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「The Military Balance 2024」に基づき、モロッコ空軍の保有状況を更新
 
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{{ Infobox 航空機
| 名称=OV-10 ブロンコ
| 画像=ファイル:OV-10D CV-60 1985.jpeg
| キャプション=[[アメリカ海兵隊]]所属のOV-10D (<br/>([[航空母艦|空母]]「[[サラトガ (CV-60)|サラトガ]]」にて:1985、[[1985)]])
| 用途=[[COIN機]]
| 分類=
| 製造者=[[ノースアメリカン]]
|運用者 more=<br/>
|
:*{{USA}}([[アメリカ海兵隊|海兵隊]]、[[アメリカ空軍|空軍]]、[[アメリカ海軍|海軍]])
運用者 more=
:*{{BRD}}([[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|西ドイツ空軍]])他
** {{USA}} ([[アメリカ海兵隊|海兵隊]]、[[アメリカ空軍|空軍]]、[[アメリカ海軍|海軍]])
|初飛行年月日=[[1965年]][[7月15日]]
** {{BRD}} ― [[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|西ドイツ空軍]] 他
| 初飛行運用開始年月日=[[19651968年]][[721523日]]
|運用状況=現役
| 運用開始年月日=[[1968年]][[2月23日]]
|生産機数=360機
| 運用状況:現役
| 生産機数:353機
}}
'''OV-10 ブロンコ'''(OV-10 Bronco)は、[[アメリカ合衆国]]の[[ノースアメリカン]]社が開発した[[COIN機]]。
 
== 開発 ==
'''OV-10 ブロンコ'''(OV-10 Bronco)は、[[ノースアメリカン]]社が開発した[[COIN機]]。
[[ファイル:North American Aviation design studies for OV-10 type design.jpg|250px|サムネイル|左|各社の初期設計案]]
[[1959年]]に[[アメリカ海兵隊]]では、[[O-1 (航空機)#各型解説|OE-1 バードドッグ]]の後継機として高性能の[[観測機]]の開発を決めたが<ref name="koku812">Frank B.Mormillo「ブロンコを飛ばし続けるチノの人々 OV-10 SQUADRON」『[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]』通巻812号(2020年8月号)文林堂 P.36-40</ref>、また、[[アメリカ空軍]]では[[A-1 (航空機)|A-1 スカイレイダー]][[攻撃機]]や[[A-26 (航空機)|B-26 インベーダー]][[爆撃機]]を代替する[[COIN機]]を求めており、さらに[[アメリカ陸軍]]でも独自の[[近接航空支援]]機を求めていた。アメリカ陸・[[アメリカ海軍|海]]・空軍では、それぞれ機体の研究を開始したが、[[1963年]][[9月]]に三軍共通のCOIN機を共同開発する方向で進められることになり、軽武装偵察航空機(LARA)計画として、アメリカ海兵隊機の調達を管理するアメリカ海軍が所管することになった。[[10月]]にはLARA計画の提案要求(RFP)が出され、優れた[[航空機の離着陸方法#STOL|短距離離着陸(STOL)]]能力を持ち、最大速度265kt以上、固定[[武装]]として7.62mm[[機関銃|機銃]]4挺装備、兵装搭載能力1,088kg、[[エアボーン|空挺隊員]]6名または[[貨物]]910kgを[[輸送]]もしくは[[空中投下]]が可能な事が求められた。この要求に対して国内メーカー11社から設計案が提出され、[[1964年]][[8月]]の最終審査で[[ノースアメリカン]]社のNA-300案の採用がアメリカ海軍から発表された<ref name="koku812"/>。同年[[10月17日]]にはYOV-10Aの名称で7機の試作機が発注されている。
 
YOV-10Aは記録的なスピードで開発が進められ、[[1965年]][[7月16日]]に試作初号機が[[ポート・コロンブス国際空港]]で初飛行した<ref name="koku812"/>。[[プロトタイプ|試作機]]7機のうち試作5号機以降は主翼端が延長され、試作7号機ではエンジンを[[プラット・アンド・ホイットニー|P&W]]社製T74 [[ターボプロップエンジン]]からギャレット社製T-76 ターボプロップエンジンに換装した。YOV-10Aの飛行試験では速度性能や高速安定性などが要求値を大きく下回ることが判明し、さらに一度落選した[[コンベア]]社が、自社開発した[[コンベア モデル48|モデル48 チャージャー]]の比較審査をアメリカ海軍に求めたため飛行試験は長期化した。ノースアメリカン社では、要求値を満たすために主翼をさらに1.79m延長して12.5mとし、[[エンジン]]も出力強化型のギャレット社製T-76-G-10/12 ターボプロップエンジンに換装、エンジンを操縦席から6[[インチ|in]]離して騒音を軽減した<ref name="koku812"/>。また、[[装甲]]強化や防漏[[タンク]]の改良、[[カウル|エンジンナセル]]の取り付け位置を15cm外側に移して観測員席への騒音減少を図り、胴体下面の機銃収容ウェポン・スポンソンも下反角を付けるなどの改修が施された。
== 開発経緯 ==
[[1959年]]に[[アメリカ海兵隊]]では[[O-1 (航空機)|OE-1 バードドッグ]]の後継機として高性能の[[観測機]]の開発を決め、また[[アメリカ空軍]]では[[A-1 (航空機)|A-1 スカイレーダー]][[攻撃機]]や[[A-26 (航空機)|B-26 インベーダー]][[爆撃機]]を代替する[[COIN機]]を求めており、さらに[[アメリカ陸軍]]でも独自の近接航空支援機を求めていたことからアメリカ陸・[[アメリカ海軍|海]]・[[アメリカ空軍|空軍]]では、それぞれ機体の研究を開始したが、[[1963年]][[9月]]に三軍共通のCOIN機を共同開発する方向で進められることになり、軽武装偵察航空機(LARA)計画としてアメリカ海兵隊機の調達を管理するアメリカ海軍が所管することになった。[[10月]]にはLARA計画の提案要求(RFP)が出され、優れた[[航空機の離着陸方法#短距離離着陸機|短距離離着陸(STOL)]]能力を持ち、最大速度265kt以上、固定武装として7.62mm機銃4挺装備、兵装搭載能力1088kg、空挺隊員6名または貨物910kgを輸送もしくは空中投下が可能な事が求められた。この要求に対して国内メーカー11社から設計案が提出され、[[1964年]][[8月]]の最終審査で[[ノースアメリカン]]社のNA-300案の採用がアメリカ海軍から発表された。同年[[10月17日]]にはYOV-10Aの名称で7機の試作機が発注されている。
 
