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{{出典の明記|date=2014-9}}
'''MZ-80'''(えむぜっとエムゼットはちまる)は、[[シャープ]][[MZ (1978年]]に発売した、[[Z80]]をCPUとして使う[[マイクロコンピュータ)|MZ]]シリーズに属する[[1978年]]に発売された8ビット[[パーソナルコンピュータ]]のシリーズである。本稿ではMZ-80Kにはじまり、シャープ部品事業部の設計したMZ-80Bまでを記述する。
 
日本のパソコンの歴史において重要な存在であり、初代のMZ-80Kが2015年9月1日に[[重要科学技術史資料]](未来技術遺産)の第00204号に登録された<ref>[http://sts.kahaku.go.jp/material/index.html 重要科学技術史資料一覧]</ref>。
 
本項目では、MZ-80KからMZ-80Bまでを記述する。
 
== 概要 ==
MZ-80シリーズはシャープが開発した、CPUにZ80を使う、8ビットマイクロコンピュータ(パーソナルコンピュータ)のシリーズである。
同社部品事業部の設計したMZを冠するハードウェアにはこれよりも前に[[MZ-40K]]が存在するが、MZ-80Kはその後のMZシリーズの実質的な祖先にあたり、「[[MZ (コンピュータ)#オールインワン設計|オールインワン設計]]」「[[MZ (コンピュータ)#クリーン設計|クリーン設計]]」等、特徴的な設計や、[[MZ (コンピュータ)#アルゴマーク|アルゴ船]]などのトレードマークなどもこのシリーズから見られるようになった。事業部の再編により、商品の命名規則が変化したことから、MZ-80シリーズは、実質二つの設計にとどまり、情報システム事業部へ事業は引き継がれた。
 
「[[MZ (コンピュータ)#オールインワン設計|オールインワン設計]]」「[[MZ (コンピュータ)#クリーン設計|クリーン設計]]」がMZ-80シリーズの設計上の特徴として挙げられる。
 
MZ-80シリーズの"初代"はMZ-80Kである。{{Efn|8ビットのMZ-80シリーズの初代は、紛れもなくMZ-80Kである。試作機で4ビットコンピュータの[[MZ-40K]]はあくまで4ビットで"40"であり、通常はMZ-80シリーズとは別のものとして扱われる。ただし、MZ-40KはMZシリーズのいわば源流ではある。}}
 
設計がすぐれ商業的にも大きな成功をおさめ、初代MZ-80Kが日本のマイクロコンピュータ(パソコン)の市場で約50%と非常に高い市場占有率となり、すなわちパソコンの国内市場で2位を大きく引き離してトップの存在となり、当時[[パソコン御三家]]といわれ、その後も "姉妹機"などと言われるMZ-80C、MZ-80K2、MZ-80K2E、MZ-80Bなどが続々と発売された。
 
シリーズを通して[[MZ (コンピュータ)#アルゴマーク|アルゴ船]]のマーク(ロゴ)が使われている。
<!-- 日本 "発?" "初?"のパーソナルコンピュータである。ほぼ同時期、日立よりベーシックマスターが発売されているが、こちらはパーソナルコンピューターではなくマイクロコンピューターという名称で発売されている(正式名称は『日立マイクロコンピュターベーシックマスター』である)<ref>[https://greendeepforest.com/?p=2145 家庭用パソコンの歴史 ~1978年~]</ref><ref>[https://museum.ipsj.or.jp/heritage/MB-6880.html 情報処理技術遺産 ベーシックマスターMB6880]</ref><ref>[https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/retrohard/1270928.htmlモニタ一体型のイカすヤツ「シャープ MZ-80K」、パソコンを身近にしてくれた人気機種]</ref>。-->
 
== 歴史 ==
=== 開発経緯(試作機) ===
MZ-80シリーズの初代機 MZ-80Kは(MZ-40K同様に)シャープの部品事業部がその需要を創出するために製作した機種であった。
 
小冊子「シャープマイコン博士MZ-40Kマイコン情報」{{Efn|マイコン博士[[MZ-40K]]の購入者は愛用者ハガキを返送すると送られてきたもの}}の最後のページの新製品紹介コーナーに試作段階のMZ-80に関して次のように書かれていた。
{{Quotation|Z-80CPU使用。BASIC言語の本格的ホビーコンピューター Z80(型名'''MZ-80K''')、製品概要 本機Z80(ジー・エイティー)は12K、BASIC言語を使用する本格的なコンピューターです}}
 
