「動力車操縦者」の版間の差分
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== 概要 ==
[[日本]]の法律で定められた[[鉄道]]・[[軌道]]を走行する動力車を操縦できる資格を持つ者の行政用語であり、有資格者には'''動力車操縦者運転免許'''が交付される。有資格者以外はその業務を行えない[[業務独占資格]]である。
一般的には([[鉄道]]・[[列車]]・[[電車]]の)運転士・[[機関士]]と呼ばれている。[[ワンマン運転]]実施路線である[[鉄道路線|路線]]の中には「運転士」とは称さずに、例えば[[Osaka Metro長堀鶴見緑地線]]や[[Osaka Metro今里筋線]]では「操縦員」と、[[東京メトロ南北線]]や[[東京メトロ副都心線]]では「乗務掛」(川島令三「全国鉄道事情大研究 東京都心部編」2000年 草思社)と称している例がある。
=== 対象車両 ===
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=== 対象範囲 ===
基本的に、
鉄道事業者によっては動力車操縦者の運転資格を所持しない一般の参加者を募り、鉄道車両を運転させるイベントを開催することがある。運転士の指導・監視のもとで車庫・工場内など、営業線を支障するおそれのない体制を構築したうえで実施している。
== 沿革 ==
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2025年(令和7年)9月30日施行の改定では、免許証の記載事項のうち「所属事業者」欄が廃止された。
=== 視力基準の沿革 ===
動力車操縦者運転免許に関する省令制定当時は裸眼視力1.0以上であることを基準とし、一定の基準以下の屈折率の矯正眼鏡による矯正視力もそれに含まれることとしていた。昨今の少子化や高齢化の進展や定年延長などの社会情勢の変化 ・生活環境の変化などによる若齢者の視力低下傾向があり、人材確保の観点から厳しい視力基準の改正要望が事業者から寄せられ、関係各機関の実証実験等を経て視力は裸眼・矯正を問わないこととし、矯正眼鏡の屈折率条件は撤廃されている。下記の矯正眼鏡については眼鏡・コンタクトレンズを問わないとされているが、とくにコンタクトレンズは乗務中の装填トラブル・紛失等の発生が懸念されることから、予備眼鏡の携帯を義務付けていたり、そもそもコンタクトレンズの装着を許可していない事業者がある。
==== 1959年省令改正 ====
* 各眼が裸眼で1.0以上であること
* 1眼が裸眼で1.0以上であり、かつ、他の1眼が裸眼で0.2以上であって屈折度が2.0ジオプトリー以下の矯正眼鏡により1.0以上に矯正できること
* 各眼が裸眼で0.2以上であり、かつ、屈折度が3.0ジオプトリー以下の矯正眼鏡により1.0以上に矯正できること。この場合において、矯正に用いた両眼の矯正眼鏡の屈折度の差は、2.0ジオプトリー以下であること
==== 1994年省令改正 ====
* 各眼の視力が裸眼で1.0以上又は矯正眼鏡(近視にあっては8.0ディオプトリー以下の屈折度のもの、遠視にあっては3.0ディオプトリー以下の屈折度のものに限る)により1.0以上に矯正できること
==== 2012年省令改正(現行基準) ====
* 視力(矯正視力を含む。)が両眼で1.0以上、かつ、一眼でそれぞれ0.7以上であること
== 運転免許の分類 ==
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** なお「内燃車」とは[[内燃機関]]([[エンジン]])で動く[[気動車]]、「磁気誘導式」とは[[2005年日本国際博覧会]](愛知万博)での[[IMTS]]のように、他車および地上と通信を行いながら軌道上を自動操舵する方法、「無軌条電車」とはいわゆるトロリーバスのことである。
== 動力車操縦者試験 ==
=== 受験資格 ===
動力車操縦者運転免許を取得するため地方運輸局長が実施する試験を'''動力車操縦者試験'''といい、この受験資格は、18歳以上の者で、運転免許の取消を受けた場合は取消日から起算して1年を経過していれば、学歴・国籍を問わず受験できる。省令上は事業者に所属していることを要件としていないが、各事業者に所属したうえで実際の車両の操縦訓練を重ねたうえで技能試験を受験する必要があることから、事業者に所属しない者の試験受験はほぼ困難である。
=== 試験 ===
試験は、次に掲げる項目に関して行う。
==== 身体検査 ====
{| class="wikitable sortable mw-collapsible"
|+'''動力車操縦者運転免許における身体検査基準[動力車操縦者運転免許に関する省令]'''
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|アルコール中毒・麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないこと。
|}
* これらの規定は、多くの鉄道事業者の採用試験を行う際の判定基準にもなっている。このため、採用試験受験の段階で規定をクリアしていなくては、動力車操縦者免許の取得は極めて困難である。
====
* 運転適性検査
* 医学適性検査
==== 筆記試験 ====
* 甲種蒸気機関車