YOV-10Aは記録的なスピード開発で進められ、[[1965年]][[7月16日]]に試作初号機が初飛行し、試作機7機のうち試作5号機以降は主翼端が延長され、試作7号機では[[プラット・アンド・ホイットニー|P&W]]社製T74[[ターボプロップエンジン]]からギャレット社製T-76ターボプロップエンジンに換装されている。YOV-10Aの飛行試験では速度性能や高速安定性などが要求値を大きく下回ることが判明し、さらに一度落選した[[コンベア]]社が、自社開発した[[コンベア モデル48|モデル48 チャージャー]]の比較審査をアメリカ海軍に求めたため飛行試験は長期化した。ノースアメリカン社では、要求値を満たすために主翼をさらに1.79m延長して12.5mとし、[[エンジン]]も出力強化型のギャレット社製T-76-G-10/12ターボプロップエンジンに換装された。また、装甲強化や防漏タンクの改良、エンジンナセルの取り付け位置を15cm外側に移して観測員席への騒音減少を図り、胴体下面の機銃収容ウェポン・スポンソンも下反角を付けるなどの改修が施された。
 
LARA計画では途中でアメリカ陸軍が、近接航空支援の分野で縄張りを主張していたアメリカ空軍から反対を受けて計画から降りたため三軍共用化は崩れたものの、アメリカ空軍がまず109機を発注、続いてアメリカ海兵隊が76機を発注し、量産初号機は[[1967年]][[8月6日]]に初飛行した。量産機にはOV-10Aの制式名称が与えられている。
 
== 機体構成設計 ==
{{Multiple image|direction=vertical|width=250
OV-10は、[[直線翼]]の主翼を高翼配置し、後部胴体は主翼に付けられた双発の[[エンジン]]・ポッドから延びる双ブーム形式とし、両ブーム尾端に垂直安定板を立て、その上端を[[水平尾翼|水平安定板]]が結ぶという、独特のスタイルとなっている。主翼には、後縁に左右各2分割されたダブルスロテッド式[[フラップ]]が設けられており、フラップ外側には[[エルロン]]が置かれ、フラップ直前にあたる主翼下面にはフラップと連動するドアを設け、フラップダウン位置ではこのドアが下方に開き、主翼下面の空気をフラップ上面に導いて[[揚力]]効果を高めている。主翼前縁には高揚力装置はなく、エルロン直前に扇形をした独特の[[スポイラー]]が配置されており、エルロンと連動して[[ヨー]]操縦の補助として使用されるが、1枚板ではなく各4枚に分割された小型のものになっている。
|image1=OV-10 FAC.JPG
|caption1=[[コロンビア空軍]]所属機、F-Air 2008にて
|image2=OV-10D USS Nassau 1983.jpeg
|caption2=[[タラワ級強襲揚陸艦]]4番艦「[[ナッソー (強襲揚陸艦)|ナッソー]]」甲板上の、アメリカ海兵隊所属のOV-10D
|image3=ALQ-144 IRCM.jpg
|caption3=OV-10Dの胴体上面に搭載された赤外線ジャマー
|image4=F-AZKM 16.09.2006 16-29-44.JPG
|caption4=ドイツ空軍の塗装を施したブロンコデモチーム所属のOV-10B、透明な後部観測[[窓]]が見える
}}
=== 主翼 ===
OV-10は、直線翼の主翼を高翼配置し、後部胴体は主翼に付けられた双発の[[エンジン]]・ポッドから延びる双ブーム形式、両ブーム尾端に垂直尾翼を立て、その上端を[[水平尾翼]]で結ぶという、独特のスタイルをとる<ref name="koku812"/>。主翼には、後縁に左右各2分割されたダブルスロテッド式[[高揚力装置#フラップ|フラップ]]が設けられており、フラップ外側には[[補助翼|エルロン]]が置かれ、フラップ直前にあたる主翼下面にはフラップと連動するドアを設け、フラップダウン位置ではこのドアが下方に開き、主翼下面の空気をフラップ上面に導いて[[揚力]]効果を高めている。主翼前縁には高揚力装置はなく、エルロン直前に扇形をした独特の[[スポイラー (航空機)|スポイラー]]が配置されており、エルロンと連動して[[ヨーイング|ヨー]]操縦の補助として使用されるが、1枚板ではなく各4枚に分割された小型のものになっている。
 
本機のSTOL性能はとても高く、[[航空母艦|空母]]や[[強襲揚陸艦]]にも[[カタパルト]]や[[アレスティング・ワイヤー]]などを用いることなく離着艦が可能であった。ただ、あくまでも陸上機であるため、艦上からの運用は通常行わなかった。
エンジンはギャレット社製T76-G-10/12ターボプロップエンジンを搭載し、左翼側のG-10エンジンが時計回り、右翼側のG-12エンジンが反時計回りの回転方向を持ち、互いの回転[[トルク]]を打ち消している。燃料タンクは主翼内に置かれ、それぞれ内外翼に2分割されたものと中央翼の計5箇所に配置されており、容量は内翼部が69[[ガロン|Gal]]、中央翼と外翼が40Galの計258Galで、燃料はアメリカ空軍の場合、JP-4を使用する。
 
=== 胴体 ===
降着装置は機体規模に対して比較的大掛かりなものになっており、後述する未舗装道路への着陸などにも威力を発揮している。
[[軍用機のコックピット|操縦席]]は[[タンデム]]複座で、座席にはゼロ・ゼロ式のLW-3B[[射出座席]]を装備し、座席背後には[[スチール]]製、座席下面にも[[アルミニウム合金]]の[[装甲|装甲板]]が張られている。また、前部[[キャノピー]]は2cm厚の[[防弾ガラス]]とされ、乗員への安全対策も図られている。[[前線航空管制]]という任務の特性上、複数の味方地上部隊・[[航空機]]編隊などとの交信が多く発生するため、この大きく左右に貼り出したキャノピーは味方[[無線]]の周波数情報(状況に応じて頻繁に周波数の切り替えが発生するため)や[[攻撃機]]編隊の兵装状況などを書き込む[[ホワイトボード]]ならぬ「キャノピーボード」としてアナログながらも視線を落とさず情報を確認できるため効果的に利用された。書き込みには[[マジックインキ|マジックペン]]{{efn2|[[ダーマトグラフ]]などのグリースペンシルではなくいわゆる[[ホワイトボード]]などに使われるマジックペン}}が多用された。
しかしながら地上・空母での取り回しを考慮してかホイールベースは短いものとなっており、結果的に着陸安定性とのトレードオフとなっているきらいもある。
 
