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[[メジャーリーグベースボール]](MLB)における'''[[ドラフト会議]]'''(ドラフトかいぎ)には以下の2つがある。
本稿では両方について説明し、単に「ドラフト」と表記した場合は
== ファースト・イヤー ==
「ルール
=== 歴史 ===
MLBのドラフト制度は、各チームの戦力均衡を目的に[[1965年のMLBドラフト|1965年]]から導入された。豊富な資金力を背景に選手を集め、圧倒的な強さを誇っていた[[ニューヨーク・ヤンキース]]にそれ以上戦力が偏りすぎるのを防ぐためでもあった。この結果、ヤンキースは[[1964年]]以降10年以上もリーグ優勝から遠ざかることとなり、この制度の成果は如実に現れた。さらに[[1969年]]からは[[プレーオフ]](2地区制)が導入され、[[1972年]]からの[[オークランド・アスレチックス]][[ワールドシリーズ]]3連覇まで毎年違うチームがワールドチャンピオンとなっている。
だが、1960年代後半以降、[[代理人交渉制度]]が認められるとドラフト指名された有望選手にも代理人がつくようになり、契約金の高騰が起こった。結果、資金力に劣るチームは指名順位が高くても目玉選手を指名できず、指名順位が低いにもかかわらず資金力のあるチームがその選手を獲得できてしまう問題も発生した。そのため、選手に有利な契約を結ばせようと代理人が契約交渉を長引かせることを防ぐために交渉期限日を早めたり、契約金の推奨額を設定するといった対策を行なっている(後述)。
=== 指名対象選手 ===
以下の条件を満たす選手が指名対象となる<ref name="cot">{{Cite web|url=https://legacy.baseballprospectus.com/compensation/cots/league-info/transactions-glossary/|title=Transaction Glossary|language=英語|publisher=Cot's Baseball Contracts|accessdate=2019-12-4}}</ref>。
# ドラフトの1年以上前から[[アメリカ合衆国]]、[[カナダ]]、[[プエルトリコ]]、ほか[[アメリカ合衆国の海外領土|合衆国領]]<ref>[http://mlb.mlb.com/mlb/draftday/faq.jsp Draft FAQ(MLB.com)]</ref>いずれかの国に居住し、且つ当該国の[[高等学校|高校]]、[[短期大学|短大]]、[[コミュニティ・カレッジ]]、[[大学]]、[[独立リーグ]]に在籍する選手。なお選手の[[国籍]]は問わない<ref>{{Cite news |url=https://www.sankei.com/article/20150607-RU4EVSZJLZNH5ITDVTLAFMEFXA/ |title=大リーグ通信 |publisher=[[産経新聞]] |accessdate=2016-10-31 }}</ref>。
#* 高校生は、卒業者(または見込み)で、且つ大学等へ進学しない選手のみ
#* 4年制以上の大学生は、3年以上在学している選手、または2年以上在学している21歳以上の選手のみ
# 過去にMLB球団と選手契約を交わしていない
# 他国プロ野球でドラフト対象となっていない<ref>MLB規約上では明記されておらず、「他国プロ野球リーグにおいてドラフト指名対象となっているアマチュア選手については、MLBドラフトでの指名を見送る」という紳士協定によるもの。</ref><ref name="ninomiya">{{Cite web|和書|url=https://www2.myjcom.jp/npb/column/20220318.shtml |title=MLB労使交渉で浮上 "国際ドラフト" 日本人選手青田買いの危険性も |author=[[二宮清純]] |publisher=J:COM |date=2022-3-18 |accessdate=2022-7-21}}</ref>
上記条件を満たし、且つドラフト指名を希望しない選手は、5月1日までにMLB事務局へ通知することで当年の指名を回避できる。この場合、次のドラフト会議まではMLB球団と契約できない<ref>MAJOR LEAGUE RULES 4(b)(3)</ref>。
===
指名対象国の学校の大半は6月に学年末を迎えるが、[[1986年のMLBドラフト|1986年]]までは1月と6月の年2回ドラフトが開催されていた<ref>1月の開催では同月が学年末となる短大や高校卒業者が指名対象。-「FREE AGENT DRAFT HISTORY」『1990大リーグ総ガイド』 [[週刊ベースボール]]1990年4月28日増刊号 [[ベースボール・マガジン社]] 29頁</ref>。[[1987年のMLBドラフト|1987年]]からは年1回(6月上旬)に変更され、同年にレギュラー・フェイズ(通常部門=ファースト・イヤー)とセカンダリー・フェイズ(第2部門=いわゆる二次ドラフト。前回のドラフトで指名されながら入団しなかった選手対象)の分割システムもなくなり、それまでのドラフトで指名された選手も全てレギュラー・フェイズに組み込まれることになった<ref>「日米野球徹底比較」『1988米大リーグ総ガイド』 週刊ベースボール1988年4月30日増刊号 ベースボール・マガジン社 41頁</ref>。
