「長野無楽斎槿露」の版間の差分

2022年5月14日 (土) 19:21時点における版

2025年5月28日 (水) 12:15時点における最新版

(4人の利用者による、間の47版が非表示)

1行目:

'''長野 無楽斎 槿露'''（ながの むらくさい きんろ）は、[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]-から[[江戸時代]]前期の[[剣術|剣客]]。[[林崎甚助|林崎甚助重信]]、[[田宮重正|田宮平兵衛重正]]に[[居合術]]を学んだとされる。[[無楽流]]居合<ref group="注" name="example22">自身は林崎流・田宮流・夢想流等と称していた様である。『日本武道大系 第3巻』p494『名古屋叢書 第24巻』p257『日本武道大系 第9巻』p182</ref>の流祖。

十郎左衛門永野無楽斎正次<ref group="注" name="example10example">「会津藩教育考」p300,</ref>、正次<ref>沼澤系の伝書に永野无(（無)）楽斎正次とある。「『林崎明神と林崎甚助重信」』p78,p96,「『秋田藩の武術」』p185,

</ref>、長野無楽入道槿露斎<ref group="注" name="example10">[[無双直伝英信流|長谷川英信流]]など</ref>とも。

</ref>とも。一説に[[彦根藩]]家老、[[長野業実|長野十郎左衛門業真(]]業実[[長野業実|)]]<ref name="example18">？ - 慶安2年(1649年)『侍中由緒帳』に天正8(1580)年小姓を務めたとあるので、生年は1560年代か。</ref>と云う<ref name="example1">「居合400年史考」「林崎甚助重信の門人たち」　</ref>。「上毛剣術史」では[[上野長野氏|上州長野氏]]の一族、[[鷹留城]]主長野業通の子、長野新吾郎業利と云う<ref name="example32">「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p472, 出典不明</ref>。又箕輪城落城後、[[上杉景勝]]に仕え[[越後国|越後]][[会津]][[米沢市|米沢]]と転住した[[上泉氏|上泉一族]]と共に奥州に移ったのではとも云う<ref name="example2">「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p479,</ref>。又永禄6(1563)年<ref name="example25">別説に永禄9(1566)年</ref>[[箕輪城]]落城後、玉出に赴き[[林崎甚助]]の居合を学び、工夫を加えて一家をなしたとも云う<ref name="example24">「日本武道大系 第3巻」p518,出典不明</ref>。

</ref>とも。一説に[[彦根藩]]家老、[[長野業実|長野十郎左衛門業真(]]業実（[[長野業実|)業実]]）<ref group="注" name="example18">？? - 慶安2年(1649（1649年)）『侍中由緒帳』に『天正8(1580)年（1580年）小姓を務めた』とあるので、生年は1560年代か。</ref>と云いう<ref name="example1">「『本朝武藝小傳』『会津干城伝』『会津藩教育考』『居合400年史考」「』『林崎甚助重信の門人たち」　』</ref>。「上毛剣術史」ではまた一説に[[上野長野氏|上州長野氏]]の一族、[[鷹留城]]主長野業通の子、長野新吾郎業利と云ういい<ref name="example32">「『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」』p472, 、出典不明</ref>。又、箕輪城落城後、[[上杉景勝]]に仕え[[越後国|越後]]・[[会津]]・[[米沢市|米沢]]と転住した[[上泉氏|上泉一族]]と共に奥州に移ったのではとも云いう<ref name="example2">「『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」』p479,</ref>。又また永禄6(1563)年（1563年）<ref group="注" name="example25">別異説に永禄9(1566)年（1566年）</ref>[[箕輪城]]落城後、玉出に赴き[[林崎甚助]]の居合を学び、工夫を加えて一家をなしたとも云いう<ref name="example24">「『日本武道大系 第3巻」』p518,、出典不明</ref>。