コックピット後方の胴体ポッド内は[[キャビン|貨物室]]で、[[エアボーン|空挺隊員]]6名または[[ストレッチャー|担架]]2床と[[衛生兵]]1名、1,451kgまでの[[貨物]]を搭載できるようにされている。また、写真撮影や標的曳航時には、胴体尾部をフレキシブルガラスの風防に換装することが出来る<ref name="koku812"/>。なお、胴体ポッド後部には整流カバーを兼ねて左側に180°回転する[[蝶番]]式開閉ドアが設置されているが、空中での開閉はできず、空挺隊員や貨物などを[[空中投下]]する場合は、飛行前に予めこのドアを外す必要があった。
コクピットはタンデム複座で、座席にはゼロ・ゼロ式のLW-3B[[射出座席]]を装備し、座席背後には[[スチール]]製、座席下面にも[[アルミニウム]][[合金]]の装甲板が張られている。また前部[[キャノピー]]は2cm厚の[[防弾ガラス]]とされ、乗員への安全対策も図られている。前線航空統制という任務の特性上、複数の味方地上部隊・航空機編隊等との交信が多く発生するため、この大きく左右に貼り出したキャノピーは味方無線の周波数情報(状況に応じて頻繁に周波数の切り替えが発生するため)や攻撃機編隊の兵装状況等を書き込むホワイトボードならぬ「キャノピーボード」としてアナログながらも視線を落とさず情報を確認できるため効果的に利用された。(書き込みにはグリースペン等が多用された)
 
胴体下面左右にはスポンソン(張り出し)があり、スポンソン内にそれぞれ[[M60機関銃#M60C|M60C 7.62mm機銃]]を各2丁(計4丁)と[[弾薬]](各500発、計2,000発)内蔵する。スポンソン下面には各2箇所の[[パイロン]]の装着が可能で胴体中央下面にもパイロンがあり、[[増槽]]を装着できるようになっている。また主翼外翼下にそれぞれ各1基の[[ハードポイント]]が設置され、自衛用の[[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9 サイドワインダー]][[空対空ミサイル]]や通常[[爆弾]]などを搭載することができたが、通常使用しないのが一般的だった。
コクピット後方の胴体ポッド内が貨物室とされ、空挺隊員5名または[[担架]]2床と[[衛生兵]]1名、1451kgまでの貨物を搭載できるようにされている。なお、胴体ポッド後部には[[整流]]カバーを兼ねて左側に180゜回転する[[蝶番|ヒンジ]]式開閉ドアが設置されているが、空中での開閉はできず、空挺隊員や貨物などを空中投下する場合は、飛行前に予めこのドアを外す必要があった。
 
[[降着装置]]は、機体規模に対して比較的大掛かりなものになっており、後述する未舗装道路への着陸などにも威力を発揮している。しかし、取り回しを考慮してかホイールベースは短いものとなっており、結果的に着陸安定性とのトレードオフとなっているきらいもある。
胴体下面左右にはスポンソン(張り出し)があり、それぞれに[[M60機関銃|M60 7.62mm連装ガンポッド]]を各1基搭載し、スポンソン内には2000発の[[弾薬]]を収容、下面には各2箇所の[[パイロン]]の装着が可能。胴体下面にもパイロンがあり、[[増槽]]を装着できるようになっている。主翼下面には外翼部にそれぞれ各1基のハードポイントが設置され、自衛用の[[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9 サイドワインダー]][[空対空ミサイル]]や通常[[爆弾]]などを搭載することができたが、通常このハードポイントは使用しないのが一般的になっている。
 
=== エンジン ===
左エンジン排気管内にスモークジェネレータを搭載しており同左メインギア格納部内のタンクから揮発油を送ることで、最大4分程度の煙幕展開が可能。[[FAC]]任務での攻撃指示の際は[[誤爆]]を防ぐため、攻撃指示機・被攻撃指示機が互いに、位置を確認した上での攻撃決行が基本となるためこの発煙機構と無線の併用により、機体確認がより確実に行われている。また地上部隊への支援のための煙幕展開や、爆撃侵入コースの指示等にも使用された。
エンジンはギャレット社製T76-G-10/12 [[ターボプロップエンジン]]を搭載し、後ろから見て左翼側のG-10 エンジンが時計回り、右翼側のG-12 エンジンが反時計回りの回転方向を持ち、互いの回転[[トルク]]を打ち消している。[[燃料]][[タンク]]は主翼内に置かれ、それぞれ内外翼に2分割されたものと中央翼の計5箇所に配置されており、容量は内翼部が69[[ガロン|Gal]]、中央翼と外翼が40[[ガロン|Gal]]の計258Galで、燃料は[[アメリカ空軍]]の場合JP-4を使用する。
 
左エンジン排気管内にスモークジェネレータを搭載しており、同左メインギア格納部内のタンクから揮発油を送ることで、最大4分程度の[[煙幕]]展開が可能。FAC任務での攻撃指示の際は[[誤爆]]を防ぐため、攻撃指示機・被攻撃指示機が互いに、位置を確認した上での攻撃決行が基本となるためこの発煙機構と無線の併用により、機体確認がより確実に行われている。また、地上部隊への支援のための煙幕展開や、[[空襲|爆撃]]侵入コースの指示などにも使用された。
[[アビオニクス]]類は、AN/AIC-18 機内交話装置、AN/ARC-51BX UHF-[[ラジオ#中波放送(AM放送)|AMラジオ]]、807A VHF-AMラジオ、FM-622 VHF-[[ラジオ#超短波放送(FM放送・BSデジタルラジオ)|FMラジオ]]、HF-103 [[HF]]-[[SSB]]ラジオなどの比較的簡素なものを搭載し、航法装置ではAN/ASN-75[[磁気]][[コンパス]]、AN/ARN-52(V) [[戦術航法装置|TACAN]]、AN/ARA-50 [[UHF]]自動方位探知器(ADF)、AN/ARN-83 LF-ADF、51R6 VOR/INS、51V-4A [[慣性航法装置]](INS)グライドスロープ・レシーバーを搭載している。また、アメリカ海兵隊向け生産機では[[電波]][[高度計]]が搭載され、アメリカ空軍向け生産機では戦果確認用のKB-18Aストライク[[カメラ]]を搭載している。
 
