削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
m 外部リンクの修正 (www.courts.go.jp) (Botによる編集)
 
(29人の利用者による、間の51版が非表示)
1行目:
{{Otheruses||人工妊娠中絶に関する各国の法制度|人工妊娠中絶法}}
{{law}}
{{日本の法令
|題名=母体保護法
|提出区分=議法
|番号=昭和23年法律第156号
|通称=
|効力=現行法
|種類=[[医事法]]
|所管=[[こども家庭庁]]
|内容=不妊手術や人工妊娠中絶に関する事項を定める
|関連=[[国民優生法]]、[[優生保護法]]、[[母子保健法]]
|関連=
|制定時題名=優生保護法
|リンク= [https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC1000000156 e-Gov法令検索]
|リンク={{Egov law}}
}}
'''母体保護法'''(ぼたいほごほう、法令番号は昭和23年法律第156号)は、[[不妊手術]]および[[人工妊娠中絶]]に関する[[堕胎罪]]の例外事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的とに関する[[法律]]である(同法1条)。[[1948年]]([[昭和]]23年)[[7月13日]]に「[[優生保護法]]」として[[公布]]され、1996年の法改正で名が改められた。
 
本法によっ基づいて[[母体保護法指定医師]]が指定される。また、本法では[[医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律|医薬品医療機器等法]]の規定に関わらず[[ペッサリー]]等[[避妊具]]を販売できる」という特権を有する[[受胎調節実地指導員]]についても規定が置かれている。
この法律によって、[[刑法 (日本)|刑法]]の[[堕胎罪]]の規定は存置されているが、堕胎を罪に問わない例外が基本となり、堕胎罪は空文化になった。[[母体保護法#母体保護法への改組|1996年に改定]]される以前は「[[優生保護法]]」であり旧優生保護法と呼ばれ、当時の不妊手術が親族など保護者の認可で許可されていたために、親族が希望・許諾したことで[[不妊手術]]を受けた人々<ref group=注釈>親族など保護者が手術を希望又は許諾した場合のみ、不妊手術が行われたため、一律全ての[[障害者]]に行われていない背景となっている。</ref>と訴訟となっている<ref name=":1" /><ref name=":0">{{Cite web|title=「旧優生保護法は違憲」仙台地裁 賠償は認めず|url=https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201905/20190528_13041.html|website=河北新報オンラインニュース|accessdate=2019-06-04|language=ja|publisher=株式会社 河北新報社|date=2019年05月28日火曜日|quote=旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制された宮城県の60代と70代の女性2人が国に計7150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は28日、旧法の違憲性を認めた上で「救済の在り方は立法府の裁量に一義的に委ねられる」として原告女性側の請求を棄却した。判決は全国7地裁で提起された一連の訴訟で初めて。}}</ref>。また強制不妊手術問題のために「[[旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律]]」が立法された。
 
1948年この法律の施行によって、日本では妊娠22週未満(妊娠21週と6日)までの[[母体保護法指定医師|母体保護法指定医]]による中絶手術を許可され、[[刑法 (日本)|刑法]]における[[堕胎罪]]規定は存置されている空文化し中絶した女性を堕胎罪に問わない例外ことが基本となり、堕胎罪は空文中絶が事実上合法された<ref name=":2">{{Cite web|和書|title=人工妊娠中絶ができる条件とは何ですか? |url=https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa5/ |website=日本産婦人科医会 |date=2017-06-28 |accessdate=2022-02-19 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=人工妊娠中絶なっ関する基礎知識 |url=https://yasuda-lc.jp/column/23 |website=秋田市の産婦人科 あきレディースクリニック安田 |accessdate=2022-02-19 |language=ja}}</ref>一方、[[母体保護法#母体保護法への改正以降|1996年に改]]される以前は「[[優生保護法]]」であり(以下「旧優生保護法呼ばれ、当時の表記)下では[[不妊手術]]本人でなく親族など保護者の認可で希望・可さ諾のみで行わることが可能になっていたために、親族が希望・許諾したことで[[障害者]]などの望まない不妊手術]]を受けた人々<ref group=注釈>親族など手術は保護者が手術を希望または許諾した場合のみ、不妊手術が行われたためもので、一律すべての[[障害者]]に行われていたわけではない背景となっている。</ref>が政府に対して訴訟となっを提起している<ref name=":1" /><ref name=":0">{{Cite web|和書|title=「旧優生保護法は違憲」仙台地裁 賠償は認めず|url=https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201905/20190528_13041.html|website=河北新報オンラインニュース|accessdate=2019-06-04|language=ja|publisher=株式会社 河北新報社|date=2019-05-28日火曜日|quote=旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制された宮城県の60代と70代の女性2人が国に計7150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は28日、旧法の違憲性を認めた上で「救済の在り方は立法府の裁量に一義的に委ねられる」として原告女性側の請求を棄却した。判決は全国7地裁で提起された一連の訴訟で初めて。}}</ref>。また強制不妊手術問題のため「[[旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律]]」が立法された。
本法によって[[母体保護法指定医師]]が指定される。また、本法では[[医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律|医薬品医療機器等法]]の規定に関わらず「[[ペッサリー]]等[[避妊具]]を販売できる」という特権を有する[[受胎調節実地指導員]]についても規定が置かれている。
 
