「MZ-80」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
m →MZ-80B |
YanagisawaRetro (会話 | 投稿記録) 編集の要約なし タグ: 曖昧さ回避ページへのリンク |
||
(43人の利用者による、間の56版が非表示) | |||
1行目:
{{出典の明記|date=2014-9}}
'''MZ-80'''(
日本のパソコンの歴史において重要な存在であり、初代のMZ-80Kが2015年9月1日に[[重要科学技術史資料]](未来技術遺産)の第00204号に登録された<ref>[http://sts.kahaku.go.jp/material/index.html 重要科学技術史資料一覧]</ref>。
本項目では、MZ-80KからMZ-80Bまでを記述する。
== 概要 ==
MZ-80シリーズはシャープが開発した、CPUにZ80を使う、8ビットマイクロコンピュータ(パーソナルコンピュータ)のシリーズである。
「[[MZ (コンピュータ)#オールインワン設計|オールインワン設計]]」「[[MZ (コンピュータ)#クリーン設計|クリーン設計]]」がMZ-80シリーズの設計上の特徴として挙げられる。
MZ-80シリーズの"初代"はMZ-80Kである。{{Efn|8ビットのMZ-80シリーズの初代は、紛れもなくMZ-80Kである。試作機で4ビットコンピュータの[[MZ-40K]]はあくまで4ビットで"40"であり、通常はMZ-80シリーズとは別のものとして扱われる。ただし、MZ-40KはMZシリーズのいわば源流ではある。}}
設計がすぐれ商業的にも大きな成功をおさめ、初代MZ-80Kが日本のマイクロコンピュータ(パソコン)の市場で約50%と非常に高い市場占有率となり、すなわちパソコンの国内市場で2位を大きく引き離してトップの存在となり、当時[[パソコン御三家]]といわれ、その後も "姉妹機"などと言われるMZ-80C、MZ-80K2、MZ-80K2E、MZ-80Bなどが続々と発売された。
シリーズを通して[[MZ (コンピュータ)#アルゴマーク|アルゴ船]]のマーク(ロゴ)が使われている。
<!-- 日本 "発?" "初?"のパーソナルコンピュータである。ほぼ同時期、日立よりベーシックマスターが発売されているが、こちらはパーソナルコンピューターではなくマイクロコンピューターという名称で発売されている(正式名称は『日立マイクロコンピュターベーシックマスター』である)<ref>[https://greendeepforest.com/?p=2145 家庭用パソコンの歴史 ~1978年~]</ref><ref>[https://museum.ipsj.or.jp/heritage/MB-6880.html 情報処理技術遺産 ベーシックマスターMB6880]</ref><ref>[https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/retrohard/1270928.htmlモニタ一体型のイカすヤツ「シャープ MZ-80K」、パソコンを身近にしてくれた人気機種]</ref>。-->
== 歴史 ==
=== 開発経緯(試作機) ===
MZ-80シリーズの初代機 MZ-80Kは(MZ-40K同様に)シャープの部品事業部がその需要を創出するために製作した機種であった。
小冊子「シャープマイコン博士MZ-40Kマイコン情報」{{Efn|マイコン博士[[MZ-40K]]の購入者は愛用者ハガキを返送すると送られてきたもの}}の最後のページの新製品紹介コーナーに試作段階のMZ-80に関して次のように書かれていた。
{{Quotation|Z-80CPU使用。BASIC言語の本格的ホビーコンピューター Z80(型名'''MZ-80K''')、製品概要 本機Z80(ジー・エイティー)は12K、BASIC言語を使用する本格的なコンピューターです}}
1978年9月に発行された最初期のパンフレットには、試作機の写真と仕様が掲載されており、その基板には、製品版より多くのEP-ROMが実装されている反面、RAMのパターンが減っており、本体写真の起動画面には、フリーエリア 6637Byte、BASICはSP5000Bと表示されている。これらのハードウェア的な特徴と、当時のパーツからも、試作段階ではROM-BASIC機種であったと考えられる。電源ボタンは前面右手前に配置されていた(「押しやすいところに置いてはいけない」との指摘に基づき、製品では背面に移動された<ref>『[[ASCII]]』 1998年6月号「国産銘機列伝」特集内[[中西馨]]氏のインタビュー</ref>)、その右手前の電源ボタンのそばには、SHARPのロゴとともに「HOBBY COMPUTER」と印字されている。このパンフレット(カタログ)においては、まだ アルゴー船 やクリーン設計、クリーンコンピュータの記述は無く、BASICのサイズを12Kとうたっている。
量産機の初期ロット用のカタログも、1978年9月のパンフレットをベースに修正したもので、写真のメイン基板や筐体の一部が実際の量産品とは異なる。
