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{{実名|否|
}} {{百科事典的でない|type=NOTNEWS|date=2023年5月}}
{{Infobox
| 名称
| 画像
| 場所
| 日付
| 時間
| 開始時刻
| 時間帯
| 標的
| 手段
|
| 死亡
| 負傷
| 行方不明
| 被害者
| 損害
| 犯人
| 容疑
| 動機 =
*駆け付けた警察官に射殺されると思ったから
| 攻撃側人数
| 対処
| 刑事訴訟 = [[日本における死刑|死刑]]([[審級|第一審]][[判決 (日本法)|判決]]<ref name="朝日新聞20251014"/>・[[控訴]]中<ref name="読売新聞20251027">『読売新聞』2025年10月27日配信「[https://www.yomiuri.co.jp/national/20251027-OYT1T50109/ 長野4人殺害の被告、「死刑判決に不服」と控訴…判決直後は控訴しない意向も弁護人の説得に応じる]」(読売新聞東京本社)</ref>)
| 管轄 = * [[長野県警察]]
* [[長野地方検察庁]]<ref name="読売新聞2023-05-27"/>
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}}
'''中野市4人殺害事件'''(なかのしよにんさつがいじけん)は、[[2023年]]([[令和]]5年)[[5月25日]]に[[日本]]の[[長野県]][[中野市]]江部で発生した[[殺人罪 (日本)|殺人]][[事件]]。'''長野4人殺害事件'''とも呼ばれる。'''男A'''(当時31歳、以下「'''A'''」)が近隣に住む女性2人を
日本で発生した1つの事件で複数の警察官が[[殉職]]した事件は、[[1990年]]([[平成]]2年)11月の[[第6次沖縄抗争#警察官射殺事件|第6次沖縄抗争]]以来、33年ぶり<ref>{{Cite news|和書 |title=警察官の複数殉職事件は33年ぶり 対策強化も再び犠牲に |newspaper=産経ニュース |date=2023-05-26 |author=大渡美咲 |url=https://www.sankei.com/article/20230526-B7QFDI3NIBMNPGBRFYMH25OZIU/ |publisher=[[産経デジタル]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230604124425/https://www.sankei.com/article/20230526-B7QFDI3NIBMNPGBRFYMH25OZIU/ |archive-date=2023年6月4日}}</ref>。[[地
== 事件の経緯 ==
長野県警察は17時33分、銃器のような物を持った男が逃走していると発表した<ref name="信濃毎日新聞2023-05-27ドキュメント"/>。19時45分ごろに中野市危機管理課は近隣住民に屋内避難を呼び掛けるとともに、現場を中心とした半径約300メートルを避難区域に指定し、現場付近の[[国道403号]]と県道を全面通行止めとしたと発表した<ref name="asahi-20230325-ASR5T5SV7R5TUTIL02F">{{Cite news |title=長野県中野市で猟銃発砲、男が民家に立てこもり 警官2人と女性死亡 |newspaper=朝日新聞デジタル |date=2023-05-25 |url=https://www.asahi.com/articles/ASR5T5SV7R5TUTIL02F.html |access-date=2023-05-25 |publisher=朝日新聞社 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230525131819/https://www.asahi.com/articles/ASR5T5SV7R5TUTIL02F.html |archive-date=2023-05-25}}</ref>。
その後、
翌26日の0時10分ごろに叔母も警察に保護された<ref name="nhk20230528" />。26日4時37分ごろ、
== 捜査 ==
男は逮捕後の27日午後、留置先の[[長野中央警察署]]から<ref>{{Cite news|和書 |title=死亡女性2人に一方的な恨みか 長野立てこもり、容疑者を送検 |newspaper=毎日新聞 |date=2023-05-27 |author=白川徹 |author2=井上知大 |author3=鈴木英世 |url=https://mainichi.jp/articles/20230527/k00/00m/040/124000c |access-date=2023-06-04 |publisher=毎日新聞社 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230604131737/https://mainichi.jp/articles/20230527/k00/00m/040/124000c |archive-date=2023年6月4日}}</ref>、[[長野地方検察庁]]へ[[送致]]された<ref name="読売新聞2023-05-27">{{Cite news|和書 |title=長野・立てこもり、○○○○容疑者宅から複数刃物…血付きサバイバルナイフも |newspaper=[[読売新聞オンライン]] |date=2023-05-27 |url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20230527-OYT1T50254/ |access-date=2023-06-04 |publisher=[[読売新聞東京本社]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230604132239/https://www.yomiuri.co.jp/national/20230527-OYT1T50254/ |archive-date=2023年6月4日}}</ref><ref>『中日新聞』2023年5月28日朝刊一面1頁「最初の犠牲 70歳女性か 長野立てこもり 容疑者送検」(中日新聞社)</ref>。▼
長野県警察は、事件発生翌日の26日正午より警察本部にて会見を開き、中野警察署に100人規模の[[捜査本部]]を設置したことを明らかにした<ref>{{Cite news|title=【詳報】「説得して投降」 長野県警本部長ら記者会見 中野市の立てこもり事件|newspaper=信濃毎日新聞デジタル|date=2023-05-26|url=https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023052600394|accessdate=2023-05-26}}</ref>。▼
Aは取り調べで女性2人を襲った理由について「以前から襲おうと思っていた」<ref>{{Cite web|和書|url=https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230601/1000093177.html |title=長野 中野 4人殺害事件から1週間 動機や計画性さらに調べ |publisher=NHK |date=2023-06-01 |accessdate=2023-10-02}}</ref>、また、警察官殺害の理由について「射殺されると思ったので駆けつけた警察官を殺した」などと供述して犯行を認めていたが<ref>{{Cite web|和書|url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230530/k10014082731000.html |title=長野4人殺害 警察官1人は撃たれたあと刺された傷が致命傷に |publisher=NHK |date=2023-05-30 |accessdate=2023-10-02}}</ref>、やがて「覚えていない」として(少なくとも警察官殺害については)容疑を否認した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASR6D6FXZR6DOXIE03V.html |title=もう1人の警察官への殺人容疑で再逮捕へ 長野の4人殺害事件 |publisher=朝日新聞DIGITAL |date=2023-06-13 |accessdate=2023-10-02}}</ref>
== 犠牲者 ==▼
▲
▲== 犠牲者 ==
死因はいずれも失血死とされる<ref name="yomiuri20230530">{{Cite news |和書 |title=長野4人殺害、全員が即死状態…警察官1人は銃撃後の刺し傷が致命傷になったか |newspaper=読売新聞 |date=2023-05-30 |author= |url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20230530-OYT1T50030/ |access-date=2023-06-05}}</ref>。
; 女性W(当時70歳)<ref name="NHK 2023-05-26">{{Cite news |title=【詳報】長野立てこもり容疑者「悪口言われたと思い殺した」 |newspaper=[[NHKニュース]] |date=2023-05-26 |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230525/k10014078241000.html |access-date=2023-06-04 |publisher=[[日本放送協会]] |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230604125727/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230525/k10014078241000.html |archive-date=2023年6月4日}}</ref>
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; 女性X(当時66歳)<ref name="NHK 2023-05-26"/>