1978年9月に発行された最初期のパンフレットには、試作機の写真と仕様が掲載されており、その基板には、製品版より多くのEP-ROMが実装されている反面、RAMのパターンが減っており、本体写真の起動画面には、フリーエリア 6637Byte、BASICはSP5000Bと表示されている。これらのハードウェア的な特徴と、当時のパーツからも、試作段階ではROM-BASIC機種であったと考えられる。電源ボタンは前面右手前に配置されていた(「押しやすいところに置いてはいけない」との指摘に基づき、製品では背面に移動された<ref>『[[ASCII]]』 1998年6月号「国産銘機列伝」特集内[[中西馨]]氏のインタビュー</ref>)、その右手前の電源ボタンのそばには、SHARPのロゴとともに「HOBBY COMPUTER」と印字されている。このパンフレット(カタログ)においては、まだ アルゴー船 やクリーン設計、クリーンコンピュータの記述は無く、BASICのサイズを12Kとうたっている。
 
量産機の初期ロット用のカタログも、1978年9月のパンフレットをベースに修正したもので、写真のメイン基板や筐体の一部が実際の量産品とは異なる。
 
== MZ-80K系機種 ==
=== ;概要 ===
[[ファイル:Mz80kMZ-80K at KCG museum.jpg|thumb|right|MZ-80K]]
パーソナルコンピュータとしてのMZシリーズの実質的な元祖初代に当たる。その基本設計はMZ-1200までほぼ同一であり、同系列の機種では同じソフトウェアを無変更に修正で動作させることが可能であった。基本設計は[[PET2001]]の影響を強く受けており、CPUこそ違うものの、外観、キー配列、ブロックダイアグラム、メモリマップドI/Oの利用、テキスト画面によるセミグラフィックス、BASICの命令セット等にその影を見ることができる。 内蔵機器はメモリ空間、拡張機器はI/O空間に接続されるように構成されている。

特徴であるクリーン設計本来システムプログラム全体をROMで実装することに対するコスト的なリスクの回避を目的とした苦肉の策<ref>[[MZ (コンピュータ)#クリーン設計|クリーン設計]]を参照。</ref>であり、コマンドこそ6種しか用意されていないモニタにも実際には文字表示、音の発声、[[データレコーダー]]に対する入出力などローレベルな処理が多数書き込まれており、起動に最低限必要な処理のみが存在しているわけではない。シンプルで素直な構成の本機は、DMAの割り込みウェイト等によって処理を遅延させられていた同時期の競合製品である[[PC-8000シリーズ|PC-8001]]と比較し、CPUのクロック周波数こそ半分であるもののだが、実動作速度についてはほぼ等価の速度であった<ref group="注">Wikipedia[[PC-8000シリーズ]]の項では2.5MHz相当となっている。</ref>。また[[メモリアドレス]] E000h~E008h が [[Intel 8255]]と[[Intel 8253]]につながっており、そ速度アドレスの値を変更して8255と8253 を制御することがきる仕様になた他ており<ref>{{Cite web|url=https://expertgig.jp/2025/08/09/8253-pit-programmable-interval-timer-%E3%81%AE%E5%8B%95%E3%81%8D%E3%82%92%E6%95%B4%E7%90%86/|title=8253 PIT (Programmable Interval Timer )の動きを整理|accessdate=2025-10-06}}</ref>、単音でこそあるものの、8253を経由し、スピーカーから任意の音程を発声させる出す命令も予め用意されていた。当初はセミキットとして発売され、後にそれをベースとした完成品やキーボードの異なるバリエーションも販売されている。