本法により妊婦本人の意向だけでは中絶できず、配偶者の同意が求められるため訴訟を恐れる医師により本人が望まない妊娠の継続が強要される。2021年厚生労働省は婚姻関係が夫婦が事実上破綻し、同意を得ることが困難な場合に限って不要とする運用指針を定めた<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20210920-OYT1T50257/|title=「男性の同意」ないと中絶できない…相手からの連絡途絶えた未婚女性、公園のトイレで出産し遺棄|publisher=読売新聞|date=2021-09-21|accessdate=2022-03-25}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sankei.com/west/amp/170426/wst1704260074-a.html|title=兵庫・赤穂市に55万円賠償命令、中絶手術で夫の同意得ず 岡山地裁|publisher=産経新聞|date=2017-04-26|accessdate=2022-03-25}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009783.html|title=性暴力被害による妊娠における人工妊娠中絶の同意書のあり方について|publisher=日医オンライン|date=2021-01-05|accessdate=2022-03-25}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://mainichi.jp/articles/20210313/k00/00m/040/218000c|title=中絶に「配偶者の同意」求めず 婚姻関係破綻なら 厚労省方針|publisher=毎日新聞|date=2021-03-14|accessdate=2022-03-25}}</ref>。
== 経緯 ==
 
== 経緯概要 ==
{{see also|国民優生法}}
{{see also|優生保護法}}
=== 優生保護法の成立 ===
[[1907年]]に[[アメリカ合衆国]]の[[インディアナ州]]で世界初の優生思想に基づく中絶・堕胎法が制定された (1907 Indiana Eugenics Law)。それ以降、[[1923年]]までに全米32州で制定された。[[カリフォルニア州]]などでは梅毒患者、性犯罪者なども対象となったこともあった<ref>{{Citation|和書
| url = http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/ethics/theme2.html
| title = 優生学の錯綜
26 ⟶ 32行目:
| deadlinkdate = 2017-12-3
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20150715005249/http://www3.kmu.ac.jp/legalmed/ethics/theme2.html
| archivedate = 2015-07-15 }}</ref>。優生学は[[20世紀]]には世界的に国民の保護や子孫のためとして大きな支持を集めていた。日本では戦後の当初は[[1948年]](昭和23年)に優生保護法という名称で施行された。この法律は、戦前の[[1940年]](昭和15年)の'''[[国民優生法]]'''と同様[[優生学]]的な色彩がある法律である。[[:s:刑法_(明治13年太政官布告第36号)|明治刑法]]第2編第29章で「墮胎の罪」を定めて中絶した者や中絶を介助した者には刑事罰を与えていた一方、国民優生法は、「国民素質ノ向上ヲ期スルコト」を目的とすることを謳って親の望まぬ不良な子孫の出生と流産の危険性のある母胎の道連れの抑制、[[多産]]による母体死亡阻止を目的とした。日本では中絶という行為がキリスト教国のように宗教的[[タブー]]であるとは見なされていなかったため、出産という女性への選択肢の位置づけがなされていた<ref>母体保護法とわたしたち、齋藤有紀子、2002年、p23]</ref>。状況によっては家族や[[後見人]]が中央優生審査会、地方優生審査会に手術申請を行うことや、中絶や放射線照射の処置を可能としていた法律である<ref>『[{{NDLDC|2960490/2}} 国民優生法]』。『官報』、1940年、</ref>。なお当時存在した日本優生学会(1925年創立、[[阿部文夫]]、[[岡本利吉]]、他)では同法に併せて不妊手術の状況を報告し、また人口増加問題も論じている<ref>『[{{NDLDC|1495771}} 優生手術十ケ月狀況]』、日本優生学会『優生学』、1942年。</ref><ref>日本優生学会『[{{NDLDC|1495760}} 優生学]』、[[1941年]]12月。</ref><ref>阿部文夫『[{{NDLDC|1744607/170}} 社会問題と教育:優生運動]』、『岩波講座教育科学』、1933年。</ref>。
 