[[2021年のMLBドラフト|2021年]]からは、7月の「[[MLBオールスターゲーム|MLBオールスターウィークエンド]]」期間中に開催されることとなった<ref>{{cite web |author= Manny Randhawa |url=https://www.mlb.com/news/2021-mlb-draft-in-july-all-star-week |title=MLB Draft to be held in July for 1st time in '21 |language=英語|publisher=MLB.com |date=2020-9-24|accessdate=2020-12-29}}</ref>。MLB機構はこれに伴い、ドラフト候補選手たちが一同に集まって6-8月にシーズン公式戦を行う「[[MLBドラフトリーグ]]」を創設すると発表した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/column/watanabe/news/202012030000194.html |title=ドラフト有望株のリーグを新設 マイナー改革の一環 |author=渡辺史敏 |publisher=日刊スポーツ |date=2020-12-3|accessdate=2020-12-29 }}</ref>。なお2023年現在、契約交渉権の有効期間は8月1日まで<ref>2006年までは翌年ドラフト会議の1週間前まで。2007-2011年は概ね8月中旬まで。</ref>(4年制以上の大学卒業生、および独立リーグ所属選手は翌年ドラフト開催日まで)。
===
戦力均衡が目的であるため、導入年から完全[[ウェイバー方式]]を採用しており、指名重複(抽選)や自由獲得枠といった規定はない。[[2022年]]からは、タンキング(球団側が意図的に戦力補強をせず、その結果シーズン勝率が下がることで、翌年のドラフトでより上位の指名順を得ようとする戦略)行為抑制のため、[[NBA]]や[[ナショナルホッケーリーグ|NHL]]でも採用されている[[ドラフト会議#ロッタリー|ロッタリー]]方式を以下のとおり採用している<ref name="CBA2022">{{Cite web|url=https://www.mlb.com/news/mlb-mlbpa-agree-to-cba|title=MLB, MLBPA agree to new CBA: season to start April 7|language=英語|publisher=MLB.com|author=Maek Feinsand|date=2022-3-11|accessdate=2022-3-11}}</ref><ref>{{Cite news|author=Carlos Colazzo|title=Who's Picking Where? 2023 MLB Draft Order & Lottery Explained|url=https://www.baseballamerica.com/stories/whos-picking-where-2023-mlb-draft-order-lottery-explained/|publisher=Baseball America|date=2022-10-5|accessdate=2022-12-7}}</ref>。
{| class="wikitable"
|+指名順規定(2023年現在)
!ラウンド
!指名順
!指名順決定方法
!補足
|-
| rowspan="7" |1巡目
|全体1~6位
|[[メジャーリーグベースボールのポストシーズン|ポストシーズン]]非進出チームによる抽選
| rowspan="2" |★1
|-
|全体7~18位
|ポストシーズン非進出、かつ上記抽選に当選しなかったチーム<br />(前シーズンの勝率下位順に割り当て)
|-
|全体19~22位
|ポストシーズンのワイルドカードシリーズ敗退チーム
| rowspan="3" |★2
|-
|全体23~26位
|ディビジョンシリーズ敗退チーム
|-
|全体27~28位
|リーグチャンピオンシップシリーズ敗退チーム
|-
|全体29位
|ワールドシリーズ敗退チーム
| rowspan="4" |
|-
|全体30位
|ワールドシリーズ制覇チーム
|-
| rowspan="2" |2巡目<br />以降
|1~18番目
|ポストシーズン非進出チーム<br />(前シーズンの勝率下位順に割り当て)
|-
|19番目以降
|1巡目の指名順と同じ
|}
* ★1:[[メジャーリーグベースボール#収益分配制度|収益分配]]の受給対象球団は3年連続で、非受給対象球団は2年連続で、全体6位以内の指名権を獲得することはできない(その当年は、高くても全体10位以下の指名順位しか得られない)。
* 抽選での当選確率は、前シーズン勝率の低い球団ほど高く設定される(勝率下位3球団の当選確率は同一<ref>2024年では、下位1~3球団が確率16.5%、以下勝率ワースト順に4位(13.2%)、5位(10%)、6位(7.5%)と続き、18位は0.2%。</ref>)。
* ★2:収益分配状況(受給球団、非受給球団、贅沢税支払い球団、の順)、分配状況が同じ場合は前シーズンの勝率下位順に上位指名権が割り当てられる。
