「ミストラル級強襲揚陸艦」の版間の差分
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{{Infobox 艦級
|画像=File:BPC Dixmude.jpg
|画像説明=
|艦種=[[指揮艦]]・[[戦力投射]]艦（BPC）{{Sfn|多田|2008}}
|命名基準=
|建造所=[[アトランティーク造船所]]
|運用者={{navy|FRA}}<br />{{navy|EGY}}
|建造期間=2003年 - 2016年
|就役期間=2006年 - 現在
|建造数=5隻
|前級=[[フードル級揚陸艦|フードル級]]
|次級=
|基準排水量=16,500 [[トン数|t]]
|満載排水量=21,500 t<br />※バラスト使用時：32,300 t
|全長=210.0 m
|全幅=32.0 m
|吃水=6.2 m
|機関=[[ディーゼル・エレクトリック方式]]
|主機=
|推進器=
*[[アジマススラスター|ポッド式推進器]]×2基
*[[サイドスラスター|バウスラスター]]×1基
|出力=
*ポッド式推進器:19,040 shp
*バウスラスター:2,000 hp
|電源=[[バルチラ]]16V32[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]][[発電機]]（4,850 kW）{{Sfn|Wertheim|2013|p=212}}×4基
|最大速力=18.8[[ノット]]
|航続距離=10,700[[海里]](15kt巡航時)
|乗員=
*個艦要員:160人<br />（士官20人、医療要員40人を含む）
*兵員:900名（短期） or 400名（長期）
|搭載能力=
|兵装=
*[[マウザーMK 30 30mm機関砲|30mm機関砲]]×2基
*[[ブローニングM2重機関銃|12.7mm機銃]]×4基
*[[ミストラル (ミサイル)|SIMBAD]][[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近SAM]] 連装発射機×2基
|搭載機=各種[[ヘリコプター]]×16機
|搭載艇=[[#輸送揚陸機能]]
|C4I=[[海軍戦術情報システム]]<br /><small> （[[SENIT]]-9＋[[リンク 11]]/[[リンク 16|16]]）</small>
|C4ISR=
|FCS=
|レーダー=
*[[MRR-3D]] [[3次元レーダー|3次元]]式×1基
*ブリッジマスター250E 航空誘導用×2基
|ソナー=
|電子戦=
*ARBR-21 電波探知装置
*電波妨害装置
*SLAT対魚雷[[デコイ (兵器)|デコイ]]装置
|その他=
|備考=
}}
'''ミストラル級強襲揚陸艦'''（ミストラルきゅうきょうしゅうようりくかん、{{Lang-fr|Bâtiment de Projection et de Commandement Type ''Mistral''}}）は、[[フランス海軍]]の[[強襲揚陸艦]]の艦級。フランス海軍の正式な艦種呼称は'''[[指揮艦|指揮]]・[[戦力投射]]艦'''（{{Lang|fr|Bâtiment de Projection et de Commandement}}、BPC）とされている。
[[マルチハザード]]化および[[グローバリゼーション|グローバル化]]に伴う任務の多様化に対応して、[[水陸両用作戦]]以外にも[[人道援助]]など[[戦争以外の軍事作戦]]も考慮した多目的母艦とされている。
== 来歴 ==
計画時には「Nouveaux Transports de Chalands de Débarquement」（NTCD）と呼ばれていた。[[フランス海軍]]の正式な艦種呼称は''指揮・戦力投射艦''（{{Lang|fr|Bâtiment de Projection et de Commandement}}）とされているが、[[北大西洋条約機構|NATO]]の[[ペナント・ナンバー]]では従来同様に[[揚陸艦]]を意味する"L"ではじまる艦番号が付与されている{{Sfn|多田|2008}}。
艦名は1番艦、2番艦ともに気象現象から取られている。
「ミストラル」と「トネール」の建造においては、船体は、中央と後部を[[ブレスト (フランス)|ブレスト]]（Brest）で、前部3分の1は[[サン＝ナゼール]]（Saint-Nazaire）で分割建造され、ブレストにおいて結合された<ref>{{Cite web |title=Mistral Class – Amphibious Assault Ships |url=https://www.naval-technology.com/projects/mistral/ |website=Naval Technology |access-date=2022-09-28 |language=en-US |date=2017-02-02}}</ref>。「ディクスミュード」のみ、全体がサン＝ナゼールで建造された。
フランス海軍の新鋭の[[航空母艦|空母]]型多目的母艦である本級は、3隻が建造された。2004年10月に1番艦の進水が行なわれ、2006年に1番艦「ミストラル」と2007年に2番艦「トネール」がそれぞれ就役した。2番艦「トネール」の就役により、古くなった[[ウラガン級揚陸艦]]2隻は同年に退役した。3番艦「ディクスミュード」は2012年に就役した。
== 設計 ==
2万tを越える大きな船体の本級は、強襲揚陸作戦においての中核的な指揮能力を保有しながら同時に、単艦でも強襲揚陸作戦を実施できるだけの[[回転翼機]]の保有と運用、戦闘用車輌の輸送、揚陸艇の保有と運用、陸戦部隊の輸送、医療といった複合的な機能を有している。
=== 船体 ===
[[軍艦]]ではあるが、[[軍艦構造]]ではなく商船としての規格下で建造され、[[マルポール条約]]に適合すべく[[海洋汚染]]防止に力が注がれている。船体形状は近年の[[自動車運搬船]]の様に、水面上には前後左右が切り落とされた大きな箱状を成しており、乾舷は高い。
本級は上甲板（第1甲板）を全通させた、いわゆる全通甲板型の艦型を採用している。上甲板は、そのほぼ全域が[[飛行甲板]]とされており、上部構造物は[[艦橋|アイランド]]として右舷前寄りに位置している。
