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{{スピリチュアリティ}}
'''精神世界'''(せいしんせかい<!--、{{lang-en|spiritual world}}-->{{efn|[[井上順孝]]編『現代宗教事典』は {{En|spiritual world}} を英語の訳語に当てている{{sfn|井上編|2005|loc=[[樫尾直樹]]「精神世界」|p=307}}。}})は、'''[[ニューエイジ]]'''と呼ばれる[[北米]]発の思潮に由来するもの、古今の[[神秘学|オカルティズム]]や日本固有の[[神道霊学|霊学]]{{sfn|大田|2013|p=180}}、「自己探求」や精神変容にかんする情報など{{sfn|島薗|2007b|p=5}}、さまざまな思想が共存する雑多な文化領域である。「精神世界」という語は1970年代末頃から日本で使われるようになった{{sfn|島薗|2007a|p=166}}。[[スピリチュアリティ]]とも言葉として近縁関係にある{{sfn|島薗|2007b|p=5}}。
北米のニューエイジ(およびその周辺領域)と日本の精神世界は、おおむね同等のカテゴリに属しているとみなすことができる{{sfn|島薗|2007a|p=47}}。両者は同一ではないが、まったく無縁でもなく、多大な共通部分のある類似現象である{{sfn|島薗|2007b|p=46}}。精神世界という用語は日本語圏以外では通用せず{{sfn|島薗|2007b|p=47}}、欧米の研究者のあいだでは日本の精神世界はニューエイジとして総括される{{sfn|島薗|2007b|p=46}}。
== 用語の歴史 ==
精神世界を研究対象にしてきた宗教学者の[[島薗進]]の推察によると、「精神世界」という言葉が使われ始めたのは1977年のことである{{sfn|島薗|2007a|pp=12-13}}。この年に[[阿含宗]]の関連会社である[[平河出版社]]から季刊『ザ・メディテーション』が創刊され{{Sfn|いとう|絓|中沢|1995|loc=精神世界年表 国内編}}、同年末の号に特集企画「精神世界の本・ベスト100」が掲載された{{sfn|島薗|2007a|p=168}}。
書店の売場では、1978年に新宿の紀伊国屋書店で「インドネパール精神世界の本」というブックフェアが組まれたのが最初であった{{sfn|島薗|2007a|p=167}}。これに続いて他の書店でも「精神世界の本」のフェアが行われ、やがて常設の「精神世界」コーナーが置かれるようになった{{sfn|島薗|2007a|pp=167-168}}。
『精神世界総カタログ』2000年版では、10588冊もの書籍が掲載されている{{sfn|ブッククラブ回|2000}}。
== 精神世界と「新霊性運動」==
島薗は、ニューエイジ運動という言葉を学術用語として用いるのは不適切だとして、日本の「精神世界」や欧米の「ニューエイジ」を「通文化的」{{sfn|井上編|2005|loc=島薗進「新霊性運動」|p=289}}に総括する「新霊性運動」もしくは「新霊性文化」という用語を作った{{sfn|島薗|2007a|p=46}}。この定義からすると、精神世界とニューエイジはともに新霊性運動の部分集合である{{sfn|Gebhardt|深澤・飛鳥井訳|2013|p=26}}。
精神世界とニューエイジはそれぞれ日本発、北米発の地域的文化であったが、これらはゆるやかに関連しあう同時多発的な現象であり、自生的かつ多元的に展開するグローバルな運動群として捉える必要があると島薗進は論じている{{sfn|島薗|2007a|p=48}}。新霊性運動は、そのような世界的現象を包括的に比較・考察するための用語として提起されたものである{{sfn|島薗|2007b|p=47}}。
== 精神世界とスピリチュアリティ ==
{{See|スピリチュアリティ}}
島薗によれば、精神性と訳しうる[[スピリチュアリティ]]は言葉の意味の上でも精神世界と近縁関係にある{{sfn|島薗|2007b|p=5}}。
[[スピリチュアリティ]]({{lang-en-short|spirituality}})はもともと[[キリスト教]]において時代や場面によってさまざまな意味に使われてきた語であるが、神学用語としては「[[霊性]]」と訳され、殊に20世紀に入ってから注目されるようになった概念である{{sfn|大貫ら編|2002|p=1213|loc=宮本久雄「霊性」}}{{efn|キリスト教の霊性の定義としては「超感覚的な現実に触れることを可能にする態度、信条、行為」{{sfn|Richardson et al.|2005|p=596}}などがある。とはいえ、霊性という語には大多数の人の認める定義というものは確立していない{{sfn|荒井|2009|p=1}}。}}。