* 選手に支払う年俸総額が一定額を超える球団は、ペナルティとして1巡目指名順位が10下がる(全体6位以上の指名権はペナルティ対象外。この場合、2番目に高い指名順位が10下がる)。この結果、指名順が戦力均衡ラウンドA(後述)の指名より後になるケースもあり得る<ref>このペナルティは、2巡目以降の指名順には影響を与えない。例えば、本来の1巡目指名順が25番目の球団がペナルティを受けると、1巡目指名順が35番目に落ちる(30~34番目は戦力均衡ラウンドAの指名が行われる)ものの、2巡目以降は30チーム中25番目に指名を行える。</ref>。
* 抽選はドラフト前年の[[ウインターミーティング]]にて開催される。
また、指名権の補償などについて以下の特別規定がある<ref name="cot" />。
* 前年度のドラフトで、上位指名選手(3巡目開始までに指名した選手)と契約できなかった球団は、その選手の全体指名順位に1を加えた順位での指名権を追加で与えられる<ref>例えば、前年の全体20位指名の選手と契約できなかった場合は全体21位の指名権を得る。</ref>。また3巡目に指名した選手と契約できなかった際は、3巡目指名後(4巡目指名の前)に指名権を1つ与えられる。なお事前に選手の同意がない限り、同一球団が同一選手を2年連続で指名することはできない。
* 前年度の所属球団から[[フリーエージェント (プロスポーツ)#クオリファイング・オファー(Qualifying Offer)|クオリファイング・オファー(QO)]]を提示された選手がオファーを拒否して[[フリーエージェント (プロスポーツ)|FA]]となったうえ、当年ドラフトまでに他のMLB球団と契約した場合、流出元球団は補完指名権を得る。一方、獲得先球団は保有している指名権を少なくとも1つ以上失う。
{{Main|フリーエージェント (プロスポーツ)#クオリファイング・オファー(Qualifying Offer)}}
* 特定条件を満たすトッププロスペクト(若手有望選手)<ref>[[ベースボール・アメリカ]]、[[ESPN]]、MLB Pipeline(MLB.com) のうち、2つ以上の「Top100 プロスペクト」に選出され、且つサービスタイム0.060以下で、且つMLBデビューしたチームに所属しており、且つ[[参稼報酬調停|年俸調停権]]取得前の[[最優秀新人選手賞 (MLB)|新人王]]有資格選手。よって例えば、[[日本プロ野球|NPB]]で活躍した後に[[フリーエージェント (プロスポーツ)#契約上の特例によるFA|特例契約]]でMLBへ移籍した選手などは原則、対象外となる。</ref><ref name="MLB20240207">{{Cite web|url=https://www.mlb.com/news/prospect-performance-incentive-ppi-eligible-players |title=Here are 113 players who could earn teams extra Draft picks this year |language=英語 |publisher=MLB.com |author=Joe Trezza|date=2024-2-7 |accessdate=2024-2-8}}</ref>が、直前シーズンの開幕から2週間以内に26人枠に登録され、1年を通してMLBでプレー<ref>当年の[[ロースター (MLB)#サービスタイム|サービスタイム]]が1.000であれば該当</ref>した場合、「PPI(Prospect Promotion Incentive)資格選手」となる。PPI資格選手が[[最優秀新人選手賞 (MLB)|ルーキー・オブ・ザ・イヤー]](新人王)を獲得するか、または[[サイ・ヤング賞]]か[[最優秀選手賞 (MLB)|MVP]]投票で3位以上となった場合、球団は1巡目終了直後の指名権を追加獲得する<ref>{{Cite web|url=https://www.mlb.com/news/mlb-mlbpa-agree-to-cba|title=MLB, MLBPA agree to new CBA: season to start April 7|language=英語|publisher=MLB.com|author=Mark Feinsand|date=2022-3-11|accessdate=2022-3-11}}</ref>。初適用者は2022年の[[フリオ・ロドリゲス (外野手)|フリオ・ロドリゲス]]([[シアトル・マリナーズ|マリナーズ]])。
** また、PPI資格選手(前述の指名権を追加獲得していない選手に限る)が翌シーズン以降、[[参稼報酬調停|年俸調停権]]を取得するまでにサイ・ヤング賞かMVP投票で3位以上となった場合も、球団は1巡目終了直後の指名権を追加獲得する<ref name="MLB20240207" />。
**この規定は、チーム不動の主力となりうるトッププロスペクトを、開幕からでなくシーズン途中からMLBデビューさせ、サービスタイムを操作してFA権取得(保留権喪失)タイミングを1年先延ばしにしようとする球団側の戦略を抑制する目的も含まれている<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0c04c6ac568c2bfc4347ec690553ffa54aca38db|title=メジャーデビュー直前のプロスペクト2人。一方は2400万ドルで契約延長、一方は3000万ドルを却下|author=宇根夏樹|publisher=[[Yahoo! JAPAN]]ニュース個人|date=2018-3-27|accessdate=2019-2-4}}</ref>。
{{see also|ロースター (MLB)#サービスタイム}}
