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{{生物分類表
[[Image:Broussonetia papyrifera ?.jpg|right|260px]]▼
|名称 = カジノキ
|色 = lightgreen
|画像キャプション = カジノキの果実
|分類体系 = [[APG体系|APG]]
| 界 = [[植物界]] {{Sname||Plantae}}
| 門階級なし = [[被子植物]] {{Sname||angiosperms}}
| 綱階級なし = [[真正双子葉類]] {{Sname||eudicots}}
| 目 = [[バラ目]] {{sname||Rosales}}
| 科 = [[クワ科]] {{sname||Moraceae}}
|属 = [[コウゾ属]] ''[[:w:Broussonetia|Broussonetia]]''
|種 = '''カジノキ''' ''B. papyrifera''
|学名 = {{Snamei||Broussonetia papyrifera}} ({{AU|L.}}) {{AU|L'Hér.}} ex {{AU|Vent.}} {{small|([[1799年|1799]])}}<ref name="YList">{{YList|id=1676|taxon=Broussonetia papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent. カジノキ(標準)|accessdate=2023-01-03}}</ref>
|和名 = カジノキ(梶の木)
}}
'''カジノキ'''(梶の木{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}、[[学名]]: ''Broussonetia papyrifera'')は、[[クワ科]][[コウゾ属]]の落葉高木。単に'''カジ'''(梶)または'''コウ'''(構)ともよばれる。枝の繊維は和紙の原料として用いられる。
== 名称 ==
古代から神に捧げる神木として尊ばれていた為、[[神社]]の境内などに多く生えられ、主として神事に用い供え物の敷物に使われた。▼
[[和名]]「カジノキ」は、[[コウゾ]]が古くは「カゾ」といい、本種はそれが転訛した名だといわれている{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。[[中国語|中国名]]は「構樹」<ref name="YList"/>。
古い時代においては[[ヒメコウゾ]]との区別が余り認識されておらず、現在の[[コウゾ]]はヒメコウゾとカジノキの[[雑種]]といわれている。また、[[江戸時代]]に[[日本]]を訪れた[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト]]もこの両者を混同して[[ヨーロッパ]]に報告したために今日のヒメコウゾの[[学名]]が「''Broussonetia '''kazinoki'''''」となってしまっている。
== 分布・生育地 ==
原産地は不明であるが{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}、[[日本]]、[[中国]]、[[台湾]]、[[ポリネシア]]{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}に分布し、日本国内では[[中部地方]]南部以西の[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]、[[沖縄]]に分布する{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。
山野に自生するが、日本には古くから栽培されていたものが野生化したものとみられており{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}、野鳥の糞から芽生えた若木がよく目立つ{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。自然分布以外でも、人の手によって植栽されて庭や公園に植えられているものも見られる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}。ポリネシアへの植民者と一緒に、台湾から太平洋の島々にも渡ったとされ、湿潤な火山性土壌との相性も良く、成長速度も早いと言われる{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}。
== 特徴 ==
[[落葉広葉樹]]の高木で{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}、樹高はあまり高くならず、10 - 12[[メートル]] (m) ほどになる{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。[[樹皮]]は灰褐色で黄褐色の皮目があり、若木には褐色のまだら模様が入り、縦に短く裂けて浅い筋が入る{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。一年枝はうぶ毛が多く生えるか、まばらに生えている{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。[[葉]]は大きく、[[楕円形]]から広卵形で若木では浅く3 - 5裂し、表面に毛が一面に生えてざらつく{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。左右どちらかしか裂けない葉も存在し、同じ株でも葉の変異は多い。[[葉柄]]は長く、2 - 10[[センチメートル]] (cm) ほどある{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}。
開花時期は5 - 6月{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}。[[雌雄同体|雌雄異株]]{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。雄[[花序]]は長さ4 - 8 cmの穂状に下垂し、淡緑色{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。雌花序は直径2 cmほどの球状につき、紅紫色の[[花柱]]がのびている{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。果期は9月{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。[[果実]]は直径2 - 3 cmほどの[[集合果]]で、秋に赤く熟して食用になる{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}{{sfn|西田尚道監修 学習研究社編|2009|p=98}}。
