からの[[帰化人]]や[[留学|留学生]]により[[大宝律令]]、[[養老律令]]が制定された。これらは[[唐|唐律]]の規定にならうが、規定の簡素化と刑の緩和がはかられていた。なお、[[弘仁]]9年([[818年]])から[[保元]]元年([[1156年]])までの339年間、[[朝臣]]に対して[[死刑]]が行われなかった<ref>[[大塚仁]] 刑法概説P.31</ref>( → [[日本における死刑#日本における死刑の歴史|日本における死刑]])。
=== 中世 ===
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: [[慶応]]4年([[1868年]]、後の[[明治元年]])、[[戊辰戦争]]が勃発した翌月の2月に、新政府は暫定的に刑法を制定した。一家に[[死罪]]を犯した者があれば一家で約3名が死罪となる規定があり、[[戊辰戦争]]が全国に拡大していった。
:内容は[[律令]]や[[公事方御定書]]などを基として作成され、[[律令法#幕藩体制と明律研究|刑法草書(熊本藩)]]との共通点が見られることから、[[熊本藩]]出身者(当時新政府に出仕していた[[細川護久]]とその[[位置|周辺]]か?)が起草したという説が有力である。旧[[天領]]である[[府]][[県]]に対して施行され、[[諸藩]]に対しては残酷な刑罰を除去する事を命じた上で当面の間は自藩の刑法を施行させた([[版籍奉還]]後は[[死刑]]執行には政府の許可を得ることとなった)。したがって、[[戊辰戦争]]ののちに東京裁判所により一家全員死刑となった氏族も少なくない<ref>{{Citation|和書| author=| year=1883
; [[新律綱領]]
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{| class="wikitable collapsible autocollapse" style="font-size:80%"
|+明治初期における基本的な刑罰(閏刑除く)
!rowspan="2" | 仮刑律(明治元年制定)<ref name="仮刑律">{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=日本近代刑事法令集 仮刑律|series=司法資料 別冊 仮刑律|volume=17|edition=上|date=1945-04|pages=229-236|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1269363/1/134 |doi=10.11501/1269363}}</ref> !!rowspan="2" | 明治元年太政官達916号<ref name="M1-916">{{Cite|author=内閣官報局|title=法令全書. 慶応3年|date=1894-10|pages=342-344|url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/787948/222|doi=10.11501/787948}}</ref><ref name="仮刑律" /> !!rowspan="2" | 新律綱領([[明治3年]]12月発布)<ref name="新律綱領">{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=日本近代刑事法令集 新律綱領||series=司法資料 別冊|volume=17|edition=上|date=1945-04|pages=422-427,449-451|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1269363/1/210 |doi=10.11501/1269363}}</ref> !!rowspan="2" | 改定律令(明治6年7月10日施行) <ref name="改定律令">{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=日本近代刑事法令集 改定律令|series=司法資料 別冊 仮刑律|volume=17|edition=上|date=1945-04|pages=32-33,37-41|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1269373/1/14|doi=10.11501/1269373}}</ref>!!rowspan="2" | 明治12年太政官布告第1号(明治12年1月4日布告)<ref name="改定律令" /><ref>{{Cite journal|author=[[太政官
|-
![[明治2年]]3月時点<ref name="S43犯罪白書">{{Cite web|和書|author=法務省|url=https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/9/nfm/n_9_2_3_2_2_0.html|title=昭和43年版犯罪白書 第三編 犯罪と犯罪者処遇の一〇〇年 第二章 刑事関係制度の変遷 二 刑務所|date=1968-11|accessdate=2023-03-12}}</ref> !! 太政官布告第71号([[明治6年]][[2月25日]]布告)<ref>{{Cite web|和書|author=太政官|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000859293&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E6%87%B2%E5%BD%B9%E5%A0%B4&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005031609204303022%2BF2005031610541803024%2BF0000000000000000723&IS_ORG_ID=M0000000000000859293&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.y1%2Csort.m1%2Csort.d1%2Csort.y2%2Csort.m2%2Csort.d2&IS_SORT_KND=asc|title=従来ノ徒場ヲ懲役場ト改称|date=1873-02-25|publisher=国立公文書館|format=JPEG,PDF|accessdate=2023-03-12}}</ref> !! [[明治12年]]4月以降<ref name="S43犯罪白書" />
