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{{出典の明記|date=2022年8月}}
[[ファイル:Kh-31 Armia-2018 1.jpg|サムネイル|300x300ピクセル|Kh-31対輻射源ミサイル]]
'''対レーダーミサイル'''(たいレーダーミサイル)とは、逐語訳では'''対輻射源ミサイル'''(たいふくしゃげんミサイル、{{lang-en|anti-radiation missile, '''ARM'''}})といい、[[レーダーサイト]]や無線通信施設などから輻射される[[レーダー]]送信波や通信信号を受信し、その輻射源(発信源)に指向し、これらを破壊するために使われる[[ミサイル]]である。
[[ベトナム戦争]]時、[[アメリカ軍]]による[[ベトナム戦争#北爆|北ベトナムへの攻撃]]において[[地対空ミサイル]](SAM)による被撃墜が多く、SAMへの対応が喫緊の課題であった。そこでSAMによる防空陣地(SAMサイト)制圧のために、[[航空機搭載爆弾]]、[[ロケット弾]]、[[ナパーム弾]]、[[クラスター爆弾]]などを使用したミッションを開始した。初期のSAMサイト制圧ではSAMそのものを直接狙い撃つ事が出来なかったことから、敵地の面制圧が要求され、その点でロケット弾及びクラスター爆弾が有効であることが判明した。しかし、これらの兵器では、SAMサイトに接近し目視で目標を確認してから攻撃しなければならず、制圧ミッション中に逆に撃墜されることもあった。そこで、より安全圏から目標への直接攻撃可能な兵装が求められることとなった。その要求に応えるべく開発されたミサイルである。
== 概説 ==
目標となる[[レーダーサイト|レーダーサイトや無線通信施設]]より発信される
パッシブ
== 評価基準 ==
対
=== 最大射程 ===
所定の高度で飛行する[[航空機]]が、どれだけ遠くの[[レーダー
目標が[[地対空ミサイル|SAM]]である場合は、SAMの射程よりARMの射程が長ければ長いほど発射母機は安全ということにな
目標に最接近してからでないと発射できないのであれば、発射可能地点に到達するまでにレーダーの送信波を停止されたり、あるいは敵の警戒管制レーダーに捕捉されることとなり、発射母機が危険にさらされる。
=== 速度 ===
[[ミサイル]]がどれだけ速く目標に達することができるか。
ミサイルの飛翔速度が遅いと目標に到達するまでに時間がかかるため、時間的猶予が長くなり、[[レーダー]]側に送信波を停止する時間などの対策を与えてしまう。また目標がSAMの場合、発射されたミサイルよりARMが遅いと、ARMが敵のレーダーに着弾する前に[[航空機]]の方が先に撃墜されてしまう。ミサイルの飛翔速度が速いほど、レーダー側に対応することのできる時間的猶予は短くなり、目標の制圧は達成しやすくなる。
=== 周波数覆域 ===
広帯域の周波数の電波を探知することができるか。これはすなわち、どのくらい多くの種類の[[レーダー]]を[[ミサイル]]が特定し、追跡、攻撃することができるかということを意味する。
一般的に、警戒管制レーダー及びGCIレーダーは低周波数帯(S〜Lバンド帯)、[[空対地ミサイル|SAM]]射撃管制レーダー及び[[イルミネーター]]は高周波数帯(Xバンド帯)の電波を使用しているため、どちらのレーダーにも対応させようとすると受信帯域幅は広くなる。受信帯域幅が広くなるほど信号対雑音比(SN比)は低下するため、あらかじめ、目標とするレーダーの周波数帯域幅を限定し、ミサイルの受信機の調定を行わなければならない。
=== パルス密度限界 ===
[[シーカー]]が高密度の脅威環境で特定の[[レーダー]]を識別できるか。
シーカーは特定の目標を選択するため、多くのレーダーのパルス列の中から対象の特徴を分離し、断定することができなければならない。これにはパルスの特徴をより確実に見分ける処理のできるプロセッサが必要であり、分析したデータと照合するための大量のデータベースが必要となる。
=== ECCM能力 ===
デコイ(囮)による欺瞞に抵抗する能力があるか。
発射母機から指示された[[レーダー]]と異なる位置にあるデコイを無視する機能や、HOJ機能のように[[ジャミング|妨害源]]そのものを目標として攻撃できる機能も[[電子防護|ECCM]]能力と言える。また、通常のARH(対輻射源誘導)[[シーカー]]の他に画像認識などにより、あらかじめ記憶した目標の形状のみに指向するシーカーを搭載する方法もある。
=== 致死性 ===
目標を確実に破壊できるか。
ARMの致死性が乏しければ、1つの目標に対してより多くの[[ミサイル]]を発射しなければならず、[[航空機]]の危険も高まる上に不経済である。致死性はミサイルの命中精度と[[弾頭]]の効果及び飛翔速度によって決まる。ミサイルの命中精度が悪ければ、いくら弾頭が大きく破壊力があっても目標に損害を与えることができない、またミサイルの命中精度が高くても、弾頭が小さく破壊力がなければ目標に致命的な損害を与えることはできない。
ベトナム戦争において、[[AGM-45 (ミサイル)|AGM-45 シュライク]]は弾頭そのものが小さく、破壊力も小さかったため、[[地対空ミサイル]]の[[レーダー]]を完全に破壊するまでに至らず、早期に修復、戦線復帰するという事態が発生した。このため、AGM-78 スタンダードと併用し、必要に応じて、シュライクのマーカー機能(赤色発煙機能)を使用し、マーカーした場所にスタンダードを指向し、目標を制圧するという戦術をとった。