弟子に[[林崎新夢想流|一宮左太夫照信]]<ref name="example16">？(1565年以前) - 慶長5年(1600年)？「会津干城伝」「会津藩教育考」「会津剣道誌」[[新庄藩]]の伝承では、伏見で戦死したのは誤りで元和8年(1622年)[[鳥居忠政]]に従い[[山形藩|山形]]に移り、忠政の二男[[戸沢定盛|定盛]]が寛永2年(1625年)新庄藩主[[戸沢政盛]]の養子になった折、定盛付きの臣として門弟谷小左衛門季正(秀正・愛正)と共に新庄藩に移り250石とある。「林崎明神と林崎甚助重信」p40,p133,p295,「新庄古老覚書」p100,p141,又お広間番を努めていたが、無作法の事があって知行召上げられ、天童に去ったが、野山を歩き狼に喰われたと伝えられた。「続 かつろく風土記」p392,</ref>、[[夢想流|上泉孫四郎義胤]](孫次郎、上泉大学秀秋、岡村新之丞、石森権右衛門秀秋、上泉権右衛門秀信、[[民弥流|民弥権右衛門宗重]])<ref name="example17">？(天正頃)- 正保4年(1647年)尾張[[徳川義直]]に200石で仕官。[[上泉信綱]]の孫(信綱三男・石森源左衛門行綱の子)。父が越後で亡くなった後、石森姓から上泉姓に復し、米沢移国時に一族から離れて他国すという。「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p479,</ref>、[[無楽流|沼澤甚左衛門]](甚五左衛門)長政<ref name="example15">天正5年(1577年) - 明暦元年(1655年)「会津日新館志」「全国諸藩剣豪人名事典」</ref>、白井庄兵衛(荘兵衛)成近<ref name="example19">？ - 寛永14年(1637年)？「武芸者の祈り─庄内藩の田宮流居合 ─ 」</ref>、羽田九郎兵衛永泰、蟻川庄左衛門家続、上坂半左エ門安久<ref name="example26">「仙台藩武術史研究 第3号」</ref>、[[無双直伝英信流|百々軍兵衛光重]]。

弟子に[[林崎新夢想流|一宮左太夫照信]]<ref group="注" name="example16">？(1565?（1565年以前)） - 慶長5年(1600（1600年)？「）? 『会津干城伝」「』『会津藩教育考」「』『会津剣道誌」』[[新庄藩]]の伝承では、伏見で戦死したとするのは誤りで、元和8年(1622（1622年)）[[鳥居忠政]]に従い[[山形藩|山形]]にへ移り、忠政の二男[[戸沢定盛|定盛]]が寛永2年(1625（1625年)）[[新庄藩]]主[[戸沢政盛]]の養子になった折、定盛付きの臣として門弟谷小左衛門季正(（秀正・愛正)）と共に新庄藩にへ移り250石とある。「『林崎明神と林崎甚助重信」』p40,p133133,p295,「295、『新庄古老覚書」』p100,p141,又お141、また御広間番を努務めていたが、無作法の事があって知行を召し上げられ、[[天童に藩|天童]]へ去ったが、野山を歩き狼に喰われたと伝えられた。「『続 かつろく風土記」』p392,</ref>、[[夢想流|上泉孫四郎義胤]](（孫次郎、上泉大学秀秋、岡村新之丞、石森権右衛門秀秋、上泉権右衛門秀信、[[民弥流|民弥権右衛門宗重]])）<ref group="注" name="example17">？(天正頃4年から5年（1576年 - 1577年)? - 正保4年(1647（1647年)）12月11日、七十余歳、名古屋に於いて没した。（名古屋上泉文書による?）『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝』p483、尾張[[徳川義直]]に200石で仕官。[[（名古屋上泉文書）『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝』p481,507、上泉信綱]]の孫(（信綱三男・石森源左衛門行綱の子)）。父が越後で亡くなった後、石森姓から上泉姓に復し、米沢移国時に一族から離れて他国すという。「（米沢上泉文書）『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」』p479,、また、尾張上泉家は本家にはばかってか「こういずみ」と発音する。『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝』p483</ref>、[[無楽流|沼澤甚左衛門]](（甚五左衛門)）長政<ref group="注" name="example15">天正5年(1577（1577年)） - 明暦元年(1655（1655年)「）『会津日新館志」「』『全国諸藩剣豪人名事典」』</ref>、白井庄兵衛(（荘兵衛)）成近<ref group="注" name="example19">？? - 寛永14年(1637（1637年)？「）?『武芸者の祈り─庄内藩の田宮流居合 ─ 」』</ref>、羽田九郎兵衛永泰、蟻川庄左衛門家続、上坂半左エ門安久<ref name="example26">「『仙台藩武術史研究 第3号」』</ref>、[[無双直伝英信流|百々軍兵衛光重]]。

