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[[File:Volcano plot.png|thumb|350px|遷移金属上でのギ酸の分解についての火山プロット]]
'''サバティエの原理'''(サバティエのげんり、{{lang-en-short|Sabatier principle}})は、化学{{仮リンク|不均一触媒|en|Heterogeneous catalysis}}における定性的概念である。名称はフランスの化学者[[ポール・サバティエ]]に因む。本原理は、[[触媒]]と[[基質]]との間の相互作用は「ちょうどよい」なければならない、すなわちすなわち強すぎても弱すぎてもいけない、と述べる。もし相互作用が弱すぎれば、分子は触媒に結合できず、反応が起こらない。一方、もし相互作用が強すぎれば、生成物が解離できない<ref name=green>{{cite book |title=Catalysis: Concepts and Green Applications |author=Gadi Rothenberg |publisher=Wiley-VCH |year=2008 |isbn=978-3-527-31824-7 |pages=65}}</ref>。
 
本原理は、触媒による反応物の[[吸着|吸着熱]]といった性質に対して[[反応速度]]をプロットすることによって視覚的に示すことができる。このようなプロットは最大値を通過し、三角形あるいは逆さまにした放物線のように見える。その形状か'''火山プロット'''(volcano plot)と呼ばれる<ref name=green/>。2つの異なる性質(例えば2成分反応について2つの反応物の吸着熱)に対して類似した3次元プロットを構築することもできる。この場合、プロットは一般的に[[等値線|等値線図]]で示され、'''火山面'''(volcano surface)と呼ばれる<ref>{{cite journal |journal=J. Am. Chem. Soc. |volume=130 |issue=33 |pages=10868–10869 |year=2008 |doi=10.1021/ja803555g |author=Jun Cheng; P. Hu |title=Utilization of the Three-Dimensional Volcano Surface To Understand the Chemistry of Multiphase Systems in Heterogeneous Catalysis |pmid=18651740}}</ref>。火山プロットはBalandinによって導入された<ref name=ullmanns>{{cite book |title=Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry |chapter=Heterogeneous Catalysis and Solid Catalysts |author=Helmut Knözinger; Karl Kochloefl |publisher=Wiley-VCH Verlag |year=2005 |doi=10.1002/14356007.a05_313|isbn=3527306730 }}</ref><ref>{{cite journal |doi=10.1016/S0360-0564(08)60029-2 |author=Balandin, A. |title=Modern State of the Multiplet Theory of Heterogeneous Catalysis1 |journal=Adv. Catal. Rel. Subj. |series=Advances in Catalysis |volume=19 |pages=1–210 |year=1969|isbn=9780120078196 }}</ref>。
 
右図は、触媒として異なる遷移金属を使用した[[ギ酸]]の分解についての火山プロットを示す<ref>{{Cite journal|last=Rootsaert|first=W. J. M.|last2=Sachtler|first2=W. M. H.|date=1960|title=Interaction of Formic Acid Vapour with Tungsten|journal=Zeitschrift für Physikalische Chemie|language=en|volume=26|pages=16–26|doi=10.1524/zpch.1960.26.1_2.016|issn=0942-9352}}</ref>。この場合、ギ酸金属塩の[[生成熱]](Δ''H''<sub>f</sub>)がx軸に使われる。これは、[[反応中間体]]が表面ギ酸イオンであることが研究から示されているためである。y軸には、反応が特定の速度に達する温度が使われる(「火山」形を維持するためにy軸は逆にプロットされている)。低いΔ''H''<sub>f</sub>値では、吸着速度が遅く、[[律速段階|律速]]であるため、反応は遅い(言い換えると、高温を必要とする)。高いΔ''H''<sub>f</sub>値では、{{仮リンク|脱着 (化学)|en| Desorption|label=脱着}}が[[律速段階]]となる。最大反応速度(この場合[[白金族元素|白金族]]金属で観測される)は中間的なΔ''H''<sub>f</sub>の値を必要とする(反応速度は吸着速度と脱着速度の組合せである)<ref name=ullmanns/>。
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{{DEFAULTSORT:さはていえのけんり}}
[[Category:触媒]]
[[Category:化学のエポニム]]