削除された内容 追加された内容
m 豊橋駅の駅弁と豊川市のB級グルメ化は無関係なので段落を分離
 
(100人を超える利用者による、間の145版が非表示)
1行目:
{{Double image aside|right|Inari zushi in 201902 001.jpg|200|Inari zushi in 201902 002.jpg|200|関東風の俵型と関西風の三角型}}
[[image:inari-zushi.jpg|thumb|稲荷寿司]]
'''稲荷寿司'''(いなりずし)は'''稲荷鮨'''とも表記され、甘辛く煮た[[油揚げ]]の中に、[[酢]]を詰めた[[寿司]]の一種である。「お稲荷さん」「お稲荷」「いなり」などとも呼ばれる。各地に特徴的な稲荷寿司がある。
[[画像:Suke6.JPG|thumb|right|[[助六]]寿司]]
[[画像:inari.jpg|thumb|三角形の関西風稲荷寿司]]
 
'''稲荷寿司'''(いなりずし)は'''稲荷鮨'''とも表記され、甘辛く煮た[[油揚げ]]の中に飯を詰めた[[寿司]]の一種である。「お稲荷さん」「お稲荷」「いなり」とも呼ばれる。各地に特徴的な稲荷寿司がある。
 
== 概要 ==
[[File:Edo Inari sushi 02.JPG|thumb|[[江戸時代]]後期の稲荷寿司[[屋台]]([[深川江戸資料館]])]]
袋状に開いた油揚げを甘くあるいは甘辛く煮付け、寿司飯([[酢飯]])をそのまま、あるいはニンジンやシイタケなどの具材を混ぜ込んで詰める。もっと具だくさんの、いわゆる「[[ちらし寿司]]」を詰めることもある。米俵に模して四角に仕上げる。
袋状に開いた油揚げを甘くあるいは甘辛く煮付け、[[寿司飯]]をそのまま、あるいは[[ニンジン]]や[[シイタケ]]などの具材を煮込んで混ぜた寿司飯を詰める<ref name="jiten">本山荻舟『飲食事典』(平凡社、[[1958年]][[12月25日]]発行) p37 </ref>一種の[[印籠]]寿司<ref>重金敦之『すし屋の常識・非常識』(朝日新聞出版、2009年2月13日発行) p24</ref>である。[[稲荷神社]]の[[稲荷神]]([[五穀]]を司る[[ウカノミタマ|宇迦之御魂神・倉稲魂命]]を参照)は商売繁盛と共に豊作の神様であり、米を使用した俵型の稲荷寿司につながる。一般的には[[米俵]]を模した[[俵]]型([[円筒]]に近い[[直方体]])に仕上げる。
いわゆる高級な[[寿司屋]]ではあまり見られないが、庶民的な店やテイクアウト専門の寿司屋では人気の寿司。行楽の弁当などにも良く登場する。
稲荷寿司と巻き寿司を組み合わせた折り詰めは助六寿司と呼ばれる。[[歌舞伎十八番]]「[[助六由縁江戸桜]]」の主人公、[[助六]]の愛人の名が揚巻であることから、 油'''揚'''げと'''巻'''き寿司の洒落から名付けられている。
 
味がしっかり油揚げに染み込むようにひっくり返し煮込み<ref>[http://cookpad.com/articles/17118 【プロ直伝】差がつく「いなり寿司」は3つのコツで作れた!〜この差って何ですか?〜 ]</ref>、ひっくり返したまま中身を詰めるもの<ref>[[六本木]]の老舗「おつな寿司」や長野県松本地方の「からしいなり」(後述)</ref>、油揚げの表面を炙ったもの<ref>銀座の一口いなり寿司「[[銀座白金や]]」</ref>、三角油揚げを用いて三角形に仕上げるものなど、地域によって異なる([[#各地の稲荷寿司|後述]])。
=== 各地の稲荷寿司 ===
埼玉県[[熊谷市]](旧・[[大里郡]][[妻沼町]])名物の稲荷寿司([[歓喜院 (熊谷市)#聖天寿司|聖天寿司]])は通常の倍ほどの長径があり、これは江戸時代のいなり寿司の形を反映しているとされている。
西日本では「揚寿司(あげずし)」、また近畿地方の年配者には「しのだ寿司」、「信太鮨」、「信田鮨」、「信田寿司」と呼ばれることもある。西日本ではごまなどの具材の入った稲荷寿司(五目稲荷ともいう)が多いとされる。その上から煮あげた[[干瓢]]などで縛ることもある。[[キツネ|狐]]の耳に模して[[三角形]]に仕上げたものが主流とされている。中身を[[蕎麦]]とした「蕎麦稲荷」と言われるものも存在する。[[ハワイ]]などかつて多くの日本人が移民した土地でもポピュラーな食品となっており、英語ではその錐形の形状から「コーン・スシ(cone sushi)」と呼ばれている。
 