<gallery widths="180px" heights="150px">
画像:TCD vs BPC 2.svg|フードル級との比較
画像:FS_Mistral_04.jpg|ブレストで建造中の「ミストラル」。船体をいくつかのブロックに分けた分割建造方式で建造されていることがよく解る
画像:Dixmude-IMG 8447.jpg|正面から見た「ディクスミュード」
画像:Tonnerre-L9014-1.jpg|左後方から見た「トネール」
画像:Mistral-photo17.jpg|艦橋内部 手前左側が操舵手席
</gallery>
=== 機関 ===
[[画像:Mistral-photo16.jpg|thumb|250px|機関室内のバルチラ16V32ディーゼルエンジン]]
フランス海軍初の[[電気推進 (船舶)|電気推進艦]]として、電化に力が注がれている。機関は、[[ディーゼル・エレクトリック方式|ディーゼル・エレクトリック推進方式]]を採用している。
* [[バルチラ]]社製16V32[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]]発電機×3基＋18V200ディーゼル発電機×1基<br />出力：合計20.8Mw
* 5翼プロペラを備えた英[[ロールス・ロイス]]社製マーメイド電動[[アジマススラスター|アジマス・ポッド推進器]]×2基<br />出力：各14Mw{{Sfn|多田|2008}}
ポッド式推進としたことで小回りの利く操艦が可能である。ただし背の高い船体によって風圧側面積が大きく、離着岸や操艦に及ぼす風の影響は大きいとされる。
{{-}}
== 能力 ==
=== C4ISTAR機能 ===
{{main|フランス軍のC4Iシステム}}
本型は、フランス海軍の基幹的な作戦級C4Iシステムとして、海洋指揮支援システム（AIDCOMER）を搭載している。群司令部指揮所が設置される指揮通信室は850m<sup>2</sup>の面積が確保されており、150台のワークステーションを設置することができる。その通信システムとしては、最新の国産{{Ill2|シラキューズ-III|fr|Syracuse III}}[[軍事衛星]]通信システムが採用されている{{Sfn|多田|2008}}。
戦術級C4Iシステムとしては、第3世代の[[SENIT]]システムであるSENIT-9が搭載されている{{Sfn|多田|2008}}。またメインセンサーとして、[[タレス・グループ]]製[[MRR-3D]]-NG遠距離捜索Cバンド・レーダーを搭載している。30回/分又は60回/分で回転し俯仰70度までの[[フェーズドアレイレーダー|フェーズド・アレイ]]による電子スキャンを行なう。探知距離180km程度{{Sfn|多田|2008}}。
=== 個艦防御機能 ===
自衛のための最小限の兵装のみを有している。小型艇対策に、[[マウザーMK 30 30mm機関砲|30mm機銃]]を2門、[[ブローニングM2重機関銃|M2 12.7mm機銃]]を4挺装備している。また、対空兵装として[[ミストラル (ミサイル)|ミストラル]][[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近接防空ミサイル]]用のシンバッド連装発射機を2基搭載している。
=== 航空運用機能 ===
上記の通り、上甲板（第1甲板）は全通した飛行甲板とされており、またその直下の艦後半部には2甲板分の高さ（第2・3甲板）で[[格納庫|ハンガー]]が設けられている。これらを連絡するエレベータとしては、アイランド後方の右舷寄りと艦尾に各1基のエレベーターが設置されている。前方のエレベータはインボード式で、長さ15m×幅15m、力量13トン。後方のエレベータもインボード式であるが、艦尾側に張り出していることから半ばデッキサイド式となっており、長さ18.5m×幅6.5m、力量17トンとされている。
飛行甲板は面積5,200m<sup>2</sup>を確保しており、6ヶ所のヘリコプター発着スポットが設定されている。ハンガーは面積1,800m<sup>2</sup>で、最大16機程度の中型・大型ヘリコプターが収容できる。
[[艦載ヘリコプター]]として、[[NH90 (航空機)|NH90]]、[[SA 330 (航空機)|SA330「ピューマ」]]、[[AS 532 (航空機)|AS532 U2「クーガー」]]、[[ティーガー (航空機)|AS665「タイガー」]]の運用が想定されているほか、2019年から2020年にかけて、[[無人航空機]]（UAV）であるS-100カムコプターの運用能力が付与された<ref>「海外艦艇ニュース 仏強襲揚陸艦に回転翼UAV S-100を搭載」 『[[世界の艦船]]』通巻943集（2021年3月号） [[海人社]] P.166</ref>。
<gallery widths="180px" heights="150px">
画像:Mistral-photog08.jpg|飛行甲板前方の発着スポット
画像:Mistral-photog06.jpg|飛行甲板及び艦橋構造物
画像:Mistral-photog07.jpg|飛行甲板後方および後部エレベーター
</gallery>
=== 輸送揚陸機能 ===
ハンガーの下方には、第4〜6甲板を2層にわけて車両甲板と[[ウェルドック]]が設けられている。上層のほぼ全域と下層の前半部は、合計面積2,650m<sup>2</sup>の車両甲板とされており、上下層はランプで接続されている。[[主力戦車]]の[[ルクレール]]だけなら13輌、他の戦闘車輌で60輌程度の搭載能力があり、航空機を搭載しない場合には格納庫内にさらに230輌程度が搭載できる{{Sfn|多田|2008}}。
下層後半部を占めるウェルドックは長さ120メートル、面積885m<sup>2</sup>という長大なもので、車両甲板とはランプで接続されている。最大8艇の[[機動揚陸艇]]（LCM）、最大4艇の[[汎用揚陸艇]]（LCU）又は最大2艇の[[LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇]]が搭載出来、艦尾開口部から収容・発進する<ref>{{Cite journal|和書|author=|year=2011|month=7|title=こちらも公試へ！仏新造強襲揚陸艦「ディズミュード」 サン・ナゼールを出港|journal=世界の艦船|issue=743|pages=56-57|publisher=海人社|naid=}}</ref>。