=== 艤装 ===
[[アビオニクス]]類は、AN/AIC-18機内交話装置、AN/ARC-51BX [[極超短波|UHF]]-[[中波放送#概要|AMラジオ]]、807A VHF-AMラジオ、FM-622 VHF-[[ラジオ#ラジオ放送の種類|FMラジオ]]、HF-103 [[短波|HF]]-[[振幅変調#抑圧搬送波単側波帯|SSB]]ラジオなどの比較的簡素なものを搭載し、航法装置ではAN/ASN-75[[磁性|磁気]][[コンパス]]、AN/ARN-52(V) [[戦術航法装置|TACAN]]、AN/ARA-50 UHF自動方位探知器(ADF)、AN/ARN-83 LF-ADF、51R6 VOR/INS、51V-4A [[慣性航法装置]](INS)グライドスロープ・レシーバーを搭載している。また、[[アメリカ海兵隊]]向け生産機では[[電波]][[高度計]]が搭載され、[[アメリカ空軍]]向け生産機では戦果確認用のKB-18A ストライク[[カメラ]]を搭載している。
{{-}}
 
== 運用 ==
OV-10Aは[[1968年]][[2月23日]]からアメリカ空軍と[[アメリカ海兵隊]]への引き渡しが開始され<ref name="koku812"/>、アメリカ空軍はハールバートフィールド空軍基地所属の第4410コンバットクルー訓練航空団(4410CCTW)(4410CCTW)第4409コンバットクルー訓練飛行隊(4409CCTS)(4409CCTS)、アメリカ海兵隊では[[キャンプペンドルトン]]の第5海兵観測飛行隊(VMO(VMO-5)5)に最初に配備されて乗員訓練が開始された。同年[[7月]]にはアメリカ海兵隊の第2海兵観測飛行隊が[[ベトナム共和国|南ベトナム]]のマーブル・マウンテンに派遣され、続いて第6海兵観測飛行隊も派遣された。同年[[7月31日]]にはアメリカ空軍のOV-10Aも[[C-133 (航空機)|C-133 カーゴマスター]]によって6機が南ベトナムのビエンホ基地に空輸され、同年[[10月]]には第2陣もビエンホ基地に送られて[[前線航空管制(FAC)]](FAC)任務に使用された。[[1969年]][[1月]]には[[アメリカ海軍]]がアメリカ海兵隊から借用した18機のOV-10Aで第4軽攻撃飛行隊(VAL(VAL-4)4)を編成し、[[4月]]から[[メコン川]]河口のビンツイに展開させ、第3軽[[ヘリコプター]]飛行隊(HAL(HAL-3)3)の[[UH-1 (航空機)|UH-1B]]とともに[[三角州|デルタ地帯]]の監視や船艇護衛などの河川作戦に投入された。ただ、OV-10Aは実戦で運用してみると性能的に中途半端な機体であることが判明し、アメリカ空軍海兵隊共にFAC機や[[観測機]]として多用した。また、アメリカ海軍と海兵隊は、OV-10Aの貧弱な固定[[武装]]を改善するために胴体下部[[ハードポイント]]に20mm[[機関砲]][[ガンポッド|ポッド]]を一部の機体に搭載させていた。
<gallery widths="180px" heights="150px">
ファイル:OV-10A marking target for F-100D Vietnam 1969.jpg|[[ベトナム]]での[[前線航空管制]]任務につくアメリカ空軍所属のOV-10A
ファイル:Rockwell OV-10A Bronco armed with a GPU-2A gun pod at the Naval Air Weapons Station China Lake, California (USA), 29 June 1972.jpg|胴体下面に[[ガンポッド]]を装着した[[アメリカ海軍]]所属機
ファイル:YOV-10D prototype in flight.JPG|試作機YOV-10D、胴体下面に[[M197機関砲|M197]] [[ターレット]]を搭載している
</gallery>
[[1970年]]になると、アメリカ空軍とアメリカ海兵隊ではOV-10Aへの夜間攻撃能力付与という考え方に基づいて、アメリカ空軍ではペイブネール計画に着手、アメリカ海兵隊でもOV-10Dの開発に着手された。ペイブネール計画では、夜間用[[潜望鏡|ペリスコープ]][[照準器]]、[[レーザー目標指示装置|レーザーデジグネーター]]、ターゲット[[イルミネーター]]、[[LORAN]][[受信機]]などが新たに搭載され、アメリカ空軍が保有するほとんどのOV-10Aに改修が施された。
 
一方のOV-10Dは、YOV-10A試作2号機を改造した空力試験機YOV-10Dが[[1970年]][[6月]]に初飛行し、もう1機新たに製作されたYOV-10Dとともに[[1971年]]-[[1972年]]にかけて南ベトナムに派遣されて運用試験が行われた後、[[1974年]]に17機のOV-10Aと1機のYOV-10Dからの量産改修が認められた。OV-10Dは、機首にAN/AAS-37[[FLIR|前方監視赤外線]]/レーザー目標指示/自動ビデオ追跡装置とALQ-144[[赤外線]]妨害装置を搭載して、半球形の[[センサー]]収容部が機首下面に張り出している。また、追加した[[電子機器]]の冷却のため機首左右に[[エアインテーク]]が追加された。
[[1970年]]になると、アメリカ空軍とアメリカ海兵隊ではOV-10Aへの夜間攻撃能力付与という考え方に基づいて、アメリカ空軍ではペイブネール計画に着手、アメリカ海兵隊でもOV-10Dの開発に着手された。ペイブネール計画では、夜間用[[ペリスコープ]]照準器、[[レーザー]]デジグネーター、ターゲット[[イルミネーター]]、[[LORAN]]受信機などが新たに搭載され、アメリカ空軍が保有するほとんどのOV-10Aに改修が施された。
 
[[エンジン]]は、ギャレット社製T76-G-10/12から出力強化型のT76-G-420/421 [[ターボプロップエンジン]]へ換装された。[[プロトタイプ|試作機]]YOV-10Dでは固定[[武装]]も[[M60機関銃|M60 7.62mm機銃]]から機首のセンサー[[ターレット]]と連動可能な[[M197機関砲|M197 20mm 3砲身機関砲]]に変更されたが、最終的にM197の搭載は中止され、滞空時間延長のため、胴体下面への[[増槽]][[タンク]]の追加のみとなる。同時に、それまで[[ロケット弾]]ポッドやAIM-9 サイドワインダーなどの軽量物のみの搭載だった、主翼下パイロンに増槽の搭載が可能となった。
一方のOV-10Dは、YOV-10A試作2号機を改造した空力試験機YOV-10Dが[[1970年]][[6月]]に初飛行し、もう1機新たに製作されたYOV-10Dとともに[[1971年]]~[[1972年]]にかけて南ベトナムに派遣されて運用試験が行われた後、[[1974年]]に17機のOV-10Aと1機のYOV-10Dからの量産改修が認められた。OV-10Dは、機首にAN/AAS-37[[FLIR|前方監視赤外線]]/レーザー目標指示/自動ビデオ追跡装置、ALQ-144赤外線妨害装置を搭載、半球形の[[センサー]]収容部が機首下面に張り出している。また、追加した電子機器の冷却のため機首左右にラムエア・インテークが追加された。
 
