「予定価格」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし |
m 外部リンクの修正 http:// -> https:// (eritokyo.jp) (Botによる編集) |
||
| (13人の利用者による、間の22版が非表示) | |||
2行目:
予定価格は、発注者が競争入札を行う際に、その落札金額決定するための基準となるものである。随意契約であっても予定価格は作成されるが(予決令九十九の5)、この場合は契約金額を決定するための基準となる。
詳しくは[[予定価格論]]にて書かれている。
==法令上の規定==
原則として、[[総額]]について定めることとされているが、例外として、[[単価]]について定めることも認められている(予算決算及び会計令第八十条)。また、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない(予算決算及び会計令第八十条第二項
▲例外として、単価について定めることも認められている(予算決算及び会計令第八十条)。また、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない(予算決算及び会計令第八十条第二項)。競争入札では、落札額は予定価格の制限を超えることができない([[会計法]]第二十九条の六)。
総額について定めている(予決令八十)ため、[[公共工事]]については、発注しようとする[[設計書]] (予算書
なお、その単価について予定価格を定めることができる
財務省[[通達]]により、百万円以下の契約は予定価格調書を省略して
日本の[[競争入札]]では、[[落札]]額は予定価格の制限を超えることができない([[会計法]]第二十九条の六)。この原則は'''予定価格の上限拘束性'''と呼ばれる<ref name="2-2yoteikakaku">{{Cite web|和書|url=https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/kaikeiseido/2-2yoteikakakunozyougennkousokusei.pdf|title=会計制度研究会(第2回)予定価格の上限拘束性について|author=財務省主計局法規課|date=2018-10-29|accessdate=2022-09-05}}</ref>。
日本以外の先進国における入札制度には、予定価格の上限拘束性は存在しない<ref>例えばフランスにおいては「予定価格に上限拘束性があると、調達職員による調達の内容や質についての検討が十分になされなくなる」として、調達の質の向上・職員の資質向上・人材育成のため、2001年に予定価格の上限拘束性の原則が廃止された。</ref>。予定価格の上限拘束性がない場合において、ある入札が予定価格を上回った場合の予算の調整方法としては、「他の予算枠からの流用を可能とする」「予算管理している上位枠から使用を依頼する」等の方法がある<ref name="2-2yoteikakaku" />。
== 予定価格の役割 ==
19 ⟶ 25行目:
== 予定価格の算定 ==
業務担当者が[[積算基準]]や各種価格資料(価格調査月刊誌、業者見積、[https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010324/01.pdf 公共工事設計労務単価]等)に基づいて[[積算]]を行ない、契約担当官等が積算額に基づいて予定価格を決定する。通常は積算額=予定価格となる。価格は[[国税通則法]]などで取り扱う金額のように千円単位や万円単位に端数調整処理を施している。ただし、切り捨てでの調整で端数処理の他、不適正な値切りとされる歩切りが2014年の「担い手三法」改正によって禁止が明記されるまで、長い間実施されていた<ref>[http://bn.shinko-web.jp/economic/000913.html prescription 建設経済の動向 2016.06.27 自治体の「歩切り撤廃」の進捗|歩切り全廃へ、「端数処理」が今後の焦点に] 日経コンストラクション編集長 野中賢、月刊『しんこう』</ref><ref>[https://www.mlit.go.jp/common/001063346.pdf 「歩切り」の廃止による予定価格の適正な設定について] - 国土交通省</ref>。このため、予定価格を設計算出額そのまま使用するように変更が成されていくこととなった<ref>例えば、草津市の場合[https://www.city.kusatsu.shiga.jp/kurashi/sangyobusiness/nyusatsu/joho/keiyaku120161216.html]</ref>。
予定価格の算定は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)に基づき、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない(同令第80条の2)とされている。▼
▲===予定価格の算定方式===
積算には次のような方式がある。
-->▼
*市場価格方式
*原価計算方式
市場価格方式による予定価格の決定は、過去の納入実績や取引実例、参考見積書などを元に値引率を調査し、定価([[希望小売価格]])から値引額を引いた価格を予定価格とする。官公庁の契約手続きの中で一番多いのは[[物品購入契約]]であるが、これには市場価格方式が活用されている。
国の工事を対象とする[[予算決算及び会計令]]では、公共工事の場合に発注者は競争入札を行う工事について、予決令七十九で[[価格]]を[[仕様書]]、[[設計書]]等を定め[[積算]]を行い、その予定価格を作成するように定めている一方、[[地方自治法]]といった[[法令]]には同様の規定はないが、地方公共団体が定める財務規則、契約事務規則等において予定価格に関する規定が設けられている。▼
▲国の工事を対象とする[[予算決算及び会計令]]では、公共工事の場合に発注者は競争入札を行う工事について、予決令七十九で[[価格]]を[[仕様書]]、[[設計書]]等を定め[[積算]]を行い、その予定価格を作成するように定め
