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{{
{{Expand English|date=2024年6月}}
{{複数の問題
|出典の明記=2025年7月
|参照方法=2025年7月
}}
'''ジェンダー''' ({{lang-en-short|gender}}) とは、[[生物学]]的な[[性 (生物学)|性]] ({{lang-en-short|sex}}) とは異なる多義的な概念であり、[[性別]]に関する社会的[[規範]]と'''[[性差]]'''を指す<ref name="Osawa2012">{{Cite book|和書|title=現代社会学事典 |isbn=978-4-335-55148-2 |oclc=820689382 |editors1=[[大澤真幸]] |editors2=[[吉見俊哉]] |editors3=[[鷲田清一]] |others=[[見田宗介]]|year=2012|publisher=[[弘文堂]]}}</ref>{{Rp|499}}。'''社会的性別'''とも呼ばれる。
性差とは、個人を性別カテゴリーによって分類し、統計的に集団として見た結果、集団間に認知された差異をいう{{R|Osawa2012|page=500}}<ref name="Maruzen2010">{{Cite book|和書|title=社会学事典|isbn=978-4-621-08254-6|editors= 日本社会学会社会学事典刊行委員会|year=2010|publisher=[[丸善出版]]}}</ref>{{Rp|409}}。ジェンダーの定義と用法は年代によって変化する{{R|Osawa2012|Maruzen2010}}。ジェンダーという概念は、性別に関して抑圧的な社会的事実を明らかにするとともに、ジェンダーを巡る社会的相互作用をその概念自身を用いて分析するものである{{R|Osawa2012|Maruzen2010}}。
{{See also|性別とジェンダーの区別}}
== 語源と用法 ==
{{出典の明記|section=1|date=2022年7月}}
[[ファイル:Combotrans.svg|thumb|right|生物の[[雄]]と[[雌]]を示すジェンダー・シンボル([[性別記号]])。それぞれ[[火星]]と[[金星]]を表す惑星記号に由来する。]]
語源は{{Lang-la|"genus"}}(産む、種族、起源)である。共通の語源を持つ言葉として{{Lang|en|"gene"}}([[遺伝子]])、{{Lang|en|"genital"}}(生殖の)、{{Lang-fr|genre}}(ジャンル)などがある。「生まれついての種類」という意味から転じて、[[性別]]のことを指すようになった。
この生物学的性のイメージを基にして、{{要出典範囲|20世紀初頭には
[[英語|英米語]]における'''gender'''には、以下のような用法がある。
#[[言語学]]における[[文法]]上の[[性 (文法)|性]]のこと。
#生物一般における[[生物学]]的[[性別|性]]のこと(「[[性 (生物学)]]」)。雌雄の別。
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#[[電子工学]]・[[電気工学]]の分野における[[コネクター]]の嵌め合い形状(オスとメス)の区別のこと。プラグとジャック、雄ネジと雌ネジなど。
1950年代から1960年代にかけ、アメリカの心理学者・性科学者ジョン・マネー ''John Money''、精神科医ロバート・ストラー ''Robert Stoller'' らは、身体的な性別が非典型な状態の[[性分化疾患]]の研究において、その当事者に生物学的性別とは別個にある男性または女性としての自己意識、性別の[[同一性]]があり、臨床上の必要から「性の自己意識・自己認知([[性同一性]])」との定義で
1970年代{{R|Maruzen2010|page=408}}
[[英語圏]]では現在、{{Lang|en|"gender"}}は[[生物学]]的な性も社会的な性も指す単語として用いられる。前者の場合、単に「{{Lang|en|sex}}」の婉曲あるいは公的な表現として使用されていることになる。例えば、女子のスポーツ競技において、生まれつきの性別を確認するために[[染色体]]検査が行われることがあるが、これを指す用語として英語ではジェンダーベリフィケーション({{Lang-en|gender verification}})という用語を用いる。
複数の英英辞典・英和辞典([[ウェブスター辞典]]、[[大修館書店]]『ジーニアス英和辞典』)において、{{Lang|en|"gender"}}は、第一に「言語学的性(文法上の性)」として、第二に古くから使われてきた「生物学的性別({{Lang|en|sex}})」として記述されている。それらに続き、社会科学の分野において用いられる「社会的・文化的役割としての性」という意味の語として記述がなされることがある([[英語版ウィキペディア]]「[[:en:Gender|Gender]]」も参照)。「言語学的性」とは、例えば男性を代名詞で「{{Lang|en|"he"}}、女性を{{Lang|en|"she"}}と分けて表記するようなことである。「生物学的性({{lang|en|sex}})」とは、[[ロングマン現代英英辞典]]によれば、「{{Lang|en|the fact of being male or female}}(男性または女性であることの事実)」と説明され、「{{Lang|en|male}}(男性)」は「子供を産まない性」、「{{Lang|en|female}}(女性)」は「子供を産む性」と定義される。またヒト以外の動物の雌雄を記述する場合にも用いられる。「社会的文化的役割としての性」とは、その性({{Lang|en|sex}})から想起される「男らしさ」「女らしさ」といった様々な特徴のことである。