* 1巡目および2巡目指名終了後、『戦力均衡ラウンド (CB)』と呼ばれる補完指名が実施される。[[メジャーリーグベースボール#収益分配制度|収益分配制度]]の受給対象となる全球団に、2巡目開始直前(ラウンドA)または2巡目終了直後(ラウンドB)の補完指名権が1つ与えられる。前回にラウンドA指名権を得ていた球団は次回ラウンドB指名権を得るという風に、得る指名権は毎回交互に入れ替わる(2024年以降)。A・B各ラウンド内での指名順は、前シーズンの勝率上位順となる。この制度は2012年より実施されている<ref>導入当初は、ラウンドA・Bどちらの指名権を得るかは抽選によって決められていた。{{Cite web |url=http://m.mlb.com/glossary/transactions/competitive-balance-draft-picks |title=Competitive Balance Draft Picks |publisher=MLB.COM |accessdate=2018-12-14 }}</ref>。また、戦力均衡ラウンドの指名権に限ってドラフト指名権自体の[[トレード]]が認められている。
{| class="wikitable" style="margin:0 auto; text-align:center;"
|+
!ドラフト ラウンド
|-
|1巡目
|-
|PPI指名
|-
|QO補完指名
|-
|戦力均衡ラウンドA
|-
|2巡目
|-
|戦力均衡ラウンドB
|-
|QO補完指名
|-
|3巡目
|-
|入団拒否補完指名(3巡目)
|-
|4巡目
|-
|QO補完指名
|-
|5巡目
|-
|6巡目
|-
|・・・
|}
アメリカ合衆国では学生の[[クラブ活動|部活動]]の掛け持ちが一般的であり、野球以外のスポーツでも高い才能を発揮している学生選手は珍しくない。そのため[[NBA]]や[[NFL]]など他競技のドラフトからも重複で指名されたり<ref>MLBと[[NFL]]を掛け持ちした[[ボー・ジャクソン]]や[[ディオン・サンダース]]のように複数のプロスポーツを経験した選手も少ないながら存在する。</ref>、卒業年度でない学生は学校からスポーツ[[奨学金]](スカラーシップ)の提供を受けて在学を続ける選択をし、指名されても入団しないケースがある。また、下位指名選手は契約金や自身への評価が低いなどの理由から、入団しないことがある<ref name="ninzu">{{Cite web|和書|url=http://full-count.jp/2016/06/12/post35041/ |title=指名人数は日本の10倍 熾烈な競争社会を生み出すMLBドラフト |publisher=Full-count |accessdate=2016-10-31 }}</ref>。
またチーム関係者の親族や、知人の息子を「記念」として下位で指名するなど、思わぬ人物が突然指名を受けたケースもある。あくまでお遊びとしての指名であり、基本的に戦力として期待されてはいないので、大抵このような指名を受けた者は入団しないが、[[マイク・ピアッツァ]]([[1988年のMLBドラフト|1988年]]、62巡目指名、ピアッツアの父親と当時の[[ロサンゼルス・ドジャース]]の監督だった[[トミー・ラソーダ]]が友人だったことから指名された)のように入団し、チームの主力にまで成長する選手も稀にだが存在する。
指名選手は[[マイナーリーグベースボール|マイナー]]契約([[ロースター (MLB)|40人枠]]外での契約)しか締結できず、メジャー契約(40人枠入り)の確約や、インセンティブ(出来高)などを契約内容に盛り込むこともできない。このため、ほぼ全ての選手は傘下のマイナーリーグ球団で数年間の育成を経たのち、有望選手がMLB昇格を果たしていく。また、[[ロースター (MLB)#サービスタイム|サービスタイム]]6年に達してFA権を取得するまでは保留制度に縛られ、サービスタイム3年未満の間は[[参稼報酬調停#メジャーリーグベースボール|年俸調停権]]もない。
=== 指名人数 ===
導入後しばらくは指名人数に制限はなく、年度によっては100人前後を指名するチームもあった。その後、[[1998年のMLBドラフト|1998年]]以降は各チーム50巡目まで、[[2012年のMLBドラフト|2012年]]以降は40巡目までに縮小されたが、それでも1日で全選手を指名することは不可能なため、ドラフト会議は数日間に渡っての開催となる<ref name="ninzu" />。
[[2020年のMLBドラフト|2020年]]は[[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)|COVID-19感染拡大]]による契約コスト削減の一環として、例外的に5巡目指名をもって終了となった(指名されなかった選手とは、契約金2万ドルを上限として自由獲得することが可能)<ref>{{Cite web|和書|url=https://baseballking.jp/ns/228115/ |title=MLBドラフト、従来の40巡から5巡までに…コロナウイルスの影響で大幅縮小 |publisher=BASEBALLKING |date=2020-5-9|accessdate=2020-12-29 }}</ref>。マイナーリーグのチーム数が削減された[[2021年のMLBドラフト|2021年]]以降は、20巡目までの指名に縮小された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sanspo.com/article/20200925-AH5YDPG32JIK7O3IIZ3ZMJOF5E/ |title=MLB、来季ドラフトは最低20巡目まで|publisher=サンケイスポーツ |date=2020-9-25|accessdate=2020-12-29 }}</ref>。