第二次世界大戦における敗戦によって日本本土は大勢の引揚者・復員者を迎えた上に、第一次ベビーブームにより人口増加が問題となり、人口増加を抑制する必要が認識されていた。その一方で、食糧難や住宅難などを背景に、違法つ不衛生で危険な堕胎が頻繁に行われ女性の健康被害が生じていた<ref>中高の教科書でわかる経済学マクロ篇p39, 菅原晃 · 2017 </ref>。戦後の優生保護法においては、このような戦後の治安組織の喪失・混乱や[[復員]]による過剰人口問題、強姦を含む望まぬ妊娠問題、堕胎は女性の権利であるとの意識([[プロチョイス]])を背景にし、革新系の女性議員にとっては、[[妊娠中絶]]の完全な合法化させるための手段である側面があった。1946年(昭和21年)4月10日に行われた戦後初の選挙である[[第22回衆議院議員総選挙]]で日本初の女性国会議員として当選した革新系女性議員らは、[[第1回国会]]において国民優生法案を提出した。[[日本社会党]]の[[福田昌子]]、[[加藤シヅエ]]といった革新系の政治家は母胎保護・女性の妊娠拒否権の観点から多産による女性への負担や母胎の死の危険もある流産の恐れがある胎児とされた時点、女性が出産を拒否できる堕胎の選択肢の合法化を求めた。彼女らは死ぬ危険のある、出産という行為は女性の負担だとして人工中絶の必要性と合法化を主張していた。加藤などは貧困の中で子供が多くの子供を育てている外国の貧民街の多産と貧困問題を目の当たりにして、帰国直後の1922年には、[[マーガレット・サンガー]]の薫陶を生かし社会運動に理解のあった夫と日本で産児調節運動を開始していた。男爵夫人石本静枝として産児制限運動を推進するなど母胎保護には望まぬ出産への中絶の権利や母胎への危険のある出産を阻止する方法が女性に必要だと訴えていた<ref>{{Citation|和書
| title = 花を投げた女たち : その五人の愛と生涯
| page = 124
| publisher = [[文藝春秋]]
| author = 永畑道子 | author-link = 永畑道子
}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=加藤シヅエ {{!}}国立国会図書館 近代日本人の肖像|url=https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/374.html/|website=www.ndl.go.jp|accessdate=2019-05-28|language=ja|publisher=}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=加藤シヅエ(かとう シヅエ)とは|url=https://kotobank.jp/word/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E3%82%B7%E3%83%85%E3%82%A8-1066014|website=コトバンク|accessdate=2020-07-11|language=ja|first=デジタル版 日本人名大辞典+Plus,百科事典マイペディア,江戸・東京人物辞典,大辞林|last=第三版,世界大百科事典内言及}}</ref>。産婦人科医も2018年度の中絶実施件数は16万1741件で、1955年の中絶実施件数117万件を超えであったことから、「まさに隔世の感がある」と比較している。中絶激減原因について、日本人女性の社会的な地位の向上、避妊のための[[コンドーム]]の普及、セックスに対する消極性などが関係していると分析されている<ref>{{Cite web|和書|title=中絶の実態 「胎児に申し訳ない」 受ける女性の思い:朝日新聞デジタル |url=https://www.asahi.com/articles/ASN5G4TGNN5BUBQU001.html |website=朝日新聞デジタル |accessdate=2022-02-22 |language=ja}}</ref>。
 
==== 保護者・親族が希望した障害者に対する不妊手術 ====
性的暴行など性的加害者になった際に、再犯を繰り返す者でも心神喪失や責任能力欠如を理由に、罪に問われないことへの被害者側や世論からの批判、親族の目の離れたところで、妊娠や加害を繰り返すことへの、親族の負担・既に面倒を見ている親族による産まれた子供まで更に面倒を見られない負担増加拒否などを理由とした親族らが、[[障害者]]への[[人工妊娠中絶]]や不妊手術を可能にすることを希望した<ref name=":1" />。親族の要望の後押しを受けたため、1948年に国会でも与野党全会一致で可決した。障害者の面倒を見ている親族が手術を希望したり、容認した場合にのみ手術が行われた。そのため、親族が希望しなかった場合は、手術は行われなかったことで、全障害者には手術は行われていない背景となっている。障害者に不妊手術を希望したり、許諾した親族らの考えは世界的に珍しくなく、中絶の合法化されている国家で障害を持つ子供を妊娠した時点で、中絶を選択する率がどこの国家も高いことから、障害者の要望とその面倒を見ている親族の要望では、親族の要望が優先されていると{{誰範囲2|date=2022年4月24日 (日) 05:44 (UTC)|指摘している}}<ref name=":1">母体保護法とわたしたち、齋藤有紀子、2002年、p55-56</ref>。
 