エンジンはギャレット社製T76-G-10/12から出力強化型のT76-G-420/421ターボプロップエンジンへ換装された。試作機YOV-10Dでは固定武装もM60 7.62mm機銃から機首のセンサーターレットと連動可能なM197 20mm3砲身機関砲に変更されたが、最終的にM197の搭載は中止され、滞空時間延長のため、胴体下面への増槽タンクの追加のみとなる。同時に、それまでロケット弾ポッドやサイドワインダー等の軽量物のみの搭載だった、主翼下パイロンに燃料タンクの搭載が可能となった。
また、後に23機のOV-10AもOV-10D規格に改修され、合わせて機体フレームの強化や搭載電子機器類の新型化なども行われてOV-10D+と呼ばれている。
[[ファイル:Cdf-ov10-N415DF-071022-fox-02-16.jpg|250px|サムネイル|[[山火事|森林火災]]などに対応するCAL FIRE(California Department of Forestry and Fire Protection)所属機]]
OV-10は最終的に360機が製造され、アメリカ空軍に157機のOV-10A、アメリカ海兵隊に110機のOV-10A/Dが配備された<ref name="koku812"/>。アメリカ空軍のOV-10Aは、[[1990年]]に後継となる[[A-10 (航空機)|A/OA-10A サンダーボルトII]][[攻撃機]]との交替が完了して退役、アメリカ海兵隊のOV-10A/Dも[[1995年]]に[[F/A-18 (航空機)|F/A-18 ホーネット]][[戦闘爆撃機|戦闘攻撃機]]との置き換えが完了して全機が退役している。退役した機体の一部は消防機として使用されており、消火剤を搭載した[[航空機]]への前線航空管制や[[森林]]地帯での[[偵察]]に使用されている。また、[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]でも各種実験に使用されている(後述)。
 
2015年になって、2機のOV-10が現役復帰し[[ISIL]]との戦闘に試験的に再投入された<ref name="CNN">[https://edition.cnn.com/2016/03/11/politics/decades-old-planes-used-against-isis/index.html CNN.com Vietnam-era planes used against ISIS]</ref><ref name="yahoo">[https://www.yahoo.com/news/those-old-ov-10-broncos-204500085.html Yahoo.com Those Old OV-10 Broncos Sent To Fight ISIS Were Laser Rocket-Slinging Manhunters]</ref><ref name="foxtrotalpha1">[http://foxtrotalpha.jalopnik.com/the-amazing-ov-10-bronco-was-never-allowed-to-meet-its-1695837367 FOXTROT ALPHA The Amazing OV-10 Bronco Was Never Allowed To Meet Its Full Potential]</ref><ref name="foxtrotalpha2">[http://foxtrotalpha.jalopnik.com/ov-10-broncos-were-sent-to-fight-isis-and-they-kicked-a-1764407068 FOXTROT ALPHA OV-10 Broncos Were Sent To Fight ISIS And They Kicked Ass]</ref>。このOV-10はエンジンや電子機器の改修を受けた"'''OV-10G+'''"<ref name="yahoo"/><ref name="foxtrotalpha2"/>と呼ばれる改良型であるが、それでも運用コストはF-15のようなジェット戦闘機の数分の一から数十分の一程度で済み、120回以上作戦投入されて一定の戦果を挙げたとされる<ref name="CNN"/>。CNNのインタビューに答えた元アメリカ海軍中佐で軍事アナリストのクリス・ハーマーは「ブロンコの現役復帰は良いアイデア。F-35のような新鋭機を武装勢力への作戦に使うのは、[[ごみ収集作業員|ごみ収集]]の仕事のために[[ロールス・ロイス・モーター・カーズ|ロールスロイス]]の車を使うようなもの」と話し、OV-10の再運用を評価した<ref name="CNN"/>。OV-10はF-15の半分程度の速度で飛行することができ、また無人航空機と異なりパイロットが直接戦場を視認しながら作戦を行えることから、こういった低強度紛争ではきわめて有効な兵器であると考えられている<ref name="CNN"/>。
アメリカ空軍のOV-10Aは、[[1990年]]に後継となる[[A-10 (航空機)|A/OA-10A サンダーボルトII]]攻撃機との交替が完了して退役、アメリカ海兵隊のOV-10A/Dも[[1995年]]に[[F/A-18 (航空機)|F/A-18 ホーネット]][[戦闘爆撃機|戦闘攻撃機]]との置き換えが完了して全機が退役している。退役した機体の一部は消防機として使用されているが、消化剤を搭載した航空機への前線航空管制や森林地帯での偵察に使用されている。
またNASAでも各種実験に使用されている(後述)
 
== エピソード ==
[[ベトナム戦争]]時、[[クメール人]][[傭兵]][[アメリカ軍|アメリカ兵]]の3名による[[カンボジア]]への[[越境作戦]]([[ホーチミンルート]]への[[偵察)]])が実施された際、[[ベトナム民主共和国|北ベトナム]]のパトロール部隊と遇戦交戦状態となり、迅速な離脱が必要となった。これに対して支援のため2機のOV-10が出撃。同じように脱出のため[[ヘリコプター]]も出撃したが、接近する敵部隊の距離などから吊り上げが間に合わない見込みが大きかったため、同OV-10の[[パイロット (航空)|パイロット]]の判断により地上部隊[[指揮官]]へ付近の未舗装直線道路への[[強行着陸]]・脱出を提言し、これを実施。偵察員に着陸後の自力での後部ハッチ開閉、機体内部を叩いての合図などを予め指示していたため偵察員の搭乗完了後は速やかに離陸。これにより見事、3名の偵察員を脱出させることに成功した。({{efn2|同パイロットは数日前にこの偵察部隊3名の夜間潜入[[エアボーン|空挺降下]]も同機体で担当していた)}}。
 
アメリカ軍では大半が引退したOV-10だが、マイク・マンクラークが創設したマンジック財団{{efn2|動態保存するOV-10の登記上の所有者でもある。}}が立ち上げた民間団体「OV-10スコードロン」が動態保存のために復元作業を進めている。2018年、[[国立ベトナム戦争博物館]]から6機分のOV-10の機体部品を入手し、既に保有していた1機のOV-10と共に復元作業を行った。最初に復元したOV-10D+(民間機登録番号NX97854、シリアルナンバー155493、現役時の総飛行時間8,215時間)は、2019年6月22日に[[チノ飛行場]]で、エリック・ハッパート{{efn2|元アメリカ海空軍パイロットで、同軍や[[アメリカ土地管理局]]、歴史的な航空機や車両を動態保存する民間団体「カクタス・エアフォース」でOV-10の操縦経験もある。}}の操縦で再飛行に成功した。
 