: 女性Wが襲われた後にその場から逃げ出して近くにいた男性に助けを求めたが、男に捕まり刃物で複数回刺された<ref>{{Cite news |和書 |title=長野 中野立てこもり 事件の経緯(6:00) |newspaper=NHKニュース |date=2023-05-26 |author= |url=https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230526/1000092912.html |access-date=2023-06-05}}</ref>。
; 男性[[警部補]]{{Efn2|殉職により[[警視]]へ[[殉職#二階級特進|二階級特進
: 事件発生当時は巡査部長Zとともに田園地帯を巡回しており<ref>{{Cite news |和書 |title=【大谷昭宏】防弾チョッキどころか拳銃も…長野県中野市立てこもり事件 |newspaper=日刊スポーツ |date=2023年6月5日 |author=大谷昭宏 |url=https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202306050000073.html |access-date=2023-06-05}}</ref>、拳銃不携帯・防弾チョッキ未装着の状態で現場に急行した<ref>{{Cite news |和書 |title=長野4人殺害事件 警察官2人は拳銃装備せず 状況調べる |newspaper=NHKニュース |date=2023-05-30 |author= |url=https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20230530/1010026781.html |access-date=2023-06-05}}</ref><ref>{{Cite news |和書 |title=長野の猟銃発砲立てこもり事件、警察官が防弾チョッキを着用していなかった理由 元刑事が解説 |newspaper=デイリースポーツ online |date=2023-05-26 |author= |url=https://www.daily.co.jp/gossip/2023/05/26/0016400227.shtml |access-date=2023-06-05}}</ref>。
: パトカーの助手席側に乗っていたところを男に銃撃され、その後車外に出たところを刃物で複数回刺されたことが致命傷となったとみられる<ref name="yomiuri20230530" /><ref name="asahi20230530">{{Cite news |和書 |title=銃撃後、さらに警察官を襲撃 パトカーのドラレコに記録 長野の事件 |newspaper=朝日新聞デジタル |date=2023-05-30 |author=高億翔 |url=https://www.asahi.com/articles/ASR5Y6TVTR5YOXIE031.html |access-date=2023-06-05}}</ref>。
; 男性[[巡査部長]]{{Efn2|
: パトカーを運転していたところを運転席側の窓の外から男に銃撃され<ref name="asahi20230530" />、銃弾は胸を貫通していた<ref name="yomiuri20230530" />。
==
被疑者の'''A・М'''は農業を営む31歳の男で、中野市議会議長や農薬販売会社の社長を務める父親を持つ、3人兄弟の長男だった<ref name="mainichi20230526" />。小中学校時代は[[野球]]に打ち込み、高校は近隣市にある県立校へ進学<ref name="mainichi20230526" />。高校時代は山岳部に所属しており、登山の際には体力のない仲間の荷物を持って登っていたという<ref>『信濃毎日新聞』2025年10月21日朝刊第9版第一社会面31頁「地裁判決 凶行の波紋 中野4人殺害事件(下) 「Aは僕だったかも」 高校の同級生 疑問と後悔」(信濃毎日新聞社)</ref>。[[東
==
=== 第一審 ===
▲長野県警察は、事件発生翌日の26日正午より警察本部にて会見を開き、中野警察署に100人規模の[[捜査本部]]を設置したことを明らかにした<ref>{{Cite news|title=【詳報】「説得して投降」 長野県警本部長ら記者会見 中野市の立てこもり事件|newspaper=信濃毎日新聞デジタル|date=2023-05-26|url=https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023052600394|accessdate=2023-05-26}}</ref>。