[[1954年]]12月、[[厚生省]]が「不妊手術の件数が計画を下回っている」として、年度末に向けて計画通り手術を進めるよう求める通知を、都道府県宛に出していた。1957年4月にも「目標に達していない」として、手術の促進を求める通知を出していた。1955年には1362件で最多となった。1996年の法改正までに、少なくとも親族が希望した1万6,500人が手術を受けた<ref>京都新聞2018年8月9日朝刊p23</ref>。1962年に[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]の前身である日本社会党当時の宮城県議会議員、宮城県議会で[[宮城県]]に障害者への不妊手術の強化を要求したことで、県の担当部長から障害者への不妊手術推進する旨の答弁を引き出していた。そのため、2018年に後身の社会民主党は関係者に謝罪する声明を発表している<ref>{{Cite news |url=https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-2018022200762/?utm_source=webpush&utm_medium=email&utm_campaign=webpush_new1article |title=社民、強制不妊問題で謝罪=旧社会県議が強化要求 |newspaper=ニフティニュース |agency=時事通信 |publisher=NIFTY |date=2018-02-22 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20180223050912/https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-2018022200762/?utm_source=webpush&utm_medium=email&utm_campaign=webpush_new1article |archivedate=2018-02-23}}</ref>。
親族の要望の後押しを受けたため、1948年に国会でも'''与野党全会一致'''で可決した。齋藤有紀子によると障害者の面倒を見ている'''親族が手術を希望したり、容認した場合にのみ'''手術が行われた。そのため、親族が希望しなかった場合は、手術は行われなかったことで、全障害者には手術は行われていない背景となっている。[[齋藤有紀子]]は、障害者に不妊手術を希望したり、許諾した親族らの考えは世界的に珍しくなく、中絶の合法化されている国家で障害を持つ子供を妊娠した時点で、中絶を選択する率がどこの国家も高いことから、障害者の要望とその面倒を見ている親族の要望では、親族の要望が優先されていると指摘している<ref name=":1">母体保護法とわたしたち、齋藤有紀子、2002年、p55-56</ref>。
 
=== 宗教的中絶反対派(プロライフ)との中絶合法化維持の是非論争 ===
[[1954年]]12月、[[厚生省]]が「不妊手術の件数が計画を下回っている」として、年度末に向けて計画通り手術を進めるよう求める通知を、都道府県宛に出していた。1957年4月にも「目標に達していない」として、手術の促進を求める通知を出していた。1955年には1362件で最多となった。1996年の法改正までに、少なくとも親族が希望した1万6,500人が手術を受けた<ref>京都新聞2018年8月9日朝刊p23</ref>。
[[1949年]](昭和24年)の法改正により、経済的な理由による中絶の道が開かれた。[[1952年]](昭和27年)には中絶を希望する際に、地区優生保護審査会の認定自体を不要となった。このような中絶を容易化する改正がされたことで、経済的な理由による中絶でさえも日本女性は墮胎罪で罪に問われることは無くなり、改正法施行の翌年から日本国の[[出生率|出生数]]・[[合計特殊出生率]]が激減した。背景には急激に妊娠した日本人女性の中絶へ心理的抵抗感が薄れたことにある<ref>中高の教科書でわかる経済学マクロ篇p41, 菅原晃 · 2017 </ref>。その後、[[高度成長]]により、経済団体の[[日本経済団体連合会|日本経営者団体連盟(日経連)]]などからは将来の優れた労働力の確保という観点から中絶(産児制限)の抑制が主張されるようになった。また、[[プロライフ]]を主張する[[宗教団体]]からは、[[生長の家]]と[[カトリック教会]]が優生保護法改廃期成同盟を組織して中絶反対を訴えた。2022年時点てもカトリックが多数派を占める[[中南米]]では中絶が違法な国が占める。中南米で中絶が合法化されたのは、アルゼンチン、ウルグアイ、キューバ、ガイアナに次いでコロンビアが5か国目。メキシコでは、一部自治体で妊娠12週までの中絶が容認されている。カトリック教徒が多数派のコロンビアでは2022年2月21日では24週目までの中絶と、24週目以降のレイプによる妊娠、母体に危険があるとき、胎児が致死性の病気を持っている場合などの特定の状況のみ許可した<ref>{{Cite web|和書|title=コロンビア、妊娠24週までの中絶が合法に 憲法裁判断(AFP=時事) |url=https://news.yahoo.co.jp/articles/4f263aaa1931079e111066e09a4fa48ea4c95ffc |website=Yahoo!ニュース |accessdate=2022-02-22 |language=ja |quote=}}</ref>。宗教的中絶反対論の一方で[[羊水診断]]技術の発展により、障害を持つ胎児が早期に発見されるようになり、1960年代後半から羊水診断が日本では実施されるようになった<ref>[https://www.labcorp.co.jp/general/villus03-faq.html 羊水検査 Q&A (一般の方向け)] | ラボコープ・ジャパン</ref>。[[日本医師会]]は生長の家などの宗教的中絶反対論には反対しつつ、障害を持つ胎児の中絶を合法化するように提言した。こうした、思惑は違えど様々な改正案の動きがあった。これに対して、[[全国青い芝の会]]などの障害者団体は優生学的理由を前面に出した中絶の正当化に対して、逆に[[中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合|中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)]]や[[リブ新宿センター]]などの女性団体からは、経済的な理由による中絶の禁止に反対した<ref>{{Cite web|和書|title=中ピ連とは |url=https://kotobank.jp/word/%E4%B8%AD%E3%83%94%E9%80%A3-1367289 |website=コトバンク |accessdate=2022-02-22 |language=ja |last=世界大百科事典内言及 |quote=1970年には〈ぐるうぷ闘う女〉主催でウーマン・リブの集会が開かれ,各地に拠点がつくられ,優生保護法(現,母体保護法)改悪阻止を主張し}}</ref>。[[1970年代]]から[[1980年代]]にかけて、プロライフ・プロチョイス間で激しい議論がなされた。[[1972年]][[5月26日]]、政府([[第3次佐藤内閣 (改造)|第3次佐藤改造内閣]])提案で優生保護法の一部改正案が提出された。改正案は産児制限反対の経済団体やプロライフの宗教団体などの意向を反映したもので、以下の3つの内容であった。
 