テキストVRAMにはキャラクタコードではなくディスプレイコードを書き込むことによって表示が行われ、その配列は00に空白、01から、アルファベット、数字、記号等が並び、0x40h毎にそのキーボードに対応する各々のモードのキャラクタが配置されるという特殊なもの<ref group="注">例えば、0x01がA、0x41にShiftを押したときのクローバー記号、0x81には、カナモードのチとなっている。</ref>である。また、豊富なグラフィックキャラクタ群を持つ反面、キャラクタセットにある[[アルファベット]][[大文字]]のみである。内蔵[[データレコーダー]]<!--手動式でこそあるものの、-->専用に設計された周辺回路の力もあって、1200Baud1,200 [[ボー]](Baud)と当時の平均的な競合製品よりもとして高速<ref group="注">同時期に発売されていたベーシックマスター、PC-8001は300Baud。後発で1981年5月発売のFM-8は1600Baud1,600Baudであった。</ref>であるほ信頼性も高いものとなっていた。制御はソフトウェアによってタイミングを取り[[Intel 8255|8255]]を直接制御し[[PWM]]の波形を生成して記録しているため、動作クロックの変更やソフトウェア的な制御の変更によって転送速度を変化させることも可能である。キーボードは多くの機種が当初主にマトリクス配列(碁盤の目状の配列)を採用したが、MZ-80C、MZ-80A、MZ-1200等のみがタイプライタ配列のキーボードを標準装備している。それ以外の機種については、{{Efn|MZ-80K2用のオプション部品としてタイプライター配列のキーボード「MZ-80TKという製品出ており用意されマトリクス配列の機種もそれに換装する事でタイプライタ配列にすることは一応は可能であった。}}
 
MZ-80は当初、(意図的に)少しだけはんだ付けを要する "セミキット"として発売され、後にそれをベースとした完成品やキーボードの異なるバリエーションも販売された。
 
=== ハードウェア ===
==== 基本仕様 ====
* [[CPU]]: [[Z80]]。[[クロック周波数]] 2MHz
* [[Random Access Memory|RAM]]:
** メイン 最大48KiB。
** テキストVRAM1KB
* [[Read Only Memory|ROM]]:
** CGROM 2KB - 画面表示のキャラクター(文字類)のパターン(※下で解説)が記憶されている。
** CGROM 2KB
** モニタ 4KB - 初期のシステムのモニタコマンドは5種で、システムを読み込むLOADコマンド、FDDから起動するためのFDコマンド<ref group="注">実ルーチンは拡張ボード上のROMに存在する</ref>、キー入力のクリック音を発生させるSGコマンドと、それを停止するSSコマンド、メモリ上のアドレスをコールするGOTOコマンドのみである。ROMには、ローレベルな入出力をサポートするルーチンが書き込まれており、文字列の表示、音の出力、テープへの入出力をサポートしている。
*** 各種キャラクタパターンが格納されている。
* 音源 -8253の[[矩形波]]出力モードを利用した単音。通常は周期を指定して鳴らすが、CPUが直接トリガを掛け制御することも可能である。
** モニタ 4KB
* 内蔵スピーカー - 最大出力 500 mW
*** 初期のシステムのモニタコマンドは5種で、システムを読み込むLOADコマンド、FDDから起動するためのFDコマンド<ref>実ルーチンは拡張ボード上のROMに存在する</ref>、キー入力のクリック音を発生させるSGコマンドと、それを停止するSSコマンド、メモリ上のアドレスをコールするGOTOコマンドのみである。ROMには、ローレベルな入出力をサポートするルーチンが書き込まれており、文字列の表示、音の出力、テープへの入出力をサポートしている。
* 音源
** 8253の矩形波出力モードを利用した単音。通常は周期を指定して鳴らすが、CPUが直接トリガを掛け、制御することも可能である。
** 内蔵スピーカー出力は最大500mW
* 表示能力
** 内蔵モノクロディスプレイによる、
** 横40桁×縦25行の1000文字表示。
** 1キャラクタは8×8[[ピクセル]]で構成されている。
** 画面全体を80×50ピクセル構成の画面として扱い図形を描くことも可能{{Efn|1キャラクタを4分割した2×2(2×2ピクセル)しそれぞれが白あるいは黒のパターンがあるため80×50ピクセル総計16種類用意されており、それ組み合わせでビットマップとして利用することも表示が可能}}
* 電源 - AC 100V ±10% 50/60Hz 。[[消費電力]] 20W20[[ワット|W]]
* 使用条件 - 温度/使用時 0℃ 〜 35℃、湿度/使用時 85%以下
* 外形寸法・重量 - 幅410×奥行470×高さ270 ([[mm]])
** 外形寸法 幅410×奥行470×高さ270(mm)重量 - 約15kg
 