# [[鉄道に関する技術上の基準を定める省令]]
# [[運転の安全の確保に関する省令]]
# 蒸気機関車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 乙種蒸気機関車
# [[軌道運転規則]]
# 運転の安全の確保に関する省令
# [[道路交通法]]及び道路交通法施行令
# 蒸気機関車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 甲種電気車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 電気車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 乙種電気車
# 軌道運転規則
# 運転の安全の確保に関する省令
# 道路交通法及び道路交通法施行令
# 電気車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 甲種内燃車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 内燃車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 乙種内燃車
# 軌道運転規則
# 運転の安全の確保に関する省令
# 道路交通法及び道路交通法施行令
# 内燃車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 新幹線電気車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 新幹線鉄道の電気車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 第一種磁気誘導式電気車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 第二種磁気誘導式電気車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 磁気誘導式鉄道の電気車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 第一種磁気誘導式内燃車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 第二種磁気誘導式内燃車
# 鉄道に関する技術上の基準を定める省令
# 運転の安全の確保に関する省令
# 磁気誘導式鉄道の内燃車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
* 無軌条電車
# 無軌条電車運転規則
# 運転の安全の確保に関する省令
# 道路交通法及び道路交通法施行令
# 無軌条電車の構造及び機能
# 運転理論
# 一般常識
==== 技能試験 ====
# 速度観測
# 距離目測
# [[ブレーキ|制動機]]の操作
# 制動機以外の機器の取扱
# 定時運転
# 非常の場合の措置
=== 試験の免除 ===
下記の場合は、動力車操縦者試験の全部、又は一部が免除される。
* [[国土交通大臣]]の指定した動力車の操縦に関する講習を行う施設([[動力車操縦者養成所]])の講習課程を修了して2年を経過しないもの
** なお、養成所での講習(試験含む)が動力車操縦免許取得の条件ではない。養成所で講習を行わない場合は各事業者で教習を行った後、地方運輸局長が実施する動力車操縦者試験を受験することとなる。
* 高等学校(又はこれと同等以上の学校)の機械科、電気科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者で、在学中動力車の構造及び機能に関する科目を修得したもの
* 運転免許を受けている者であって、他の種類の運転免許を受けようとするもの
* [[道路交通法]]の大型自動車第2種免許を受けている者
* 身体検査・適性検査・筆記試験に合格した者が技能試験に不合格だった場合、同種の技能試験2回までに限り、適性検査と筆記試験が免除される。
===養成費用===
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* 鉄道事業者において、他事業者で免許を取得した者を採用する場合がある。異なる会社であっても免許の種類が同じであれば、その免許は有効である。従来、免許証には「所属事業者名」の記載が義務付けられていたが、2025年9月の省令改正で所属事業者の記載及び、変更時の届出は廃止された。
* 2010年に[[いすみ鉄道]]が訓練費用約700万円を自己負担で免許取得することを条件に、運転士を募集した。
== 免許の効力 ==
=== 更新と資質管理制度 ===
この免許には更新・書換制度がないため、事実上終身免許であるが、その実質的な代替として、鉄道事業者や軌道経営者では動力車操縦者に対する資質の管理状況、具体的には定期的に運転適性検査・医学適性検査を行った結果及び、動力車操縦者が発生させた事故・インシデントとその後の再教育状況(運転管理者の講ずる措置)を、管轄運輸局長に「資質管理報告書」「異常運転等報告書」をもって報告を義務付けている。従って、乗務に耐えられない病気発生後の療養や、事故・インシデント後の再教育を経て、なお運転の資質がないと認められれば、各事業者の判断により運転業務から他職種へ転換することになる。
===行政処分===
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: 電車・気動車により甲種電気車・甲種内燃車の免許を取得したとしても、電気機関車・ディーゼル機関車を操縦する際には、独自の操縦方法や機器取扱いを習得させる必要があることから、別に各事業者の社内講習と社内試験を受けさせている例が多い。このような事情から、各社で機関車列車を電車・気動車列車に置き換えることで、養成の手間を解消する動きが見られる。
; 第二種磁気誘導式電気車・第二種磁気誘導式内燃車・無軌条電車運転免許
: 従来は、第二種磁気誘導式電気車運転免許・第二種磁気誘導式内燃車運転免許・無軌条電車運転免許について、[[大型自動車]][[第二種運転免許]]を所持していれば試験は全項目免除となり事業者に所属せずとも取得できたが、2009年11月
'''電気式内燃車・ハイブリッド鉄道車両の免許'''
:[[日本の電気式気動車|電気式内燃車]]・[[鉄道車両におけるハイブリッド|ハイブリッド鉄道車両]]は甲種電気車もしくは甲種内燃車どちらかの免許を取得し、追加の講習を受講した上で操縦することができる(差分教育)。
== 脚注 ==
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