[[ジョーン・スコット (歴史学者)|ジョーン・W・スコット]]の著書『ジェンダーと歴史学』によれば、近年、欧米の社会学において、{{Lang|en|"gender"}}という用語はほとんど(7割程度)の場合、「[[女性]]」と同義で使用されている(例:{{Lang|en|"gender and development"}} 女性とその経済力向上)。
日本において、ジェンダーという言葉が社会的に認知されたのは1990年代である<ref name="Tachi1998">{{cite journal|和書|title=ジェンダー概念の検討|author=舘かおる|journal=ジェンダー研究|volume=第1号|publisher=[[お茶の水女子大学]]ジェンダー研究センター|year=1998}}</ref>{{Rp|81}}。『男女行動計画2000年プラン』では、ジェンダーは不平等を指摘し、それを是正する文脈で用いられるようになった{{R|Tachi1998|page=83}}。ジェンダーは「ジェンダー・フリー」という表現に用いられることによって、性別二分法システム、性別カテゴリー自体の打破を視野に入れている{{R|Tachi1998|page=84}}。ジェンダーの用法の広がりとともに、ジェンダー概念についての確認と捉え直しが必要になってきている{{R|Tachi1998|page=84}}。 == 社会的・文化的性の意識の変化 ==
[[ファイル:WomanFactory1940s.jpg|thumb|right
社会と同様に、「ジェンダー」(ここでは社会的・文化的性としての意味)は絶えず変化する。
[[国家総力戦]]となった[[第二次世界大戦]]時の[[連合国 (第二次世界大戦)|連合国]]および[[枢軸国]]では、男性が[[徴兵]]され戦場に出向いている間、女性が[[工場]]労働に従事することになり、その後に労働力として社会参加することの大きなきっかけとなった。
== ジェンダーと社会 ==
{{See also|ジェンダー平等|ジェンダーの社会学}}
=== 科学 ===
{{See also|{{仮リンク|科学における女性|en|Women in science}}}}
歴史的には、[[科学]]は男性が追求するものとして描かれており、女性の参加には非常に大きな障害があった<ref>{{cite book|last1=Schiebinger|first1=Londa|title=Has Feminism Changed Science?|journal=Signs|volume=25|issue=4|pages=1171–5|date=2001|publisher=Harvard University Press|___location=Cambridge, Mass.|isbn=978-0-674-00544-0|edition=2nd|pmid=17089478|doi=10.1086/495540}}</ref>。19世紀に大学が女性の入学を許可した後であっても、依然として大部分の女性は[[家政学]]、[[看護学]]、[[発達心理学]]などの特定の科学分野に降格させられた<ref name="Sheffield2006">{{cite book|title=Women and Science: Social Impact and Interaction|date=2006|publisher=Rutgers University Press|isbn=978-0-8135-3737-5|___location=New Brunswick, NJ|pages=129–134|last1=Sheffield|first1=Suzanne Le-May}}</ref>。また、女性はよく退屈な低賃金の仕事を割り当てられ、キャリアアップの機会を拒否されてきた<ref name="Sheffield2006" />。
こうした行為は、女性は生まれつき、創造性、リーダーシップ、知性が必要な仕事よりも、集中、忍耐、手先の器用さが必要な仕事により向いている、という[[ステレオタイプ]]によって正当化されることが多かった<ref name="Sheffield2006" />。こうしたステレオタイプは現代には払拭されたが、たとえば[[物理学]]などの権威ある「[[ハードサイエンス]]」などの分野では、女性はいまだに過小評価されており、高いランクのポジションを持てる可能性は低い<ref name="Eisenhart1998">{{cite book|title=Women's Science: Learning and Succeeding from the Margins|journal=Science Education|volume=84|issue=6|last2=Finkel|first2=Elizabeth|date=1998|publisher=University of Chicago Press|isbn=978-0-226-19544-5|___location=Chicago|pages=[https://archive.org/details/womenssciencelea0000eise/page/34 34–36]|last1=Eisenhart|first1=Margaret A.