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| 笞100回遠流 || 流刑7年 || 3等流刑(役2年)<br />(実際は、準流10年) || 懲役10年 || 懲役10年 ||rowspan="3" | [[北海道]](実際は北海道に流さず、[[江戸時代]]と同じ[[遠島]]先) ||rowspan="3" | 北海道(実際は、北海道に流さず、懲役場収容) ||rowspan="3" | 北海道(明治14年8月まで北海道に流さず、懲役場又は[[集治監]]収容) ||rowspan="3" | 仮刑律制定時は、笞で100回叩かれる付加刑が定められ、流刑先の距離に応じて、重い順に遠流・中流・近流と3つ分かれていた。明治元年太政官達916号より、流刑先を北海道とし、服役年数で分けた。但し、北海道で受刑者の受け入れ態勢が整っていなかったため、流刑先は、北海道に流さず、江戸時代と同じ[[遠島]]先で流されていった。
新律綱領でも、北海道を流刑先とし、流刑を使役年数に応じて3つに分けていたが、発布前の明治3年[[11月17日]]に布告された准流法により、北海道に流さずに各地の徒場で、徒刑受刑者と区別する形で服役させた<ref name="准流法">{{Cite web|和書|author=太政官|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000888526&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E5%87%86%E6%B5%81%E6%B3%95&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005031609204303022%2BF2005031614023903030%2BF0000000000000331407&IS_ORG_ID=M0000000000000888526&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|title=准流法ヲ設ク|date=1870-11-17|publisher=国立公文書館|format=JPEG,PDF|accessdate=2023-03-12}}</ref><ref name="北海道に暫く流刑先にしなかった理由">{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=日本近代刑事法令集 改定律令|series=司法資料 別冊 仮刑律|volume=17|edition=上|date=1945-04|pages=9|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1269363/1/24|doi=10.11501/1269363}}</ref>。そのためか、改定律令では、流刑に当たる刑を懲役5年・7年・10年と懲役刑で統一している。
その後も[[明治14年]]8月に樺戸集治監が設置されるまで北海道に流さず、懲役場又は北海道以外の集治監に収容されていった。
|-
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また、改定律令施行年の明治6年から旧刑法施行前年の[[明治14年]]までに以下の府県が、執行を停止している。
:明治6年:[[東京府]](1月25日停止)<ref>{{Cite|author=太政官|authorlink=太政官 (明治時代)|title=東京府於テ笞杖ノ者懲役ニ処分|series=太政類典・第二編・明治四年~明治十年|volume=第三百六十三巻・治罪十七・監獄一|date=1973-01-25|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000859354&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E7%AC%9E&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005031609204303022%2BF2005031610541803024%2BF0000000000000000723&IS_ORG_ID=M0000000000000859354&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.y1%2Csort.m1%2Csort.d1%2Csort.y2%2Csort.m2%2Csort.d2&IS_SORT_KND=asc| accessdate =2022-03-05}}</ref><ref>{{Cite|author=太政官|authorlink=太政官 (明治時代)|title=第七号笞杖実決不相用向可届出ノ条|series=公文録・明治八年|volume=第二百三十五巻・明治八年三月・司法省伺(布達)|date=1975-03-27|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000104738&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E7%AC%9E&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032502414003284%2BF0000000000000002669&IS_ORG_ID=M0000000000000104738&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.y1%2Csort.m1%2Csort.d1%2Csort.y2%2Csort.m2%2Csort.d2&IS_SORT_KND=asc| accessdate=2022-03-05}}</ref>、[[埼玉県]](但し、一時復活の明治10年4月~明治11年8月の間は除く<ref>{{Cite|author=埼玉県|authorlink=埼玉県|title=政治部 刑罰2(第2輯前加)(明治5‐7年)|series=埼玉県史料|date=1872-1874|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M2007041211292350260&IS_LGC_S16=AND&IS_EXTSCH=F2009121017025600406%2BF2005022412244001427%2BF2005031812272303110%2BF2007041211285050217&IS_ORG_ID=M2007041211292350260&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|accessdate=2023-02-19}}</ref><ref>{{Cite|author=埼玉県|authorlink=埼玉県|title=政治部 刑罰3(第2輯上)(明治8‐10年)|series=埼玉県史料|date=1875-1877|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M2007041211285750226&IS_LGC_S16=AND&IS_EXTSCH=F2009121017025600406%2BF2005022412244001427%2BF2005031812272303110%2BF2007041211285050217&IS_ORG_ID=M2007041211285750226&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|accessdate=2023-02-19}}</ref>。)