== 伝記 ==

=== 『居合明心之巻』<ref group="注" name="example3">酒井十平長照著　1653（1653年～1706 - 1706年「）著『林崎明神と林崎甚助重信」』p33,</ref>田宮流居合之始 ===

<blockquote>夫兵法は上古より数多有といへとも此の居合末世相応の太刀にして、一命の有無此居合に極まる。

<blockquote>其の古の天文の頃より始[[林崎甚助|林崎重信]]夢想の霊剱を尾州[[田宮重正|田宮平兵衛業正]]に相伝、則ち[[田宮流]]となつく。

=== 『居合明心之巻』<ref name="example3">酒井十平長照著　1653年～1706年「林崎明神と林崎甚助重信」p33,</ref> ===

<blockquote>其の古の天文の頃より始[[林崎甚助|林崎重信]]夢想の霊剱を尾州[[田宮重正|田宮平兵衛業正]]に相伝、則ち[[田宮流]]となつく。

其の後平兵衛奥州[[米沢市|米澤]]長野無楽斎桂露<ref group="注" name="example8">槿露の誤記</ref>に相伝、然るに桂露居合剱術の名お得て国々を広廻し諸流をぬき出す。

是より諸流わかれて今に其の流儀有り、それより予が家に伝えて先祖より代々相伝するもの也。</blockquote>

=== 『本朝武藝小傳』<ref group="注" name="example4">日夏弥助繁高著　1714年</ref> ===

<blockquote>長野無楽斎槿露は刀術を[[田宮重正]]に学ぶ、而て精妙を得たり。後に[[井伊直政|井伊侍従]]に仕ふ、九十餘歳にして死す。

24 ⟶ 27行目:

又上泉孫次郎義胤いう者有り、一宮と共に無楽斎に従て神妙を得たり。</blockquote>

=== 『柳生新陰流縁起』<ref group="注" name="example33">柳生兵庫厳延(寛文2年(1663年)-享保5年(1720年)　柳生利厳の孫(柳生利方の子)、尾張柳生4代)著 1694年～1720年『改訂史料柳生新陰流 下巻』p389、別の伝本では『兵法由来覚』『前橋市史 第1巻』p980、</ref> ===

<blockquote>[[夢想流|上泉孫四郎]]<ref group="注" name="example17">？(天正頃)- 正保4年(1647年)尾張[[徳川義直]]に200石で仕官。[[上泉信綱]]の孫(信綱三男・石森源左衛門行綱の子)。父が越後で亡くなった後、石森姓から上泉姓に復し、米沢移国時に一族から離れて他国すという。「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p479,<　/ref>儀、若輩成時分、父<ref group="注" name="example34">[[上泉信綱|上泉伊勢守信綱]]三男・石森源左衛門行綱</ref>果候故(父之名は承申さ不候。)兵法之位・心持委相成、相伝は御座無く候得共、[[上泉信綱|伊勢守]]孫にて御座候故、[[柳生利厳|如雲]]方へ仕相に参候。

高田三之丞出合、両度仕相仕候。片打に三之丞勝申候故、三之丞が弟子に也、稽古は如雲にて仕候。<ref group="注" name="example36">帯刀某と高田三之丞の立合いとの混同か？『昔咄』前編 第3巻(『名古屋叢書 第24巻』p166)</ref>