[[冬芽]]は互生し、三角形で毛が多く生え、暗褐色をしている2枚の芽鱗に包まれている{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。冬芽の下にある葉痕はやや大き目の心形や半円形で、[[維管束]]痕は多数輪状に並ぶ{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。葉痕の肩の部分に[[托葉]]痕があり、しばしば托葉が残っていることもある{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}。
<gallery mode=packed>
Murier.jpg|葉。若木では3 - 5裂する。
Broussonetia papyrifera - Botanischer Garten Freiburg - DSC06385.jpg|雌花序。紅紫色の花柱が伸びる。
Broussonetia papyrifera - fleurs mâles.jpg|雄花序。淡緑色で穂状に垂れる。
Broussonetia papyrifera MHNT Texture of the trunk.jpg|樹皮
</gallery>
== 用途 ==
[[古墳時代]]には栲樹(たくのき)と呼ばれて木皮から木綿を作っており、栲樹が豊富だった[[豊国]]([[大分県]])の「[[由布市|柚富]]」(ゆふ)の地名はこれに由来する<ref>[[豊後国風土記]]。</ref>。
[[樹皮]]は繊維が強く、[[日本人]]は[[コウゾ]]と同様に[[和紙]]の[[繊維]]原料とした{{sfn|平野隆久監修 永岡書店編|1997|p=110}}{{sfn|鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|2014|p=189}}{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}。[[中国]]の伝統紙である[[画仙紙]](宣紙)は主にカジノキを用いる。
内樹皮から採れる繊維を、[[ポリネシア人]]は[[タパ]](tapa)という樹皮布の原料として利用している{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}。[[トンガ]]ではカジノキの樹皮布をつくるのに、カジノキの樹皮を剥いで水で洗ってから表面をそぎとって内樹皮だけにし、これを叩いて3倍ほどに伸ばして何枚も重ねたものを木槌で叩いて大きな布状にする{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}。できた布は黒や茶色の染料と使って型染めや手描きで伝統的な幾何学模様に染め上げられ、できあがった作品はンガトゥ(ngatu)と呼ばれ、婚礼や葬儀の貴重な贈答品になり、掛け布、間仕切りに使われる{{Sfn|ドローリ|2019|p=165}}。
煙などにも強い植物であるため、[[中華人民共和国|中国]]では工場や[[鉱山]]の緑化に用いられる。
[[葉]]は[[ブタ]]、[[ウシ]]、[[ヒツジ]]、[[シカ]]などの[[飼料]](飼い葉)とする。
== 文化 ==
カジノキは[[神道]]では神聖な樹木のひとつであり、[[諏訪神社]]などの[[神紋]]や日本の[[家紋]]である[[梶の葉|梶紋]]の紋様としても描かれている。また、昔は[[七夕]]飾りの短冊の代わりとしても使われた。
== 脚注 ==
{{Reflist}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =ジョナサン・ドローリ|title =世界の樹木をめぐる80の物語|date=2019-12-01|publisher =[[柏書房]]|translator=三枝小夜子|isbn=978-4-7601-5190-5|ref={{SfnRef|ドローリ|2019}} }}
* {{Cite book|和書|author =鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文|title =樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種|date=2014-10-10|publisher =[[誠文堂新光社]]|series=ネイチャーウォチングガイドブック|isbn=978-4-416-61438-9|page =189|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =西田尚道監修 学習研究社編|title =日本の樹木|date=2009-08-04|publisher =[[学習研究社]]|series=増補改訂 ベストフィールド図鑑|volume= 5|isbn=978-4-05-403844-8|page =98|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =平野隆久監修 永岡書店編|title =樹木ガイドブック|date=1997-05-10|publisher =[[永岡書店]]|isbn=4-522-21557-6|page =110|ref=harv}}
== 関連項目 ==
*[[梶の葉]]
*[[結城郡]] - [[天富命]]が穀の木を栽培した地と伝えられる[[総国|総の国]]の[[郡]]
==外部リンク==
* [http://green-water.riken.go.jp/natural-e/Images/trees/kajinoki/ カジノキ(梶の木)]理研の自然ホームページ内
{{Taxonbar|from1=Q389185}}
{{Plant stub}}▼
{{Normdaten}}
[[Category:木|かしのき]]▼
[[Category:クワ科]]
[[Category:繊維植物]]
[[Category:1753年に記載された植物]]
[[Category:雌雄異株の植物]]
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