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{{転送|臨床試験|日本の医薬品にとどまらない、臨床試験一般の説明|:en:clinical trial}}
'''治験'''(ちけん)とは、'''臨床試験'''({{lang-en-short|Clinical trial}})のうち未承認や適応外の[[医薬品]]もしくは[[医療機器]]の製造販売{{efn2|[[医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律]](薬機法)第2条13項が定義する「製造販売」には、委託製造や輸入、あるいは賃貸ないしは授与までが含まれる。}}に関して、[[医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律]](薬機法)上の[[薬事承認|承認]]を得るために行われる試験である<ref>「[http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%e6%b2%bb%e9%a8%93 治験]」、2009年1月16日改訂版、薬学用語解説、社団法人日本薬学会</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.okazakihospital.jp/category/assistance/cr/public_people1/ |title=一般の方へ―臨床研究とは― |publisher =岡崎市民病院 |accessdate=2022-06-05}}</ref>。臨床試験は、[[臨床研究|ヒトを対象とした医学系研究]]([[臨床研究]])のうち、医薬品や治療などにより人体に変化を伴う研究([[臨床研究#介入研究|介入研究]])を行うものを指す<ref name="ganjoho">{{Cite web|和書|url=https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/medical_treatment/ct/ct_details.html |title=研究段階の医療(臨床試験、治験など) 詳細情報 |publisher =国立研究開発法人国立がん研究センター |accessdate=2022-06-05}}</ref><ref name="ganjoho_summary">{{Cite web|和書|url=https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct_summary.html |title=研究段階の医療(臨床試験、治験など) 基礎知識 |publisher =国立研究開発法人国立がん研究センター |accessdate=2022-06-05}}</ref>。治験以外の臨床試験は、医薬品や医療機器、外科的手技などの治療を試験的に行い、有効性や安全性を調べることを目的とする<ref name="ganjoho_summary" /><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.ut-crescent.jp/patients/chikentoha/ |title=臨床試験について |publisher =東京大学医学部附属病院 臨床研究推進センター |accessdate=2022-06-05}}</ref>。ヒトを対象にする前に[[in vitro|細胞]]や[[実験動物]]を用いた[[非臨床試験]]で検討し、有効性が期待でき、安全性にも問題がないと考えられた場合に行われる<ref>{{Cite web|和書|title=非臨床試験 - 薬学用語解説 - 日本薬学会|url=https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E9%9D%9E%E8%87%A8%E5%BA%8A%E8%A9%A6%E9%A8%93|website=www.pharm.or.jp|accessdate=2022-03-19}}</ref>。
治験は[[薬事承認]]を取得することが目的であるため、製薬企業が医師に依頼をする「企業治験」が行われてきた<ref name="ganjoho" /><ref name="ganjoho_summary" />。2003年に[[医薬品医療機器等法|薬事法]]が改正され、「医師主導治験」として医師が主体となって治験を行えるようになった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/tr/tr-words.html |title=臨床試験の基本用語 |publisher =東京大学医科学研究所TR・治験センター |accessdate=2022-06-05}}</ref><ref name="jmacct" />。それにより医師自らが国内未承認薬や[[適応外処方]]薬の[[薬事承認]]を取得して、臨床の場で使うことが可能となった<ref name="ganjoho" /><ref name="jmacct">{{Cite web|和書|url=http://www.jmacct.med.or.jp/clinical-trial/about.html |title=医師主導治験とは |publisher =日本医師会 |accessdate=2022-06-05}}</ref>。
治験には3つの段階があり、各段階で安全性や有効性を確認しながら進めていく<ref name="ganjoho" /><ref name="osuka">{{Cite web|和書|url=https://satoru-blog.com/post-397/ |title=どんな論文が本当に治療効果を証明しているのか? |publisher =大須賀覚 |date=2019-06-20 |website=がん治療で悩むあなたに贈る言葉 |accessdate=2022-03-19}}</ref>。この3段階を、第Ⅰ相(フェーズ1)、第Ⅱ相(フェーズ2)、第Ⅲ相(フェーズ3)と呼ぶ<ref name="ganjoho" /><ref name="osuka" />。第Ⅰ相よりも第Ⅱ相、第Ⅱ相よりも第Ⅲ相のほうが治療法の開発が進んだ段階にあり、より承認に近い状況にある<ref name="ganjoho" /><ref name="osuka" />。