<gallery widths="180px" heights="150px">
画像:Tonnerre_mg_5859.jpg|艦尾。上部の影になっているところが後部エレベーター、下部がウェルドックのハッチ
画像:Mistral-photo21.jpg|ウェルドック内に収容された2隻のLCU
画像:M1A1 Abrams embarks FS Tonnerre.JPG|ウェルドックから車両甲板に上がろうとする[[アメリカ海兵隊]]の[[M1エイブラムス|M1A1戦車]]
</gallery>
=== 医療機能 ===
[[病院船]]としての機能が充実しており、2つの手術室と19床の常設ベッドを含む250m<sup>2</sup>の病院区画にはさらに50床のベッドの追加設置が可能であり、格納庫内にコンテナ化された医療モジュールを搭載すれば、さらに能力の拡張が行なえる{{Sfn|多田|2008}}。
== 比較表 ==
{{強襲揚陸艦}}
== 配備 ==
=== フランス海軍 ===
2006年の夏、1番艦「ミストラル」は初めての活動として、[[イスラエル]]と[[レバノン]]・[[ヒズボラ]]との間の[[レバノン侵攻 (2006年)|紛争]]時の民間人救出活動（{{lang|fr|l'opération Baliste}}）に従事した。[[ベイルート]]に入港し、[[フードル級揚陸艦]]「フードル」、「シロッコ」と共に在留フランス人を含む4,000名を艦内に収容保護して[[キプロス島]]まで移送した{{Sfn|多田|2008}}。
{|class="wikitable" style="text-align:center"
|-
![[ペナント・ナンバー|#]]
!艦名
!起工
!進水
!就役
!母港
|-
|L 9013
|[[ミストラル (強襲揚陸艦)|ミストラル]]<br />''{{Lang|fr|Mistral}}''
|2003年<br />7月10日
|2004年<br />10月6日
|2006年<br />1月
|rowspan="3"|[[トゥーロン]]
|-
|L 9014
|[[トネール (強襲揚陸艦)|トネール]]<br />''{{Lang|fr|Tonnerre}}''
|2003年<br />8月26日
|2005年<br />7月26日
|2007年<br />3月1日<!--2月14日出航なので、こちらかも-->
|-
|L 9015
|[[ディクスミュード (強襲揚陸艦)|ディクスミュード]]<br />''{{Lang|fr|Dixmude}}''
|2009年<br />4月18日
|2010年<br />12月18日<ref>{{Cite web |title=Saint-Nazaire : Le BPC Dixmude transféré au bassin C |url=https://www.meretmarine.com/article.cfm?id=114931 |website=Mer et Marine |date=2010-12-20 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20101226081628/https://www.meretmarine.com/article.cfm?id=114931 |archive-date=2010-12-26}}</ref>
|2012年<br />7月27日
|}
=== ロシア海軍への配備 ===
[[File:Classe-Mistral-Vladivostok-2014.JPG|thumb|250px|ウラジオストク（後のアンワル・アル･サダト）]]
[[File:Севастополь - Saint-Nazaire décembre 2014.jpg|thumb|250px|セバストポリ（後のガマール・アブドゥル・ナセル）]]
2009年の9月には、[[ロシア]]の[[ウラジーミル・ポポフキン]]国防次官が自国のラジオ番組に出演した際に「フランス製の強襲揚陸艦の導入を進める協議をフランス当局と行っている」と発言した。これによれば、ミストラル級の1隻を購入する他、ロシア国内で4隻を建造する計画も打診している、という。価格は一隻あたり7億3,800万[[アメリカ合衆国ドル|ドル]]から8億8,600万ドル程度になると報道されていた<ref>{{Cite web |title=French warship Russia wants stirs debate |url=https://www.upi.com/Defense-News/2009/11/23/French-warship-Russia-wants-stirs-debate/40421259022611/ |website=[[UPI通信社|UPI]] |access-date=2022-09-28 |language=en |date=2009-11-23}}</ref>。
2011年6月17日に前年12月の予備的合意の下、ロシア[[サンクトペテルブルク]]にて正式な契約が締結された。価格に関してはロシア側は取材に対し「12億ドル」・フランス側は「16億ドル」と回答しており、はっきりとしていない。ロシア海軍向けミストラル級はフランス建造が行われるが、船体後部はロシアのバルト工場で生産されている<ref>{{Cite web |title=Корму второго "Мистраля" спустят на воду в апреле 2014 года |url=https://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=165075 |website=flot.com |date=2014-04-27 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20140427015601/https://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=165075 |archive-date=2014-04-27}}</ref>。これには大規模[[ブロック工法]]の技術を習得するという側面もあり<ref name="#1">{{Cite web |title=Франция передала России часть технологий строительства "Мистралей" |url=https://ria.ru/20150618/1076058872.html |website=[[RIAノーボスチ|РИА Новости]] |date=20150618T0907 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>、その他にも情報管理システム、通信管理システムの技術が移転されている<ref name="#1"/>。