[[刑事手続|刑事裁判]]の[[審級|第一審]][[公判]]は、[[長野地方裁判所]](坂田正史裁判長)で[[裁判員制度|裁判員裁判]]として開かれた<ref name="信濃毎日新聞20250905">『[[信濃毎日新聞]]』2025年9月5日朝刊1頁「中野4人殺害事件 初公判 被告 罪状認否で黙秘 責任能力 争点に」(信濃毎日新聞社)</ref>。初公判は2025年(令和7年)9月4日に開かれ、Aは罪状認否にて[[黙秘権|黙秘]]した。検察官は冒頭陳述で、[[被告人]]Aには犯行時に妄想の症状があったが、自身の犯行は違法なことだと認識して犯行におよんでおり、善悪を判断する能力に問題はなく、完全責任能力があったと主張した<ref name="信濃毎日新聞20250905"/>。一方でAの弁護人を務めた今村義幸は、犯行時、Aは妄想の強い影響下にあり、また[[統合失調症]]が再燃して悪化していたことから、判断能力が著しく減退した[[責任能力#心神喪失と心神耗弱|心神耗弱]]状態だったと主張した<ref name="信濃毎日新聞20250905"/>。
検察官が証人として召喚した[[精神科医]]の岡田幸之は、Aには重度の妄想性があり、それが女性2人に対する殺害の動機の形成になったとしながらも、犯行時は冷静さを保って行動しており、警察官2人も含めて4人の殺害行為に対しては妄想の影響はなかったと主張した一方、弁護人が召喚した精神科医の小林正信は、犯行時のAは未治療のまま経過した[[統合失調症]]が再燃して悪化した状態であり、犯行時はパニック状態であったと主張した<ref name="信濃毎日新聞20250924">『信濃毎日新聞』2025年9月24日朝刊第9版第一社会面2頁「A被告 黙秘続ける中… 中野4人殺害 きょう論告求刑 検察側 完全責任能力を主張 弁護側 心神耗弱 減軽求める」(信濃毎日新聞社)</ref>。被告人質問ではAは黙秘を続けた<ref name="信濃毎日新聞20250924"/>。また[[証人]]として出廷したAの両親は、2013年(平成25年)に大学生だったAが暮らしていたアパートを訪問したところ、息子から何の根拠もなく「アパートには[[盗聴|盗聴器]]や[[監視カメラ]]がある」と訴えられたことを証言しており<ref name="信濃毎日新聞20250924"/>、弁護人の依頼を受けて精神鑑定を担当した医師は、Aは大学2年生のころに統合失調症を発症し、治療を受けずに症状が悪化した結果、社会全体から悪口を言われているという妄想を慢性的に抱えるようになったと述べた上で、大学を3年で中退して実家に戻り、農業をしてからは「不安定ながらも安定した生活を送った」が、2022年夏から家族が経営していた中野市内の[[ジェラート]]店で働き始めて以来、他者との関わりが増えるなどして生活環境が変化し、妄想が悪化したと証言している<ref>『信濃毎日新聞』2025年9月17日朝刊第二社会面22頁「中野4人殺害公判 弁護側の鑑定医 証言 統合失調症「店勤務で悪化」」(信濃毎日新聞社)</ref>。
一方で検察官は、Aが自衛官の弟に対し、[[LINE (アプリケーション)|LINE]]で凶器となったナイフを購入した2日後の2023年4月14日に「ごっつええナイフこうたった。今年はいっぱい人殺すで」というメッセージを、また犯行前日の5月24日には「とんでもないことになるで」というメッセージをそれぞれ送信しており、また部屋にあった『人殺し大百科』という書籍には警察官が着る[[防刃ベスト]]の弱点も解説されていたこと、Aは2015年から2019年に猟銃4丁の所持許可を取得・更新しており、その間に精神科医3人から7回診断を受け、いずれも「精神疾患なし」という診断を受けていたことなどを主張した<ref>『信濃毎日新聞』2025年9月5日朝刊第9版第一社会面23頁「中野4人殺害初公判 検察側は新証拠 「責任能力」主張対立 「凶器巡り弟にLINE」」「被告は淡々 遺族は涙も」(信濃毎日新聞社)</ref>。
==== 求刑 ====
同月24日の[[論告]][[求刑]]公判で、検察官はAに[[日本における死刑|死刑]]を求刑した<ref name="信濃毎日新聞20250925"/>。論告で検察官は、犯行後にAが母親に対し「[[絞首刑]]になるのが嫌」と話していたことなどから、殺害の違法性や重大性を的確に認識していたと主張、また犯行時に現場にいた目撃者の男性を攻撃しなかったことから、善悪を判断して自身の行動を制御する能力は十分に保たれていたと主張した<ref name="信濃毎日新聞20250925">『信濃毎日新聞』2025年9月25日朝刊1頁「中野4人殺害 死刑求刑 検察「結果は重大、犯行悪質」」(信濃毎日新聞社)</ref>。長野県内で開かれた裁判員裁判で死刑が求刑された事例は、[[長野市一家3人殺害事件]]の公判で[[2011年]]([[平成]]23年)に3被告人に相次いで死刑が求刑されて以来、4件目である<ref name="信濃毎日新聞20250925"/>。