▲予定価格の算定は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)に基づき、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない(同令第80条の2)とされている。
▲-->
一方、[[地方自治法]]といった[[法令]]には同様の規定はないが、地方公共団体が定める財務規則、契約事務規則等において予定価格に関する規定が設けられている。
設計書(金入り設計書。予算書)の例について、たとえば、国土交通省北陸地方整備局の土木系(河川工事や道路工事等)[[請負工事]]で、設計要領(共通編)第2章 設計書の作成要領によると<ref name=hokuriku>[https://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/kaitei/sekkei/index.htm 設計要領(共通編)]</ref>、設計書は、大きく分けて(1) 工事名、場所、工期と設計内容など、設計説明概要を記述した鏡。 (2) 工事区分(費目)、工種、種別、細別、規格、員数(数量及び数量増減)、単価、金額(金額増減)、摘要等を表整理した工事費の内訳表(設計内訳書)。 (3) 内訳書、 (4) 単価表の4区分で構成されている。同整備局の[[様式]]をみると、電算用と手書き用で様式を使い分けている。
添付される内訳書は一括で金額を算出したものの内容について記載した[[明細書]]の表で、単位は一式(一式内訳書という)。単価表([[あたり単価表]])は、立方メートルあたり、平方メートルあたりなど単位当りで金額を算出したものの内容について記載した明細書の表で、単価表は設計単価を計算するため、その算出金額は積算基準に定めた単価の端数処理を施している。各単価表にて求められた当該工種のあたり単価を所要数量(設計数量、出来高数量)で乗じて、金額を算出。設計内訳書に記載される。
一式内訳書は出来高数量をともなわない項目(工種)で、端数処理を施さない合計金額が表示される。そのまま金額が設計内訳書に記載される。
工事発注の執行には、当該組織の本官もしくは分任官に設計書附属書類を揃えてから施行承認が必要となる。施行承認に必要な設計書附属書類とは設計関係図書・施行伺(金抜き設計書、特記仕様書、図面類。他に工程表、数量計算書関係、など)である<ref name=hokuriku/>。
== 予定価格の保秘 ==
33 ⟶ 52行目:
===予定価格の公表===
但し近年、競争入札の透明性を高める目的で事前に公開されることも平成19年度までは増加傾向にあった。予定価格の事前公表は「事前の入札において最低価格の入札をした一者との[[随意契約]]」という不透明な流れと、契約担当者が予定価格を漏洩して利益を誘導する危険性を払拭したことから、市民オンブズマンからも高評価を受けていた<ref>[http://www.ombudsman.jp/rank/10th.pdf 第10回全国情報公開度ランキング(PDF)]</ref>。だが、一般競争入札において同額が以前の4倍以上の頻度で発生し、くじ引き率によって落札者を決定する件数が増加<ref>http://www.wise-pds.jp/news/news2009012703.htm 2009/1/27「予定価格事前公表、くじ引き発生率4倍/自治体の一般競争で顕著/国交省調べ」ワイズ情報公共データシステム</ref>した。さらに、適切な運用がされなければ予定価格が目安となって業者の積算を放棄させ、談合によって落札価格が高どまりとなる問題点も指摘されていた。そのため、平成20年3月31日に総務省、国土交通省は連名で各自治体に通達<ref>[http://www.soumu.go.jp/main_content/000025902.pdf 公共工事の入札及び契約の適正化の推進について(PDF)]</ref>し、事前公表の取り止めを含んだ対応を促している。
地方公共団体発注の場合、地方公共団体の入札・契約手続を規律している地方自治法には会計法上の封書規定のような制約はないことから、従来から各団体の自主的判断で予定価格の事前公表を実施しているところであった。このため、適正化指針で「地方公共団体においては、会計法のような法令上の制目はないことから、各団体が適切と判断するときには、事前公表を行うことができる」とした上で、事前公表により弊害が生じた場合には事前公表の取り止めを含む適切な対応をとるよう要請していたのである。その後確かに事前公表した工事の[[落札率]]は、事後公表した工事の落札率に比べて高止まりになっていることが判明したとして、事前公表制を中止したところも多くみられていた。
国発注の場合、会計法予決令79条 の規定がなされていることから、現行法下では、予定価格の事前公表は法的に制約されている。そして適正化指針で国の予定価格事前公表は 「談合が一層容易に行われる可能性があること等」を考慮して行わないこととしている。
[[東京都]]では、予定価格の事前公表を行ってきたが、[[豊洲市場]]や[[2020年東京オリンピック]]関連施設建設工事で高率の落札が相次いだことから、2017年6月、落札額の抑制や競争性の向上を狙い、予定価格を事後公表する等の制度改革を行った。しかしながら制度改正後、入札不調が相次いで発生するようになったこと<ref>{{Cite web |date= 2017-11-18|url= https://www.asahi.com/articles/ASKCK5HW5KCKUTIL04T.html|title= 小池知事主導の入札制度、見直しへ 工事手続きに滞り|publisher= 朝日新聞|accessdate=2018-03-07}}</ref>、また、2018年3月の都議会では中小企業の積算業務が過重になることも指摘されたことから、小池都知事は入札制度を入札監視委員会で検証することを発言している<ref>{{Cite web |date= 2018-03-02|url= http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201803/CK2018030202000130.html|title= <論戦 都議会>代表質問 入札改革、見直し前向き|publisher= 東京新聞|accessdate=2018-03-07}}</ref>。▼