=== 契約金 ===
各年のドラフト開催前に予め、10巡目までの全指名順位ごとに契約金の目安(Pick Value)が設定される。その合計金額が各球団の契約金推奨額(Bonus Pool)となる。各球団は、指名した全選手との契約金合計額をこのBonus Pool以下に抑えなければならない(どの指名選手にどう金額を割り振るかは球団側の自由。なお契約不成立選手のPick ValueはBonus Poolから差し引く。11巡目以降の指名選手については計算上、各人15万ドルを超えた分のみ合計額に加算される)。
合計額が超過した場合、5%未満の超過であれば球団に罰金が科され、5%を超過すれば超過割合により翌年ドラフトの1巡目指名権剥奪などのペナルティも加わる<ref name="cot" /><ref>{{Cite news |url=https://blogs.fangraphs.com/2019-mlb-draft-signing-bonus-pool-and-pick-values/ |title=2019 MLB Draft Signing Bonus Pool and Pick Values |publisher=[[FanGraphs]] |author=Eric Longenhagen, Kiley McDaniel |date=2019-4-3 |accessdate=2020-1-3 }}</ref>。このルールは2012年より適用されている。
同じ1巡目指名順でも、全体1位と全体30位では例年、Pick Valueに3倍以上の開きがある。このため、1巡目で上位の指名権を持つ球団ほどBonus Poolに十分な余裕が生じ、1巡目以降でも高評価の(契約金が高くなりそうな)選手を躊躇なく指名できたり、契約金不足による入団拒否を回避しやすくなるといったメリットが得られる<ref>{{Cite news |url=https://www.mlb.com/news/mlb-draft-overview-and-schedule |title=Everything to know about 2024 MLB Draft |publisher=MLB.com |author=Jason Foster |date=2024-7-14 |accessdate=2024-7-14 }}</ref>。
=== 日本人の指名 ===
アメリカ合衆国・カナダ・プエルトリコの学校でプレーする[[留学生]]なども指名対象となるため、当該国以外の[[国籍]]を有する選手も指名されることがある。[[日本国籍]]を有する歴代指名選手は以下のとおり。2022年、[[加藤豪将]]が当該選手として史上初のメジャー昇格([[ロースター (MLB)|アクティブ・ロースター]]入り)を果たしている<ref>{{Cite news|title=Blue Jays set Opening Day roster|url=https://www.mlb.com/bluejays/news/blue-jays-2022-opening-day-roster|publisher=MLB.com|author=Keegan Matheson|date=2022-4-7|accessdate=2022-4-8}}</ref>。
*2002年 [[坂本充]](アリゾナ・ウエスタン短期大学) - 24巡目(全体711位)[[コロラド・ロッキーズ]]から指名
*2008年 [[鷲谷修也]]([[:en:College of the Desert|デザート短期大学]]) - 42巡目(全体1261位)[[ワシントン・ナショナルズ]]から指名 ※契約せず
*2009年 鷲谷修也(デザート短期大学) - 14巡目(全体412位)ワシントン・ナショナルズから指名
*2009年 [[藤谷周平]]([[:en:University of Northern Iowa|ノーザン・アイオワ大学]]) - 18巡目(全体534位)[[サンディエゴ・パドレス]]から指名 ※契約せず
*2013年 加藤豪将([[:en:Rancho Bernardo High School|ランチョ・バーナード高校]]) - 2巡目(全体66位)[[ニューヨーク・ヤンキース]]から指名<ref>加藤豪将はMLBドラフト指名時、アメリカ合衆国と日本の[[二重国籍|多重国籍]]資格保有者である。</ref><ref>{{Cite news |url=https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/f-bb-tp2-20130607-1139206.html |title=ヤンキースが日本人の加藤内野手を指名 |newspaper=[[日刊スポーツ]] |date=2013-06-07 }}</ref>