=== MZ-80K ===
MZ-80シリーズの初代。
[[1978年]]{{sfn|佐々木|2013|p=8}}[[11月]]発売。メインメモリに20KiBのRAM搭載。オールインワン筐体・キーボード未組立のセミキットとして発売された初代となる機種。標準価格は198,000円。開発、発表時期としては、日本初のパーソナルコンピュータとなる可能性もあったが、データレコーダの信頼性を検証している間に同年9月に[[日立]]の[[ベーシックマスター]]が発売され先を越されている。MZ-40Kに引き続き、部品事業部がその需要を創出するために製作した機種である。社内には別にコンピュータを扱う部署があり、社内での摩擦を防ぐ意味合いもあり、MZ-80Kは、技術者用のトレーニングキットとして、セミキットの形で販売された<ref>『パソコン革命の旗手たち』 p72</ref>。当初はMZ-40Kの様にフルキットのような広告が行われていたが、実際の量産、販売品は、キーボードのみに半田付けを要するセミキットになっている。CPUクロックを向上させる倍速基板や、CP/M等を動作させるための先頭アドレスをメモリ後半と入れ替える回路等の、ハードウェアに直接手を入れるような周辺機器も各店舗や、メーカー等からリリースされた。[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]は角型のスイッチを碁盤の目状に並べたマトリクス配列となっており、稀にキー入力の取りこぼしが発生することもあった。初期の設計ではCRTCが、調停処理を行わないため、テキストVRAMへのアクセスのタイミングによっては画面が乱れた。回避するためには、プログラム側で監視、制御を行う必要があり、画面全体を乱れずにスクロールするようブロック転送するには、三度に分割して転送する必要があった。
1978年12月出荷<ref>「急成長続けるパーソナル・コンピュータの国内市場」『日経エレクトロニクス』[[日経マグロウヒル]]、1980年3月17日、188頁。</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20070324040458/https://blogs.yahoo.co.jp/nagusa_kei/10569797.html|title=(2) MZ80K 初出荷 ( パソコン )|accessdate=2019-02-24|date=2006-07-04|website=MZ-80 パソコン開発物語 - Yahoo!ブログ}}</ref>。主メモリ(RAM)は、20KiB。
筐体、キーボード、ディスプレイ、データレコーダが全て一体のオールインワン設計。標準価格は198,000円。
 
MZ-80シリーズの初代機 MZ-80Kは、MZ-40K同様に、部品事業部がその需要を創出するために製作した機種である。社内には別にコンピュータを扱う部署があり、社内での摩擦を防ぐ意味合いでMZ-80Kは技術者用のトレーニングキットとして、セミキットの形で販売された<ref>『パソコン革命の旗手たち』 p72</ref>。発売予告の広告では(MZ-40Kの様な)フルキットであるかのように書かれていたが、実際の量産・販売品は、キーボードのみに半田付けを要する"セミキット"として販売された。
 
[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]は角型のスイッチを碁盤の目状に並べたマトリクス配列。{{Efn|稀にキー入力の取りこぼしが発生することもあった。}}
ディスプレイは白黒表示。{{Efn|初期の設計ではCRTCが調停処理を行わないため、テキストVRAMへのアクセスのタイミングによっては画面が乱れた。回避するためにはプログラム側で監視、制御を行う必要があり、画面全体を乱れずにスクロールするようブロック転送するには三度に分割して転送する必要があった。}}
{{Efn|なお、CPUクロックを向上させる倍速基板や、CP/M等を動作させるための先頭アドレスをメモリ後半と入れ替える回路等、ハードウェアに直接手を入れるような周辺機器も各店舗や、メーカー(?)等 (?) からリリースされた。}}
 
;商業的成功
==== 試作機 ====
ほぼ同時期、1978年9月に[[日立製作所|日立]]より[[ベーシックマスター]]が発売されたがあまり人気がなく、MZ-80Kは市場占有率は50%と,2位以下を大幅に引き離し快走を続けた<ref>[https://museum.ipsj.or.jp/computer/personal/0004.html 日本のコンピュータ パーソナルコンピュータ]</ref>。
マイコン博士[[MZ-40K]]の購入者は愛用者ハガキを返送すると「シャープマイコン博士MZ-40Kマイコン情報」と書かれた小冊子が送られてきた。最後のページに新製品紹介コーナー(近日発売)があり「Z-80CPU使用。BASIC言語の本格的ホビーコンピューター (おなじみの角が丸いロゴ)Z80(型名MZ-80K)、製品概要 本機Z80(ジー・エイティー)は12K、BASIC言語を使用する本格的なコンピューターです」と読み方まで書かれていた。昭和53年9月に発行された最初期のパンフレットでは試作機の写真と仕様が掲載されており、その基板には、製品版より多くのEP-ROMが実装されている反面、RAMのパターンが減っており、本体写真の起動画面には、フリーエリアが6637Byteであること、BASICがSP5000Bであることが見て取れる。これらのハードウェア的な特徴と、当時のパーツからも当初の設計ではROM-BASIC機種であったと考えられ、商品名は、「マイコン博士Z80」と記述されている。本体デザインは、電源ボタンが前面向かって右手前に配置されていたが、「押しやすいところに置いてはいけない」との指摘に基づき製品では背面に移動され、<ref>ASCII1998年6月号「国産銘機列伝」特集内中西馨氏のインタビュー</ref>電源ボタンのそばには、SHARPのロゴとともにHOBBY COMPYUTERの印刷がされている。このカタログにおいては、まだアルゴー船や、クリーン設計、クリーンコンピュータの記述は無く、BASICのサイズを12Kとうたっている。また、初期の量産機のカタログもこれをベースに修正されたものになっており、メイン基板や、筐体の一部が量産品とは異なる写真が掲載されている。
 