:明治8年:[[長崎県]]<ref name="明治前期の監獄">{{Cite journal|和書|author=児玉圭司 |title=明治前期の監獄における規律の導入と展開 |journal=法制史研究 |ISSN=0441-2508 |publisher=法制史学会 |year=2015 |volume=64 |pages=1-57,en3 |naid=130008000861 |doi=10.5955/jalha.64.1 |url=https://doi.org/10.5955/jalha.64.1 |accessdate=2021-09-01}}</ref>
:明治11年:[[千葉県]]・[[栃木県]]・[[茨城県]]・[[群馬県]]・[[山梨県]]・[[静岡県]]・[[新潟県]]・[[福岡県]]<ref name="司法省第四刑事統計年報">{{Cite|author=司法省|title=刑事統計表 各廳職權 第四十號 各地方ノ便宜ニ依リ懲役百日以下ニ該リシ者ヲ笞杖ニ換テ處斷セシ員數|series=司法省刑事統計年報|volume=4|date=1882|pages=94-95|url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2937941/127|doi=10.11501/2937941|ncid=AN10028364|accessdate=2022-03-05}}</ref>、埼玉県(8月)<ref>{{Cite|author=埼玉県|authorlink=埼玉県|title=明治一一年 七月二六日(コマ番号27)|publisher=国立公文書館|series=埼玉県史料|volume=制度部 刑法(第2輯)(明治8‐12年)|date=1875-1879|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M2007041211292450261&IS_LGC_S16=AND&IS_EXTSCH=F2009121017025600406%2BF2005022412244001427%2BF2005031812272303110%2BF2007041211285050217&IS_ORG_ID=M2007041211292450261&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|accessdate=2022-03-05}}</ref><ref name="明治前期の監獄" />
173 ⟶ 175行目:
| 没収 ||colspan="8" | 新律綱領では、[[賄賂]]や[[窃盗]]で得た不法財物や禁物は国に没収され、恐喝・[[詐欺]]は本主に返還される。
|-
| [[晒 (刑罰)|晒]]||colspan="8" |罪人を縛り上げ路傍に置き見せしめにする刑。仮刑律・新律綱領で刑罰として明記されていない。[[1869年]]([[明治]]2年)[[7月8日]]に出された[[刑法官]]指令により、[[市中引き回し]]・[[鋸挽き]]と共に廃止するよう指示が出されている<ref>{{Cite journal|author=[[太政官 (明治時代)#
|-
| [[市中引き回し]]||colspan="8" |[[死刑囚]]を馬に乗せ、罪状を書いた捨札等と共に刑場まで公開で連行していく。仮刑律・新律綱領で刑罰として明記されていない。[[1869年]](明治2年)[[7月8日]]に出された[[刑法官]]指令により、[[鋸挽き]]・[[晒 (刑罰)|晒]]と共に廃止された<ref name="弁護士の誕生" />。ただし記録上では1870年(明治3年)[[5月27日]]まで、続いている<ref>{{Cite|author=[[若松県]]|title=旧若松県誌 政治部 刑1-3(明治2・3年) (122-127コマ)|publisher=国立公文書館|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M2007041211262650027&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E6%97%A7%E8%8B%A5%E6%9D%BE%E7%9C%8C%E8%AA%8C%E3%80%80%E3%80%80%E5%88%911-3%EF%BC%88%E6%98%8E%E6%B2%BB2%E3%83%BB3%E5%B9%B4%EF%BC%89&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017025600406%2BF2005022412244001427%2BF2005031812272303110%2BF2007041211260850002&IS_ORG_ID=M2007041211262650027&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc}}</ref>。
|-
|[[鋸挽き]]||colspan="8" |主人殺しをした磔刑受刑者が対象となる。実際に受刑者を穴晒箱に入れて首かせをかけ、[[釘]]締めにして晒した。加えて、[[田]][[畑]]・[[家屋|家]][[屋敷]]・[[家財]]の[[闕所]]が付加された。なお、実際に首を鋸で引くことはなく、事実上の磔刑の晒であった。仮刑律・新律綱領で刑罰として明記されていない。[[1869年]](明治2年)[[7月8日]]に出された[[刑法官]]指令により、[[鋸挽き]]・[[晒 (刑罰)|晒]]と共に廃止された<ref name="弁護士の誕生" />。その後、晒と市中引き回しのようにしばらく継続されたかは不明。
|-
|colspan="9" | その他
|-
| 棒鎖 ||colspan="8" | 江戸時代の刑罰方法の中では、[[手鎖]]が最も近い。執行方法は、鉄棒を両足に