*2023年 [[西田陸浮]]([[オレゴン大学]]) - 11巡目(全体329位)[[シカゴ・ホワイトソックス]]から指名
*2025年 [[武元一輝]] ([[ハワイ大学システム|ハワイ大学]]) - 19巡目(全体560位)[[オークランド・アスレチックス|アスレチックス]]から指名
=== 世界ドラフト構想 ===
MLBでは2023年現在、ドラフト指名対象外となる[[ドミニカ共和国]]、[[ベネズエラ]]、[[メキシコ]]、[[日本]]、[[大韓民国|韓国]]、[[台湾]]などに在住する海外アマチュア選手については、若手プロ選手(25歳未満の選手、プロ経歴6年未満の選手)と同様に、球団毎に毎年定められる契約金総計(インターナショナル・ボーナス・プール)の範囲内で自由獲得できるルール(インターナショナル[[フリーエージェント (プロスポーツ)|FA]])となっている<ref name="cot" /><ref>日本人アマチュア選手では[[マック鈴木]]、[[多田野数人]]、[[田澤純一]]が自由獲得で契約後、メジャー昇格を果たしている(2012年現在)。</ref>。ただし、「他国プロ野球リーグにおいてドラフト指名対象となっているアマチュア選手については、契約や指名を見送る」という紳士協定がリーグ間で合意されており、獲得には様々な障壁がある。
{{main|フリーエージェント (プロスポーツ)#インターナショナルFA}}
2001年頃から「国際ドラフト(International Draft)構想」が進められている。MLBにおいて中南米や東アジアを中心に外国人選手も増加傾向にあり、一方で[[ナショナルホッケーリーグ|NHL]]など他のメジャースポーツでは諸外国の選手もドラフトを経て入団しているため、MLBも同様に実施していくことを検討している。MLB機構とMLB選手会の間で協議は続いているが、他国プロ野球との絡み、契約金の損得などの問題から、2023年現在も実現には至っていない<ref name="ninomiya" />。
== ルール5ドラフト ==
「'''ルール5ドラフト'''」(Rule 5 draft)とは、有望選手が十分な活躍の場を与えられず、傘下[[マイナーリーグベースボール|マイナーリーグ]]チームで半ば飼い殺し状態になってしまうことを防ぐため、他チーム所属の現役選手を指名し獲得できる制度である。名称の由来はMLB規約の第5条に規定されていることから<ref name="BA">{{Cite web |url=https://www.baseballamerica.com/stories/explaining-the-rule-5-draft/ |title=Explaining The Rule 5 Draft |publisher=Baseball America |author=J.J. Cooper|language=英語|date=2020-12-07|accessdate=2024-11-20 }}</ref>。例年、毎年12月の[[ウインターミーティング]]最終日に開催される。
MLB以外では2011年11月、[[韓国野球委員会|韓国プロ野球]]で新球団・[[NCダイノス]]の設立に伴って、この制度を模した「[[ルール5ドラフト (KBO)|2次ドラフト]]」が初めて開催され、以降2年おきに開催されたが2019年11月が最後となった。[[日本プロ野球]]においてもこの制度を参考にした「[[現役ドラフト]]」が2022年から実施されている。
指名は「メジャーリーグ・フェイズ<ref>2021年オフは{{仮リンク|2021年から2022年のMLBロックアウト|label=ロックアウト|en|2021–22 Major League Baseball lockout}}の影響でメジャーリーグ・フェイズが開催されなかった。</ref>」「マイナーリーグ・フェイズ」に分けて行われ、それぞれ[[ウェイバー方式]](当年レギュラーシーズンの勝率が低かったチーム順)で指名する<ref>同一勝率の場合は、更に前年のシーズン勝率を比較する。{{Cite web |url=https://www.mlb.com/milb/news/2024-rule-5-draft-preview |title=Rule 5 Draft: Order, best picks, top available prospects |publisher=MiLB.COM |author=Joe Trezza|language=英語|date=2024-12-11|accessdate=2024-12-11 }}</ref>。制度の悪用による過剰な引き抜きを防止するため、以下の規定がある(2024年現在)<ref>[http://www.milb.com/milb/events/rule5draft.jsp RULE 5 DRAFT(MiLB.com)]</ref><ref name="BA" />。
=== 規定 ===
; 在籍年数による制限
:* 19歳以上で入団した選手のうち、ルール ; ロースターによる制限
:* MLBの[[ロースター (MLB)|40人枠]]に登録されている選手(メジャー契約選手)は指名できない。