=== MZ-80C ===
[[1979年]]発売{{sfn|佐々木|2013|p=8}}。データレコーダー内蔵{{sfn|佐々木|2013|p=8}}。基本設計はMZ-80Kと同じであるが、メインメモリとして48KiBのRAMを標準搭載し、キーボードも、マトリクス配列ではなく、タイプライタと同じ配列のフルキーボードに変更された。グリーンモニターの採用等、MZ-80Kに比べ実装パーツは高価なものが使われていた。MZ-80Cのカタログから"クリーンコンピュータの名称"という用語が登場する。組み立てキットではなく完成品として発売された。標準価格268,000円。
 
2002年10月22日には液晶ガラス基板上にZ80を形成し、MZ-80KのCPUを置換して動作させることで[[システム液晶]]のデモンストレーションが行われた<ref>[https://av.watch.impress.co.jp/docs/20021022/sharp.htm シャープ、液晶ガラス基板上に8bit CPU「Z80」を形成]</ref>。
 
[[2017年]][[5月]]、PasocomMini MZ-80Cとして、[[Raspberry Pi]]A+にエミュレーターを書き込み、内蔵したミニチュアモデルが発表された<ref name="news0511">[https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1059030.html 小さくて新しい「PasocomMini MZ-80C」、6月1日より予約受付開始]</ref>。[[#ミニュチュア版復刻 PasocomMini MZ-80C]]
 
 
=== MZ-80K2 ===
[[1980年]]発売。MZ-80Cに対しと同じく組み立てキットではないローエンド版の完成品として商品化された製品。ソフトウェアから見た場合はMZ-80Kとほぼ等価であるが、32KiBのRAMを標準搭載している他、CRT周りの色が淡い色になったこと、並びにキーボード周辺のデザインの変更、キーボードのキャップ材質の変更表面が梨地加工され非光沢より光が反射しないキーボードとなるなどの変更点が存在する。標準価格198,000円。
 
=== MZ-80K2E ===
[[1981年]]発売。クリーンコンピュータ10万台突破記念として発売された80K2の廉価版。32KiBのRAMを標準搭載。従来機種同様ソフトウェアは同じものが利用することが出来、外観上CRT周りの色が緑になり、従来黒ベースだったキートップの配色が白ベースに変更、2色LEDが1色のLED二つに変更されている。CPUにICソケットを使用せず直接基板に半田付けされている事を含め、前述のLEDの変更など、パーツ、設計レベルのコストダウンが随所に見られる。標準価格148,000円。
 
=== MZ-80A ===
[[1982年]]発売。24KiB RAMを標準搭載。海外で販売されたMZシリーズ。CRTCがサイクルスチールを行うようになり、データ転送のタイミングを見計らうことなくVRAMを書き換えても画面にノイズが表示されることが無くなった(<ref group="注">代わりに無条件に1Wait挿入されていようになった。</ref>他、画面表示のネガポジの反転機能、従来改造によって実現されていたROM領域の別アドレスとの入れ替え等が機能として実装された。入力モードを示すLEDは省略され、画面上のカーソル形状が変化するようになっている。大きな相違点として、MZ-700等に近い1文字になっモニタコマンド海外ハードウェアによるキャラクタ単位のスクロールサポートとそれに伴うVRAMの追加、MZ-80Bに近いレイアウトのキーボードやMZ-1U01に似た<ref group="注">MZ-2000ではFDD、プリンタインターフェイスの形状が他の拡張Iボードと異なることに対応している他、電源仕様が異なるが物理的な形状や設計は非常に近似している。</Oref>拡張ユニットMZ-80AEU増設機器仕様によって拡張ボードの仕様は、MZ-80Bと共通になっている事等が挙げられる。ハードウェアスクロールは表示開始アドレスをずらす事が可能になっており、二画面分の縦に繋がっテキストVRAMの内任意の行から25行表示するようになっている。キーボードは配列だけではなく、キートップも含め普通のタイプライタキーボードへと変更されている。
 