明治8年([[1875年]])[[3月20日]]に出された司法省布達第4号より、女性に棒鎖は科さずに闇室(最長7日間、光の届かぬ部屋に閉じ込めて、接見を禁じて食事のみ与える<ref name="監獄則 第8条 賞罰" />。)の刑罰が科されることとなった<ref>{{Cite web|author=太政官|authorlink=太政官 (明治時代)|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000104735&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E9%97%87%E5%AE%A4&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032502414003284%2BF0000000000000002669&IS_ORG_ID=M0000000000000104735&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|title=第四号婦女ハ監獄則闇室ノ条ニ依リ処分ノ条|date=1875-03-20|publisher=[[国立公文書館]]|format=JPEG,PDF|accessdate=2024-07-28}}</ref>。
|-
| 刑罰の適用制限 ||colspan="8" | 年齢や障害の程度により、刑罰適用が制限されている。
276 ⟶ 280行目:
:・重度障害者(新律綱領では、窃盗や傷害を行った場合。但し死刑を科された両目を失明している視覚障害者は改定律令第45条より適用されない。)
:・中度障害者(新律綱領では流刑以下の犯罪を犯した場合。改定律令では、強盗と不同意性交を除いた犯罪を犯した障害者。但し、片目を失明している視覚障害者は改定律令第45条より適用されない。)
:・改定律令制定後で、15歳以下か70歳以上もしくは中度障害者が官吏として働いているときに窃盗や強盗、贈収賄、不同意性交などの廉恥を甚だしく破る犯罪を犯し懲役1年以上の刑が科せられるとき。但し、[[明治10年]][[11月2日]]に布告された明治10年太政官布告76号により、適用されなくなる<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官布告 第76号|series=法令全書 |volume=明治10年|date=1945-04|pages=65|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787957/1/74|doi=10.11501/787957}}</ref>。)
|-
| 過失殺傷収贖 ||colspan="19" | [[過失]]で被害者を殺傷した場合に適用される。また、納められた金銭は、被害者のための埋葬か医療費として支給される。但し、加害者が以下の条件のどれかに当てはまる場合、上記の新律綱領か改定律令の収贖の金額で金銭を納める。
319 ⟶ 323行目:
| - || - || - || - || - || - || - || - || - || - || - || - || - || - || 終身懲役 || -|| 終身懲役
|-
| 笞100回遠流 || - ||rowspan="3" | 永遠禁錮<ref name="永遠禁錮">永遠禁錮を流刑の閏刑としたのは、仮刑律制定前であるが、明治元年[[9月8日]]に[[岸和田藩]][[家臣]]の岡部正路に対して、[[明治天皇]][[即位]]による[[大赦]]により1等減刑し、永遠禁錮の例があったため。なお、同年[[9月24日]]に[[蒔田広孝|蒔田相模守]]から[[刑法官]]へ主家の[[留守居役]]から100[[両]]と[[宿泊施設|旅宿]]の[[箪笥]]から[[太政官札|金札]]1640両を盗んだ武士に対して、同様の理由で1等減じて[[武士]]の身分を剥奪したうえでの斬首刑から剥奪せずに切腹にするよう伺いを立てている(この武士に対して、刑法官は廉恥を破る甚しき犯罪に該当するため、梟首から1等減刑し斬首刑としている)。</ref><ref name="仮刑律例1">{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=日本近代刑事法令集 仮刑律例 明治元年辰9月24日 蒔田相模守より伺来|series=司法資料 別冊 仮刑律|volume=17|edition=上|date=1945-04|pages=308-309|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1269363/1/175|doi=10.11501/1269363}}</ref><br /><ref name="流刑ヲ永禁錮ニ改ム">{{Cite web|和書|author=太政官|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000888878&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E6%B0%B8%E7%A6%81%E9%8C%AE&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005031609204303022%2BF2005031614023903030%2BF0000000000000331417&IS_ORG_ID=M0000000000000888878&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.y1%2Csort.m1%2Csort.d1%2Csort.y2%2Csort.m2%2Csort.d2&IS_SORT_KND=asc|title=岸和田藩士岡部正路相馬肇ノ流刑ヲ永禁錮ニ改ム|date=1868-09-08|publisher=国立公文書館|format=JPEG,PDF|accessdate=2023-03-26}}</ref><ref name="明治天皇即位大赦">{{Cite web|和書|author=太政官|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000057787&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E5%A4%A7%E8%B5%A6&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032421074403277%2BF0000000000000001040&IS_ORG_ID=M0000000000000057787&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.y1%2Csort.m1%2Csort.d1%2Csort.y2%2Csort.m2%2Csort.d2&IS_SORT_KND=asc|title=御即位被為済候ニ付大赦被仰出|date=1868-09-08|publisher=国立公文書館|format=JPEG,PDF|accessdate=2023-03-26}}</ref>