== MZ-80K系機種 ==
[[ファイル:
特徴である「クリーン設計」は、本来システムプログラム全体をROMで実装することに対するコスト的なリスクの回避を目的とした苦肉の策<ref>[[MZ (コンピュータ)#クリーン設計|クリーン設計]]を参照。</ref>であり、コマンドこそ6種しか用意されていないモニターにも テキストVRAMには MZ-80は当初、(意図的に)少しだけはんだ付けを要する "セミキット"として発売され、後にそれをベースとした完成品やキーボードの異なるバリエーションも販売された。
=== ハードウェア ===
==== 基本仕様 ====
* [[CPU]]: [[Z80]]。[[クロック周波数]] 2MHz
* [[Random Access Memory|RAM]]:
** メイン 最大48KiB。
** テキストVRAM1KB
* [[Read Only Memory|ROM]]:
** CGROM 2KB - 画面表示のキャラクター(文字類)のパターン(※下で解説)が記憶されている。
** モニタ 4KB - 初期のシステムのモニタコマンドは5種で、システムを読み込むLOADコマンド、FDDから起動するためのFDコマンド<ref group="注">実ルーチンは拡張ボード上のROMに存在する</ref>、キー入力のクリック音を発生させるSGコマンドと、それを停止するSSコマンド、メモリ上のアドレスをコールするGOTOコマンドのみである。ROMには、ローレベルな入出力をサポートするルーチンが書き込まれており、文字列の表示、音の出力、テープへの入出力をサポートしている。
* 音源 -8253の[[矩形波]]出力モードを利用した単音。通常は周期を指定して鳴らすが、CPUが直接トリガを掛け制御することも可能である。
* 内蔵スピーカー - 最大出力 500 mW
* 表示能力
** 内蔵モノクロディスプレイ
** 横40桁×縦25行の1000文字表示。 ** 1キャラクタは8×8[[ピクセル]]で構成されている。
** 画面全体を80×50ピクセル構成の画面として扱い図形を描くことも可能{{Efn|1キャラクタを4分割
* 電源 - AC 100V ±10% 50/60Hz
* 使用条件 - 温度/使用時 0℃ 〜 35℃、湿度/使用時 85%以下
* 外形寸法
=== MZ-80K ===
MZ-80シリーズの初代。
1978年12月出荷<ref>「急成長続けるパーソナル・コンピュータの国内市場」『日経エレクトロニクス』[[日経マグロウヒル]]、1980年3月17日、188頁。</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20070324040458/https://blogs.yahoo.co.jp/nagusa_kei/10569797.html|title=(2) MZ80K 初出荷 ( パソコン )|accessdate=2019-02-24|date=2006-07-04|website=MZ-80 パソコン開発物語 - Yahoo!ブログ}}</ref>。主メモリ(RAM)は、20KiB。
筐体、キーボード、ディスプレイ、データレコーダが全て一体のオールインワン設計。標準価格は198,000円。
MZ-80シリーズの初代機 MZ-80Kは、MZ-40K同様に、部品事業部がその需要を創出するために製作した機種である。社内には別にコンピュータを扱う部署があり、社内での摩擦を防ぐ意味合いでMZ-80Kは技術者用のトレーニングキットとして、セミキットの形で販売された<ref>『パソコン革命の旗手たち』 p72</ref>。発売予告の広告では(MZ-40Kの様な)フルキットであるかのように書かれていたが、実際の量産・販売品は、キーボードのみに半田付けを要する"セミキット"として販売された。
[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]は角型のスイッチを碁盤の目状に並べたマトリクス配列。{{Efn|稀にキー入力の取りこぼしが発生することもあった。}}
ディスプレイは白黒表示。{{Efn|初期の設計ではCRTCが調停処理を行わないため、テキストVRAMへのアクセスのタイミングによっては画面が乱れた。回避するためにはプログラム側で監視、制御を行う必要があり、画面全体を乱れずにスクロールするようブロック転送するには三度に分割して転送する必要があった。}}
{{Efn|なお、CPUクロックを向上させる倍速基板や、CP/M等を動作させるための先頭アドレスをメモリ後半と入れ替える回路等、ハードウェアに直接手を入れるような周辺機器も各店舗や、メーカー(?)等 (?) からリリースされた。}}
;商業的成功
ほぼ同時期、1978年9月に[[日立製作所|日立]]より[[ベーシックマスター]]が発売されたがあまり人気がなく、MZ-80Kは市場占有率は50%と,2位以下を大幅に引き離し快走を続けた<ref>[https://museum.ipsj.or.jp/computer/personal/0004.html 日本のコンピュータ パーソナルコンピュータ]</ref>。