=== 改正案を巡る議論 ===
[[1949年]](昭和24年)の法改正により、経済的な理由による中絶の道が開かれ、[[1952年]](昭和27年)には中絶について地区優生保護審査会の認定を不要とした。
 
その後、[[高度成長]]により、経済団体の[[日本経済団体連合会|日本経営者団体連盟(日経連)]]などからは将来の優れた労働力の確保という観点から中絶の抑制が主張されるようになった。また、[[宗教団体]]からは、[[生長の家]]と[[カトリック教会]]が優生保護法改廃期成同盟を組織して中絶反対を訴えた。一方、[[羊水診断]]の発展により、障害を持つ胎児が早期に発見されるようになり、[[日本医師会]]は生長の家などの主張には反対しつつ、障害を持つ胎児の中絶を合法化するように提言した。こうした、思惑は違えど様々な改正案の動きがあった。これに対して、[[全国青い芝の会]]などの障害者団体は優生学的理由を前面に出した中絶の正当化に対して、[[中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合|中ピ連]]や[[リブ新宿センター]]などの女性団体からはそれに加え、経済的な理由に基づく中絶の禁止に対する反発が広がるようになった。
 
1962年に[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]の前身である日本社会党当時の宮城県議が[[宮城県]]に不妊手術の強化を要求した。そのため、後身の社会民主党は関係者に謝罪する声明を発表している<ref>{{Cite news |url=https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-2018022200762/?utm_source=webpush&utm_medium=email&utm_campaign=webpush_new1article |title=社民、強制不妊問題で謝罪=旧社会県議が強化要求 |newspaper=ニフティニュース |agency=時事通信 |publisher=NIFTY |date=2018-02-22 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20180223050912/https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-2018022200762/?utm_source=webpush&utm_medium=email&utm_campaign=webpush_new1article |archivedate=2018-02-23}}</ref>。
[[1970年代]]から[[1980年代]]にかけて、両者の間で激しい議論がなされた。[[1972年]][[5月26日]]、政府([[第3次佐藤内閣 (改造)|第3次佐藤改造内閣]])提案で優生保護法の一部改正案が提出された。改正案は経済団体や宗教団体などの意向を反映したもので、以下の3つの内容であった。
 
#母体の経済的理由による中絶を禁止し、「母体の精神又は身体の健康を著しく害するおそれ」がある場合に限る。
56 ⟶ 55行目:
障害者団体からは主に2が、女性団体からは主に1と3が反対の理由となった。法案は一度廃案になったが、[[1973年]]に再提出され、継続審議となった。[[1974年]]、政府は障害者の反発に譲歩し、2の条項を削除した修正案を提出し、[[衆議院]]を通過させたが、[[参議院]]では[[審議未了]]で[[廃案]]となった。
 
朝日新聞によると、「胎児条項に反対する障害者団体と、経済条項削除に反対する女性団体が対立する構図ができたが、双方を持つ障害を持つ女性団体が双方の立場を理解して発言し始めたことにより、女性たち団体は優生保護法がはらむ問題に気づいた。80」とし、1980年代になると、女性団体は[[堕胎罪]]と優生保護法の廃止に加え、「産む/産まないは女が決める」が「胎児の選別[[中絶]]は[[女性の権利]]には含まれない」と主張するようになった<ref>朝日新聞朝刊2019年10月20日、出生前診断 絡み合った歴史 [[柘植あづみ]](明治学院大教授)寄稿</ref>。
 
宗教団体などによる、経済的理由による中絶禁止運動はその後も続いた。[[プロライフ]]を支持するカトリック教徒の[[マザー・テレサ]]は[[1981年]]、[[1982年]]と二度の来日で、中絶反対を訴えている。一方で日本母性保護医協会、日本家族計画連盟などが中絶を禁止するべきでは無いと主張し、地方議会でも中絶合法化維持を求め、優生保護法改正反対の[[請願]]が相次いで採択された。その結果、1981年([[鈴木善幸内閣]])から再度の改正案提出が検討されたが、[[1983年]]5月([[第1次中曽根内閣]])には、[[自由民主党 (日本)|自民党]][[自由民主党政務調査会|政務調査会]]優生保護法等小委員会で時期尚早との結論を出し、国会提出は断念された。
 