:** このため、ルール5ドラフト実施前になると多くのチームがロースターの再編成(指名されたくない自軍選手とメジャー契約を結んで40人枠に登録し、代わりに何人かを[[DFA (MLB)|DFA]]などにする)を行なって枠を空ける傾向がある。この結果指名対象外となった有望選手も、40人枠に入ったことでMLB出場チャンスや年俸が増えるため、ルール5ドラフトの実施効果を高めている<ref>{{Cite news |url=https://www.mlb.com/news/40-man-roster-is-valuable-for-players |title=Why is the 40-man roster so important? |publisher=MLB.com |author=Mark Feinsand|language=英語|date=2020-11-20|accessdate=2020-11-22 }}</ref><ref>[[ロースター (MLB)#マイナー・オプションとマイナー降格|マイナー・オプション]]の規定により、[[ロースター (MLB)|アクティブ・ロースター]]に登録せず40人枠内で選手を保持できるのは事実上3年間のみ。このため、40人枠に登録した以上は近々に戦力としてMLBで起用しなければならず、ルール5ドラフトで選手を奪われたくないというだけの理由で気安く40人枠に登録できるわけではない。</ref>。
; メジャーリーグ・フェイズ<ref name="mlbcom">[http://m.mlb.com/glossary/transactions/rule-5-draft Rule 5 Draft(MLB.COM)]</ref>
:* 40人枠に空きがあるチームのみ指名できる。
:* 指名したMLB各チームは、指名選手の前所属チームに100,000ドルを支払わなければならない。
:* 指名した選手は翌シーズン全期間、MLBの[[ロースター (MLB)|アクティブ・ロースター]]に登録し続けなければならない。
:** [[故障者リスト|負傷者リスト]]などへの一時離脱登録は可能だが、アクティブ・ロースター登録日数が90日未満だった場合は再来年も不足日数分のアクティブ・ロースター登録義務を負う。
:** 指名選手を[[トレード]]することも可能だが、移籍先のチームも引き続きアクティブ・ロースターへの登録義務を負う。
:** 負傷者リストなどに登録せず、指名選手をアクティブ・ロースターから外す場合、選手を[[ウェイバー公示]] (Outright Waivers) する必要がある。
:*** 公示中に他チームから獲得申し込み (Claim) があれば選手はそのチームへ譲渡され、トレードの場合と同じく譲渡先チームも引き続きアクティブ・ロースターへの登録義務を負う。
:*** 獲得申し込みがなくウェイバーを通過した場合、指名選手の前所属チームが50,000ドルを払い戻した上で、選手は前チームへ返還される。その後、選手は40人枠から外れて傘下マイナーリーグのチームに配属 (Outright) されるのが通常だが、前チームが返還を望まない場合は指名先チームとトレードを成立させ、当該選手の保有権を指名先チームへ完全譲渡するケースもある<ref>このトレードを経ることで、指名先チームには以降アクティブ・ロースターへの登録義務が不必要となるメリットが生じる。</ref>(近年では[[2008年]]の[[R.A.ディッキー]]や、[[2011年]]の[[スコット・ダイアモンド]]の例がある)。
; マイナーリーグ・フェイズ (Triple-A Phase)<ref>{{Cite web |url=https://www.baseball-reference.com/bullpen/Rule_5_Draft |title=Rule 5 Draft |publisher=Baseball-Reference.com |accessdate=2018-12-14 }}</ref>
:* 自チーム傘下AAAクラスの[[マイナーリーグベースボール#ロースター|リザーブリスト]]に空きがあるチームのみ指名できる。
:* AAクラス以下のマイナー契約選手(40人枠にも、AAAクラスのリザーブリストにも登録されていない選手)のみ指名できる。
:* 指名したチームは、選手の元所属チームに24,000ドルを支払わなければならない。ただし、メジャーリーグ・フェイズのようなロースター登録義務はない。
:* なお、2015年まではAクラス以下の選手を指名するフェーズ (Double-A Phase) も実施されていたが、2016年以降はTriple-A Phaseのみ実施されている。
; 指名権の行使
:* いずれのフェイズでも、各チームは複数名の指名が可能で、1名も指名しないという選択も可能。ただし、アクティブ・ロースター登録義務があるメジャーリーグ・フェイズで2名以上を指名するチームはほぼ皆無となっている<ref>{{Cite web |url=https://www.baseballamerica.com/stories/rule-5-draft-2024-how-to-watch-order-top-players-available-more/ |title=Rule 5 Draft 2024: How To Watch, Order, Top Players Available & More |publisher=Baseball America |author=Daniel Malone|language=英語|date=2024-12-09|accessdate=2024-12-11 }}</ref>。
=== ルール5ドラフトによって移籍した主な選手 ===