|| 笞100回遠流 || 流刑7年 || 200日 || rowspan="3" | 永遠禁錮<ref name="永遠禁錮" /><ref name="流刑ヲ永禁錮ニ改ム" /><br /><ref name="仮刑律例1" /><ref name="明治天皇即位大赦" />|| 流刑7年 || 3等徒役<br />(準流10年) || 3等流刑(役2年)<br />(実際は、準流10年) || 辺戍10年 || 禁錮10年 || 3等流刑(役2年)<br />(実際は、準流10年) || 3等流刑(役2年)<br />(実際は、準流10年) || 懲役10年 || 禁錮10年 || 禁獄10年 || 3等流刑(役2年)<br />(実際は、準流10年) || 懲役10年 ||rowspan="3" | 士族が流刑の刑罰を科される場合の閏刑は、以下のそれそれ刑法によって執行される。
464 ⟶ 468行目:
| colspan="3"|罰棒||colspan="29"|明治5年[[10月24日]]に布告された明治5年太政官布告第321号より、13等以上の官位を有する官吏が、公務上又は過誤失錯を犯し、刑罰が徒刑1年以上3等流刑以下の相当である場合、刑罰を受ける代わりに、給与の半分を国に納める。14等以下の場合は、平民と同様に前表「明治初期における収贖・贖罪」の贖罪の金額を納める。
|-
| colspan="3"|勅任官・奏任官が犯罪を犯した場合||colspan="29"|新律綱領では、[[明治天皇|天皇]]に申し上げた上で、取り調べを受ける。なお、官吏でない華族も同様に対応される。<br />その後、微罪の場合、申し上げた上で取り調べるのは手続きに時間がかかり却って科刑対象者に不都合が生じることを理由に、明治5年[[3月12日]]に布告された明治5年太政官布告第80号<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官附集議院 第76号|series=法令全書|volume=明治5年|date=1989-01-26|pages=78|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787952/1/95|doi=10.11501/787952}}</ref>により、急を要する場合は取り調べてから天皇に申し上げが可能となり、公務上又は過誤失錯を犯した場合で罪が明白であり杖笞刑が科される場合は、取り調べをせず、執行してから申し上げることも可能となる。また、同年[[10月13日]]に布告された明治5年太政官布告第307号<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官附集議院 第307号|series=法令全書|volume=明治5年|date=1989-01-26|pages=206|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787952/1/160|doi=10.11501/787952}}</ref>より、急を要する場合は犯罪の種類や科される刑罰に関係なく取り調べてから申し上げるが可能となる。
|-
| colspan="3"|[[旧日本軍]][[軍人]][[軍属]]が犯罪を犯した場合||colspan="29"|明治5年[[2月12日]]に布告された明治5年太政官布告第43号<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官附集議院 43号|series=法令全書|volume=明治5年|date=1989-01-26|pages=206|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787952/1/83|doi=10.11501/787952}}</ref>により、[[出征]][[行軍]]中以外で犯罪を起こしたり、旧日本軍軍人軍属以外の者に対して犯罪を起こした場合は、海陸軍刑律(明治5年2月施行)で裁かず、新律綱領に基づいて裁かれた。<br />その後、明治6年[[4月13日]]に布告された明治6年太政官布告第132号<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官 132号|series=法令全書|volume=明治6年|date=1989-05-15|pages=169|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787953/1/159|doi=10.11501/787953}}</ref>により、軍人軍属が犯罪を犯した場合は以下のように対処した。
:軍人軍属以外の者に対して犯罪を犯した場合:海陸軍刑律により裁かれる。
:軍人軍属以外と一緒に犯罪を犯した場合:軍人軍属は海陸軍刑律により裁かれ、軍人軍属以外は、新律綱領か改定律令によって裁かれる。
:軍人軍属が軍務に服していない状態で犯罪を犯した場合:新律綱領か改定律令によって裁かれる。
:軍人軍属が脱獄した場合:軍事裁判所と裁判所で協議して、どちらで裁くか決める。
なお、海陸軍刑律第7条により、旧日本軍を辞めたり(懲戒免職含む)、兵役を終えてから3年以内に犯罪を犯した場合と第6条により戦時において、敵の[[スパイ]]や[[兵士]]等に[[賭博]]や[[風俗店|風俗]]の遊興の仲介を生業とする者は海陸軍刑律によって裁かれる<ref>{{Cite|author=兵部省|authorlink=兵部省 (明治時代)|title=海陸軍刑律 第6条・第7条|date=1981-08-28|pages=3|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/794406/1/7|doi=10.11501/794406}}</ref>。