2月24日に[[タス通信]]が報じたところでは、ロシアは同艦に単艦での対空・対艦・対潜攻撃及び防衛能力を付与することを求めて、ロシア製[[艦対空ミサイル|対空]]・[[対艦ミサイル|対艦]]・[[対潜ミサイル]]の発射機を装備する。具体的には、A-220M 57mm単装砲、[[AK-630|AK-630M]] 30mm[[ガトリング砲]]、[[9K38 イグラ|グブカ]] [[艦対空ミサイル#近接防空ミサイル|近接防空ミサイル]]が搭載される<ref>{{Cite web |title=Опубликованы новые детали проекта универсального десантного корабля типа "Мистраль" для российского ВМФ |url=https://web.archive.org/web/20121217042451/http://arms-tass.su/?page=article&aid=108906&cid=24 |website=АРМС-ТАСС |date=2012-07-23 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20121217042451/http://arms-tass.su/?page=article&aid=108906&cid=24 |archive-date=2012-12-17}}</ref>。艦載機としては[[Ka-52 (航空機)|Ka-52K]][[攻撃ヘリコプター]]、[[Ka-27 (航空機)|Ka-27M/29]][[対潜哨戒機#哨戒ヘリコプター|対潜ヘリコプター]]を搭載する<ref>{{Cite web |title=Российские ДВКД типа "Мистраль" в отличие от французских аналогов будут оснащены ударным и оборонительным оружием |url=http://arms-tass.su/?page=article&aid=104085&cid=44 |website=АРМС-ТАСС |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20120318122523/http://arms-tass.su/?page=article&aid=104085&cid=44 |archive-date=2012-04-15}}</ref>。このため格納庫の高さが若干増されている。また、[[北極海]]での運用を想定して艦の船体は砕氷船クラスの鋼合金へ変更されている<ref>{{Cite web |title=Источник: Российские офицеры учатся во Франции пользоваться "Мистралем" |url=https://web.archive.org/web/20150927002203/http://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=165513 |website=flot.com |date=2015-09-27 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20150927002203/http://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=165513 |archive-date=2015-09-27}}</ref>。
電子機材に関しても変更が行われており、衛星通信システムはロシア製のものへと変更が行われる<ref>{{Cite web |title=Первый российский «Мистраль» лишился Syracuse |url=https://iz.ru/news/570338 |website=[[イズベスチヤ|Известия]] |date=2014-05-06 |access-date=2022-09-28 |language=ru |first=Алексей |last=Криворучек}}</ref>。更にセヴァストポリではSENIT-9がシグマ-Eへ変更され<ref>{{Cite web |title=Вертолетоносец «Севастополь» оснастят российской системой управления |url=https://lenta.ru/news/2014/04/30/mistral/ |website=Lenta.RU |access-date=2022-09-28 |language=ru |date=2014-04-30}}</ref>新たにMTK-201ME光学電子システムが搭載される<ref>{{Cite web |title="Мистрали" получат российскую оптико-электронную систему |url=https://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=167992 |website=flot.com |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20140716122547/https://flot.com/news/navy/?ELEMENT_ID=167992 |archive-date=2014-07-16}}</ref>。