★★★印は[[アメリカ野球殿堂|野球殿堂]]入り、★印は[[MLBオールスターゲーム|MLBオールスター]]選出、(N)印は[[日本プロ野球|NPB]]在籍経験あり、▼印は指名から翌シーズン終了までの間にアクティブ・ロースターから外された選手<ref>アクティブ・ロースターから外れた後、規定に従い前所属チームへ返還されたか、または返還後にトレードされ、その後に活躍した選手</ref>。
{{col|
* [[ロベルト・クレメンテ]] ★★★ 1954年<ref>クレメンテの移籍当時は現行制度のようなルール5ドラフトは存在しなかったが、飼い殺しを防ぐ目的の『マイナーリーグ・ドラフト』と呼ばれる制度が存在した。</ref>
* [[
* [[マニー・トリーヨ]] ★ 1969年
* [[ウィリー・ヘルナンデス]] ★ 1976年
* [[ウィリー・アップショー]] (N) 1977年
* [[ジョージ・ベル]] ★ 1980年
* [[ジョディ・デービス (野球)|ジョディ・デービス]] ★ 1980年
* [[ケリー・グルーバー]] ★ 1984年
* [[マイク・モーガン (野球)|マイク・モーガン]] ★ 1984年
* [[ボビー・ボニーヤ]] ★ 1985年
* [[ジェフ・ネルソン (野球)|ジェフ・ネルソン]] ★ 1986年
* [[ジョン・ウェッテランド]] ▼★ 1987年
* [[デーブ・ホリンズ]] ★ 1989年
* [[フェルナンド・ビーニャ]] ▼★ 1992年
* [[マイク・マイヤーズ (左投手)|マイク・マイヤーズ]] ▼ 1992年
* [[スティーブン・ランドルフ]] (N) 1997年
* [[スコット・ポドセドニック]] ★ 1997年
* [[エリック・ラドウィック]] (N) 1998年
* [[ヨハン・サンタナ]] ★ 1999年
* [[デリック・ターンボウ]] ★ 1999年
* [[ホルヘ・ソーサ]] (N) 2001年
* [[D.J.カラスコ]] (N) 2002年
* [[ハビアー・ロペス]] ▼ 2002年
* [[ウィル・レデズマ]] (N) 2002年
* [[シェーン・ビクトリーノ]] ★ 2002年
* [[ホセ・バティスタ (外野手)|ホセ・バティスタ]] ★ 2003年
* [[ジェイソン・グリーリ]] ★ 2003年
* [[エクトル・ルナ]] (N) 2003年
* [[ウィリー・タベラス]] ▼ 2003年
* [[デニス・ホールトン|D.J.ホールトン]] (N) 2004年
* [[トニ・ブランコ]] (N) 2004年
* [[ダン・アグラ]] ★ 2005年
* [[アレクシー・オガンド]] ★ 2005年
* [[ホアキム・ソリア]] ★ 2006年
* [[ジョシュ・ハミルトン]] ▼★ 2006年
* [[アルフレド・サイモン]] ★ 2006年
|
* [[R.A.ディッキー]] ▼★ 2007年
* [[エバン・ミーク]] ▼★ 2007年
* [[エバース・カブレラ]] ★ 2008年
* [[ミゲル・ゴンザレス (1984年生の投手)|ミゲル・ゴンザレス]] 2008年
* [[
* [[
* [[
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* [[ライアン・
* [[
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* [[
* [[オマー・ナルバエス (野球)|オマー・ナルバエス]] ★ 2013年
* [[ラッセル・ウィルソン]] 2013年
* [[マーク・カナ]] 2014年
* [[オデュベル・ヘレーラ]] ★ 2014年
* [[ルイス・ペルドモ (1993年生の投手)|ルイス・ペルドモ]] (N) 2015年
* [[ジャバリ・ブラッシュ]] (N) 2015年
* [[アンソニー・サンタンダー]] ★ 2016年
* [[マイク・フォード]] (N) 2017年
* [[アルバート・スアレス]] (N) 2017年
* [[ネスター・コーテズ|ネスター・コルテス Jr.]] ▼★ 2017年
* [[ブラッド・ケラー]] 2017年
* [[ビクター・レイエス]] 2017年
* [[リード・ギャレット]] (N) 2018年 ▼
* [[ジョーダン・ロマノ]] ▼★ 2018年
* [[トレバー・メギル]] ▼ 2019年
* [[ギャレット・ウィットロック]] 2020年
* [[ホセ・ソリアーノ]] ▼ 2020年
}}
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
== 関連項目 ==
* [[MLBドラフト
* {{仮リンク|ルール5ドラフト結果|en|Rule 5 draft results}}
* [[ドラフト会議]]
** [[プロ野球ドラフト会議|ドラフト会議 (NPB)]]
** [[ドラフト会議 (KBO)]]
== 外部リンク ==
* [https://www.mlb.com/draft/ MLB Draft (MLB.COM)]
* {{Twitter|MLBDraft|MLB Draft}}
{{MLB Drafts}}
{{MLBAllStarGame}}
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[[Category:MLBドラフト|*]]
[[Category:1965年開始のスポーツイベント]]
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