更に、明治7年[[5月18日]]に太政官により出された指令より、犯罪が発覚した時点で除隊して軍人軍属でない状態であっても、犯罪を犯した時に軍人軍属であった場合は、海陸軍刑律により裁かれる<ref>{{Cite web|和書|author=太政官|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000853213&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E8%BB%8D%E4%BA%BA%E8%BB%8D%E5%B1%9E%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E5%85%8D%E5%AE%98%E9%99%A4%E9%9A%8A%E5%BE%8C%E7%99%BA%E8%A6%9A%E3%82%B9%E3%83%AB%E8%80%85&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005031609204303022%2BF2005031610541803024%2BF0000000000000000585&IS_ORG_ID=M0000000000000853213&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|title=軍人軍属犯罪免官除隊後発覚スル者取扱方・二条|date=1874-05-18|publisher=国立公文書館|format=JPEG,PDF|accessdate=2024-06-08}}</ref>。
|-
|colspan="3"|官吏でない[[地方公務員]]が犯罪を犯した場合||colspan="29"|[[明治7年]][[6月2日]]に明治7年太政官布告第71号<ref>{{Cite|author=司法省秘書課|authorlink=司法省 (日本)|title=太政官 132号|series=法令全書|volume=明治7年|date=1989-05-15|pages=324|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787954/1/226|doi=10.11501/787954}}</ref>が布告されるまでは、官吏でない[[郡区町村編制法#内容|群や区町村]]([[大区小区制]]により編成されていた自治体含む。また、[[郡区町村編制法]]制定後の群区長と群区[[書記]]は除く。)の地方公務員は平民と同様に刑罰が科されたが、この布告により、俸給を基準に奏任相当は月給350円以上<ref>現在の価値で700万円</ref><ref name="明治1円の価値">{{Cite web|和書
|}
</div>
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=== 旧・刑法 ===
{{日本の法令
| 題名 =
| 正式名称 =
| 通称 =
| 番号 =
| 効力 = 廃止
| 種類 = [[刑法]]
| 成立 =
| 公布 = {{日本の法令/公布日/年月日|Q98636424}}
| 施行 =
| 所管 = [[司法省 (日本)|司法省]]
| 内容 = 主な犯罪の成立要件とそれに対する刑罰
| 関連 =
| 制定時題名 =
| リンク = [{{NDLDC|787960/80}} 法令全書]、{{Egov law|113DF0000000036}}
| ウィキソース = 刑法 (明治13年太政官布告第36号)
}}
'''刑法(明治13年太政官布告第36号)'''<ref group="※">[[s:刑法 (明治13年太政官布告第36号)|刑法 (明治13年太政官布告第36号) - Wikisource]]</ref>は、今日では現行の刑法と区別して「'''旧・刑法'''」と呼称されている。また、施行年に基づいて「'''明治15年刑法'''」と称される場合もある。1880年(明治13年)[[7月17日]]に[[治罪法]](刑事訴訟法)とともに制定され、1882年(明治15年)[[1月1日]]に新律綱領・改定律例に代わって施行された。全4編、430条から成る。
[[1872年]]([[明治5年]])頃から[[司法省 (日本)|司法省]]内で本格的な刑法草案の起草が進められていたが、「校正律例稿」(1874年
犯罪を重罪・軽罪・違警罪の3種類に分けて規定している。基本的には[[1810年]]に制定されたフランス刑法典を基本にしているが、[[自首]]による罪の減軽(85条以下)、[[親族]]関係への配慮(犯罪を犯した者を[[犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪|蔵匿・隠避]]した親族に対しては罪を問わない(153条)、親族間の[[窃盗罪|窃盗]]については罪を問わない(377条 - [[親族相盗例]])、本人または親属による[[親告罪]]の設置など)、[[不敬罪]]の厳罰化(117条、119条)など、日本の伝統的な法思想に基づく規定もある。対外的には[[日本]]が[[文明国]]であることのアピールを目指した側面と、国内的には[[自由民権運動]]の激化に対抗するための治安法制としての側面が見られる。
626 ⟶ 632行目:
|+旧・刑法における刑罰
|-
!rowspan="2" | 犯罪の
|-
! 監獄則
|-
|rowspan="5" | 重罪 ||colspan="2" | [[死刑]] || - || - || - || [[監獄]]内で非公開の[[絞首刑]]。
|-
| [[無期刑|無期]]
|-
| 有期
|-
| 重[[懲役]] || 重[[禁獄]] || 9年以上11年以下 ||rowspan="4" | 懲役場 ||rowspan="4" | 地方監獄 ||rowspan="2" |
|-
| 輕懲役 || 軽禁獄 || 6年以上8年以下
|-
|rowspan="3" | 軽罪 ||colspan="2" | 重[[禁錮#旧刑法における禁錮|禁錮]]||rowspan="2" | 11日以上5年以下||rowspan="2" | 刑罰名の「重軽」は、労役に服するのが重禁錮で、服さないのが軽禁錮である。
|-
|colspan="2" | 輕禁錮
|-
|colspan="2" | [[罰金]] || 2円以上 || - || - || 完納出来ない場合、1円を1日換算して、軽禁錮の刑に服する。
|-
|rowspan="2" | 違警罪の主刑 ||colspan="2" | [[拘留]] ||1日以上10日以下 || 拘留場(
|-
| colspan="2" |[[科料]] || 5錢以上1円95錢以下 || - || - || 完納出来ない場合、1円を1日換算して、拘留の刑に服する。
|-
|colspan="7" | 付加刑
|-
| 剥奪[[公権]] ||colspan="6" | [[公権]]が剥奪される<ref>剥奪された場合、以下のことが出来なくなる。停止の場合は、一定期間できなくなる。<br />・官吏、軍人になること<br />・[[年金]]受給や国内の[[勲章]]授与<br />・国外の勲章佩用<br />・[[裁判]]で[[証人]]として出廷すること
|-
| 停止公権 ||colspan="6" | 公権が一定期間停止される。禁錮刑
|-
| [[禁治産]] ||colspan="6" | 自らの[[財産]]を管理・処理を出来なくなる。重罪を犯した場合に対象となる。