==治験の流れ==
治験は第I相から第Ⅲ相までの3段階で行われることが多い<ref>[http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/chiken_02.html 日本製薬工業協会 治験とは>2.治験のルール「GCP」]</ref>。
ただし、抗がん剤(特に細胞傷害性の抗がん剤)に関しては、第I相臨床試験は既知の予想される大きな不利益があるために通常がん患者を対象に行われ、
第II相臨床試験に関しても国際規準RECIST(レシスト)による腫瘍縮小効果(奏効率)が検討されたり、強い副作用や、生命倫理問題<ref>{{Cite journal|和書|author=関根郁夫
=== <span id="phase1trial"></span>第I相試験(フェーズ I)===
自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態([[吸収 (薬理学)|吸収]]、分布、[[代謝]]、[[排泄]])や安全性(有害事象、[[副作用]])について検討することを主な目的とした探索的試験である。[[動物実験]]の結果をうけて[[ヒト]]に適用する最初のステップであり、安全性を検討する上で重要なプロセスである。しかし、手術や長期間の経過観察が必要な場合や、抗がん剤などの投与のようにそれ自体に事前に副作用が予想されるものは、外科的に治療の終わった患者(表面的には健常者)に対して、補助化学療法としての試験を行うことがある。また、抗がん剤の試験の場合は、次相で用いる用法・用量の限界を検討することも重要な目的となる。
=== <span id="phase2trial"></span>第II相試験(フェーズ II)===
第II相試験は第I相の結果をうけて、比較的軽度な少数例の[[患者]]を対象に、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う試験である。多くは、次相の試験で用いる用法・用量を検討するのが主な目的であるが、有効性・安全性を確認しながら徐々に投与量を増量させたり、プラセボ群を含む3群以上の用量群を設定して[[用量反応性]]を検討したり、その試験の目的に応じて様々な試験デザインが採用される。探索・検証の両方の目的を併せ持つことが少なくないため、探索的な前期第II相と検証的な後期第II相に分割することもある。その他にも、第I/II相として第I相と連続した試験デザインや、第II/III相として第III相に続けて移行する試験デザインもある。
=== <span id="phase3trial"></span>第III相試験(フェーズ III)===
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==インフォームド・コンセント==
{{main|インフォームド・コンセント}}
治験
==治験に関与する組織・職種==
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治験責任医師、治験分担医師、治験協力者などの種類があり、これらの業務を行うためには、治験毎にあらかじめ[[治験審査委員会]]の承認を得なければならない。
;治験責任医師・治験分担医師
:治験責任医師は、治験の実施に関して責任を有する[[医師]]または[[歯科医師]]
:日本で保険医は、[[厚生労働大臣]]の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、又は処方してはならない(保険医療機関及び保険医療養担当規則第19条)とされているが、1996年(平成8年)4月の改正法施行により、治験の場合は同規定を適用しない旨が法文上明記された。同改正により治験に係る診療が[[特定療養費]](2006年(平成18年)10月以降は[[保険外併用療養費]])の支給対象となった{{efn2|治験に係る診療を特定療養費としたのは、治験に参加している患者の診療に要する費用について、[[医療保険]]制度と治験依頼者の適切な費用分担を図る観点から、特定療養費の支給になじむ部分について医療保険制度から委託することとするとともに、特定療養費の支給対象となる診療の範囲の明確化を行ったものである。明確化に当たっては、保険請求上の取扱いの簡素化を図り、かつ恣意性を排除する観点から、[[診療報酬]]点数表上の項目によることとした。具体的には、治験期間内に実施される全ての検査及び画像診断並びに当該治験の対象とされる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る投薬及び注射に要する費用は治験依頼者の負担とし、それ以外の費用は、特定療養費の支給対象として取り扱うこととした(平成9年1月31日事務連絡各都道府県民生主管部(局)保険・国民健康保険主管課(部)あて厚生省保険局医療課)。}}。
;治験協力者(治験コーディネーター、CRC:Clinical Research Coordinator)
:治験責任医師又は治験分担医師の指導の下、治験業務に協力する者のこと。通常、[[看護師]]、[[薬剤師]]、[[臨床検査技師]]などの医療関係者が治験協力者となる。[[インフォームド・コンセント]]取得補助、治験のスケジュール管理、治験中の患者のサポート、症例報告書作成補助など、治験において治験協力者
;治験事務局
:[[GCP]]に基づいて治験実施にまつわる様々な事務を担当する組織。医療機関の長により指名される。
;<nowiki>治験施設支援機関
:治験実施施設である医療機関と契約し、医療機関における煩雑な治験業務を支援する組織。