=== MZ-1200 ===
MZ-80Aを国内用にリファインしたもの。MZ-80Aで変更された部分が旧機種に近い仕様に戻されており、互換性が維持されるようになっている。MZ-80A同様VRAMは2KiB搭載されているが、有効なのは前半のみとなっている。発売時期には既に事業が移管されており、情報システム事業部が取り扱っているが、本体以外の命名規則はそのままであり、周辺機器は、部品事業部と同じ規則によって型番が割り振られている。日本の拡張ユニットにあわせ、カードエッジだった部分がコネクタに変更されているほかは、ほぼ基板はMZ-80Aの設計と同一であり、海外のみでリリースされた拡張パーツへ対応するための構造等が筐体に残されている。標準価格148,000円。
 
== ソフトウェア ==
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* MZ-80KR1 拡張RAM(16KB)
*: 純正拡張RAM。
* MZ-80P2 放電プリンター
* MZ-80P3 ドットインパクトプリンター
* MZ-80I/O インターフェースユニット
*: オプションの周辺機器を接続するためのI/Oユニット。I/Oカードを最大5枚接続可能。
* MZ-80FD フロッピーディスクドライブ(2ドライブ)
*: 容量は片面140KB
* MZ-80FDK 増設用フロッピーディスクドライブ(2ドライブ)
* MZ-80SFD シングルフロッピーディスクドライブ
* MZ-80DU 14型カラーディスプレイユニット
*: 「インテリジェントカラーターミナル」MZ-80DUAと「カラーモニタ」MZ-80DUBで構成されており、MZ-80DUAはZ80を搭載し、プログラムを実行できる独立した端末である。グラフィック解像度はMSX1程度。
*: グラフィック解像度は256×192ドット8色、128×192ドット24色、128×192ドット8色8階調、256×192ドットモノクロ4階調のいずれかが使用可能。
*: キャラクターとの重ねあわせ表示が可能。キャラクターは1行42文字で上下左右に回転が可能。
 
== MZ-80B ==
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=== 概要 ===
機種名のBは対外的にはビジネスの意味と言われているが、開発者達はBIGのBとして究極のMZを目指し開発に打ち込んだ機種である。

オールインワン設計クリーン設計を引き継ぎ、更に押し進めた形で実装された。CPUは4MHzに高速化され、テキスト画面は80カラム表示が可能になった。テキストVRAM、グラフィックスVRAMは、IPL部分はバンク切り替えで実装。64KBの空間全てをRAMとして利用可能にするとともに、ピクセル単位での表示もサポートした。グラフィックス機能自体はオプションであり、それらが無くとも作表できるように標準装備のキャラクタROMには罫線などの記号、反転したアルファベット等が定義され、従来ディスプレイコードを書き込んでいたテキストVRAMにはキャラクタコード(ASCIIコード)を書き込むことで該当するキャラクタが表示されるようになった。コントロールコードはBASICの標準機能では表示させることは出来ないが、カーソル移動、ホーム、クリアに関してはキャラクタが定義されており、VRAMへ該当コードを書き込むことで、文字列の引数として利用することは出来た。それ以外のコントロールコードに相当する部分のCG-ROMは未定義になっており、CG-ROMの入れ替えによりその場所にも任意のキャラクタを表示するような改造も行われた。
 
新規設計されたことにより、従来機種との互換性は無く、後継機も目立つ部分の仕様が変更された事から、直系の後継機は[[MZ-2500]]になる。グリーンモニタを採用し、本機での表示は緑と黒で表示されるが、MZ-2500でのMZ-80Bモード時のCRTへの表示は常時白黒で出力される。事業部の再編があったことから、これらMZ-80シリーズの開発者の手によるMZは、MZ-80Bによって終焉したが、グラフィックスVRAMを予め搭載し、電源部分の変更が行われたMZ-80B2が部署変更後も併売されている。
新規設計されたことにより従来機種との互換性は無く、ロードマップ上の後継機は[[MZ-2000]]であるが目立つ部分の仕様が変更されており、互換性はBASICプログラムに限られた。直系の互換性を持つ後継機は[[MZ-2500]]となる。グリーンモニタを採用し、本機での表示は緑と黒で表示されるが、MZ-2500でのMZ-80Bモード時のCRTへの表示は常時白黒で出力される。事業部の再編があったことから、これらMZ-80シリーズの開発者の手によるMZはMZ-80Bによって終焉したが、グラフィックスVRAMを予め搭載し電源部分の変更が行われたMZ-80B2が部署変更後も併売されている。
 