▲[[東京都]]では、予定価格の事前公表を行ってきたが、[[豊洲市場]]や[[2020年東京オリンピック]]関連施設建設工事で高率の落札が相次いだことから、2017年6月、落札額の抑制や競争性の向上を狙い、予定価格を事後公表する等の制度改革を行った。しかしながら制度改正後、入札不調が相次いで発生するようになったこと<ref>{{Cite web
== 問題点 ==
近年の公共事業・公共調達に関して、入札価格が高止まり傾向にあり、税金の無駄遣いにつながっていないかとの批判が見られることがある。このとき基準となる指標の一つとして[[落札率]](予定価格に対する入札価格の比率)が提示されることがある。「落札率が高止まりする(調達価格が下がらない)のは受注者が自由競争に基づく企業努力としてのコスト縮減に力を注いでいない結果であり、[[談合]]の疑いを免れない<ref>[
しかし、前述のように予定価格は元々市場調査により得られた価格(ただし、[[建設物価調査会|月刊建設物価]]などの書籍に記載されている部材の価格は大手ゼネコンが一次卸などから購入を行った場合の価格であり、中小ゼネコンが価格の高い二次卸や三次卸から調達せざるを得ない状況は反映されていない)を基準として算出されており、実際の入札価格(受注額)とは本来はさほど乖離が見られない性格のものであり、落札率が高い(すなわち入札価格が予定価格に近い)ことが公共調達価格の不適切につながるとは一概にいえないのではないかとの反論がなされることがある。また、落札率が低下すると、低い入札価格がそのまま予定価格の価格調査対象になり、(落札率の基準となる)予定価格そのものが低落するため、結果的に落札率が大きく下がりにくくなるとともに、市場価格を市場原理以上に低下させているとの指摘もある<ref>[http://jsce.jp/article.pl?sid=05/07/19/1044252 土木学会公式サイト内「公共事業の契約を価格だけで決めて良いのか」]</ref>。
また、工事内容や調達物品に求められる品質・性能が高度化・複雑化し、受注者独自の技術革新が進む中で、予定価格の根拠となる設計図書だけで発注内容を定義づけることが困難になり、業者選定基準を予定価格のみで一概に規定することが困難になっているのではないかとの指摘もある<ref>[
加えて、適正な予定価格を算定するには、対象の契約品に関する専門的な設計力が必要不可欠であるが、行政には、その設計力を持ち合わせていない。設計力を持ち合わせていないので、業者選定を含めて、合理的な判断は下せない状況にある<ref>{{Cite book|edition=第1版|title=入札改革へのアプローチ 予定価格論: 政府調達における予定価格算定業務の発展的向上に関する研究|url=https://www.amazon.co.jp/%E5%85%A5%E6%9C%AD%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81-%E4%BA%88%E5%AE%9A%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E8%AB%96-%E6%94%BF%E5%BA%9C%E8%AA%BF%E9%81%94%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%BA%88%E5%AE%9A%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E7%AE%97%E5%AE%9A%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AE%E7%99%BA%E5%B1%95%E7%9A%84%E5%90%91%E4%B8%8A%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%A0%94%E7%A9%B6-%E5%A4%AA%E9%83%8E%E4%B8%B8%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB-%E9%88%B4%E6%9C%A8-%E8%89%AF%E7%A5%90-ebook/dp/B08ZKHZR2R|publisher=太郎丸出版|date=2021-03-24|first=良祐|last=鈴木|first2=博己|last2=武藤}}</ref><ref>{{Cite book|title=高校生からの公共 適正価格: 公平・公正な契約の実現に向けて 予定価格論|url=https://www.amazon.co.jp/%E9%AB%98%E6%A0%A1%E7%94%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%85%AC%E5%85%B1-%E9%81%A9%E6%AD%A3%E4%BE%A1%E6%A0%BC-%E5%85%AC%E5%B9%B3%E3%83%BB%E5%85%AC%E6%AD%A3%E3%81%AA%E5%A5%91%E7%B4%84%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6-%E5%A4%AA%E9%83%8E%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB-%E9%88%B4%E6%9C%A8-%E8%89%AF%E7%A5%90-ebook/dp/B097LPG7CV/ref=mp_s_a_1_2?dchild=1&qid=1625894115&s=books&sr=1-2|first=良祐|last=鈴木|first2=博己|last2=武藤}}</ref>。
== 脚注 ==
52 ⟶ 76行目:
* [[予算決算及び会計令]]
* [[歩掛]]
* [[予定価格論]]
{{DEFAULTSORT:よていかかく}}
[[Category:日本の行政]]
| |||