函館地裁平成26年6月5日判決では、診療所において被告による羊水検査を受けた原告及びその夫が,その検査結果報告に誤りがあったために原告は中絶の機会を奪われてダウン症児を出産し、同児は出生後短期間のうちにダウン症に伴う様々な疾患を原因として死亡したため、その主張を認め不法行為ないし診療契約の債務不履行に基づき、それぞれに損害賠償金の一部である500万円及び損害遅延金の支払いを認めた<ref>{{Cite web|和書|title=函館地裁平成26年6月5日判決 |url=https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-84256.pdf|website=裁判所|access-date=2025-05-23}}</ref>。その過程において、障害児の堕胎は経済及び母体の健康的理由に該当しないことについても触れられており、現行法上は出生前診断で障害の可能性がわかっただけでは中絶はできない<ref>{{Cite web|和書|title=『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』 河合香織著 |url=https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20180918-OYT8T50094/|website=読売新聞|author=森健|date=2018-09-24|access-date=2025-05-23}}</ref>。
==== 母体保護法への改組 ====
[[1996年]](平成8年)の法改正により、法律名が現在のものに変更されるとともに、[[人権]]上の問題のある規定で、[[優生学]]的思想に基づいて制定されていた、[[障害者]]の強制断種に係る条文が削除され、「優生手術」の文言も「不妊手術」に改められた。
 
=== 配偶者同意による妊娠継続強要問題 ===
なお、優生保護法、母体保護法ともに、[[議員立法]]によって制定・改正が行われてきている。ただし、行政実務上の主務官庁は[[厚生労働省]](子ども家庭局母子保健課)となっている。
現行法では妊婦本人の意向だけでは中絶できず、配偶者の同意が求められる。このため訴訟を恐れる医師により本人が望まない妊娠の継続が強要され、結果、未婚女性が妊娠時の相手の同意が得られず病院から中絶を断られ続けて公園での出産と嬰児遺棄に至った事件が起こっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20210920-OYT1T50257/|title=「男性の同意」ないと中絶できない…相手からの連絡途絶えた未婚女性、公園のトイレで出産し遺棄|publisher=読売新聞|date=2021-09-21|accessdate=2022-03-25}}</ref>。医師は配偶者同意がない中絶に対し、損害賠償が夫側に認められた訴訟もある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sankei.com/west/amp/170426/wst1704260074-a.html|title=兵庫・赤穂市に55万円賠償命令、中絶手術で夫の同意得ず 岡山地裁|publisher=産経新聞|date=2017-04-26|accessdate=2022-03-25}}</ref>。2021年厚生労働省は、婚姻関係が夫婦が事実上破綻し、同意を得ることが困難な場合に限って不要とする運用指針を定めた。<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009783.html|title=性暴力被害による妊娠における人工妊娠中絶の同意書のあり方について|publisher=日医オンライン|date=2021-01-05|accessdate=2022-03-25}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://mainichi.jp/articles/20210313/k00/00m/040/218000c|title=中絶に「配偶者の同意」求めず 婚姻関係破綻なら 厚労省方針|publisher=毎日新聞|date=2021-03-14|accessdate=2022-03-25}}</ref>。妊娠、中絶に関し女性の自己決定権を尊重すべきだとの声もある<ref>{{Cite web|和書|url=https://mainichi.jp/articles/20210313/k00/00m/040/218000c|title=中絶に“配偶者同意”は必要か? 臨床心理士「女性の自己決定権を尊重して」|publisher=abema times|date=2021-09-28|accessdate=2022-03-25}}</ref>、国連人権理事会は、刑法による中絶の犯罪化は国家の不当な介入であり人権侵害と決議し、国連は2011年に日本を含む加盟国に対し、中絶の非犯罪化、および配偶者や親の同意の要件の廃止などを求める勧告をしてると[[種部恭子]]産婦人科医も指摘している<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.toyama.med.or.jp/wp/wp-content/uploads/2013/03/26.2.15_ishindenshin.pdf|title=母体保護法における配偶者の同意と、リプロダクティブヘルス/ライツ|publisher=富山県医師会|accessdate=2022-03-25}}</ref>。医師への調査でも医師側も配偶者同意のない手術のリスクを恐れ、早急に法改正を望む意見があった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.yomiuri.co.jp/medical/20220219-OYT1T50381/|title=中絶「配偶者の同意」要件、産婦人科医7割「撤廃すべき」…DVや強制性交被害の例も|publisher=読売新聞|date=2022-02-20|accessdate=2022-03-25}}</ref>。薬物などを使用し自己中絶した場合にも刑法の堕胎罪が適用されるが、1995年に開かれた世界女性会議において、違法な妊娠中絶を受けた女性に対する懲罰措置を含む法律の再検討を求めることが行動綱領で採択されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/95354|title=<社説>DVと中絶同意 自己決定権も考えたい|publisher=東京新聞|date=2021-04-02|accessdate=2022-03-25}}</ref>。厚労省では立法趣旨は不明と述べている。またG7では日本のみ本規定があり、韓国も以前は同意が必要であったが2020年に撤廃されたと報じられている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_637207bce4b002e882137917|title=中絶、配偶者の同意はなぜ必要?「立法趣旨は不明」な70年以上前の法律に、女性は今も縛られている|author=Nodoka Konishi|publisher=HUFFPOST|date=2022-11-16|accessdate=2023-02-02}}</ref>。離婚したと述べた妻の申し出に従い、夫の同意なく中絶手術をしたことの夫から医師に200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は、2022年12月福岡高裁那覇支部判決で控訴棄却となった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2022/12/17/gender-121/|title=「配偶者同意」なき中絶手術 元夫が医師訴えた控訴審判決は一審と同じく棄却|author=岩崎眞美子|publisher=週間金曜オンライン|date=2022-12-17|accessdate=2023-02-02}}</ref>。一方、平成23年に切迫流産で管理中に大量の性器出血を認めたため妊婦本人の同意を得て人工妊娠中絶をした事例では、夫の同意がなく精神的苦痛により医師からの慰謝料55万円が平成29年判決で認められている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/JAOG-News-No842.pdf|title=人工妊娠中絶で配偶者の同意がなかったため慰謝料が認められた事例|publisher=日本産婦人科医科会報|date=2021-06-01|accessdate=2023-02-02}}</ref>。
 
