削除された内容 追加された内容
不当な抱き合わせ販売の例: 東芝昇降機サービス事件
 
(56人の利用者による、間の80版が非表示)
1行目:
{{law}}
'''抱き合わせ商法'''(だきあわせしょうほう、{{lang-en-short|tying}})とは、本来の売り物[[商品]][[サービス]](主たる商品)とは別の売り物商品・サービス(従たる商品)をセットで[[販売]]する方法・手法の総称であるを指す。'''抱き合わせ販売'''ともいう呼ばれる
 
== 概要 ==
大抵の場合は、多くの人が入手したいと考えるような購買率の高さが期待できる人気商品と、そこまで人気がく売れ行きが芳しくない「不人気商品をセットにして販売する例を指す。人気商品と不人気商品の組み合わせで販売行為に及んだ場合、[[消費者]]が人気商品を手に入れるためには、不人気商品と同時に購入しなければならなくなる。この場合、販売者にとっては人気の無い商品に対する消費者の購買率が高められることが期待できるが、消費者にとっては廉価で良質な商品を選ぶ環境でなくなってしまう
 
「不人気商品」と入手しにくい「人気商品」を組み合わせて販売した場合、消費者(客)が後者の「人気商品」を手に入れるためには、前者の「不人気商品も同時に購入」しなければならない。この場合、販売者にとっては不人気商品の購買率が高められることが期待できるが、消費者にとっては廉価で良質な商品を選ぶ環境でなくなってしまう。
また、主たる商品に従たる商品を付加して販売することによって、従たる商品の市場でのシェアを高めるための抱き合わせもある。この場合、主たる商品の市場で大きなシェアを占める企業が従たる商品の市場での競争業者を排除する手段として抱き合わせが利用されているといえる。
 
主たる人気商品の販売に併せ、従たる不人気商品の購入を強制することは、自由かつ公正な競争を不当に妨害する側面も併せ持つ。
日本においては、このような販売方法は[[不公正な取引方法]]の一般指定(10項)により指定されており、[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律|独占禁止法]](第十九条)違反となる。
 
抱き合わせ商法は従たる不人気商品の販売数を少しでも稼ぐために利用され、この場合、主たる人気商品のシェアを占める企業が従たる不人気商品の市場での競争業者を排除する手段となる。
不当な抱き合わせ販売とならない場合として、二つの商品が密接にかかわっている場合(例 - [[レンタカー]]と保険)、個別に購入できる選択肢が残されている場合などがあげられる。しかし、複写機と消耗品など、関係が密接であっても、当該消耗品市場における参入を阻害するおそれがある場合は抱き合わせ販売にあたりうる。
 
[[日本]]においては、このような販売方法は[[不公正な取引方法]]の一般指定(10項)により指定されており、[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律|]](独占禁止法]](十九19違反となる<ref>{{Cite web|和書|url=https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20090109/322564/|title=第26回 独占禁止法「抱き合わせ販売」が違法な理由|work=判例で理解するIT関連法律|website=日経クロステック|date=2009-01-22|accessdate=2020-12-17}}</ref>
==抱き合わせの例==
 