此儀を孫四郎至極無念に存、[[紀州藩|紀州]]へ参、田宮無羅具<ref group="注" name="example35">紀州田宮流との混同による誤り</ref><ref group="注" name="example39">『兵法由来覚』では田宮長勝となっている。『前橋市史 第1巻』p980</ref>(むらくの文字爾と知し申さ不候。)[[居合術|居相]]之弟子に成、間も無く一流相極申候。

殊更諸々之古今に稀成手柄を仕、流儀之名を上申候故、師匠に断、[[夢想流|上泉流]]之居相と名を改申候。

37 ⟶ 40行目:

其後名も両度斗も改申候取沙汰御承申候。</blockquote>

=== 『昔咄』<ref group="注" name="example27">近松茂矩著 1738年「『名古屋叢書 第24巻』p257『日本武道大系 第9巻」』p182(自筆本を底本とする名古屋叢書本による。)</ref>前編 第七巻===

<blockquote>[[林崎甚助|林崎甚助重信]] (奥州人 奥州[[楯岡町|楯岡]]、近所に[http://www.iaijinja.jp/ 林明神](一に林崎と云う)、此神に祈りて妙旨を暁りぬ。天下抜刀の居合元祖。)―[[田宮重正|田宮平兵衛重正]](関東人 後対馬と改む。)―長野無楽斎槿露 ([[井伊直政|井伊家]]に仕ふ。九十歳余にて死す。、[[夢想流]]と称せり云、九十余歳にて死す。)―上泉権右衛門秀信―若林勝右衛門尚信(是入)

[[夢想流|上泉権右衛門]]<ref group="注" name="example17">？(天正頃)- 正保4年(1647年)尾張[[徳川義直]]に200石で仕官。[[上泉信綱]]の孫(信綱三男・石森源左衛門行綱の子)。父が越後で亡くなった後、石森姓から上泉姓に復し、米沢移国時に一族から離れて他国すという。「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p479,<　/ref>は、[[新陰流|神陰流]]の宗師[[上泉信綱|上泉伊勢守]]が実子<ref group="注" name="example28">孫の誤り</ref>成なりしが、生質神陰流の兵法中々暁得すべき器量にあらずとて、父伊勢守<ref group="注" name="example29">伊勢守三男・行綱の誤り</ref>命じ示して、[[林崎甚助|林崎甚助重信]]が流ながれ長野が弟子とになして、抜刀居合を修練せしむ。権右衛門精心を砕いて学習し、居合の名人となり、諸国に遊ぶ。後に尾州[[柳生利厳|柳生如雲]]が許に至る。

如雲、父[[柳生宗厳|石舟斎]]が師匠たる上泉が子の事なれバ甚だ懇にし、尾州にとどめん事を謀り、居合の指南をなさんがため、まづ、高田三之丞と仕合をなさしむ。初一本ハ三之丞勝って権右衛門抜く事不能。三之丞いへるハ、貴客の居合妙にして、十の物九ハ至れり、今一つの所ぞといふ。権右衛門、暫らく工夫ありて、又敵す。二本めよりハ三之丞かつ事ならずして曰、いまハ微妙を悟し得られたり。恐らくハ天下に勝者なからん。則柳生一家をさきとして、国中の者共弟子になれり。間々免許を得る有り、但し若林勝右衛門ひとり傑出して、門人多し。村上七九郎(武兵衛・只右衛門等が父)高弟なり。