いわゆる高級な[[寿司屋]]ではあまり見られないが、[[回転寿司]]を含む庶民的な店やテイクアウト専門の寿司屋では人気の寿司安価な食べ物である商店街などにある総菜店やスーパー、コンビニエンスストアでも定番商品となっており、家庭でも調理できるので、行楽の弁当などにも良く登場す用いられる。
豊橋駅では、明治末期から駅弁として売られている。
また、愛知県豊川市では稲荷寿司を[[B級グルメ]]「豊川いなり寿司」としてブランド化する動きがある。
 
== 歴史 ==
稲荷寿司に関する最古の史料として[[江戸時代]]末期に書かれた『[[守貞謾稿]]』があり、
{{Quotation|
:[[天保]]末年旧暦1844年、新暦[[18301844年]]2月~[[18441845年]]1月末年、[[江戸]]にて油揚げ豆腐の一方をさきて袋形にし、[[キノコ|木茸]][[かんぴょう|干瓢]]を刻み交へたる飯を納て鮨として売巡る。(中略)なづけて稲荷鮨、或は篠田鮨といい、ともに狐に因ある名にて、野干(狐の異称)は油揚げを好む者故に名とす。最も賤価鮨なり。[[尾張国|尾]]の名古屋等、従来これあり。江戸も天保前より店売りにはこれあるか。
}}
と記載されている。
 
『天言筆記』(明治成立)には飯や豆腐ガラ(オカラ)などを詰めてワサビ醤油で食べるとあり、「はなはだ下直(げじき-値段が安いこと)」ともある。『近世商売尽狂歌合』(1852([[1852]]([[嘉永]]5年))の挿絵には、今日ではみられない細長い稲荷ずしを、切り売りする[[屋台]]の様子が描かれている。
 
本来、[[稲荷神]]は狐ではないが、江戸時代に俗信によりで[[習合|同化とみなす向きがあっ]]された。これにより、稲荷神の[[神使]]である[[キツネ|]]の好物が油揚げであるという言い伝えから、「稲荷寿司」の名がついた<ref name="jiten"/>ともされている
 
=== 各地の稲荷寿司 ===
[[ファイル:Menuma Inari-zushi 01.JPG|サムネイル|[[妻沼町|妻沼]]の稲荷寿司]]
稲荷寿司の別称には、上記の『守貞謾稿』にも記載がある「しのだ寿司」([[葛の葉]]も参照)、[[きつね (麺類)]]と同様に油揚げを用いることから「きつね寿司」、狐の鳴き声の擬音語から「こんこん寿司」、単に「揚寿司(あげずし)」などがある。また、[[昆布巻き]]のように[[かんぴょう]]で結んだタイプもある。
 
;青森県[[津軽地方]]
:酢飯に紅ショウガと[[クルミ]]を入れる。酢飯は紅ショウガにより全体がピンクに色付けされている。<ref>[http://www6.pref.aomori.lg.jp/p-view/information/gochiso/topics/post-353.html 青森県民はスィーツ好き?|あおもりポテンシャルビュー]</ref>
;[[埼玉県]][[熊谷市]]妻沼地区
:この地区の稲荷寿司([[歓喜院 (熊谷市)#聖天寿司|聖天寿司]]など)は、通常の倍ほどの長さである<ref>{{Cite web|和書|title=伝統の「ジャンボサイズ」脈々と…門前町で愛され続ける「ここだけ」の定番土産 熊谷「妻沼のいなり寿司」 |url=https://www.saitama-np.co.jp/articles/37386 |website=saitama-np.co.jp |date=2023-07-23 |access-date=2023-10-02}}</ref>。江戸時代頃より伝承されている料理として、[[文化庁]]の[[100年フード]]・伝統の100年フード部門の一つに認定されている。
;[[茨城県]][[笠間市]]
:[[稲荷神#日本三大稲荷|日本三大稲荷]]の一つである[[笠間稲荷神社]]の[[門前町]]では、油揚げの皮に[[蕎麦]]を詰めたり、寿司飯に[[クルミ]]で味付けしたりした独特の稲荷寿司が販売されている<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23178880X01C17A1NZ1P00/ 【食ナビ】そばやクルミ、味の競演「笠間いなり」具材は変わり種]『日本経済新聞』夕刊2017年11月7日</ref>。
;[[長野県]]松本地方
:油揚げが裏返しで辛子をきかせた「からしいなり」がある(油揚げの裏返しは「からしいなり」と通常の稲荷寿司を区別する意味もある)<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=12931|title=松本伝統の味「からしいなり」に迫る 油揚げが「裏返し」内側に「からし」ルーツは神事の味?|work=|publisher=長野放送|accessdate=2023-06-23|date=}}</ref>。
; 関東
: 伝統的には揚げを色濃く煮染めて使用するが、色の薄い揚げの場合もある<ref>[https://archive.ph/Xl1G3 江戸稲荷寿司]</ref>。
; 関西
: 五目稲荷ともいわれ、酢飯のみで作ることは稀で、通常は椎茸や人参、ゴマなどの具材が入る。関東の俵型に対し油揚げを対角線に切った三角形に作るのも特徴である。
;沖縄
:[[沖縄県]]には、味付けしない油揚げに酢飯を詰めただけのシンプルな稲荷寿司が存在する。[[うるま市]]の丸一食品が発祥とされるが、現在では模倣店が多数存在するほか「沖縄風いなり」という名称で惣菜店やスーパーマーケット、コンビニエンスストア等でも販売されている。
;日本国外
:[[ハワイ州|ハワイ]]など、かつて多くの日本人が移民した土地でもポピュラーな食品となっている。また、[[台湾]]や[[大韓民国|韓国]]、[[ミクロネシア]]の島々<ref>[http://www2.aia.pref.aichi.jp/koryu/j/kyouzai/PDF/H22/micronesia.pdf ミクロネシア連邦 - 愛知県国際交流協会]</ref>にも[[日本統治時代]]に広まり、台湾では{{lang|zh-tw|豆皮壽司}}、韓国ではユブチョバプ(油揚げ寿司)と呼ばれる。また、[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]においては[[在日朝鮮人の帰還事業]]で渡った人々が普及させ、現在はトゥブパプ(豆腐ご飯)として大衆食のひとつになっている<ref>{{Cite web |url=https://www.asiapress.org/apn/2017/07/north-korea/post-54851/ |title=<写真報告>意外と多様な北朝鮮庶民の食事(3) 黒くて長いこの食べ物は何? どこかで見たような…(写真3枚) |access-date=2024-11-19 |publisher=[[アジアプレス・インターナショナル]]}}</ref>。
 