|-
| [[監視]] ||colspan="6" | 一定の刑を終えた受刑者に、釈放後ある期間内住居を移転することを禁じ、かつ警察官にその行動を見守らせる。<br />監視期間は、死刑
|-
| 罰金 ||colspan="6"|
|-
| 沒收 ||colspan="6" | 違法物品、犯罪に使われた物、犯罪によって得られた金品を対象に、受刑者から没収される。
|}
{| class="wikitable collapsible autocollapse" style="font-size:80%"
|+旧・刑法と新律綱領・改定律令の刑罰対比と旧・刑法第3条に関すること
|-
!colspan="2" rowspan="2" | 新律綱領・改定律令 !!colspan="2" | 旧刑法
|-
! 国事に関する罪以外 !! 国事に関する罪
|-
|colspan="2" | 斬首刑 ||colspan="2" rowspan="2" | 死刑(絞首刑)
|-
|colspan="2" | 絞首刑
|-
| 終身懲役 || 禁獄終身 || 無期徒刑<br />(新律綱領・改定律令<br />では終身懲役) || 無期流刑<br />(新律綱領・改定律令<br />では禁獄終身)
|-
| --- || --- || 有期徒刑 || 有期流刑
|-
| 懲役10年 || 禁獄10年 || 重懲役 || 重禁獄
|-
| 懲役7年 || 禁獄7年 || 輕懲役 || 軽禁獄
|-
| 懲役5年 || 禁獄禁錮5年 ||colspan="2" rowspan="15" | 重禁錮・輕禁錮<br />(新律綱領・改定律令では前者は懲役刑、後者は禁獄禁錮刑)
|-
| 懲役3年 || 禁獄禁錮3年
|-
| 懲役2年半 || 禁獄禁錮2年半
|-
| 懲役2年 || 禁獄禁錮2年
|-
| 懲役1年半 || 禁獄禁錮1年半
|-
| 懲役1年 || 禁獄禁錮1年
|-
| 懲役100日 || 禁獄禁錮100日
|-
| 懲役90日 || 禁獄禁錮90日
|-
| 懲役80日 || 禁獄禁錮80日
|-
| 懲役70日 || 禁獄禁錮70日
|-
| 懲役60日 || 禁獄禁錮60日
|-
| 懲役50日 || 禁獄禁錮50日
|-
| 懲役40日 || 禁獄禁錮40日
|-
| 懲役30日 || 禁獄禁錮30日
|-
| 懲役20日 || 禁獄禁錮20日
|-
|colspan="2" | 収贖・贖罪・罰金で2円以上 || colspan="2" |罰金
|-
| 懲役10日 || 禁獄禁錮10日 ||colspan="2" | 拘留
|-
|colspan="2" | 収贖・贖罪・罰金で2円未満 ||colspan="2" | 科料
|-
|colspan="4" |'''旧・刑法と新律綱領・改定律令の刑罰のどちらかを科す時(旧・刑法第3条)'''
|-
|colspan="4" | 旧刑法第3条より、旧刑法施行以前に犯した犯罪で判決が下されていない者に関しては、旧刑法と改定律令・新律綱領を比べて刑罰が軽い方で処罰することになっており、明治14年太政官布告第81号により以下の条件で刑罰を科すことになった<ref name="M14-81">{{Cite|author=内閣官報局|title=法令全書 明治14年 太政官布告 第八十一号|pages=145-147|url=https://dl.ndl.go.jp/pid/787961/1/103|doi=10.11501/787961}}</ref>。
|-
|colspan="4" | 1.旧刑法で定めた刑罰の刑期を科す時、新律綱領・改定律令で定めた刑期を超えてはならない。<br />例:新律綱領・改定律令で懲役100日以下の刑に当たり、旧刑法にいおいて2月以上4年以下の重禁錮に当たる時は、旧刑法に基づいて2か月以上100日以下の重懲役で科す。
|-
|colspan="4" | 2.旧刑法と新律綱領・改定律令で定めた刑罰の刑期に上限と下限の定めがある場合は、旧刑法と新律綱領・改定律令でそれぞれ短い方にして、その範囲内で科す。<br />例:新律綱領・改定律令では1年以上3年以下の懲役、旧刑法で3か月以上4年以下の重禁錮の時は、旧刑法に基づいて3か月以上3年以下の範囲の重懲役を科す。
|-
|colspan="4" | 3.旧刑法と新律綱領・改定律令で定めた刑罰で労役の有無に違いがある場合は、無い方の法律に基づいて刑罰で科す。但し、刑期は2に従い、どちらも短い方にして、その範囲内で科す。<br />例1:新律綱領・改定律令では禁獄30日で、旧刑法で1か月以上1年以下の重禁錮の時は、新律綱領・改定律令に基づいて禁獄30日のままで科す。<br />例2:新律綱領・改定律令では2ヵ月以上3年以下の禁獄で、旧刑法で2か月以上2年以下の重禁錮の時は、新律綱領・改定律令に基づいて2ヵ月以上2年以下の範囲で禁獄を科す。
|-
|colspan="4" | 4.旧刑法で定めた収贖・贖罪・罰金の金額が新律綱領・改定律令で定めた金額を超えて科してはならない。
|-
|colspan="4" | 5.罰金・科料を多数科された場合は、旧刑法か新律綱領・改定律令のどちらか多い方に科されれた方の法律に基づいて納付する。<br />但し、金額は、両方の法律で定めた少ない方で科す。
|-
|colspan="4" | 6.旧刑法で自由刑(罰金・科料以外の刑罰)が科される場合で、新律綱領・改定律令において財産刑の付加刑が無い場合は、付加刑を科さない。
|-
|colspan="4" | 7.旧刑法で定めた刑罰が財産刑(罰金・科料)で新律綱領・改定律令が自由刑である場合は、旧刑法に基づき財産刑(罰金・科料)が科される。<br />但し、逆の場合は、新律綱領・改定律令で財産刑が科される。
|-
|colspan="4" | 8.新律綱領・改定律令で財産刑が科された者で、完納できない場合は、未納分を1円当たり1日に換算して、軽禁錮又は拘留を科す。<br />但し未納分が1円未満の場合は1日に換算し、拘留1日を科す。
|-
|colspan="4" | 9.新律綱領・改定律令で自由刑に当たり、旧刑法で輕懲役(国事に関する罪では軽禁獄)以上の刑罰が科せられる場合は、旧刑法の付加刑は科さないが、新律綱領・改定律令に基づいて除族・追奪位記・没収などの付加刑が科される。
|-
|colspan="4" | 10.旧刑法で定めた刑罰で重軽禁錮に当たる者は、監視の付加刑は科されない。
|-
|colspan="4" | 11.華族と士族で、重禁錮以下の刑罰が科される場合は、身分剝奪はされない。
|-