===製薬企業(治験依頼者)側===
;<nowiki>開発業務受託機関
:製薬企業における新薬の開発、特に治験実施に係る業務を代行する機関。
;<nowiki>モニター
:治験が治験実施計画書や各種法令等を遵守し、科学的・倫理的に行われていることを確認するため、治験依頼者が任命する担当者。カルテなど、治験に関係する医療記録を閲覧することが認められており、被験者の人権、安全及び福祉が保護されていること、治験責任医師又は治験分担医師から報告された治験データが正確かつ完全であることを確認する義務を負う。
==二重盲検試験==
{{See also|ランダム化比較試験}}
治験では、被験薬の効果を検討するために、
二重盲検試験を実施する場合、被験薬と対照薬は製造後(医療機関に納入される前)、治験依頼者から独立した第三者機関(割付責任者)にて、1名分(または1回分)ずつ、全く同じ外観のパッケージに入れられ、1個1個にそれぞれ固有の番号がつけられる。この作業
===問題点===
[[連邦食品・医薬品・化粧品法]]は、1962年から薬剤の有効性の概念を設け、2回の[[ランダム化比較試験|適切な対照を置いた臨床試験]]によって有効性が示されれば
アメリカ食品医薬品局 (FDA) は
[[抗うつ薬]]ではうつ病の適応があるが、医師が知覚した変化の印象を検出するための全般印象評価尺度-改善度(CGI-I)にて違いを検出できず、統計的に有意な差があるだけでなく、その差に臨床的に意味があるかどうかを医薬品の承認の際に検討すべきだとする指摘がある<ref name="pmid25979317">{{cite journal|last1=Moncrieff|first1=Joanna|last2=Kirsch|first2=Irving|title=Empirically derived criteria cast doubt on the clinical significance of antidepressant-placebo differences|journal=Contemporary Clinical Trials|volume=43|pages=60–62|year=2015|pmid=25979317|doi=10.1016/j.cct.2015.05.005|url=https://doi.org/10.1016/j.cct.2015.05.005}}</ref>。
不正や副作用の隠蔽も問題となっている。2013年には高血圧の治療薬における[[ディオバン事件]]が問題となった。ランダムではなく効果の出そうな患者を選択して
==臨床研究登録制度==
従来の臨床試験はその実施中に詳細を公表されることなく、結果報告の時点でその実施要領と合わせて明らかにされることが多かったため、「都合の良い結果が出たものだけが論文発表され、そうでないものが表に出てこない」(出版バイアス)可能性が指摘されてきた。そのため、試験実施者にとって都合の悪そうな情報が最終段階まで研究されない、あるいは研究されても報告されない、と
これらの背景を受けて、医学雑誌編集者国際委員会 ([http://www.icmje.org/ ICMJE]) は2004年9月に「生医学雑誌への投稿のための統一規定 (Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals: Writing and Editing for Biomedical Publication)」を提唱し、医学雑誌に投稿される臨床試験について事前にプロトコル(手順書)の登録・公開を義務付けるように各誌に呼びかけた。これを受けて北米・欧州・日本に複数の臨床試験登録機関が発足し、日本国内でも2005年より大学病院医療情報ネットワーク ([http://www.umin.ac.jp/ctr/ UMIN]) や(財)日本医薬情報センター ([http://www.clinicaltrials.jp/user/cte_main.jsp JAPIC]) による運用が始まり、翌2006年には日本医師会も同様の取り組みを行っている。
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'''出典'''
{{
==関連項目==
{{div col|small=yes|colwidth=20em}}
*[[:en:List_of_clinical_trial_registries|臨床試験登録機関一覧]] {{small|(英語版)}}
* [[臨床研究倫理]]
* [[治験審査委員会]]
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* [[QMS省令]]
* [[人体実験|ヒトを対象とした研究]]
* [[ヘルシンキ宣言]]
* [[疫学]]
* [[ドラッグ・ラグ]]
* [[国際医学団体協議会]]
* [[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-)]] - 治療薬の新規開発ならびに既存の薬の転用に向けて多方面で治験が行われている。
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==外部リンク==
* [
* [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/chiken.html 治験] - 厚生労働省
* [https://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm UMIN臨床試験登録システム] - 大学病院医療情報ネットワーク
* [https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct03.html 臨床試験の詳しい情報(リンク集)] - 国立研究開発法人国立がん研究センター
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