「黙秘権」の版間の差分
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== 沿革と展開 ==
=== 欧米 ===
古く[[自白]]は「証拠の王」または「証拠の女王」<ref name="taikei3">熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系II自白』1970年、p.3</ref>と呼ばれ、有罪の認定に最も重要な要素とされていた。例えば[[カロリーナ刑事法典]]では、刑の言い渡しの要件として、犯人の自白または2人以上の信憑性のある証人の証言が必要とされた<ref name="taikei3" />。しかし、[[フランス革命]]を契機に文明国では自白の強制を防止するための法制が必要と考えられるようになった<ref name="taikei4">熊谷弘・浦辺衛・佐々木史朗・松尾浩也編 『証拠法大系II自白』1970年、p.4</ref>。
黙秘権は17世紀後半でイギリスにおいて成立した<ref name="kijima" /><ref name="mitsudou102">[[光藤景皎]] 『刑事訴訟法 I』2007年、p.102</ref>。当時の星法院裁判所(スター・チェンバー)の審理は何の訴えも待たずに開始され、被告人には宣誓した上で供述することが義務づけられていた<ref name="mitsudou102" />。このような制度に反対していた一人がリルバーン(Lilburn)であり、彼は1637年に星法院裁判所での宣誓供述を拒否したため処罰された<ref name="mitsudou102" />。
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三 被告人が氏名を黙秘し監房番号の自署、拇印等により自己を表示し、弁護人が署名押印した上提出した弁護人選任届を第一審裁判所が適法な弁護人選任届でないとして却下したため、被告人が結局その氏名を開示しなければならなくなつたとしても、その訴訟手続およびこれを認容した原判決が憲法第三八条第一項、第三七条第三項に反することにはならない。<br>
四 労働組合員相互間において会社との交渉方針等を協議中、応援に来集した組合員以外の者が多数参加しその集団の威力を背景として業務に従事中の新聞記者又は警察職員の業務を妨げたような場合は、憲法第二八条の保障する団体行動に該当するといえない。
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}}</ref>のように、氏名については原則として黙秘権の保障が及ばないことが判示されたケースもある。氏名について黙秘権が及ぶケースとしては、有印私文書偽造・同行使罪で私文書の作成者として特定されている被告人が自己の氏名を明らかにすると、被告人が他人の氏名を冒用していることが判明する場合等は自己の氏名を供述することで刑事上の責任を問われるおそれのある事項として氏名についても黙秘権の保障が及ぶと考えられている。とは言え、起訴された者が、[[不法滞在]]外国人であったり、他の犯罪嫌疑で[[指名手配]]を受けていた者で、人違いで起訴された場合などでは氏名についての黙秘権の保障が及ばないかどうかについては争いがある。
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| 裁判要旨 =一 第一回供述調書作成八日後に同一検事が更に被疑者を取り調べる場合には、改めて供述拒否権を告知しなくても刑訴一九八条二項に反しない。<br>
二 供述拒否権を告知しないで取り調べても憲法三八条一項に反するものとはいえない。
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}}</ref>は、黙秘権の不告知は供述の任意性に影響しないとしている{{sfn|山名京子|1994|pp=53-56, 85}}。
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* 被告人が終始黙秘を続けた[[和歌山毒物カレー事件]]の[[和歌山地方裁判所]]でも、同事件の被害者の会を中心に、被告人の黙秘権行使に反対する[[署名運動]]が展開された。和歌山地裁の判決文は、黙秘の事実は事実認定の資料になっていないことを明言した上で、黙秘権の趣旨並びに正当性を説明する異例の言及を行っている。
* 被疑者が終始黙秘権を行使したことにより、「供述できない理由がある」・「やましいことがある」と判断され[[状況証拠]]によって被疑者が起訴され、却って不利益を受けたと評価されかねない事例もある<ref group="注釈">東京地判平成6年12月16日『[[判例時報]]』1562号p141の判決において、裁判所は、被告人が起訴され長期の裁判を受けることとなったのは、捜査段階で黙秘していたことが一因であると指摘している。なお、同事件で被告人は無罪判決を受けている。</ref>。
=== 自白や黙秘権に関連する制度 ===
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==== 量刑ガイドライン制度 ====
量刑ガイドライン制度は、イギリスやアメリカ合衆国で導入されている制度で、裁判所による量刑判断において、被疑者が自白等を行った時期や内容に応じて、刑の減免を認める制度である<ref name="sousa_koudoka_kenkyukai">{{
==== 王冠証人制度 ====
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== 関連項目 ==
{{Wikibooks|刑事訴訟法}}
* [[日本国憲法第38条]]
* [[証言拒絶権]]
* [[守秘義務]]
* [[無罪推定の原則]]
* [[疑わしきは罰せず]]
* [[ミランダ警告]] - 最初に黙秘権があることを告知する。
* [[少年法]] – [[少年保護手続]]
* [[任意同行]] – [[職務質問]] – [[冤罪]] - [[痴漢冤罪]] – [[誤認逮捕]]
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