=== MZ-80C ===
[[1979年]]発売
2002年10月22日には液晶ガラス基板上にZ80を形成し、MZ-80KのCPUを置換して動作させることで[[システム液晶]]のデモンストレーションが行われた<ref>[https://av.watch.impress.co.jp/docs/20021022/sharp.htm シャープ、液晶ガラス基板上に8bit CPU「Z80」を形成]</ref>。
[[2017年]][[5月]]、PasocomMini MZ-80Cとして、[[Raspberry Pi]]A+にエミュレーターを書き込み、内蔵したミニチュアモデルが発表された<ref name="news0511">[https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1059030.html 小さくて新しい「PasocomMini MZ-80C」、6月1日より予約受付開始]</ref>。[[#ミニュチュア版復刻 PasocomMini MZ-80C]]
=== MZ-80K2 ===
[[1980年]]発売。MZ-80C
=== MZ-80K2E ===
[[1981年]]発売。クリーンコンピュータ10万台突破記念として
=== MZ-80A ===
[[1982年]]発売。24KiB RAMを標準搭載。海外で販売された
=== MZ-1200 ===
MZ-80Aを国内用にリファインしたもの。MZ-80Aで変更された部分が旧機種に近い仕様に戻されており、互換性が維持されるようになっている。MZ-80A同様VRAMは2KiB搭載されているが、有効なのは前半のみとなっている。発売時期には既に事業が移管されており、情報システム事業部が取り扱っているが、本体以外の命名規則はそのままであり、周辺機器は、部品事業部と同じ規則によって型番が割り振られている。日本の拡張ユニットにあわせ、カードエッジだった部分がコネクタに変更されているほかは、ほぼ基板はMZ-80Aの設計と同一であり、海外のみでリリースされた拡張パーツへ対応するための構造等が筐体に残されている。標準価格148,000円。
== ソフトウェア ==
65 ⟶ 106行目:
* MZ-80KR1 拡張RAM(16KB)
*: 純正拡張RAM。
* MZ-80P2 放電プリンター
* MZ-80P3 ドットインパクトプリンター
* MZ-80I/O インターフェースユニット
*: オプションの周辺機器を接続するためのI/Oユニット。I/Oカードを最大5枚接続可能。
* MZ-80FD フロッピーディスクドライブ(2ドライブ)
*: 容量は片面140KB
* MZ-80FDK 増設用フロッピーディスクドライブ(2ドライブ)
* MZ-80SFD シングルフロッピーディスクドライブ
* MZ-80DU 14型カラーディスプレイユニット
*: 「インテリジェントカラーターミナル」MZ-80DUAと「カラーモニタ」MZ-80DUBで構成されており、MZ-80DUAはZ80を搭載し、プログラムを実行できる独立した端末である。
*: グラフィック解像度は256×192ドット8色、128×192ドット24色、128×192ドット8色8階調、256×192ドットモノクロ4階調のいずれかが使用可能。
*: キャラクターとの重ねあわせ表示が可能。キャラクターは1行42文字で上下左右に回転が可能。
== MZ-80B ==
72 ⟶ 123行目:
=== 概要 ===
機種名のBは対外的にはビジネスの意味と言われているが、開発者達はBIGのBとして究極のMZを目指し
オールインワン設計 新規設計されたことにより従来機種との互換性は無く、ロードマップ上の後継機は[[MZ-2000]]であるが目立つ部分の仕様が変更されており、互換性はBASICプログラムに限られた。直系の互換性を持つ後継機は[[MZ-2500]]となる。グリーンモニタを採用し、本機での表示は緑と黒で表示されるが、MZ-2500でのMZ-80Bモード時のCRTへの表示は常時白黒で出力される。事業部の再編があったことから、これらMZ-80シリーズの開発者の手によるMZはMZ-80Bによって終焉したが、グラフィックスVRAMを予め搭載し電源部分の変更が行われたMZ-80B2が部署変更後も併売されている。
==== クリーン設計 ====
MZ-80Kでは低レベルな入出力をサポートするルーチンがROMで組み込まれていたが、MZ-80Bでは
IPLは拡張ボード上のROMと、FDD、内蔵データレコーダをサポートし、FDD、内蔵データレコーダの順番に起動可能なデバイスを探し、起動できるものを検出できない場合は ==== 電磁制御可能なデータレコーダ ====
従来機種では手動制御だったデータレコーダ
==== グラフィックス表示のサポート ====
従来機種ではテキスト画面のキャラクタを配置することによるセミグラフィックスだった画面は、オプションの増設によって