以下に、商売手法として「不当な抱き合わせ」とされている一部の実例を例示する。
不当な抱き合わせ販売とならない場合としては、
*[[テレビゲーム]]・[[ドラゴンクエストシリーズ]]が新発売の時期に、ただでさえ入手しにくいことを利用してIII・IVを買うなら他のシリーズや別の不人気な[[ファミリーコンピュータ|ファミコン]]ソフトも買うという条件付きで販売する店が存在した。
* 個別に購入できる選択肢が残されている場合
*[[1993年米騒動]]で日本米が手に入りにくくなった時期に、当時不人気だったタイ米とセットで買わないと日本米を売らないという態度にでる販売店が存在した。
* 個別に購入できないが、組み合わされる商品や役務が密接にかかわっている場合(以下は一例)
*何らかの[[会員権]]を買うと[[英会話]]などの教材が付いてくると称して実際はその会員権自体が使い物にならなくて結局高い教材を買わされた。
** 「[[レンタカー]]向け[[保険]]」を単品販売せず、レンタカーの貸与と共に販売する<ref>[http://j-net21.smrj.go.jp/well/law/column/post_158.html 抱き合わせ販売と独禁法] - J-Net21</ref>。
*米[[マイクロソフト]]のオペレーティングシステム[[Microsoft Windows|Windows]]に含まれるインターネット閲覧ソフト ([[Internet Explorer]]) や動画音声再生ソフト ([[Windows Media Player]]) などについて、違法な抱き合わせ販売として、日本国内外で過去に何度か問題提起されている<ref>[http://ascii24.com/news/i/soft/article/1998/05/19/611288-000.html?geta 米司法省らが米マイクロソフトを反トラスト法違反容疑で提訴 - ASCII24 1998年5月19日]</ref><ref>[http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0325/ms.htm 欧州委員会、Microsoftに650億円の罰金とMedia Playerの分離を命令 - Impress 2004年3月25日]</ref>。
** [[太鼓]]や[[シンバル]]、金具類を単品販売せず、「[[ドラムセット]]」としてまとめて販売する(セットを構成する単品が個別購入できない場合)。
*[[1996年]]ごろ、マイクロソフトがパソコンメーカー各社に対し、[[Microsoft Office]]のバンドル・プリインストールの際は[[Microsoft Word|Word]]と[[Microsoft Excel|Excel]]をセットで販売する方針を取っていたことについて、公取委により勧告を受けたことがある<ref>[http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981120/ms.htm 公取委、マイクロソフトに独禁法違反で排除勧告 - Impress 1998年11月20日]</ref>。事件当時、ワープロソフトは[[一太郎]]のシェアが高かったが、これによりWordのシェアが上がったとも言われている。
** [[パーソナルコンピュータ|パソコン]]単体では販売せずに、メーカーが指定した[[オペレーティングシステム]]を組み込んで販売する。[[組立家具]]に組み立てに必要な[[工具]]を同梱して販売する(それぞれを単体で買う選択肢がない場合)。
*日本の芸能界においては[[バーター]]と呼ばれ、日常的に行われている。
* 単品と認識されるが一般的に複数を一組として販売されるもの。自動車用タイヤを4本、[[ダーツ]]の矢を3本、太鼓の[[撥]](スティック)の左右、ねじや釘、一部の消耗品などは単品で販売されないことが多い。
*近年では[[ニンテンドーDS]]における同様の販売例が顕著である。一時期のオンラインショップなどではプレミア価格と称して不人気ソフトとの抱き合わせ販売を定価以上で行っていた。DSの普及が進んでからは終息した。
* 単体商品として販売されない[[おまけ]]を付ける場合(音楽CDと握手券<ref>[https://corporate.vbest.jp/columns/552/ 抱き合わせ販売と独占禁止法] [[ベリーベスト法律事務所]]、2015年9月14日(2023年3月8日閲覧。)</ref>など)
*[[バンダイビジュアル]]が2007年から順次リリースしている劇場版アニメ([[機動警察パトレイバー the Movie]]等)の[[Blu-ray]]/[[HD-DVD]]版にDVDディスクが同時梱包されており、定価が一万円を超えた。この為、[[Amazon.co.jp]]等のカスタマーレビューではこの件に対して幾つかの批判が書き込まれている。
 
*[[インテル]]が[[2008年]][[1月]]および[[3月]]に発売したCPU、 [[Intel Core 2|Core 2Duo E8xxxおよび同Quad Q9xxx]]シリーズでは、様々なパーツ販売ショップにおいてマザーボードと同時購入のみ可能などのセット販売が積極的に行われ、一部{{誰}}で批判が相次いだ。ショップによってはCPU販売価格の2倍を超えるセットも登場した<ref>[http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20080329/etc_gcase.html 九十九電機のG-CASE(約10万円)]など</ref>
などがあげられる。
*[[ネットブック]]を始めとした小型のノートパソコンと[[イー・モバイル]]のデータ通信端末のセットで、回線契約を条件としてパソコン本体を格安で販売。初期費用は少ないが、実質的に支払う費用は変わらない。家庭内利用がメインなど通信端末の必要性が薄い場合や、型落ちなどでパソコン本体の価格が安い場合、非セット価格よりも支払う費用が高くなってしまう。通常価格よりもインパクトの強いセット価格を前面に提示していることが多い。
 