|bibcode=2000SciEd..84..793A|doi=10.1002/1098-237X(200011)84:6<793::AID-SCE6>3.0.CO;2-K|url=https://archive.org/details/womenssciencelea0000eise/page/34}}</ref>。[[国際連合]]の[[持続可能な開発目標#17の目標|持続可能な開発計画目標 5]]などのグローバル・イニシアティブは、この状況の是正を試みている<ref>{{Cite web|title=Sustainable Development Goal 5: Gender equality|url=https://www.unwomen.org/en/news/in-focus/women-and-the-sdgs/sdg-5-gender-equality|access-date=2020-09-23|website=UN Women|language=en}}</ref>。
=== 教育格差 ===
{{
性別が理由で[[教育]]を受けられない場合も多く、学校に通えない女子児童・生徒が2018年時点で世界中に約1億
また、大学入試において[[女性差別]]的な不正入試が行われることもある。{{See also|2018年に発覚した医学部不正入試問題}}
=== 軍隊 ===
{{see also|徴兵制度#女性兵士の徴兵}}
[[軍隊]]において[[兵士]]が男性のみである国家が比較的多く、[[徴兵制度|徴兵制]]であればその義務が、[[志願制度|志願制]]であればその権利が、女性にはないことが多い。
== 国際連合・持続可能な開発目標 ==
[[ジェンダー
== ジェンダー・ハラスメント ==
ジェンダー・ハラスメントとは、ジェンダーにまつわる[[ハラスメント]]であり、人を男/女という枠組みで捉え、それぞれの役割を設定したり、その役割を他者に期待したりする行為などを含む。被害者の心身に深刻な悪影響を与えうるものであり、ジェンダー・ハラスメントの防止が求められている<ref>{{Cite book|和書 |title=職場で使えるジェンダー・ハラスメント対策ブック――アンコンシャス・バイアスに斬り込む戦略的研修プログラム |year=2023 |publisher=[[現代書館]] |pages=1-189}}</ref>。
{{See also|セクシャル・ハラスメント}}
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
== 関連文献 ==
{{脚注の不足|date=2025年7月|section=1}}
* [[:en:Ivan Illich|Ivan Illich]] ''Gender'' (1982) ISBN 0-394-52732-1
** [[イヴァン・イリイチ]] 『ジェンダー――女と男の世界』[[岩波書店]]、1984年
* {{仮リンク|アン・ファウスト=スターリング|en|Anne Fausto-Sterling}}著、池上千寿子ほか訳『ジェンダーの神話―[性差の科学]の偏見とトリック』[[工作舎]]、1990年5月。ISBN 4-87502-167-4
* {{仮リンク|トマス・ラカー|en|Thomas W. Laqueur}}著、高井宏子ほか訳『セックスの発明―性差の観念史と解剖学のアポリア』[[工作舎]]、1998年4月。ISBN 4-87502-294-8
* [[ロンダ・シービンガー]]著、小川眞里子ほか訳『ジェンダーは科学を変える!?―医学・霊長類学から物理学・数学まで』[[工作舎]]、2002年1月。ISBN 978-4-87502-362-3
* 川本敏編『論争・少子化日本』[[中公新書]]、2001年5月15日。ISBN 4-12-150006-7
* [[上野千鶴子]]・[[宮台真司]]・[[斎藤環]]・[[小谷真理]]・[[鈴木謙介]]・[[後藤和智]]・[[澁谷知美]]・[[山口智美 (文化人類学者)|山口智美]]・[[荻上チキ]]他 共著 『バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』双風舎、2006年6月26日。ISBN 4-902465-09-4
* [[加藤秀一]]著『ジェンダー入門―知らないと恥ずかしい』[[朝日新聞社]]、2006年11月。ISBN 4-02-330373-9
* [[渡辺真由子]]著『オトナのメディア・リテラシー』リベルタ出版、2007年10月。ISBN 978-4-90372407-2
* [[村田晶子]]編著『復興に女性たちの声を―「3・11」とジェンダー』[[早稲田大学出版部]]、2012年10月。ISBN 978-4-657-12316-9
== 関連項目 ==
* [[性別とジェンダーの区別]]
* [[ジェンダー平等]]
* [[
* [[ウィキペディアにおけるジェンダーバイアス]]
* [[:en:Gender|Gender]] - [[英語版ウィキペディア]]
== 外部リンク ==
*[https://www.un.org/en/global-issues/gender-equality Gender Equality] - [[国際連合]]
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