== 採用国 ==
軍、政府機関および官公署のみ記述し、民間機は除外する。
* {{USA}} ― [[アメリカ海兵隊]]・[[アメリカ空軍]]・[[アメリカ海軍]]・[[NASA]]
* {{USA}} - [[アメリカ海軍]]、[[アメリカ海兵隊]]、[[アメリカ空軍]]、[[アメリカ航空宇宙局]]、[[アメリカ合衆国司法省|司法省]][[アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局]]、[[アメリカ合衆国内務省|内務省]]土地管理局、[[カリフォルニア州森林保護防火局]]、[[ビューフォート郡 (サウスカロライナ州)|ビューフォート郡]]蚊駆除サービス[https://www.beaufortcountysc.gov/mosquito-control/index.html]
* {{COL}} ― [[コロンビア空軍]]
* {{COL}} - [[コロンビア空軍]]
* {{BRD}} ― [[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|西ドイツ空軍(現ドイツ連邦空軍)]]
* {{IDNBRD}} - [[ツ空軍 (ネシアイツ連邦軍)|西ドイツ空軍]]
* {{LIBIDN}} - [[レバノドネシア国軍#空軍|インドネシア空軍]]
* {{MAR}} - [[モロッコ空軍]]<ref name="koku812"/>(退役済み{{Sfn|IISS|2024|pp=375-376}})
* {{THA}} - [[タイ王国空軍|タイ空軍]]
* {{VEN}} - [[ベネズエラ空軍]]
* {{KORPHL}} - [[大韓民国空軍|韓国フィリピン空軍]]<ref name="koku812"/>
* {{PHL}} ― [[フィリピン空軍]]
* {{COL}} ― [[コロンビア空軍]]
 
== 各型 ==
=== 試作機 ===
* ;YOV-10A:試作型
:[[プロトタイプ|試作]]型。7機製造。
* YOV-10D:アメリカ海兵隊が開発した夜間観測機型の試作型
;YOV-10D
:[[アメリカ海兵隊]]用の夜間[[観測機]]型の試作型。
 
=== 派生型 ===
;OV-10A
* OV-10A:初期生産型(少数機がモロッコ空軍機として輸出されている)
:初期生産型。中古機のうち6機がモロッコへ引き渡された。
* OV-10B:西ドイツ空軍で使用された標的曳航機型
;OV-10B
:・胴体スポンソンの廃止。
:[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|西ドイツ空軍]]で使用された[[標的曳航機]]型。18機製造<ref name="koku812"/>。
:・標的曳航装置を胴体側面に追加。
:胴体スポンソンの廃止。
:・標的観測ため後部ドアを透明な風防へ換装。
:標的曳航装置を胴体側面に追加。
:・購入した18機のうち、12機の胴体背面にJ85-GE-4エンジンをポッド形式で追加しOV-10B(Z)として使用、最大速度が341ktへ向上。
:標的観測のため後部ドアを透明な[[キャノピー|風防]]へ換装(これは標的曳航任務がライン航空機製造会社から空軍へ移管されたのちに実施された)。
* OV-10C:タイ空軍向けの生産型(2004年に[[フィリピン空軍]]へ複数機を寄贈)
;OV-10B(Z)
:・基本構成はA型に準じる。
:上記の西ドイツ空軍が購入した機体の胴体背面に、[[ゼネラル・エレクトリック J85|J85-GE-4 ジェットエンジン]]をポッド形式で追加しOV-10B(Z)として使用、最大速度が341ktへ向上。
:・エンジンはD型と同様にT76-G-420/421を搭載。
:12機分のエンジンを購入したものの、実際に搭載されたものはごく一部と思われる。
:・主翼下パイロンの廃止。
;OV-10C
:・後部座席下面にKB-18A ストライクカメラを生産時から搭載。
:[[タイ王国空軍|タイ空軍]]向けの生産型。基本構成はA型に準じ、エンジンはD型と同様にT76-G-420/421を搭載した。後部座席下面にKB-18A ストライク[[カメラ]]を生産時から搭載。
* OV-10D:アメリカ海兵隊が開発した夜間観測機型
:16機が製造され<ref name="koku812"/>、タイ空軍の用途廃止機のうち8機が[[2003年]]から[[2004年]]にかけて[[フィリピン]]へ譲渡された。
* OV-10D+:アメリカ海兵隊のOV-10AのうちOV-10D仕様への改修型
;OV-10D
* OV-10E:ベネズエラ空軍向けの生産型
:[[アメリカ海兵隊]]が開発した夜間[[観測機]]型。
:・基本構成はA型に準じる。
;;OV-10D+
:・各種通信機器の換装。
:アメリカ海兵隊のOV-10AのうちOV-10D仕様への改修型。
* OV-10F:インドネシア空軍向けの生産型
;OV-10E
* OV-10G:韓国空軍向けの生産型
:[[ベネズエラ空軍]]向けの生産型。基本構成はA型に準じ、各種[[通信]]機器の換装。8機製造<ref name="koku812"/>。
* その他、CAL FIRE(California Department of Forestry and Fire Protection)にて1993年から[[アメリカ軍]]払下げ機を消防機(観測/指示)としても運用している。
;OV-10F
 
:[[インドネシア国軍#空軍|インドネシア空軍]]向けの生産型。16機製造<ref name="koku812"/>。
<gallery>
;OV-10G
ファイル:OV-10A marking target for F-100D Vietnam 1969.jpg|ベトナムでの前線航空統制任務につくアメリカ空軍所属のOV-10A。
:[[アメリカ合衆国司法省|司法省]]が運用した機体の呼称、およびタイからフィリピンへ譲渡された機の呼称で、いずれも非公式な呼称。
ファイル:OV-10D USS Nassau 1983.jpeg|[[タラワ級強襲揚陸艦]]4番艦「[[ナッソー (強襲揚陸艦)|ナッソー]]」甲板上の、アメリカ海兵隊所属のOV-10D。
:[[大韓民国空軍|韓国空軍]]向けの生産型とする資料<ref>世界の傑作機 34ページ。</ref>もあるが、それは誤りで、韓国空軍はOV-10を1機たりとも取得していない。
ファイル:YOV-10D prototype in flight.JPG|試作機YOV-10D、胴体下面にM197ターレットを搭載している。
;OV-10G+
ファイル:GPU-2A_Navy_Picture.jpg‎|胴体下面にガンポッドを装着したアメリカ海軍所属機。
:Combat Dragon II計画によりOV-10D+ #155481と155492を改造したアメリカ海軍向けの機。
ファイル:ALQ-144 IRCM.jpg|OV-10Dの胴体上面に搭載されたIRジャマー。
;OV-10T
ファイル:F-AZKM 16.09.2006 16-29-44.JPG|ドイツ空軍所属のOV-10B、透明な後部観測窓が見える。
:小型戦術[[輸送機]]として[[ノースアメリカン]]が[[アメリカ空軍]]へ提案したモデル。胴体幅を1.5m程度へ拡大したものが計画されたが、ペーパープランのみとなる。
ファイル:OV-10 FAC.JPG|コロンビア空軍所属機、F-Air 2008にて。
;OV-10X
ファイル:Cdf-ov10-N415DF-071022-fox-02-16.jpg|森林火災等に対応するCAL FIRE 所属機。
:LAAR計画へ[[ボーイング]]が提案した、OV-10の近代化改修モデル。
</gallery>
 