その一方で、1970年頃から盛んになってきた[[ニューエイジ]]運動では、伝統的なキリスト教の枠を超えた新しいスピリチュアリティが展開され{{sfn|島薗|2007b|p=74}}、北米では特に1980年代から spirituality という言葉がよく聞かれるようになった。
=== 日本におけるスピリチュアリティ ===
日本でも1990年代後半からスピリチュアリティというカタカナ語が使われるようになり{{sfn|星野ら編|2010|loc=島薗進「新霊性運動=文化」|p=598}}、中でも[[ホスピス]]や[[死生学]]の分野では形容詞の「スピリチュアル」や抽象名詞の「スピリチュアリティ」が用語として定着した。
==== スピリチュアルブーム====
2000年代に入るとそれらとは別の流れで[[スピリチュアル]]という言葉が広まり、スピリチュアルブームが話題になった。[[浅野和三郎]]に始まる日本的[[スピリチュアリズム|心霊学]]の流れを汲む{{sfn|原田|杉並|2006|p=382}}{{efn|江原は、浅野和三郎の心霊科学研究会を母体とする団体の一つである日本心霊科学協会の流れを汲む{{sfn|星野ら編|2010|loc=[[吉永進一]]「スピリチュアリズム」|p=443}}。}}[[江原啓之]]は、スピリチュアル・カウンセリングと称するパフォーマンスを行い、タイトルにスピリチュアルの語を付した著書がベストセラーになったり、マスメディアに登場して有名になった。島薗は、スピリチュアルという語が現代日本で大衆的に普及した要因として江原の成功は無視できないと推察している{{sfn|島薗|2007b|p=34}}。スピリチュアルと聞いて霊的存在や前世、オーラといった心霊主義的なものを連想する人が増え、2008年の読売新聞の宗教意識調査で取り上げられた「スピリチュアル」もこのような意味においてであった{{sfn|林|2011|p=24}}。江原のいうスピリチュアルは[[スピリチュアリズム]]に由来しており、死生学や医療・看護の文脈で言われるスピリチュアリティとは系譜を異にするが、両方面でのスピリチュアリティを混同したり、同じ潮流に属するものとして論じる向きもある{{sfn|林|2011|pp=25-26}}。
他にスピリチュアルブームを代表するものに、2002年から毎年開催されている癒しをテーマにした精神世界の見本市「スピリチュアル・コンベンション」(略称すぴこん)が挙げられる{{sfn|林|2011|p=220}}(後に「スピリチュアルマーケット」)。こうした現代日本の通俗的なスピリチュアリティ文化では、「スピリチュアリティ」の語自体はあまり用いられず{{sfn|林|2011|pp=24, 181}}、本来は形容詞であるスピリチュアルを名詞として扱ったような語法が目立つ{{sfn|林|2011|p=222}}。
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
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<!--{{Cite book}}などの出典テンプレートの使用をご検討ください-->
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; 主要参照文献
:* {{Cite book|和書|author=島薗進|authorlink=島薗進 |date=2007-05 |origyear=1996 |title=精神世界のゆくえ - 宗教・近代・霊性 |publisher=秋山書店 |isbn=9784870236103 |ref={{SfnRef|島薗|2007a}}}}
:* {{Cite book|和書|author=島薗進 |year=2007-01 |title=スピリチュアリティの興隆 - 新霊性文化とその周辺 |publisher=岩波書店 |isbn=9784000010740 |ref={{SfnRef|島薗|2007b}}}}
:* {{Cite book|和書|author=林貴啓 |year=2011 |title=問いとしてのスピリチュアリティ - 「宗教なき時代」に生死を語る |publisher=京都大学学術出版会 |isbn=9784876985593 |ref={{SfnRef|林|2011}}}}
; その他の参照文献
:* {{Cite book|和書|author=荒井献|authorlink=荒井献 |year=2009 |title=初期キリスト教の霊性 - 宣教・女性・異端 |publisher=岩波書店 |ref={{SfnRef|荒井|2009}}}}
:* {{Cite book|和書|author1=いとうせいこう|authorlink1=いとうせいこう|author2=絓秀実|authorlink2=絓秀実|author3=中沢新一監修|authorlink3=中沢新一 |year=1995 |title=それでも心を癒したい人のための精神世界ブックガイド |publisher=太田出版 |isbn=9784872332544 |ref={{SfnRef|いとう|絓|中沢|1995}}}}