==== 被害者救済母体保護法への取組と社会の対応改正以降 ====
[[1996年]](平成8年)の法改正により、法律名が現在のものである「母体保護法」に変更されるとともに、[[人権]]上の問題のある規定で、[[優生学]]的思想に基づいて制定されていた、[[障害者]]の強制断種に係を認める条文が削除され、「優生手術」の文言も「不妊手術」に改められた。なお、優生保護法、母体保護法ともに、[[議員立法]]によって制定・改正が行われてきている。ただし、行政実務上の主務官庁は[[厚生労働省]](子ども家庭局母子保健課)となっている
2018年(平成30年)2月22日、[[日本社会党]]の後継政党である[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]党首[[吉田忠智]]は、日本社会党の[[宮城県議会]]議員が、優生手術を推進したことについて謝罪した<ref>{{Cite web|title=旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について|publisher=[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]|date=2018-02-22|url=http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について/|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190413025151/http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について/|archivedate=2019-04-13}}</ref>。
 
2018年(平成30年)2月22日、[[日本社会党]]の後継政党である[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]党首[[吉田忠智]]は、日本社会党の[[宮城県議会]]議員が、優生手術を推進したことについて謝罪した<ref>{{Cite web|和書|title=旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について|publisher=[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]|date=2018-02-22|url=http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について/|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190413025151/http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/02/22/旧優生保護法にもとづく不妊手術の強制について/|archivedate=2019-04-13}}</ref>。
2019年(平成31年)4月24日、「[[旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律]]」が参議院にて全会一致で成立・施行された。被害者に対する「おわび」及び一時金の支給を定めた(法が施行されてから五年以内に審査を経る)<ref>{{Cite web|title=旧優生保護法救済法 成立|publisher=[[日本放送協会]]|date=2019-04-24|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190424/k10011894321000.html|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190424101152/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190424/k10011894321000.html|archivedate=2019-04-24}}</ref>。[[内閣総理大臣]][[安倍晋三]]が「[[日本国政府]]としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます」と内閣総理大臣談話を発表した<ref>{{Cite web|title=旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の成立を受けての内閣総理大臣の談話|publisher=首相官邸|date=2019-04-22|url=https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20190424danwa.html|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190424110811/https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20190424danwa.html|archivedate=2019-04-24}}</ref>。
 
2019年(平成31年)4月24日、「[[旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律]]」が参議院にて全会一致で成立・施行された。被害者に対する「おわび」及び一時金の支給を定めた(法が施行されてから五年以内に審査を経る)<ref>{{Cite web|和書|title=旧優生保護法救済法 成立|publisher=[[日本放送協会]]|date=2019-04-24|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190424/k10011894321000.html|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190424101152/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190424/k10011894321000.html|archivedate=2019-04-24}}</ref>。[[内閣総理大臣]][[安倍晋三]]が「[[日本国政府]]としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます」と内閣総理大臣談話を発表した<ref>{{Cite web|和書|title=旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の成立を受けての内閣総理大臣の談話|publisher=首相官邸|date=2019-04-22|url=https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20190424danwa.html|accessdate=2019-04-24|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190424110811/https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/discourse/20190424danwa.html|archivedate=2019-04-24}}</ref>。
2019年4月25日時点で、各都道府県に、一時金支給に関する[https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000505034.pdf 受付・相談窓口]が設置されている<ref>{{Cite web|url=https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000505034.pdf|title=強制不妊救済法 都道府県 受付・相談窓口一覧|accessdate=2019年4月25日|publisher=厚生労働省}}</ref>。
 
2019年4月25日時点で、各都道府県に、一時金支給に関する[https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000505034.pdf 受付・相談窓口]が設置されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000505034.pdf|title=強制不妊救済法 都道府県 受付・相談窓口一覧|accessdate=2019年4月-04-25|publisher=厚生労働省}}</ref>。
 