== NASAでの実験機運用 ==
[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]では各種実験機体および、機材としても運用されている
 
[[1972年]]から[[プロトタイプ]]YOV-10(N718NA10(N718NA BuNo.152881)152881)を利用して実施された低速飛行性能の増加実験では、[[高揚力装置#フラップ|フラップ]]と主翼の間に油圧式の円柱[[シリンダー]]を追加しており、このシリンダーがフラップ稼動時に主翼上面側に可動することで、フラップが90度近い状態でも正常に空気を誘導し、高い低速度性能を発揮した。[[エンジン]]もアリソン社製[[アリソン T56|T56]] エンジンへ換装、[[プロペラ]]も4翅の物に変更されフラップへの送風量も増加されており、最終的にOV-10Aの失速限界が約40[[ノット]]に対し、主翼面積の小さいYOV-10でありながらも約30ノット(時速約55.6km)6km)での低速飛行を成功させた。
 
[[1996年]]にはOV-10A(N636NA)10A(N636NA)を使用し、[[アメリカ空軍|米空軍]]と共同で、デジタル音声認識システムの実験に使用された。この実験では同機に搭載されたISAバスコンピューター(Intel 80486搭載のAT互換機)とITT社製のデジタル音声認識ソフトウェア(VRS(VRS-1290)1290)を使用し実施された。この実験は、通常航行速度・地上駐機・飛行中・4G程度までの旋回など、様々な環境下([[パイロット (航空)|パイロット]]の疲労状況も含め)での音声認識精度の確認実験となっており、[[ライトパターソン空軍基地]]所属のパイロット12名、NASA所属のOV-10 パイロット4名が被験者として集められ、機上やラボまたは[[格納庫|ハンガー]]などで、「Change Radar-mode」「Air-to-air-mode」などの、182種の航空作戦で必要とされるフレーズの認識テストを行った。初期の飛行中実験では55%程度の認識精度であったものの、ソフトウェアのノイズ除去などのパラメーター調整をITT社と連携して行い、最終的には地上で99.5%・通常飛行状態で97.3%・4G環境下で86%の精度での認識が確認された。最終的に得られたこれらの実験データは音声認識の研究を行っている機関やコミュニティへ配布された。ちなみにVRS-1290の名称はITT社側で12901,290語の認識を保証している事から来ている。
 
[[1999年]]には、CERES(CERES(および地球放射エネルギー観測システム)のポッドを主翼上面に追加搭載されたOV-10A(N524NA)10A(N524NA)が使用されている。
 
<gallery widths="180px" heights="150px">
ファイル:YOV-10(N718NA)NASA.jpg|低速飛行実験機(N718NA)(N718NA)
ファイル:YOV-10(N718NA)NASA_FlapTEST.jpg|フラップを90度近くまで下げた状態(N718NA)(N718NA)
ファイル:OV-10(N636NA)_Speech_Recognition_Interface_TEST.jpg|音声認識システムの実験機(N636NA)(N636NA)
ファイル:OV-10(N524NA)_CERES_Pod.jpg|CERES ポッドを搭載したOV-10A(N524NA)10A(N524NA)
</gallery>
 
== 性能諸元 ==
* 基本性能
* 全幅:12.19m
** 全長:13幅:12.41m19m
** 全高:4長:13.62m41m
** 全高:4.62m
* 主翼面積:27.0m<sup>2</sup>
** 主翼面積:27.0m<sup>2</sup>
* 空虚重量:3,127kg
** 最大離陸空虚重量:6:3,563kg127kg
** 最大離陸重量:6,563kg
* ギャレット製T-76G-10ターボプロップエンジン×1、ギャレット製T-76G-12ターボプロップエンジン×1
** 発動機1:ギャレット製[[ギャレット TPE331|T-76G-10]] [[ターボプロップエンジン|ターボプロップ]]×1基(推力715hp)
* エンジン推力:533kW
** 発動機2:ギャレット製T-76G-12 ターボプロップ×1基(推力715hp)
* 最大速度:250kt
** 最大速度:250kt(463km/h)
* 海面上昇率:920m/min
** 実用海面上昇限度:9,145m率:920m/min
** 実用上昇限度:9,145m
* 航続距離:1240nm(フェリー)
** 航続距離:1,240nm([[フェリー]])
* 戦闘行動半径:200nm
** 戦闘行動半径:200nm
* 乗員:2名
** 搭乗員数:乗員2名・兵員:6名
** ハードポイント:胴体下面中央x1カ所(最大544kg)、胴体スポンソン下面x4カ所(各最大272kg)、主翼外側[[パイロン]]x2カ所(ミサイル・増槽用)
* 武装
** [[M60機関銃#M60C|M60C 7.62mm機銃]]×4基(胴体左右スポンソン内に各2丁、弾薬各500発)
** M18/SUU-11A/A[[ガンポッド]]×1基(胴体スポンソン下面および胴体中央)
** M18/SUU-11B/A[[ガンポッド]]×1基(胴体スポンソン下面および胴体中央)
** Mk4.Mod.0 20mm ガンポッド×1基(胴体中央ステーション)※[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]/[[アメリカ海軍|海軍]]仕様機のみ
** [[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9E サイドワインダー]][[空対空ミサイル]]×2発
** CBU-100[[クラスター爆弾]]×4発
** MK.81 スネークアイ低抵抗通常爆弾×4発またはMk.82低抵抗通常爆弾×4発
** LAU-59/A マイティマウスロケット弾ポッド×4基(合計7発)
** LAU-33A/A [[ズーニー・ロケット弾]][[ランチャー]]×4基(合計2発)
** PMBR MK-24 [[パラシュート]][[フレア (兵器)|フレア]]弾ランチャー×2基(合計6発)
** AERO 1C [[増槽|ドロップタンク]]
** ALQ-144 "ディスコライト" IRジャマー(胴体上面に1基)
** 各種[[フレア (兵器)|フレア]]ディスペンサー
 