*[[パチンコ]]・[[パチスロ]]においては、人気機種を優先的にホールに導入できるようにする代わりに同じ会社の不人気機種を抱き合わせで購入させられることが半ば常態化していたことから、[[2009年]]1月にパチンコ業界の関係4団体がそのような販売方法を規制することで合意したことが明らかにされた<ref>[http://www.p-world.co.jp/news2/2009/1/30/news3268.htm ■ 大量導入優先販売の是正に向け、4団体が合意] - 月刊グリーンべると・2009年1月30日</ref>。しかし、合意直後の同年3月に発売された[[CRスロぱちんこグラディエーターエボリューション]]([[京楽産業.]])において次機種との抱き合わせ販売が行われていたことが明るみに出るなど<ref>[http://www.p-world.co.jp/news2/2009/5/1/news3423.htm ■ 京楽が販売方法で全日にお詫び、都遊協が報告] - 月刊グリーンべると・2009年5月1日</ref>、現場レベルでは依然抱き合わせ販売が横行している。
== 不当な抱き合わせ販売の例 ==
*機動戦士ガンダムのプラモデル([[ガンプラ]])のブームの際に、不人気のプラモデルの抱合せ販売をする小売店が、各地で存在した。ガンプラの品薄状況について、バンダイの「生産調整」の疑惑が持たれたため、バンダイはスケールモデルの生産を中止した。
{{Notice|認定した主体を示す出典も明記するようお願い致します。|お願い}}
以下に、商売手法として「不当な抱き合わせ販売」とされている一部の実例を例示する。
* 1992年、[[公正取引委員会]]は、家庭用テレビゲーム機やゲームソフトの卸売業者である藤田屋に対し、[[ドラゴンクエストシリーズ]]が新発売の時期に、品薄で入手しにくいことを利用して『[[ドラゴンクエストIII そして伝説へ…|ドラゴンクエストIII]]』・[[ドラゴンクエストIV 導かれし者たち|『ドラゴンクエストIV』]]と、他の「不人気なゲームソフト」とを抱き合わせて販売した行為について、当該行為を取りやめることを取引先小売業者に周知徹底させる旨の審判審決を下した(藤田屋事件)<ref>{{Cite web|和書|date=1990年12月20日|url=http://snk.jftc.go.jp/JDSWeb/jds/dc/DC005.do?documentKey=H040228H02J01000002_|title=(株)藤田屋に対する件|publisher=[[公正取引委員会]]|accessdate=2012年12月9日}}
(公取委1992年2月28日勧告審決 審決集38巻41頁)</ref>。
* 1993年、[[大阪高等裁判所]]は、[[東芝エレベータ]]が、自社製[[エレベーター]]の修理において、同社子会社の東芝昇降機サービス(現:[[東芝エレベータ|東芝エレベータテクノス]])以外の修理業者や、東芝昇降機サービスと保守業務の委託契約を締結しないユーザーについて、修理用部品を供給しないもの、とした行為につき、競合の修理業者による[[損害賠償]]請求を認容した(東芝昇降機サービス事件)<ref>{{Cite web |title=閲覧表示画面 {{!}} 公正取引委員会 |url=https://snk.jftc.go.jp/DC005/H050730H02K04001660_ |website=snk.jftc.go.jp |access-date=2025-01-13}}</ref>。
* [[マイクロソフト]]の[[オペレーティングシステム]]である [[Microsoft Windows|Windows]] に含まれる([[プリインターネット閲覧ソフ (ール]]されている)[[Internet Explorer]]) 動画音声再生ソフト ([[Windows Media Player Legacy|Windows Media Player]]) などについて、違法な抱き合わせ販売として、日本国内や[[欧州連合]]過去に何度か問題提起されている<ref>[http{{Cite news|url=https://ascii24ascii.comjp/newselem/i000/soft000/article311/1998311683/05/19/611288-000.html?geta |title=米司法省らが米マイクロソフトを反トラスト法違反容疑で提訴 - ASCII24 |newspaper=ASCII.jp|date=1998年5月-05-19日]|accessdate=2020-12-17}}</ref><ref>[http{{Cite news|date=2004年3月25日|url=https://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0325/ms.htm |title=欧州委員会、Microsoftに650億円の罰金とMedia Playerの分離を命令|newspaper=PC - Watch|publisher=Impress 2004|accessdate=2011312522]}}</ref>。