==== 海外展開 ====
MZ-80Bもまた、海外で販売されていた。ただし、国内版と異なりメインメモリは
=== ハードウェア ===
101 ⟶ 158行目:
** IPL 2KB
* サウンド出力 400mW最大
PWM出力で該当I/OポートのHとLがスピーカー出力のH、Lに相当し、ソフトウェア的に音量を調整する機能を持たない。全体の音量は、背面の「音声ボリウム」によってハードウェア的に音量を無段階調整する。他機種のBeepが、ポート制御によって「鳴る」のに対し、この機種では
* 表示能力
** キャラクタ
*: 8×8ドットマトリクス、
** グラフィック。
*: オプションの
* 電源 AC 100V ±10% 50/60Hz 消費電力 65W
* 使用条件 温度/使用時 0℃ 〜 35℃、湿度/使用時 85%以下
112 ⟶ 169行目:
* 外形寸法 幅450mm×奥行520mm×高さ270mm
* 重量 約16kg
== MZ-80シリーズの終了 ==
事業部の再編によりパソコン事業は情報システム事業部へ引き継がれた。事業部変更とともに命名規則も変化し「MZ-80」というコンピュータシリーズは終了することになった。
== ミニュチュア版復刻 PasocomMini MZ-80C ==
[[2017年]][[10月14日]]に[[ハル研究所]]から発売された「PasocomMini」シリーズの一つ。筐体は[[青島文化教材社]]が、プログラム部分は[[スマイルブーム]]が関わっている<ref>{{Cite web|url=https://www.pcmini.jp|title=PasocomMini|publisher=ハル研究所|accessdate=2018-1-3}}</ref><ref name="mynavi">{{Cite web|和書|url=https://news.mynavi.jp/article/20170525-pcmini/|title=おっさん感涙!! 「PasoconMini MZ-80C」を見て触った|publisher=マイナビニュース|date=2017-5-25|accessdate=2018-1-3}}</ref>。
約四分の一のサイズで再現された樹脂筐体のミニチュアの中に[[シングルボードコンピュータ]]として独自のファームウェアを書き込んだ[[Raspberry Pi]]A+を搭載。[[プチコン|SmileBASIC]]と、そこから制御が行えるMZ-80エミュレータ並びに5本のゲームソフトが書き込まれている<ref name="mynavi" /><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.pcmini.jp/?page_id=43|title=PasocomMini 同梱ソフトの遊び方|publisher=ハル研究所|accessdate=2018-1-3}}</ref>。
== 雑学 ==
元ライブドア代表の[[堀江貴文]]氏は最初に触ったのはMZ-80Kであると述べている<ref>{{Cite web |title=堀江貴文 エンジニアは誇り高くあれ|【Tech総研】 |url=https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001517 |website=next.rikunabi.com |access-date=2024-05-31}}</ref>。
[[コーエー|光栄]]創業者の[[襟川陽一]]は、[[TK-80]]を組み立てているのを見た妻の[[襟川恵子]]からプレゼントされたMZ-80Cでゲーム開発を始めた<ref name=":0">{{Cite web |title=信長から乙女ゲームまで… シブサワ・コウとその妻が語るコーエー立志伝 「世界初ばかりだとユーザーに怒られた(笑)」 |url=https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/koei |website=電ファミニコゲーマー – ゲームの面白い記事読んでみない? |date=2016-03-22 |access-date=2024-05-31 |language=ja |last=電ファミニコゲーマー編集部}}</ref>。このMZ-80Cはコーエーに保管されている<ref name=":0" />。
== 脚注 ==
{{
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
120 ⟶ 196行目:
== 関連項目 ==
* [[MZ (コンピュータ)]] - 属するシリーズの詳細。
* Oh!MZ, [[Oh!X]] - シャープ機種を対象とした月刊誌。
* [[マイコンBASICマガジン]] - ユーザー投稿によるゲーム、実用プログラムなどが多数掲載された。
{{デフォルトソート:えむせつと80}}
[[Category:シャープのパーソナルコンピュータ]]
[[Category:重要科学技術史資料]]
|