ロシア海軍は、「[[南オセチア紛争 (2008年)|2008年のグルジア紛争]]の際に、[[黒海艦隊]]の輸送能力の不足で増援部隊の揚陸に26時間を要したが、ミストラル級だと同任務を40分で遂行できる。」としており、揚陸能力の機動性向上に期待している。しかし2009年11月、ブルジェフ副司令官はミストラル級を[[北方艦隊]]と[[太平洋艦隊 (ロシア海軍)|太平洋艦隊]]に配備すると述べ、外洋でのパワー・プロジェクションに本級を用いることを示唆した<ref>[[小泉悠]]『ロシア海軍は生まれ変われるか』ユーラシア・ブックレット166、2011年、[[東洋書店]]。ISBN 978-48645-90099</ref>。就役に先立ち、2013年に太平洋艦隊所属の第3独立海軍歩兵[[連隊]]が、第40独立海軍歩兵[[旅団]]に格上げされ、2014年には北方艦隊所属の海軍歩兵連隊も旅団に格上げされる予定である<ref>「海外艦艇ニュース ロシアが2個海軍歩兵連隊を旅団に格上げ」『[[世界の艦船]]』第792集（2014年2月号） [[海人社]]</ref>。
一方で、導入には否定的な意見も存在した。国防相[[アナトーリー・セルジュコフ]]が解任された後の2013年1月、ロシア連邦政府軍事産業委員会第1副委員長イワン・ハルチェンコは、ミストラル級を購入する決定は馬鹿げており、国家と造船業界へ損害を与える要因となっているとして批判した。2014年には[[ドミトリー・ロゴージン]]副首相がミストラル級の購入は間違いであり、ミストラル級が無くても支障は無いと述べた<ref>{{Cite web |url=http://tass.ru/politika/1458113 |website=[[タス通信|ТАСС]] |access-date=2022-09-28 |title=Рогозин: Россия может обойтись без "Мистраля"}}</ref><ref>{{Cite web |title=Контракт по "Мистралям" изначально был ошибкой, заявил Рогозин |url=https://ria.ru/20141204/1036568040.html |website=РИА Новости |date=2014-12-04 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>。
ロシア海軍のミストラル配備について、2013年6月2日、日本の[[小野寺五典]][[防衛大臣]]は[[シンガポール]]で[[ジャン＝イヴ・ル・ドリアン]]仏国防相との会談で、[[極東]]の勢力均衡を崩すとの懸念を示した<ref>{{Cite web|和書|title=小野寺防衛相：「ミストラル」のロシア輸出は極東のパワー・バランスを崩す |url=http://japanese.ruvr.ru/2013_06_02/114833182/ |website=[[ロシアの声]] |date=2013-09-28 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130928090139/http://japanese.ruvr.ru/2013_06_02/114833182/ |archive-date=2013-09-28}}</ref>。
==== ウクライナ情勢と引渡し延期問題 ====
当初、ウラジオストクは2014年に、セバストポリは2015年にロシアに引き渡される予定であった。しかし2014年2月以降、[[ロシアによるクリミアの併合|クリミア併合]]やウクライナ東部ドンバス地域における州庁舎占拠などのロシアが関与したとされる事件が勃発し、フランスは契約を履行することが困難な情勢となった<ref>{{Cite news|title=U.S. opposes French sale of Mistral warships to Russia: senior official|url=https://jp.reuters.com/article/us-ukraine-crisis-sanctions-usa-idUSKBN0FQ24920140721/|work=Reuters|date=2014-07-21|access-date=2022-09-28|language=ja}}</ref>。9月初旬にフランスは引渡しの一時延期を発表<ref>{{Cite news|title=France says cannot deliver first helicopter carrier to Russia|url=https://www.reuters.com/article/us-ukraine-crisis-france-mistral-idUSKBN0GY2AG20140903|work=[[ロイター|Reuters]]|date=2014-09-03|access-date=2022-09-28|language=en}}</ref>、[[フランソワ・オランド]]大統領はウクライナ情勢が改善されない場合、艦の引き渡しは承認できないとした<ref>{{Cite web |title=Россия официально попросила Францию объяснить непоставку "Мистраля" |url=https://ria.ru/20150113/1042319678.html |website=РИА Новости |date=2015-01-13 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>。