2019年([[令和]]元年)5月、[[仙台地方裁判所]]において「旧優生保護法は違憲である」との判決が出ているが、[[国家賠償]]については認めていない<ref name=":0" />。
77 ⟶ 78行目:
 
2020年(令和2年)6月、衆参両院の[[厚生労働委員会]]が旧優生保護法の立法経緯や、被害状況の調査を開始する方針を固めた<ref>{{Cite news|url=https://jp.reuters.com/article/idJP2020060901002730|title=強制不妊、国会が調査へ|agency=[[共同通信社]]|date=2020-06-10|accessdate=2020-06-10}}</ref>。
 
2023年(令和5年)4月、[[こども家庭庁]]の設置に伴い、本法の所管が厚生労働省からこども家庭庁(成育局母子保健課)に移管された<ref>
令和4年6月22日付け閣副第689号内閣官房こども家庭庁設立準備室「[https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000991712.pdf こども家庭庁設置法、こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律及びこども基本法の公布について]」</ref>。
 
== 構成 ==
*第1章 - 総則(第1条~第2条)
**[[不妊手術]]および[[人工妊娠中絶]]に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的としていると記述されている。
**旧優生保護法では、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とすると記述されていた。
*第2章 - 不妊手術(旧法では、優生手術。第3条~第13条)
**旧法では、本人または配偶者の遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患もしくは[[ハンセン病|癩(らい)疾患]]、血族の遺伝性精神病などを理由により優生手術(断種)を行うことができた。また、特定の遺伝性精神・身体疾患に対し、医師がその疾患の遺伝を防止するため公益上必要であると判断した場合、都道府県優生保護審査会の審査を経て、(本人または配偶者の意向に関係なく)優生手術を行うものとされた。
**現法では、[[不妊手術]]は審査を受けず、本人と配偶者の同意で行えると明記され、第4条から第13条まで法文が削除されている。
*第3章 - 母性保護(第14条~第15条)
**第14条では、指定医師は次のいずれかに該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て{{refnest|group="注釈"|配偶者の同意がなくても人工妊娠中絶できる例外は、配偶者が(1)死亡、(2)だれかわからない、(3)意思を表示できない、の3つ。2013年厚生労働省は、配偶者のいない未婚の場合、同意は不要との見解を示した。一方で医師が同意書を求める場合は多く、それは支払いの保証、事後に訴えられるのを回避する、女性の状況が法の例外に当たるかどうか確認のしようがない、などの理由によるという。<ref>{{Cite news |url=https://www.asahi.com/articles/DA3S14959663.html|title=(フカボリ)中絶、相手の同意不要だったが 「病院は必要と」、手術できず遺棄:朝日新聞デジタル|newspaper=|date=2021-07-02}}</ref>}}、人工妊娠中絶を行うことができると定めている。
**第14条では、指定医師は次のいずれかに該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、[[人工妊娠中絶]]を行うことができると定めている。
**# 妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
**# 暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗しくは拒絶することができない間に[[姦淫]]されて[[妊娠]]したもの
*第4章 - 削除(旧法では、都道府県優生保護審査会)
*第5章 - 削除(旧法では、優生保護相談所)
96 ⟶ 100行目:
 
== 免許・資格 ==
*[[母体保護法指定医師]]<ref name=":2" />
*[[受胎調節実地指導員|受胎調節実地指導員(リプロヘルス・サポーター)]]<ref>[https://www.pref.tochigi.lg.jp/e06/welfare/kodomo/jutaichosetsu.html 受胎調節実地指導員の指定等について] 栃木県</ref>
*[[受胎調節実地指導員]]
 
== 表記の不一致 ==
105 ⟶ 109行目:
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|group=注釈}}
 
=== 出典 ===
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
* [[優生保護法]](前身)
* [[国民優生法]](前身)
* [[優生学]]
* [[人工妊娠中絶]]/[[プロチョイス]]
* [[ブルーボーイ事件]]/[[性別適合手術]]
* [[催奇性]]
* [[ブルーボーイ事件]]
* [[不幸な子どもの生まれない運動]]
* [[少子化]]
* [[避妊具]]/[[避妊]]
 
== 外部リンク ==
*{{Egov law|323AC1000000156}}
*[https://www.facebook.com/神経筋疾患ネットワーク-744608398962043/ 神経筋疾患ネットワーク]
*[http://www.arsvi.com/d/a08001.htm 年表:優生保護法・母子保健法・他] - [[立命館大学]]グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点
 
{{性道徳}}
{{law-stub}}
{{Normdaten}}
 
{{デフォルトソート:ほたいほこほう}}
[[Category:日本の法律]]
134 ⟶ 138行目:
[[Category:妊娠中絶]]
[[Category:1948年の法]]
[[Category:医療日本史]]
[[Category:医療倫理]]
[[Category:生命倫理学]]