== 関連 ==
=== 助六寿司 ===
[[imageFile:inariSukeroku-zushi of Daily Yamazaki.jpg|thumb|稲荷助六寿司]]
{{See also|助六}}
稲荷寿司と[[巻き寿司]]を組み合わせた折り詰めは'''助六寿司'''と呼ばれる。[[歌舞伎十八番]]「[[助六由縁江戸桜]]」の主人公・助六の恋人である[[吉原遊廓|吉原]]の[[花魁]]・揚巻から、助六の公演を[[熱田]]で終えた[[助高屋高助 (4代目)|四代目助高屋高助]]が差し入れの油'''揚'''げと'''巻'''き寿司のセットを助六と称し、後援者から広まったとされている<ref>{{Cite web |url=https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20220429_18048 |title=いなり寿司と巻き寿司のセット…『助六寿司』名古屋発祥の“名古屋めし説” 江戸時代の百科事典にも記述アリ |access-date=2023-11-30 |publisher=[[東海テレビ]]}}</ref>。
 
=== セットメニュー ===
[[蕎麦]]や[[うどん]]とセットにしたメニューが、[[立ち食いそば・うどん店]]などにある。
 
=== 蕎麦稲荷 ===
中身を寿司飯の代わりに[[蕎麦]]としたものを「蕎麦稲荷」という(魚介類や米飯を使わないため厳密には「寿司」ではない)。茨城県の笠間が発祥とされる。
 
=== 南関あげ巻き寿司 ===
南関あげ巻き寿司は、熊本県[[南関町]]の[[郷土料理]]に出自を持つ、海苔に代えて油揚げの一種である[[南関あげ]]で巻いた、稲荷寿司に類似した[[巻き寿司]]である。一般的な油揚げに対し脱水乾燥している南関あげを下茹でし油を抜いた後に、出汁で煮込んで味を含ませたものを使用する。南関あげの定尺形状は20センチメートル四方で、[[海苔]]の全型(縦21センチメートル、横19センチメートル)とほぼ同じであることから、昭和40年代に南関町のグループが考案し、その後県外でも販売するようになった。<ref>{{Cite web|title=南関あげ巻き寿司 熊本県 {{!}} うちの郷土料理:農林水産省|url=https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/nankan_ageno_maki_zushi_kumamoto.html|website=www.maff.go.jp|access-date=2025-09-24}}</ref>
 
== 脚注 ==
本来、[[稲荷神]]は狐ではないが、江戸時代には俗信により同化とみなす向きがあった。これにより、稲荷神の[[神使]]である狐の好物が油揚げであるという言い伝えからその名がついた。
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 出典 ===
{{Commonscat|Inarizushi}}
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
[[category:寿司|いなりすし]]
{{Commonscat|Inarizushi}}
[[category:日本の食文化|いなりすし]]
* [[category:関東地方日本文化|いなりすしにおける狐]]
* [[稲荷神]]・[[稲荷神社]]・[[ウカノミタマ]](宇迦之御魂神・倉稲魂命)
[[category:中部地方の食文化|いなりすし]]
* [[いただき]] - [[鳥取県]][[弓ヶ浜半島]]の[[郷土料理]]。大きな油揚げの中に生米や野菜を詰めて、だし汁で炊き上げたもので、外観が稲荷寿司に似る。
[[category:近畿地方の食文化|いなりすし]]
* [[日笠陽子]] - 2024年に自身が設立した声優事務所の名前の由来となっている。
* [[究極!!変態仮面]] - 「それは私のおいなりさんだ」という決め台詞がある。
{{B-1グランプリ}}
{{food-stub}}
{{寿司}}
 
{{デフォルトソート:いなりすし}}
[[it:Inarizushi]]
[[Category:寿司]]
[[Category:稲荷信仰]]
[[Category:稲荷神社|すし]]
[[Category:詰め物料理]]
[[Category:油揚げ料理]]