9月13日、ウクライナで一時停戦が成立し、ウラジオストクとセバストポリの引き渡しも（フランス国防省筋によれば11月中旬に<ref>{{cite news|url=http://en.itar-tass.com/world/756532|title=Mistral delivery to Russia to be approved by mid-November|work=|accessdate=26 October 2014|date=2014-10-25|archive-url=https://web.archive.org/web/20141026113700/http://en.itar-tass.com/world/756532|archive-date=2014-10-26|newspaper=[[タス通信|TASS]]}}</ref>）再開するものと思われ、[[インテルファクス通信]]は11月4日に引き渡しが行われると報じた<ref name="sekai808" />。年9月24日から10月3日にかけて、ウラジオストクは引渡しに向け2回目の試験航海を行った<ref name="sekai808">「海外艦艇ニュース ロシア向けミストラル級強襲揚陸艦の最新動向」 『世界の艦船』第808集（2014年12月号） 海人社 P.164</ref>。しかし11月25日、フランスは両艦の引き渡しを無期限延期すると発表した<ref>{{Cite web |title=France postpones warship delivery to Russia 'until further notice' |url=https://www.dw.com/en/france-postpones-warship-delivery-to-russia-until-further-notice/a-18085051 |website=[[ドイチェ・ヴェレ|DW]] |access-date=2022-09-28 |language=en-GB |date=2014-11-25}}</ref>。ロシアは法的措置も検討に入れてこの決定に抗議した<ref name="BBC30190069">{{cite web |url=http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-30190069 |title=Russia Mistral: France halts delivery indefinitely |publisher=[[BBCニュース|BBC News]] |accessdate=25 November 2014 |date=2014-11-25}}</ref>。その一方でフランスは経済的状況から安易に契約を無とすることが困難な状況にあり<ref>{{Cite web |title=СМИ: Франция не в том положении, чтобы отменять договор по "Мистралям" |url=https://ria.ru/20141117/1033668550.html |website=РИА Новости |date=2014-11-17 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>、事態は膠着状態に陥った。
2015年4月16日、[[ウラジーミル・プーチン]]大統領は引渡しが行われない場合、違約金は求めないが支払った代金の返却を望むと発言した<ref>{{Cite web |url=http://tass.ru/politika/1908837 |website=ТАСС |access-date=2022-09-28 |title=Россия не будет требовать от Франции неустоек за отказ поставить "Мистрали" |date=2015-04-16}}</ref>。
2015年7月2日、ミストラル級に関する交渉は完了に近づいており、近い内にロシアへの代金返還に関する合意が署名されると報じられた<ref>{{Cite web |title=Кожин: РФ и Франция подпишут договор о возврате денег за "Мистрали" |url=https://ria.ru/20150702/1109259638.html |website=РИА Новости |date=2015-07-02 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>。同月23日には艦に搭載されているロシア製兵装に関する協議へ移行し<ref>{{Cite web |title=Источник: РФ обсуждает с Францией возврат систем связи с "Мистралей" |url=https://ria.ru/20150723/1143526571.html |website=РИА Новости |date=2015-07-23 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>、機材取り外し実施のための専門家グループの派遣が決定した<ref>{{Cite web |url=http://tass.ru/armiya-i-opk/2142984 |website=ТАСС |access-date=2022-09-28 |title=Источник: РФ готовит группу специалистов для демонтажа оборудования связи с "Мистралей" |date=2015-07-25}}</ref>。
2015年8月5日、フランス・ロシア両政府においてウラジオストクとセバストポリの引き渡し中止が正式に決定、フランスはロシアに10億ユーロ弱の費用を全額返還することとなった<ref>{{cite news |title=Mistral warships: Russia and France agree compensation deal |url= http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-33798102 |accessdate=2016-07-27 |work=BBC News |date=2015-08-05}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/2171747 |website=ТАСС |access-date=2022-09-28 |title=СМИ: Франция согласилась выплатить России за "Мистрали" чуть менее 1 млрд евро |date=2015-08-07}}</ref>。