*[[ 1996年]]ごろ、マイクロソフトがパソコンメーカー各社に対し、[[Microsoft Office]] のバンドル・プリインストールの際[[Microsoft Word|Word]]/[[Microsoft Excel|Excel]] をセットで販売する方針を取っていたことについて、[[員会]]により勧告を受けたことがある([[マイクロソフト#司法・行政からの指摘|日本マイクロソフト抱合せ事件]]勧告審決)<ref>[http{{Cite news|date=1998年11月20日|url=https://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981120/ms.htm |title=公取委、マイクロソフトに独禁法違反で排除勧告|newspaper=PC - Watch|publisher=Impress 1998|accessdate=20111112022]}}</ref><ref>{{Cite web |title=閲覧表示画面 {{!}} 公正取引委員会 |url=https://snk.jftc.go.jp/DC005/H101214H10J02000021_ |website=snk.jftc.go.jp |access-date=2025-01-13}}</ref>。事件当時、ワープロソフトは[[一太郎]]のシェアが高かったが、これによりWordのシェアが上がったとも言われている
* 日本の[[パチンコ]]・[[パチスロ]]においては、人気機種を優先的にホールに導入できるようにする代わりに同じ会社の不人気機種を抱き合わせで購入させられることが半ば常態化していたことから、[[2009年]]1月にパチンコ業界の関係4団体がそのような販売方法を規制することで合意したことが明らかにされた<ref>[http://www.p-world.co.jp/news2/2009/1/30/news3268.htm 大量導入優先販売の是正に向け、4団体が合意] - 月刊グリーンべると・2009年1月30日</ref>。しかし、合意直後の同年3月に発売された[[CRスロぱちんこグラディエーターエボリューション]]([[京楽産業.]])において次機種との抱き合わせ販売が行われていたことが明るみに出るなど<ref>[http://www.p-world.co.jp/news2/2009/5/1/news3423.htm 京楽が販売方法で全日にお詫び、都遊協が報告] - 月刊グリーンべると・2009年5月1日</ref>、現場レベルでは依然抱き合わせ販売が横行している
* [[1993年米騒動]]の際に、日本米と不人気な[[インディカ米|タイ米]]をセット販売した[[米穀店|米屋]]があった。
* 2019年の[[2019新型コロナウイルス|新型コロナウイルス]]による影響で[[マスク]]がほとんど購入できない状態となっている際、[[ドラッグストア]]大手の[[マツモトキヨシ]]と[[コクミン|コクミンドラッグ]]の一部店舗でマスクと他の商品とを抱き合わせて販売していた事例があったとして、公正取引委員会が[[業界団体]]の[[日本チェーンドラッグストア協会]]に対して、注意喚起を行ったことがある<ref>{{Cite news|url= https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000177406.html |title= マスク“抱き合わせ”にクギ「独禁法違反の恐れ」 |newspaper= テレ朝news |publisher= テレビ朝日 |date= 2020-02-27 |accessdate= 2020-12-17 }}</ref><ref>{{Cite news|url= https://www.sankei.com/article/20200227-EC4RKJB7WJIAZE7NGO2HN3O7XI/ |title= マスクの「抱き合わせ販売」やめて! 公取委が業界団体に要請 |newspaper= 産経ニュース |publisher= 産経デジタル |date= 2020-02-27 |accessdate= 2020-12-17 }}</ref>。
 
== 脚注・出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
* [[悪徳便乗商法]]
* [[独占禁止法バンドル]]
* [[バーター]]
*[[公正取引委員会]]
* [[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律]]
*[[食玩]]
* [[公正取引委員会]]
* [[建築条件付土地取引]]
* [[再販売価格維持]]
* [[ダブルバーレル質問]]
* [[仮面ライダースナック#社会現象と問題]]
* [[関税割当制]] - 国産品の利用と抱き合わせる形で、関税の低税率枠を割り当てる例がある。
 
{{DEFAULTSORT:たきあわせしようほう}}
[[Category:経済悪徳商法]]
[[Category:競争法]]
[[category:公正取引委員会]]
[[category:悪徳商法]]