[[湾岸戦争]]においては、目標を完全に制圧するため、1つのレーダーサイトに対し少なくとも2発のHARMを指向させた記録がある。
=== 電波封止対抗性 ===
敵の電波封止に対応できるか。
ARMは基本的にパッシブ誘導であるため、輻射源(発信源)からの送信波が停止してしまうと、目標を見失い命中しない。そのため、発射前にRAWS等によりレーダー等の輻射源(発信源)の位置を標定し、標定した位置をミサイルに記憶させる。発射後は、[[慣性航法装置|INS]]により誘導する。
近年では、[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]を用いてINSによる平面位置誤差と高度を修正し、命中精度を向上させる仕組みが実用化されている。INSのみの場合、[[電子攻撃#電子対抗手段 (ECM)|ECM]]に強い反面、誘導誤差が蓄積してしまい、また、平面でしか誘導できないため、目標とするレーダーが高台にあると命中しないこともあった。
=== 搭載可能数 ===
[[航空機]]に何発搭載可能か。
ARM本体の重量と大きさに左右される。ARMの搭載量が減ればその分だけ、より多くの航空機を飛ばさなければならず、敵に発見されやすくなる。また、攻撃本隊の航空機の数も減ることになり、敵に決定的な打撃を与えられなくなる。
=== 柔軟性 ===
複数の発射モードがあるか。
いつも同じような
=== 隠蔽性 ===
飛
大量の煙を吐きながら飛
近年では、世界各国でミサイル飛翔時の低視認性を追求した無煙のロケットモーターの研究が行われ、噴射する煙の量が少ない無煙のロケットモーターを採用した各種ミサイルが運用されている。
=== コスト・パフォーマンス ===
単位金額あたり何発購入可能で、調達費用に見合う戦果を挙げることが可能か。
低価格低性能のミサイルを大量に導入したり、少数の高性能な[[ミサイル]]を導入しても、運用時の戦果が乏しければ共に金の無駄遣いとなる。そのため調達予算は、期待する戦果に見合うだけの性能をもつミサイルを選定し決定する。
[[AGM-88 (ミサイル)|AGM-88 HARM]]を例にとれば、1発あたり28万4,000[[アメリカ合衆国ドル|USドル]]。[[湾岸戦争]]では、2,000発のAGM-88を使用([[1991年]]当時の[[為替レート]]を1[[ドル]]=134[[円 (通貨)|円]]とすると1発約3,800万円で716億1,200万円。)AGM-88はコスト削減が大きな課題になっており、1割削減することができれば戦費の削減につながる。
=== 発射母機搭載電子機器 ===
発射母機はどのような電子機器を搭載しているか。
HTS(HARM Targetting System)、RHAWS({{lang-en-short|Radar Homing and Warning System}})やELS({{lang|en|Emitter Locating System}})のような高性能の電子機器を搭載していれば、精度の高い目標の位置とレーダーの種類を標定することが可能で、命中精度の向上につながる。しかし、RWR(Radar Warning Receiver)のような限定的な能力しか持たない電子機器であれば、[[ミサイル]]の性能が良くても命中精度は低下する。
=== 信頼性 ===
[[ミサイル]]の性能の有効性と維持経費のバランス。
ミサイルに限らず、兵装は常に運用前に故障している可能性はある。訓練時または作戦時、頻繁に故障するようでは運用できない。
そのため、過酷な環境下においても確実に機能することが要求され、その性能や品質を維持するためのメンテナンスにかかる費用も少ないほどよい。
== 主な対輻射源ミサイル ==
{{col|
;{{USA}}
* [[サイドアーム (ミサイル)|AGM-122 サイドアーム]]
* [[AGM-45 (ミサイル)|AGM-45 シュライク]]
* [[AGM-78 (ミサイル)|AGM-78 スタンダードARM]]
* [[AGM-88 (ミサイル)|AGM-88 HARM]]
;{{UK}}
* [[ALARM (ミサイル)|ALARM]]
;{{DEU}}
* [[ARMIGER (ミサイル)|ARMIGER]](開発中止)
;{{FRA}}
* [[
* {{仮リンク|ARMAT (ミサイル)|en|ARMAT|label=ARMAT}}
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;{{SSR}}
* [[Kh-
*
* [[Kh-31 (ミサイル)|Kh-31P]]
* [[Kh-58 (ミサイル)|Kh-58]]
;{{CHN}}
* [[YJ-12 (ミサイル)|YJ-12]]
* [[YJ-91 (ミサイル)|YJ-91]]
* {{仮リンク|B-611|en|B-611|label=B611MR}}
;{{BRA}}
* {{仮リンク|MAR-1 (ミサイル)|en|MAR-1|pt|MAR-1|label=MAR-1}}
}}
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
== 関連項目 ==
* [[ワイルド・ウィーゼル]]
* [[航空作戦#敵防空網制圧|敵防空網制圧]]
* [[徘徊型兵器]]
{{ミサイルの分類}}
{{weapon-stub}}
[[Category:
[[Category:対レーダーミサイル|*]]
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