|colspan="4" | 12.新律綱領・改定律令で棒鎖の刑罰が科される者は、他の刑に変更せずに、そのまま科す。<br />但し、女性の場合は明治8年([[1875年]])[[3月20日]]に出された司法省布達第4号より、棒鎖は科さずに闇室(最長7日間、光の届かぬ部屋に閉じ込めて、接見を禁じて食事のみ与える<ref name="監獄則 第8条 賞罰" />。)の刑罰が科される<ref>{{Cite web|author=太政官|authorlink=太政官 (明治時代)|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000104735&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E9%97%87%E5%AE%A4&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032502414003284%2BF0000000000000002669&IS_ORG_ID=M0000000000000104735&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|title=第四号婦女ハ監獄則闇室ノ条ニ依リ処分ノ条|date=1875-03-20|publisher=[[国立公文書館]]|format=JPEG,PDF|accessdate=2024-07-28}}</ref>。
|-
|colspan="4" | 13.再犯や情緒酌量の余地の有無、年齢などを加味して刑の加減をした上で、どちらの法律を適用するか決めること。
|}
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** [[聴覚障害者|瘖唖者]](いんあしゃ)減軽規定(旧・40条)の削除
** [[尊属殺|尊属殺人罪]](旧・200条)・尊属[[傷害罪#傷害致死罪|傷害致死罪]](旧・205条2項)・尊属[[遺棄罪]](旧・218条2項)・尊属[[逮捕・監禁罪|逮捕監禁罪]](旧・220条2項)の削除
**: 1973年(昭和48年)の[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]の[[尊属殺重罰規定違憲判決]]が[[確定判決]]となった<ref>尊属殺重罰規定違憲判決:最高裁判所昭和48年4月4日大法廷判決・[[刑集]]27巻3号265頁-[https://www.courts.go.jp/
=== 平成10年代(平成時代中期 - 末期) ===
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* 強姦罪([[b:刑法第177条|刑法177条]])を「[[強制性交等罪]]」に名称を変更し、法定刑の下限を引き上げ。性別を問われなくなり、被害者からの[[親告罪]]から非親告罪へ変更され、集団強姦罪が廃止される。[[6月23日]]公布、平成29年[[7月13日]]に施行。
;; (平成29年法律第67号)<ref>{{日本法令索引|id=0000142614|name=組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律}}</ref>
* [[組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律]](組織的犯罪処罰法)の改正に伴い、国民の国外犯として、新たに[[贈賄罪]]が追加された。
; 2018年(平成30年)改正(平成30年法律第72号)<ref>{{日本法令索引|id=0000145663|name=民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律}}</ref>
832 ⟶ 924行目:
; 2022年(令和4年)改正(令和4年法律第67号)<ref>{{日本法令索引|id=0000158407|name=刑法等の一部を改正する法律}}</ref>
* [[侮辱罪]](刑法231条)の法定刑の上限を引き上げ。これまで法定刑は「拘留又は科料」であったが、「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に改められた。令和4年[[6月13日]]成立、[[6月17日]]公布。公布後20日を経過した日([[7月7日]])に施行。
* [[懲役刑]]と[[禁錮刑]]を[[拘禁刑]]に統一<ref> {{cite web|url=https://www.kanpo.go.jp/old/20220617/20220617g00129/20220617g001290010f.html|title=インターネット版官報 令和4年6月17日 号外第129号|accessdate=2025年6月7日|page=10|publisher=国立印刷局}} </ref>。拘禁刑の受刑者は「改善更生を図る」ことを明記した<ref> {{cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001437235.pdf|title=拘禁刑下の矯正処遇等について|accessdate=2025年6月7日|publisher=法務省矯正局|format=pdf}}</ref>。
; 2023年改正(令和5年)改正(令和5年法律第66号)<ref>{{日本法令索引|id= 0000161544 |name=刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律}}</ref>
* 強制わいせつ罪(176条)、強制/準強制性交等罪(177条/178条)及び各致死傷罪(181条)、強盗・強制性交等罪及び同致死傷罪(241条)を[[不同意わいせつ罪]]、[[不同意性交等罪]]、[[強盗・不同意性交等罪]]へと罪名変更及び性犯罪の成立要件の見直し、性的同意年齢を13歳から16歳へ引き上げ。また、十六歳未満の者に対する面会要求等罪(182条)を新設し、旧182条の淫行勧誘罪を欠番の183条へ移動。2023年(令和5年)6月23日公布、同年7月13日施行。
== 脚注 ==
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* {{Cite | 和書 | editor = 山野金蔵 | title = 新旧刑法対照 | year = 1908 | publisher = 有斐閣 | id = {{NDLJP|794027}} | doi = 10.11501/794027 }}(明治13年太政官布告第36号「刑法」と明治40年法律第45号「刑法」の新旧条文対照表)
* [http://over.6pb.info/wiki/index.php?%E6%B3%95%E5%BE%8B%2F%E5%88%91%E6%B3%95%2F%E6%B3%95%E5%AE%9A%E5%88%91 法定刑一覧]
* [https://
* {{Kotobank|1=刑法}}
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