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{{ページ番号|date=2015年9月}}
{{実名|否|犯人の男Mと被害者の女性職員A}}
{{Infobox 事件・事故
|名称= 甲府信金OL誘拐殺人事件
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* [[甲府地方検察庁]]
}}
'''甲府信金OL誘拐殺人事件''' (こうふしんきんオーエルゆうかいさつじんじけん)は[[1993年]]([[平成]]5年)[[8月10日]]に[[山梨県]][[甲府市]]で発生した[[身代金]]目的[[誘拐]][[殺人罪 (日本)|殺人]]事件
男M(当時38歳)が身代金を得る目的で、[[甲府信用金庫]]の[[OL|女性職員]]A(当時19歳)を誘拐した上で殺害し、死体を[[富士川]]に遺棄した。Mは刑事裁判で[[日本における死刑|死刑]]を[[求刑]]されたが、[[審級|第一審]]([[甲府地方裁判所|甲府地裁]])・[[控訴]]審([[東京高等裁判所|東京高裁]])とも[[懲役#無期懲役|無期懲役]]の[[判決 (日本法)|判決]]を言い渡され、[[1996年]](平成8年)に無期懲役が[[確定判決|確定]]している。
== 事件の
=== 事件発生から遺体発見まで ===
被害者女性A(当時19歳)は、甲府市にある[[甲府信用金庫]]の支店に勤務する新人[[OL]]であった。事件当日の窓口業務が終了する時間になった時、本店を経由して地元マスメディアを名乗る男(犯人M)から被害者Aを指名して取材依頼がくる。これに対し、Aと彼女の上司は応諾し、Aは勤務時間終了後、電話の男が差し向けたタクシーで待ち合わせ場所の[[山梨県小瀬スポーツ公園|小瀬スポーツ公園]]に向かったが、それを最後に行方不明となる。
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翌日、Aの父親が帰宅していないことを支店に問い合わせた時、身代金を要求する1本の電話が入ったことから誘拐が発覚。支店側はすぐさま[[山梨県警察|山梨県警]]に通報、山梨県警は犯人を刺激しないよう非公開としつつ、その後もかかってくる犯人からの電話に[[逆探知]]で犯人の居場所を特定しようとする。
犯人は映画「[[天国と地獄 (映画)|天国と地獄]]」の手法で[[中央自動車道]]の104[[距離標|キロポスト]]から身代金4,500万円を投下するよう指示するも身代金奪取に失敗。しかし、山梨県警は身代金受取場所に遅れるなどのミスを犯したほか、犯人も1
=== 情報公開から犯人逮捕まで ===
遺体発見後の同日18時41分に山梨県警とマスメディアは[[報道協定]]を解除し、公開捜査に踏み切る。同時に遺体を発見した[[静岡県警察|静岡県警]]と共に合同捜査本部を設置した。
そこで逆探知装置に残っていた声をもとに音声・音響分野の研究を行っている[[鈴木松美]]に[[スペクトログラム|声紋]]鑑定を依頼、鈴木の声紋鑑定により以下のことが割り出された。これらは実際に逮捕されたMとほぼ一致しており、鈴木の声紋鑑定が正確であったことが
{| class="wikitable"
! 特徴 !! 鈴木による鑑定 !! 実際の犯人M
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|-
|}
さらに鈴木は、当時[[
鈴木による鑑定の内容が連日報道され、また鈴木自身も作業場を公開したりテレビ出演する等協力の姿勢を見せた中、犯人の男M(当時38歳)の知人である建設会社社長が鈴木による鑑定内容と音声を報道で聞いて間違いないと判断し、Mを呼び出し[[自首]]するよう説得する。Mは当初否認していたが説得に折れ、8月24日の早朝、建設会社社長に連れられて山梨県警所轄の警察署に出頭し、逮捕された<ref name="asahitv2017" />。
=== 経緯 ===
犯人Mは、販売実績アップのために数多くでっち上げた架空契約の支払いや、愛人であった[[大韓民国#国民|韓国人]][[ホステス]]との交際費等で約7000万円の借金を抱えており、その返済目的で犯行に及んだとされる。また、Mが被害者Aを指名した理由は支店を訪れた際、名札をつけていたAが当時デビューしたばかりの女優・歌手と同姓同名だったため名前を覚えており、その女性を誘拐の対象にし、犯行に及んだ。先輩職員が名札をつけていない中、新入社員のAだけまじめに名札をつけていたこともあり、これが仇になってしまったのである。
== 刑事裁判 ==