==== クリーン設計 ====
MZ-80Kでは低レベルな入出力をサポートするルーチンがROMで組み込まれていたが、MZ-80Bでは更にそれを押し進め、本体にはIPLのみがROMとして搭載されている。従来の「モニタ」もまた、MZ-80BではIPLから読み込まれ、0番地より配置に転送される。

IPLは拡張ボード上のROMと、FDD、内蔵データレコーダをサポートし、FDD、内蔵データレコーダの順番に起動可能なデバイスを探し、起動できるものを検出できない場合は起動デバイスを選択するメニューが表示される。拡張ボード上のROMについては、"/"を押下しながら電源を入れるもしくはリセットすることによって起動可能になっている。拡張ボードROMからの起動については本体マニュアルなどには表記は無く、標準添付の資料からはIPL-ROMのソースコードから読み取れるようになっているのみである。IPL-ROMは、$8000以降に各デバイスから一旦データを読み込み後、バンク切り替えによってRAMになった先頭部分へ転送する。これらの仕組みから、初期ロードサイズは32KiBとなっているが、システムを含むメモリ空間64KiBはRAMにマッピングされることになる。
 
==== 電磁制御可能なデータレコーダ ====
従来機種では手動制御だったデータレコーダは、MZ-80Bでは、ソフトウェアからの制御が可能になっている。早送り、巻き戻し、デッキオープン、民生機器で培った頭出し等が可能になっており、システムプログラム読み込み後に自動的に巻き戻されるほか、頭出しによって任意のデータを探すことが可能になり、これはBASICでもサポートされた。また、データレコーダの速度も2000Baud2,000Baudに高速化された。データレコーダの周辺回路の設計は2000Baud2,000Baudでチューニングされており、高速化には強いものの低速化をした場合はエラーレートは高くなる。このデータレコーダは後継機に引き継がれたほか、他の事業部から発売された[[X1 (コンピュータ)|X1]]でも転送速度を2700Baud2,700Baudに高速化され内蔵デバイスとして標準装備されている。
 
==== グラフィックス表示のサポート ====
従来機種ではテキスト画面のキャラクタを配置することによるセミグラフィックスだった画面は、オプションの増設によって320×200ピクセルのグラフィックス画面を最大2プレーン利用できるようになった。I-O DATA[[アイ・オー・データ機器]]から、カラーパレットを割り当てることによるカラー表示装置も発売され、[[Hu-BASIC2BASIC]]2.0で利用可能になっている。2プレーン目は拡張スロットに増設後、ケーブルを1プレーン目のボードに接続する必要があり、実際にはその価格やモノクロだったこともあり、2プレーンを利用するアプリケーションはあまり見られず純正BASICでも、初期化時に、2プレーン目の初期化はされていない。
 
==== 海外展開 ====
MZ-80Bもまた、海外で販売されていた。ただし、国内版と異なりメインメモリは32KBで出荷され、残りはオプションであった。また、カタカナのフォントがCG-ROMに無く、ネガポジ反転したアルファベットがかきこまれている。
 