ロシア海軍ではミストラル級の代わりとして{{仮リンク|イワン・ロゴフ級強襲揚陸艦|en|Project 23900 amphibious assault ship}}を計画している。
=== エジプト海軍への配備 ===
2015年9月23日、フランスとエジプトはウラジオストクとセバストポリをエジプトが9億5000万ユーロで購入することに同意<ref>{{cite news|url=http://www.wsj.com/articles/france-to-sell-mistral-warships-to-egypt-1443009701|title=France to Sell Two Mistral Warships to Egypt|work=[[ウォール・ストリート・ジャーナル|Wall Street Journal]]|last=Dalton|first=Matthew|date=2015-09-23|subscription=yes|access-date=2022-09-09}}</ref><ref>{{cite news|url=https://edition.cnn.com/2015/09/23/europe/france-egypt-warship-sale/|title=France to sell Egypt two warships previously contracted to Russia|work=[[CNN]]|date=23 September 2015|access-date=2022-09-09|author=Susannah Cullinane and Noisette Martel}}</ref>、2016年1月上旬には支払いを完了した<ref>{{cite news|url=http://sputniknews.com/europe/20160114/1033133946/french-amrs-expots-2015.html|title=French Arms Exports Reach All-Time High in 2015|accessdate=2022-09-19|newspaper=[[スプートニク (通信社)|Sputnik]]|date=2016-01-14}}</ref>。
ウラジオストクは'''ガマール・アブドゥル＝ナーセル'''に改名され、2016年6月2日、フランスの造船企業である[[ナバル・グループ|DCNS]]によりエジプトへの引き渡しが行われた<ref>{{Cite web |title=DCNS delivers the first Mistral-class helicopter carrier to the Egyptian Navy, the LHD Gamal Abdel Nasser |url=http://en.dcnsgroup.com/news/dcns-delivers-the-first-mistral-class-helicopter-carrier-to-the-egyptian-navy-the-lhd-gamal-abdel-nasser/ |website=DCNS Group |date=2016-06-02 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20160607161907/http://en.dcnsgroup.com/news/dcns-delivers-the-first-mistral-class-helicopter-carrier-to-the-egyptian-navy-the-lhd-gamal-abdel-nasser/ |archive-date=2016-06-07}}</ref>。
同様にセバストポリも'''アンワル・アッ＝サーダート'''と改名され2016年9月16日にエジプトへ引き渡された<ref>{{Cite web |title=DCNS delivers the second Mistral-class helicopter carrier to the Egyptian Navy, the LHD Anwar El Sadat|url=https://www.naval-group.com/en/news/dcns-delivers-the-second-mistral-class-helicopter-carrier-to-the-egyptian-navy-the-lhd-anwar-el-sadat/ |website=[[ナバル・グループ|NAVAL GROUP]] |date=2017-09-11 |access-date=2022-09-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20170911115646/https://www.naval-group.com/en/news/dcns-delivers-the-second-mistral-class-helicopter-carrier-to-the-egyptian-navy-the-lhd-anwar-el-sadat/ |archive-date=2017-09-11}}</ref>。
エジプトは2015年9月上旬にロシアに対しミストラル改造のための無線機器、通信およびナビゲーションシステムの供給を求め<ref>{{Cite web |title=Россия продаст Египту начинку для «Мистралей» |url=https://iz.ru/news/633521 |website=Известия |date=2016-09-21 |access-date=2022-09-28 |language=ru |first=Николай |last=Сурков}}</ref>、2017年7月5日契約を締結した<ref>{{Cite web |title=Россия поставит Египту оборудование для "Мистралей" |url=https://ria.ru/20170705/1497850072.html |website=РИА Новости |date=2017-07-05 |access-date=2022-09-28 |language=ru}}</ref>。