[[甲府地方裁判所]]で開かれた[[審級|第一審]]の[[公判]]で、[[被告人]]として[[起訴]]されたMは犯行を全面に認めた。そのため、[[自首]]の有効性が争点となった。[[弁護人]]は[[自首]]は有効であること主張する一方、[[甲府地方検察庁|甲府地検]]は既にMがこの男と特定(さらに境川PAの駐車していた自動車のナンバーを控えており、そのうちの1台がMの自宅に停まっていたなど割り出されていた<ref name="asahitv2017" />)されており、[[自首]]は無効という理由で[[日本における死刑|死刑]]を[[求刑]]した。そして審議の結果、甲府地裁は[[自首]]の成立を否定したものの、[[懲役#無期懲役|無期懲役]]の[[判決 (日本法)|判決]]を言い渡した。なお、[[主文]]宣告は後回しだった。
死刑を求める甲府地検と、有期懲役刑を求めるMの弁護人がそれぞれ、判決を不服として[[東京高等裁判所]]に[[控訴]]した。しかし
本判決に続き、同年12月には[[名古屋アベック殺人事件]]の控訴審判決([[名古屋高等裁判所|名古屋高裁]])、翌1997年(平成9年)1月には[[つくば妻子殺害事件]]の控訴審判決(東京高裁)と、検察官が死刑を求刑していた事件で無期懲役の控訴審判決が言い渡される事例{{Efn2|前者は第一審の死刑判決を破棄自判して無期懲役を言い渡したもので、後者は本事件と同様、第一審に続いて無期懲役を言い渡したものである{{Sfn|読売新聞社会部|2006|pp=31-32}}。}}が相次いでいたが、いずれも上告はなされていなかった{{Sfn|読売新聞社会部|2006|pp=31-32}}。当時[[最高検察庁]]刑事部長を務めていた[[堀口勝正]]は、当時の検察内部の事情について「死刑をなるべく回避するという裁判の傾向に対し、上告しても仕方がない、というあきらめ」が根を張っていたことを証言している{{Sfn|読売新聞社会部|2006|p=32}}。このような被告人に対する[[量刑]]が寛大になる「'''寛刑化'''(かんけいか)」の傾向、およびそれに端を発する死刑求刑に謙抑的な検察の姿勢が変化するきっかけとなったのは、1997年2月に[[福山市独居老婦人殺害事件]](過去に強盗殺人を犯して無期懲役に処された男が、仮釈放中に再び強盗殺人を犯した事件)の被告人に対し、[[広島高等裁判所|広島高裁]]が言い渡した無期懲役の控訴審判決、およびそれに対する検察側の上告であった{{Sfn|読売新聞社会部|2006|pp=32-33}}。
{{See also|名古屋アベック殺人事件#確定後の量刑傾向|福山市独居老婦人殺害事件#連続上告|国立市主婦殺害事件#東京高検が死刑適用を求め上告}}
== 影響 ==
=== テレビ番組 ===
同年8月26日に放送される予定であった[[タモリ]]司会によるドラマ『[[If もしも]]』の「誘拐するなら男の子か女の子か」が放送中止となった。
== 関連作品 ==
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=== テレビ番組 ===
* [[テレビ朝日]]
* フジテレビ『世界の何だコレ!?ミステリー』 - 2023年9月27日放送回で、鈴木松美が犯人の音声を分析し、事件解決につなげるまでの経緯を取り上げた。息子で、現所長の鈴木創が当時についての証言を交えつつ放送された。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}
* {{Cite book|和書 |title=ドキュメント 検察官 揺れ動く「正義」 |publisher=[[中央公論新社]] |date=2006-09-25 |ref={{SfnRef|読売新聞社会部|2006}} |author=[[読売新聞]][[社会部]] |series=[[中公新書]] |isbn=978-4121018656 |ncid=BA78454950 |chapter=第一章 被害者を前に > 7 連続上告 |issue=1865 |id={{国立国会図書館書誌ID|000008318074}}・{{全国書誌番号|21130273}}}}
== 関連項目 ==
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* [[司ちゃん誘拐殺人事件]] - 本事件から13年前の[[1980年]]([[昭和]]55年)8月に山梨県で発生した身代金目的誘拐殺人事件。[[東八代郡]][[一宮町 (山梨県)|一宮町]](現:[[笛吹市]])在住の5歳男児(保育園児)が犠牲となった事件で、加害者の男は第一審で死刑判決を言い渡されたが、控訴審で無期懲役(原判決を破棄[[自判]])の判決を言い渡され、1985年(昭和60年)に無期懲役が確定している。
{{デフォルトソート:こうふしんきん
[[Category:日本の誘拐事件]]
[[Category:平成時代の殺人事件]]
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