:* {{Cite book|和書|editor=井上順孝|editor-link=井上順孝 |year=2005 |title=現代宗教事典 |publisher=弘文堂 |isbn=9784335160370 |ref={{SfnRef|井上編|2005}}}}
:* {{Cite book|和書|author=大田俊寛 |title=現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇 |series=ちくま新書 |publisher=筑摩書房 |year=2013 |isbn=978-4-480-06725-8 |ref={{SfnRef|大田|2013}}}}
:* {{Cite book|和書|author=大貫隆・宮本久雄・名取四郎・百瀬文晃編 |year=2002 |title=[[岩波キリスト教辞典]] |publisher=岩波書店 |ref={{SfnRef|大貫ら編|2002}}}}
:* {{Cite book|和書|author1=原田実|authorlink1=原田実 (作家) |author2=杉並春男 |year=2006 |title=と学会レポート 原田実の日本霊能史講座 |publisher=楽工社 |isbn=9784903063058 |ref={{SfnRef|原田|杉並|2006}}}}
:* {{Cite book|和書|author=星野秀紀・池上良正・[[氣多雅子]]・島薗進・鶴岡賀雄編 |year=2010 |title=宗教学辞典 |publisher=丸善 |isbn=9784621082553 |ref={{SfnRef|星野ら編|2010}}}}
:* {{Cite book|和書|author=リゼット・ゲーパルト |others=深澤英隆・飛鳥井雅友訳 |year=2013 |title=現代日本のスピリチュアリティ - 文学・思想にみる新霊性文化 |publisher=岩波書店 |isbn=9784000227889 |ref={{SfnRef|Gebhardt|深澤・飛鳥井訳|2013}}}}
:* {{Cite book|和書|author1=A. リチャードソン |author2=J. ボウデン |others=古屋安雄監修、佐柳文男訳 |year=2005 |title=キリスト教神学事典 |publisher=教文館 |ref={{SfnRef|Richardson et al.|2005}}}}
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== 関連書籍 ==
* 島薗進『精神世界のゆくえ―現代世界と新霊性運動』東京堂出版、1996年 {{ISBN2|4490202989}}
* 『精神世界の本』平河出版社、1981年
* 内藤景代『わたし探し・精神世界入門―ヨガと冥想で広がる「心の宇宙」』実業之日本社、1993年 {{ISBN2|4408340421}}
*
* 北川隆三郎『精神世界がわかる事典:こころの不思議が見えてくる』日本実業出版社、1998年
*『精神世界が見えてくる: 人間とは何か気づきとは何か』サンマーク出版 1999年
*
* [[山川健一]]『ヒーリング・ハイ オーラ体験と精神世界』幻冬舎、2009年
* [[栗本慎一郎]]『人類新世紀終局の選択―「精神世界」は「科学」である』青春出版社、1991年
* {{Cite book|和書|author=ブッククラブ回 |year=1999 |title=精神世界総カタログ - 専門書店が選んだ、心と人と世界をめぐる本 |publisher=ブッククラブ回 |ref={{SfnRef|ブッククラブ回|2000}}}}
** 精神世界の本を百以上のジャンルに分けて紹介。1994年から1999年まで毎年出版されたシリーズの2000年版。
== 関連項目 ==
{{ウィキポータルリンク|スピリチュアリティ|[[画像:P psychology2.png|none|34px|Portal:スピリチュアリティ]]}}
* [[ニューエイジ]] / [[チャネリング]]
* [[スピリチュアリティ]]
* [[サイエントロジー]]
* [[心霊主義]]
* [[超自然]]
* [[神智学]]
* [[神秘学]]
<!--* [[哲学]]
* [[神秘主義]]-->
* [[異次元]]
** [[異世界]]([[異界]])
{{DEFAULTSORT:せいしんせかい}}
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[[Category:神秘主義]]
[[Category:精神]]
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