{|class="wikitable" style="text-align:center"
|-
!艦名（露）
!艦名（埃）
!起工
!進水
!就役
!計画母港（露）
!母港（埃）
|-
| ウラジオストク<br />{{Lang|ru|«Владивосток»}}||[[ガマール・アブドゥル＝ナーセル (揚陸艦)|ガマール・アブドゥル＝ナーセル]]
|2012年<br />2月1日
|2013年<br />10月15日
|2016年<br />6月
|rowspan="2"|[[ウラジオストク]]<ref>{{Cite web |title=France wins tender to build warships for Russia (Update 1) |url=https://sputniknews.com/20101224/161921890.html |website=Sputnik |date=2010-12-24 |access-date=2022-09-28 |language=en |first= |last=}}</ref>||rowspan="2"|[[アレクサンドリア]]
|-
| セヴァストポリ<br />{{Lang|ru|«Севастополь»}}
|{{仮リンク|アンワル・アッ＝サーダート (揚陸艦)|en|Egyptian ship Anwar El Sadat|label=アンワル・アッ＝サーダート}}
|2013年<br />6月18日
|2014年<br />11月22日
|2016年<br />10月
|}
==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|last=多田|first=智彦|year=2008|month=10|title=欧州製の空母型多目的母艦|journal=[[軍事研究 (雑誌)|軍事研究]]|volume=43|issue=10|pages=55-57|publisher=[[ジャパン・ミリタリー・レビュー]]|naid=40016233086|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=藤木|first=平八郎|year=2004|month=05|title=ハイブリッド・キャリアーの時代 (特集 ハイブリッド・キャリアー) |journal=[[世界の艦船]]|issue=626|pages=69-73|publisher=[[海人社]]|naid=40006137102|ref=harv}}
* {{Cite book|authorlink=:en:Norman Polmar|first=Norman|last=Polmar|year=2008|title=Aircraft Carriers: A History of Carrier Aviation and Its Influence on World Events|publisher=Potomac Books Inc.|volume = Volume II|isbn=978-1597973434|ref=harv}}
* {{Cite book|first=Stephen|last=Saunders|year= 2015|title=[[ジェーン海軍年鑑|Jane's Fighting Ships 2015-2016]]|publisher=[[:en:Jane's Information Group|Janes Information Group]]|isbn=978-0710631435|ref=harv}}
* {{Cite book|authorlink=:en:Eric Wertheim|first=Eric|last=Wertheim|title= [[:en:Combat Fleets of the World|The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World]]|edition=16th |year= 2013|publisher=[[:en:United States Naval Institute|Naval Institute Press]]|isbn=978-1591149545|ref=harv}}
== 外部リンク ==
{{Commons|Category:Mistral class LHD}}
* {{Wayback|url=http://www.defense.gouv.fr/marine/decouverte/equipements/batiments_de_combat/bpc_type_mistral |title=フランス海軍 - ミストラル級 |date=20071005063843}}{{fr icon}}
* [https://web.archive.org/web/20141020183538/http://www.netmarine.net/bat/tcd/mistral/index.htm NetMarine - BPC Mistral]{{en icon}}
* [https://www.globalsecurity.org/military/world/europe/mistral.htm GlobalSecurity.org - Mistral BPC Class]{{en icon}}
* [http://www.naval-technology.com/projects/mistral/ Naval Technology - Mistral Class]{{en icon}}
{{ミストラル級強襲揚陸艦}}
{{戦後フランス海軍の艦艇}}
{{DEFAULTSORT:みすとらるきゆうきようしゆうようりくかん}}
[[Category:フランスの揚陸艦]]
[[Category:エジプトの艦船]]
[[Category:ミストラル級強襲揚陸艦|+]]
[[Category:強襲揚陸艦]]
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