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=== ハードポイント ===
ファイル:North American Rockwell OV-10A Bronco 3-view line drawing 2.jpg|OV-10A
* 胴体下面中央 x1 (最大1200ポンド)
ファイル:OV10A Cockpit.jpg|OV-10Aのフロントコンソール
* 胴体スポンソン下面 x4 (各最大600ポンド)
ファイル:North American Rockwell OV-10 Bronco day armament diagram.jpg|昼間運用時の兵装搭載例
* 主翼外側パイロン x2
ファイル:North American Rockwell OV-10 Bronco night armament diagram.jpg|夜間運用時の兵装搭載例
</gallery>
 
=== 武装登場作品 ===
=== 映画 ===
* M60C 7.62mm機銃 (胴体左右スポンソン内に各2連装)
; 『[[007 リビング・デイライツ]]』
* M18/SUU-11/A/A及びB/A ガンポッド (胴体スポンソン下面及び胴体中央)
: ソ連機役のモロッコ空軍のOV-10Aが、基地にC-130が着陸するシーンで、同国空軍の[[アルファジェット (航空機)|アルファジェット]]や[[フーガ・マジステール|マジステール]]とともに[[エプロン (飛行場)|エプロン]]に駐機している。
* Mk4.Mod.0 20mmガンポッド (胴体中央ステーション) ※海兵隊/海軍仕様機のみ
=== 漫画 ===
* [[M197機関砲|M197 20mm3砲身機関砲]]ターレット (試作のみ)
; 『[[サイボーグ009]]』
* [[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9 サイドワインダー]][[空対空ミサイル]]
:第3巻、ベトコンを攻撃する政府軍機としてサブタイプ不明の機体が登場。台詞では「コイン機」と表記。
* [[クラスター爆弾]]
=== アニメ ===
* 通常爆弾
;『[[エリア88#オリジナルビデオアニメ|エリア88 OVA版]]』
各種ロケット弾ポッド
: エリア81への反政府軍外人部隊の攻撃の時に、OV-10が写っている。
* LAU-59/A マイティマウスロケット弾ポッド(7発)
=== ゲーム ===
* LAU-33A/A ズーニーロケット弾ランチャー(2発)
; 『[[バトルフィールド ハードライン]]』
* PMBR MK-24パラシュートフレア弾ランチャー(6発)
: キャンペーンにのみ登場。主人公らが[[民兵|ミリシア]]の拠点から脱出する際に使用する。
 
=== 増槽脚注 ===
{{脚注ヘルプ}}
* AERO 1C ドロップタンク
=== 注釈 ===
 
{{notelist2}}
=== 防御装備 ===
=== 出典 ===
* ALQ-144 "ディスコライト" IRジャマー(胴体上面に1基)
{{Reflist}}
* 各種フレアディスペンサー
 
<gallery>
ファイル:OV10Abronco.jpg|OV-10A
ファイル:OV10A Cockpit.jpg|OV-10Aのフロントコンソール
ファイル:OV-10_Day.jpg|昼間運用時の兵装搭載例
ファイル:OV-10 Night.jpg|夜間運用時の兵装搭載例
ファイル:OV10 ProtoTypeDesign.jpg|各社の初期設計案
</gallery>
 
== 参考資料 ==
* {{Cite book|洋書 |title=The Military Balance 2024 |year=2024 |publisher=Routledge |author=The International Institute for Strategic Studies (IISS) |isbn=978-1-032-78004-7 |language=英語 |ref={{SfnRef|IISS|2024}}}}
* 『[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]別冊 No.32 アメリカ軍用機1945~1986 空軍機編』文林堂
* 『[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]別冊 No.3532 アメリカ軍用機1945~19871945~1986 /陸軍機編』文林堂
* 『航空ファン別冊 No.35 アメリカ軍用機1945~1987 海軍/陸軍編』文林堂
* 『エアワールド別冊 世界軍用機年鑑
* 『[[航空ジャーナル]]臨時増刊 世界の軍用機』
* [[青木謙知]]編、2007、『J-wings戦闘機年鑑 2007-2008』、[[イカロス出版]] ISBN 4-87149-939-1
* 『世界の傑作機 No.45 「OV-10 ブロンコ」』、文林堂
* Aircraft in Action 「OV-10 in Action」Squadron/Signal Publications Inc.,U.S. (1995/07)
* マーシャル ハリソン著『ジャングルの航空戦 ~前線航空統制官の戦い~』、大日本絵画
 
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* [[ベトナム戦争]]
* [[近接航空支援]]
* [[RTAF-5]](OV-10を参考にしたと思われる、[[タイ王国空軍|タイ空軍]]の[[プロトタイプ|試作]][[練習機]])
* [[ゲリラ]]
* [[超時空世紀オーガス]](本機の2代目という設定の機体が登場)
* [[RTAF-5]](OV-10参考にしたと思われる、タイ空軍の試作練習機)
* {{仮リンク|Ahrlac|en|AHRLAC Holdings Ahrlac}}([[南アフリカ]]の多用途ターボプロップ機。米軍の{{仮リンク|軽攻撃/武装偵察機プログラム|en|Light Attack/Armed Reconnaissance}}に'''ブロンコⅡ'''の名称でトライアル中)
 
{{アメリカ軍の固定翼機 (呼称統一以降)}}
 
{{アメリカ軍のVTOL・STOL機}}
{{アメリカ軍の観測機}}
{{Normdaten}}
[[Category:アメリカ合衆国の軍用機]]
[[Category:観測機]]
[[Category:偵察機]]
[[Category:COIN機]]
 
[[Category:双胴機]]
[[de:Rockwell OV-10]]
[[Category:アメリカ合衆国海兵隊の航空機]]
[[en:North American Rockwell OV-10 Bronco]]
[[Category:ノースアメリカンの航空機]]
[[es:North American Rockwell OV-10 Bronco]]
[[Category:ベトナム戦争時の航空機]]
[[fr:North American OV-10 Bronco]]
[[hu:OV–10 Bronco]]
[[id:OV-10 Bronco]]
[[it:North American OV-10 Bronco]]
[[ko:OV-10 브롱코]]
[[pl:Rockwell OV-10 Bronco]]
[[ro:OV-10 Bronco]]
[[ru:North American OV-10 Bronco]]
[[sv:North American OV-10 Bronco]]
[[th:โอวี-10 บรองโก]]