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{{出典の明記|date=2022年8月}}
{{Law}}
{{日本の犯罪
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| 実行の着手 = -
| 既遂時期 = 身体の自由が奪われた時点
| 法定刑 = 3月以上7年以下の懲役拘禁刑
| 未遂・予備 = なし([[暴行罪]]成立の可能性)
|}}
{{日本の刑法}}
{{ウィキプロジェクトリンク|刑法 (犯罪)}}
'''逮捕・監禁罪'''(たいほ・かんきんざい)は[[刑法 (日本)|刑法]][[b:刑法第220条|220条]]に規定されている罪。
不法に人を逮捕し、または監禁する行為を内容とする。

== 法定刑 ==
[[法定刑]]は3月以上7年以下の[[懲役拘禁刑]]である。組織的な様態の場合は[[組織的な犯罪処罰及び犯罪収益の規制等に関する]]3(組織的犯罪処罰法)3条1項8号が適用され3月以上10年以下の懲役拘禁刑)。
逮捕・監禁の結果として[[傷害]]または死亡の結果が生じた場合には、逮捕・監禁致死傷罪([[b:刑法第221条|刑法221条]])に該当する。
 
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学説は、現実に移動の意思があるときに移動できる自由という「現実的な自由」が侵害されることが必要とする立場(現実的自由説)と、もしも移動しようと思ったのであれば移動できる自由という「可能的な自由」あるいは「潜在的な自由」の侵害であれば良いとする立場(可能的自由説)が対立している。
 
現実的自由説は、自由の意識を欠くの自由を侵害することはできないということを根拠として、現実に被害者の身体・行動の自由が侵害されることが必要であると考える。この説によれば上の事例は、単に鍵をかけただけでは監禁罪は成立せず、被害者が目を覚まし、自分が閉じ込められているという現実的な認識を得た時点から監禁罪が成立することになる。従って、施錠から開錠までの間に被害者が一度も目を覚まさず、自由が侵害されていることを現実には認識しなかった以上、監禁罪は成立しない。
 
一方、可能的自由説は、客観的に見て人の意思活動の自由を制限する危険があれば足りるとして、被害者が現実に自由を侵害されていると認識することまでは必要がないと述べる。そう考えると上の事例は、仮に「監禁」中に被害者が目を覚まして部屋から出ようとしたら、それが不可能だったのであるから、可能的な自由が侵害されている言える。よって、現実には被害者が監禁の事実を認識しなかったとしても、施錠した時点から監禁罪が成立する。
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可能的自由説は前述のように、被害者の認識を不要と考える。そのため、被害者が監禁されていると認識していないこのようなケースでも、客観的・社会的に見て監禁と評価できる行為であれば監禁罪の成立を認める。
 
一方現実的自由説に立てば、被害者が現実的な自由の侵害を認識することが必要なので、このようなケースでは監禁罪は成立しない。もっとも、被害者が監禁されていることに気づき、降車を要求したのにもかかわらず監禁状態を継続すれば、その時点からは監禁罪となる。
 
これが問題となった事件で判例は、被害者に監禁の認識は必要ないとして、監禁罪の成立を認めている(広島高判昭和51年9月21日刑月8巻9=10号380頁)。
 
== 客体 ==
本罪は人の身体・行動の自由を侵害する罪であるから、客体も単に人であるだけでは不十分で、場所的移動の(意思に基づく)能力を有する自然人に限られるとするのが通説的見解である。このような能力を有しない、生まれたばかりの嬰児や意識喪失状態のなどは客体から除外される。この能力は事実的なもので足り、法的に有効な意思能力を前提とする必要まではないと解されている。また、移動の意思を有するものであれば、自力で移動し得なくとも、その意思を他人に伝えてその助けを得て移動し、或いは器械・器具などを自ら利用することによって移動し得ることで足りるので、車椅子で移動することのできる身体障害者なども当然本罪の客体に含まれる。
 
== 行為 ==
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監禁とは、人を一定の限られた場所から脱出することを不可能に、或いは著しく困難にすることによって、場所的移動の自由を制限することを言う。部屋に閉じ込めるなどがその例であり、その中で限られた移動の自由が存在しても、そこから外に移動できない場合には、なお監禁罪の成立を肯定することができる。移動の自由を奪う手段には、逮捕の場合と同様、法文上制限はない(暴行、脅迫、偽計など様々な手段が有り得る。)。
 
ここで、監禁は、閉所に拘束せずとも、移動や脱出を不可能又は著しく困難にすれば、例えば(関係を持とうという意図のもと)女性被害者をバイクの後ろに乗せて走るだけでも成立し、更にここで女性被害者が飛び降りるなどして怪我を負えば[[監禁致傷罪]]が成立する<ref>[httphttps://www.courts.go.jp/apphanrei/hanrei_jp51745/detail2?id=51745/index.html 最高裁判所第一小法廷 昭和38年4月18日 昭和37(あ)1778 決定 棄却 刑集 第17巻3号248頁]</ref>。
 
また、たとえ被害者が自らが監禁されているとの認識を持たなかった場合でも、偽計により生じた錯誤により限られた場所から移動・脱出する事を困難にせしめているのであれば、監禁として成立する<ref>[httphttps://www.courts.go.jp/apphanrei/hanrei_jp50561/detail2?id=50561/index.html 最高裁判所第二小法廷 昭和33年3月19日 昭和32(あ)2587 決定 棄却 刑集 第12巻4号636頁]</ref>。
 
== 継続犯 ==
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== 逮捕・監禁致死傷罪 ==
故意の逮捕・監禁行為から[[過失]]により死傷の結果が生じた場合に重く処罰する[[結果的加重犯]]である。
監禁されている被害者が脱出のために高所から飛び降りて死傷した場合や、絶望した被害者が目を離した隙に自殺したような場合がこれに該当する。過失による事が条件となるため、暴行などによる場合は該当せず、それぞれ別々に処断される。
 
傷害の罪と比較して、重い刑により処断される。すなわち、致傷については逮捕・監禁罪と傷害罪の法定刑を比べ、致死については逮捕・監禁罪と傷害致死罪の法定刑を比べ、下限・上限ともに重いほうを選ぶということである。具体的には、致傷の場合は「3月以上15年以下の懲役拘禁」、致死の場合「3年以上の有期懲役拘禁」となる。
 
== その他加重類型 ==
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* [[特別公務員職権濫用罪]]([[b:刑法第194条|刑法194条]])
: [[裁判]]、[[検察]]若しくは[[警察]]の職務を行う[[公務員]]が、職権を濫用して人を逮捕・監禁した場合。
* 組織的逮捕監禁罪([[組織的な犯罪処罰及び犯罪収益の規制等に関する]]3(組織的犯罪処罰法)3条1項8号)
* [[人質による強要行為等の処罰に関する法律]]
: 逮捕・監禁した人を[[人質]]として第三者に行為を要求した場合に重く処罰する。
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== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 出典 ===
<references/>
 
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{{日本の刑法犯罪}}
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:たいほかんきんさい}}
[[Category:日本の犯罪類型]]