権右衛門精心を砕ひて学習し、居合の名人と成り、後に諸国に遊ぶ。尾州[[柳生利厳|柳生如雲]]が許に来る。</blockquote>

又　[[徳川光友|瑞龍院]]様へ御指南仕りぬ。勝右衛門隠居し、是入といふ無刀になれり。一日小山了斎(元祖市兵衛隠居の号)が許へ至る。了斎出迎ふに、是入無刀なり。了斎曰、足下ハ居合ぬきなるに、無刀はいかんぞ。是入曰、居合をぬく故、もはや居合の役に立た不るを知りぬるゆへ、隠居せし。居合が用に立つほど達者なれバ、いまだ御奉公を仕るなり。然れバ用に立た不る、両腰をたばさみて何かせん、扇子一本こそ心安く候へといふ。了斎聞いて、扨々我等も誤りたり、今日よりハ此御弟子にも成る可しとて、是もそれより無刀に成りぬ。

=== 『神傳流極秘』<ref name="example5">[[林政詡|林安太夫政詡]]著　1764年　木村栄寿本(細川家本)による。曽田虎彦本では『[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-9c35.html 居合兵法極意秘訣』]</ref> ===

<blockquote>長野無楽斎槿露は[[田宮重正]]弟子也、[[井伊直政|井伊侍従]]に仕え五百石被下、[[足軽大将|物頭]]勤るなり九十一歳にて死すと云々。無楽斎弟子三ノ宮左太夫照信<ref name="example6">一宮左太夫照信の誤記、曽田本も同じ。</ref>と云うあり[[武田勝頼]]に仕、刀術の妙得たる人と申す。</blockquote>

服部初め豊嶋久太夫・若林四郎兵衛・若尾善大夫・荒川新兵衛(高須にて指南)野田善十郎・今村文太左衛門・山田佐左衛門・平井健之右衛門が類、今の代まで指南せるハ、みなこれ是入が末なり。御側中　御指南被下し者多し。御目録被下しも、有之由。</blockquote>

=== 『会津干城伝』<ref name="example11">中野義都撰 1794年「続会津資料叢書」p254,</ref>一宮 左太夫信嗣 ===

=== 『神傳流極秘』<ref group="注" name="example5">[[林政詡|林安太夫政詡]]著　1764年　木村栄寿本(細川家本)による。曽田虎彦本では『[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-9c35.html 居合兵法極意秘訣』]</ref> ===

<blockquote>長野無楽斎槿露は[[田宮重正]]弟子也、[[井伊直政|井伊侍従]]に仕え五百石被下、[[足軽大将|物頭]]勤るなり九十一歳にて死すと云々。無楽斎弟子三ノ宮左太夫照信<ref group="注" name="example6">一宮左太夫照信の誤記、曽田本も同じ。</ref>と云うあり[[武田勝頼]]に仕、刀術の妙得たる人と申す。</blockquote>

=== 『会津干城伝』<ref group="注" name="example11">中野義都撰 1794年「『続会津資料叢書」』p254,</ref>一宮 左太夫信嗣 ===

<blockquote>一ノ宮後の左太夫信嗣は[[保科正之|土津神君]]の臣、居合の達人なり、一ノ宮流と云ふ、

其先、[[林崎甚助|林崎甚助重信]]と云者此術に心ざし、奥羽[http://www.iaijinja.jp/ 林ノ明神]に参籠すること一百日、終らんとする夕べ夢に神告て曰く、此術を汝に授く、常に守持せば讎敵に勝事を得べしと云終て夢覚めぬ。

重信恭敬存守して是を[[田宮重正|田宮平兵衛照常]]に伝ふ(田宮照常は紀州の家士にして千五百石を領す)、長野無楽斎槿露に伝ふ(無楽斎は[[井伊直政|彦根侍従直政]]に仕ふ、其子孫長野十右衛門<ref group="注" name="example12">長野十郎左衛門の誤記</ref>とて代々[[執権]]たり)、

田宮長野の教、已に両家となり門弟離散して諸国に分処す、其能くする所を以て是を改め一家をなす、弟子に授くるに源遠くして末益々分れ、其要旨を得る者少し、

58 ⟶ 65行目:

唯一ノ宮左太夫照信是を無楽斎に受けて其の真を失はず、無楽印可して吾後、天下第一の師道たるべしと。

照信朝に磨き夕べに研ぎ、夜を以て日に継ぎ曽て懈らず、故に其術尤も精密なり、照信是を[[戸沢定盛|戸沢越中守忠照]]に伝ふ、(忠照は[[鳥居元忠|鳥居彦右衛門尉元忠]]公の二男にして[[鳥居忠政|忠政]]公の弟なり<ref group="注" name="example20">[[鳥居忠政]]の次男([[戸沢定盛|戸沢越中守定盛]]初名忠定)の誤り</ref>)、忠照、是を一ノ宮左太夫信嗣に伝ふ<ref group="注" name="example21">新庄藩の伝承では父の照信より伝わる</ref>。

信嗣は照信の二男なり、信嗣心を潜め慮を尽して是を練習す、唯居合のみにあらず剣術も亦達人なり、神明の教ふる処の妙術斯の流に伝へたり、左太夫色々仕合したる咄あれども詳ならざれば此を略す。

一宮左太夫照信は始め[[武田信玄|武田大膳太夫晴信公]]子息[[武田勝頼|四郎勝頼]]に仕へて軍功あり、勝頼公[[膳城|上州せんの城]]<ref group="注" name="example14">[[膳城|上州膳城攻め 天正8年(1580年)]]</ref>の城責めの時、城の一番乗し、一番に鎗を合せ高名す、武田家滅亡の後、[[鳥居元忠|鳥居彦右衛門元忠]]公に仕ふ、慶長五年石田乱の時、[[鳥居元忠|元忠]]公と共に[[伏見城]]に於て討死す<ref group="注" name="example23">新庄藩の伝承では伏見で戦死したのは誤り</ref>。</blockquote>

=== 『老翁茶話』<ref group="注" name="example13">芥川清茂撰 1815年「『続会津資料叢書」』p249,</ref> ===

<blockquote>抑々此一宮流の居合といへるは、[[林崎甚助|林崎甚助重信]]を始祖とし、[[無楽流]]より分れたるなり。

[[箕輪城|上野箕輪城]]主長野左衛門大夫、初[[長野業正|信濃守業正]]の後孫、同無楽斎槿露が高弟、一宮左太夫照信此術に長じて一家をなす、これを一宮流と号す、

[[戸沢定盛|戸沢越中守忠照]]に伝へ、忠照はこれを照信が二男一宮左太夫信嗣に伝ふ<ref group="注" name="example21" />、信嗣は伊賀猪兵衛盛武に伝へ、盛武これを河西作野右衛門一邑に伝ふ。</blockquote>

=== 『日新館志』<ref group="注" name="exampleexample37">吉村寛泰編 1823年「『会津日新館志 第5巻」「』『会津藩における無楽流居合術の伝承」』</ref>巻之二十七「『居合兵法」』 ===

<blockquote>長野槿露は無楽斎と號す。上州[[長野業正|長野信濃守]]の支属也。驍勇多力、しばしば戦功有り。漂泊周流の後、[[出羽国|羽州]]に至り、[[田宮重正]] (<small>平兵衛)</small> と倶に[[林崎甚助|重信]]に従学して朝鑚暮研、遂に其の妙を得る。

78 ⟶ 85行目:

其の後、出遊して名声顕著、而して抜刀の諸流、多く斯人より出ずと云う。

「『居合系譜」』(<small>神田良近著)</small> に曰く。槿露は性僻異常を好み、後面牛に跨り、女子をして之を牽かしむ。沍寒に爐火を設けず、終身犯さず、亦奇なり。

「『[[本朝武芸小伝|武藝小傳]]」』に曰く。槿露は刀術を田宮重正に学び、造詣精妙なり。後に[[井伊直政|井伊侍従]]に仕え、九十餘歳にして卒す。

</blockquote>

=== 『尾府 御家中武芸はしり廻』<ref group="注" name="example31">鈴木英益著 1830年「『日本武道大系 第９巻」』p124</ref> ===