=== ハードウェア ===
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** IPL 2KB
* サウンド出力 400mW最大
PWM出力で該当I/OポートのHとLがスピーカー出力のH、Lに相当し、ソフトウェア的に音量を調整する機能を持たない。全体の音量は、背面の「音声ボリウム」によってハードウェア的に音量を無段階調整する。他機種のBeepが、ポート制御によって「鳴る」のに対し、この機種では状態を制御するため、特定の周波数に限らず「鳴らしっぱなし」の状態をハードウェアで作ることができない。タイマ割り込みを持たず、出力はCPUからの直接制御であるため、他の演算処理をしながら同時にサウンドを鳴らすことはハードウェア的には不可能である。出力ポートも1ポートとなるが、ソフトウェア的に音程の精度を犠牲にし、クロック数によるウェイト計算と時分割処理により三重和音、エンベロープ、ビブラートを実装している物や、PWM変調や、1ビットサンプリングによる音声合成をするソフトウェアが存在する。BGMとしての利用を行う場合は、各々の処理の合間に発声モジュールを呼び擬似的に処理することになる。
* 表示能力
** キャラクタ
*: 8×8ドットマトリクス、10001,000文字(40桁×25行)/ 20002,000文字(80桁×25行)、2モードソフト切換。
** グラフィック。
*: オプションのMZ-8BG増設時には、320×200ドット、1プレーン。MZ-8BGKを増設することによってモノクロで最大2プレーンのグラフィックスと、テキスト画面の合成表示を行うことが出来る。
* 電源 AC 100V ±10% 50/60Hz 消費電力 65W
* 使用条件 温度/使用時 0℃ 〜 35℃、湿度/使用時 85%以下
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* 外形寸法 幅450mm×奥行520mm×高さ270mm
* 重量 約16kg
 
== MZ-80シリーズの終了 ==
事業部の再編によりパソコン事業は情報システム事業部へ引き継がれた。事業部変更とともに命名規則も変化し「MZ-80」というコンピュータシリーズは終了することになった。
 
== ミニュチュア版復刻 PasocomMini MZ-80C ==
[[2017年]][[10月14日]]に[[ハル研究所]]から発売された「PasocomMini」シリーズの一つ。筐体は[[青島文化教材社]]が、プログラム部分は[[スマイルブーム]]が関わっている<ref>{{Cite web|url=https://www.pcmini.jp|title=PasocomMini|publisher=ハル研究所|accessdate=2018-1-3}}</ref><ref name="mynavi">{{Cite web|和書|url=https://news.mynavi.jp/article/20170525-pcmini/|title=おっさん感涙!! 「PasoconMini MZ-80C」を見て触った|publisher=マイナビニュース|date=2017-5-25|accessdate=2018-1-3}}</ref>。
 
約四分の一のサイズで再現された樹脂筐体のミニチュアの中に[[シングルボードコンピュータ]]として独自のファームウェアを書き込んだ[[Raspberry Pi]]A+を搭載。[[プチコン|SmileBASIC]]と、そこから制御が行えるMZ-80エミュレータ並びに5本のゲームソフトが書き込まれている<ref name="mynavi" /><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pcmini.jp/?page_id=43|title=PasocomMini 同梱ソフトの遊び方|publisher=ハル研究所|accessdate=2018-1-3}}</ref>。
 
== 雑学 ==
元ライブドア代表の[[堀江貴文]]氏は最初に触ったのはMZ-80Kであると述べている<ref>{{Cite web |title=堀江貴文 エンジニアは誇り高くあれ|【Tech総研】 |url=https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001517 |website=next.rikunabi.com |access-date=2024-05-31}}</ref>。
 
[[コーエー|光栄]]創業者の[[襟川陽一]]は、[[TK-80]]を組み立てているのを見た妻の[[襟川恵子]]からプレゼントされたMZ-80Cでゲーム開発を始めた<ref name=":0">{{Cite web |title=信長から乙女ゲームまで… シブサワ・コウとその妻が語るコーエー立志伝 「世界初ばかりだとユーザーに怒られた(笑)」 |url=https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/koei |website=電ファミニコゲーマー – ゲームの面白い記事読んでみない? |date=2016-03-22 |access-date=2024-05-31 |language=ja |last=電ファミニコゲーマー編集部}}</ref>。このMZ-80Cはコーエーに保管されている<ref name=":0" />。
 
== 脚注 ==
{{Reflist | 2脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
 
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
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== 関連項目 ==
* [[MZ (コンピュータ)]] - 属するシリーズの詳細。
* Oh!MZ, [[Oh!X]] - シャープ機種を対象とした月刊誌。
*: 属するシリーズの詳細。
* [[マイコンBASICマガジン]] - ユーザー投稿によるゲーム、実用プログラムなどが多数掲載された。
* Oh!MZ, [[Oh!X]]
 
*: シャープ機種を対象とした月刊誌。
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* [[マイコンBASICマガジン]]
 
*: ユーザー投稿によるゲーム、実用プログラムなどが多数掲載された。
{{Computer-stub}}
{{DEFAULTSORT:MZ80}}
[[Category:シャープのパーソナルコンピュータ]]
[[Category:重要科学技術史資料]]