<blockquote>[[田宮重正|田宮成正]]は諸州を廻て後[[徳川頼宣|紀伊候]]に仕ふ。田宮の門人長野無楽斎が流を伝て[[夢想流|上泉権右衛門秀信]]<ref group="注" name="example17">？(天正頃)- 正保4年(1647年)尾張[[徳川義直]]に200石で仕官。[[上泉信綱]]の孫(信綱三男・石森源左衛門行綱の子)。父が越後で亡くなった後、石森姓から上泉姓に復し、米沢移国時に一族から離れて他国すという。「上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」p479,<　/ref>と云もの、[[柳生利厳|柳生兵庫]]が許へ来り居合を以て兵法者に敵し、勝負互角なれば、兵庫大に賞し吹挙して御当家へ在付ぬ。

此上泉より若林四郎兵衛尚行<ref group="注" name="example30">若林勝右衛門尚信(是入斎)の誤り「。若林四郎兵衛は次代。『昔咄」「』『日本武道大系 第3巻」』</ref>に伝へしより、此流御国に弘まれり。</blockquote>

=== 『武術流祖録』<ref group="注" name="example7">羽鳥耀清 · 池田豊直· 青山敬直編　1843年</ref> ===

<blockquote>長野無楽斎槿露は[[井伊直政|井伊家]]に仕ふ、九十餘歳にして死す。其門に一宮左太夫照信、上泉孫次郎義胤　其宗を得。</blockquote>

=== 『会津藩教育考』<ref group="注" name="example9">小川渉著 1931年</ref>柔術幷居合術場 ===

<blockquote>居合術 (<small>抜刀術なり今俗に従う)</small> [[林崎甚助|林崎重信]] (<small>甚助と称す[[陸奥国|奥州]]の人)</small> が発明せし所、之を[[林崎新夢想流]]といふ、

108 ⟶ 115行目:

無楽斎毎に謂ふ、照信は他日名手たるべしと、果たしてその言に違はず

照信後[[戸沢定盛|戸澤候忠照]](<small>越中守。實は[[鳥居元忠]]の二男<ref group="注" name="example20" />)</small>に傳ふ、照信初め武田家に属し、後[[鳥居元忠|鳥居候元忠]]に仕へ、慶長五年八月朔日城州[[伏見城|伏見]]に於て戦歿す<ref group="注" name="example23" />、

子信嗣襲稱左太夫父に學びその宗を得、併て剱術に達す(會津干城伝)</blockquote>

== 参考文献 ==

*「『林崎明神と林崎甚助重信」』林崎甚助源重信公資料研究委員会.居合振武会

*「『増補大改訂 武芸流派大事典」』綿谷雪著, 山田忠史編.東京コピイ出版

*「『日本武道大系 第3巻」』今村嘉雄著, 同朋舎

*「『居合400年史考」』(剣道日本1982年11月号)

*「『林崎甚助重信の門人たち」』朝倉一善著. （居合道虎の巻. スキージャーナル)

*「『上毛剣術史 中 剣聖上泉信綱詳伝」』諸田政治著. 煥乎堂

*「『武芸者の祈り─庄内藩の田宮流居合 ─ 」』田中大輔著（「『日本の歴史を問いかける　山形県〈庄内〉からの挑戦」』地方史研究協議会編. 文学通信)

*「『庄内藩の武術―附松山藩の武術」「』『仙台藩の武術」「』『秋田藩の武術」「』『弘前藩の武術」』小野崎紀男著. ツーワンライフ

*「『全国諸藩剣豪人名事典」』間島勲著. 新人物往来社

*「『仙台藩武術史研究 第3号」』日本総合武道研究所

*「『続剣道集義」』　山田次郎吉著. 水心社

*「『[[本朝武芸小伝|本朝武藝小傳]]」』日夏繁高著

*「『改訂史料柳生新陰流 下巻」』今村嘉雄編. 新人物往来社

*『前橋市史 第1巻』前橋市史編さん委員会編. 前橋市

*「定本 大和柳生一族―新陰流の系譜」今村嘉雄著. 新人物往来社

*「日『定本武道 大和柳生一族―新陰流の系 第9巻」譜』今村嘉雄編著. 同朋舎新人物往来社

*『柳生新陰流 歴史・思想・技・身体』赤羽根龍夫著、スキージャーナル

*「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流 傳書集及び業手付解説」木村栄寿著

*『新陰流の極意』赤羽根龍夫著、左文右武堂

*「[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-098f.html 居合兵法極意秘訣　４．道統３長野無楽斎槿露]」[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/ ミツヒラ]著(blog 2015年4月8日)

*『名古屋叢書 第24巻(雑纂編 第1)』名古屋市教育委員会編. 名古屋市教育委員会

*「續会津資料叢書」 菊池重匡編. マツノ書店

*『日本武道大系 第9巻』今村嘉雄編. 同朋舎

*「会津日新館志 第5巻」 吉村寛泰編. （会津史料大系）. 歴史春秋社

*「『林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流 傳書集及び業手付解説」』木村栄寿著

*「会津藩における無楽流居合術の伝承」間島勲著. （会津若松市史研究　第３号）

*「『[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-098f.html 居合兵法極意秘訣　４．道統３長野無楽斎槿露]」』[http://mat-sekiunn.cocolog-nifty.com/blog/ ミツヒラ]著(blog 2015年4月8日)

*「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1276804/001 会津藩教育考]」小川渉著. 会津藩教育考発行会

*「『續会津資料叢書」』 菊池重匡編. マツノ書店

*「会津剣道誌」会津剣道誌編纂委員会編. 全会津剣道連盟

*「『会津日新館志 第5巻」』 吉村寛泰編. （会津史料大系）. 歴史春秋社

*「彦根藩史料叢書 侍中由緒帳1」彦根城博物館編集

*「『会津藩における無楽流居合術の伝承」』間島勲著. （会津若松市史研究　第３号）

*「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953218 新庄古老覚書]」田口五左衛門著.

*「『[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1276804/001 会津藩教育考]」』小川渉著. 会津藩教育考発行会

*「続 かつろく風土記」笹喜四郎著. 新庄市教育委員会

*「『会津剣道誌」』会津剣道誌編纂委員会編. 全会津剣道連盟

*[https://www.youtube.com/watch?v=FeBltTE2mG4&t=459s 「2019-9-14 発表3「最古の絵伝書に見る原初の居合の様相」(武士魂in弘前)」]森林健一発表.(youtube 2019年10月5日)

*「『彦根藩史料叢書 侍中由緒帳1」』彦根城博物館編集

*「『[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953218 新庄古老覚書]」』田口五左衛門著.

*「『続 かつろく風土記」』笹喜四郎著. 新庄市教育委員会

*[https://www.youtube.com/watch?v=FeBltTE2mG4&t=459s 「『2019-9-14 発表3「『最古の絵伝書に見る原初の居合の様相」』(武士魂in弘前)」』]森林健一発表.(youtube 2019年10月5日)

*[https://plaza.rakuten.co.jp/ketsuago/diary/?ctgy=4 <nowiki>Echo返照　[ 居合術研究 ]</nowiki>]

*[https://senjp.com/murakusai/ 長野無楽斎【長野正次】と長野業実(向坂伝蔵)]

146 ⟶ 157行目:

== 注釈 ==

{{Notelist2}}

== 出典 ==

{{Reflist}}

{{DEFAULTSORT:ながかの むらくさい}}

[[Category:居合]]

[[Category:室町・安土桃山時代の武士]]

{{DEFAULTSORT:ながのむらくさい}}

[[Category:江戸時代の武士]]

[[Category:江戸時代の剣客]]

[[Category:剣客]]

[[Category:居合]]

[[Category:長野氏|むらくさい]]

[[Category:上野国の人物]]

[[Category:長野氏16世紀生]]

[[Category:17世紀没]]