第一審は同月26日に行われた公判で結審し、弁護側は最終弁論で「女性殺害後に警察官が来ることを想定したAが銃や猟銃ベストなどで武装し、[[パトロールカー|パトカー]]を待ち構えるなどの行動はいずれも常識を超えており、妄想の支配下に置かれた証拠である」と指摘し<ref name=":0">{{Cite web|title=弁護側は死刑回避を求めて結審、黙秘続けた被告が発言 長野4人殺害:朝日新聞|url=https://www.asahi.com/articles/AST9V24PZT9VUOOB003M.html?iref=ogimage_rek|website=朝日新聞|date=2025-09-26|access-date=2025-09-30|language=ja}}</ref>、「Aは妄想の強い影響により善悪を判断して行動することが著しく困難で、[[責任能力|心神耗弱]]の状態だった」「周囲が[[精神疾患|精神障害]]に気づいておらず、一度も更生の機会を与えられていない」と死刑回避を主張した<ref name=":1">{{Cite web|date=2025-9-26|title=長野 4人殺害の罪 “心神耗弱の状態”弁護側が死刑回避求める|language=ja|website=NHKニュース|publisher=[[日本放送協会]]|url=https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10014933161000|access-date=2025-9-30}}</ref>。Aは最終陳述にて初めて口を開き、「私は異次元の存在から迫害を受けて、人を殺して死刑になるためにここに来た。もう二度とプレイしない」「被害を受けた人には埋め合わせがあるだろう。中の人を傷つけて申し訳ない。ここは私にとって[[サイバースペース|仮想空間]]なのでプレイという表現になった」と述べた<ref name=":0" /><ref>{{Cite web|title=「異次元存在から迫害、人を殺して死刑になるために来た」〇〇被告が発言も妄想の影響下か 長野県中野市4人殺害事件:中日新聞Web|url=https://www.chunichi.co.jp/article/1139197|website=中日新聞Web|access-date=2025-09-30|language=ja}}</ref><ref name=":1" />。
==== 死刑判決 ====
[[判決 (日本法)|判決]]公判は10月14日に開かれ、長野地裁は事件当時のAには完全責任能力があったと認定、Aを死刑とする有罪判決を言い渡した<ref name="信濃毎日新聞20251015">『信濃毎日新聞』2025年10月15日朝刊1頁「中野4人殺害 死刑 完全責任能力 認定 長野地裁判決 弁護側 控訴の方針 被告は「控訴したくない」」(信濃毎日新聞社)</ref><ref name="朝日新聞20251014">『朝日新聞デジタル』2025年10月14日配信 塩原賢 小山裕一 高木文子「[https://www.asahi.com/articles/ASTBB2G29TBBOXIE02JM.html 男女4人殺害の罪、被告に死刑判決 長野地裁、完全責任能力を認める]」(朝日新聞東京本社)</ref>。長野地裁の裁判員裁判で言い渡された死刑判決は、2010年3月に発生した長野市一家3人殺害事件の裁判で、2011年3月と同年12月に3被告人(最終的に2人は死刑、1人は無期懲役が確定)に言い渡されて以来4例目で、同日時点で地裁単位では[[大阪地方裁判所]]に次いで2番目に多いものとなっている<ref name="信濃毎日新聞202510152">『信濃毎日新聞』2025年10月25日朝刊第二社会面26頁「死刑存廃 割れる議論 長野地裁 4例目 全国2番目水準」「司法精神医学専門家 妄想の影響 検討必要」(信濃毎日新聞社)</ref>。
地裁は[[判決理由]]で、検察官の精神鑑定医の意見は高い信頼性が認められるとしてそれを採用した一方、弁護人の鑑定医の意見については「根拠に基づいておらず、推論の域を出ない」として退けた上で、犯行時のAには妄想性障害があり、WとXの2人から「ぼっち」などと悪口を言われたという妄想が動機形成の要因になったが、その妄想は殺害を思い立たせるような内容ではなかったと指摘した<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。また、Y・Zの殺害については、臨場した警察官に対抗しようという考えが殺害の動機であり<ref name="判決要旨">『信濃毎日新聞』2025年10月15日朝刊総合面6頁「中野4人殺害 長野地裁判決の要旨」(信濃毎日新聞社)</ref>、その行為の実行に対しては妄想は直接影響していないと指摘した<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。その上で、被害者4人の殺害については凶器を効果的に用いて目的を遂げ、また一連の殺害行為の前後には凶器を取りに自宅に戻ったり、倒れている被害者を台車で自宅敷地に運んだりするなど、自身の感情や思惑に従って行動しており、「悪口を言われた」という妄想の部分を除けば、事態の変化にそぐわない奇異な言動は見られないと評し<ref name="判決要旨" />、犯行におよんだのは基本的にA自身の意思であると[[事実認定|認定]]した<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。またAが母親に「絞首刑になるのは嫌」と話したことから、Aは行為の重大さや見込まれる刑罰の重さを正しく認識しており、善悪判断や行動制御の能力も問題なく保っていたと認定<ref name="信濃毎日新聞20251015"/>、最高裁が1983年に示した[[永山基準|死刑適用基準]]に照らしても死刑はやむを得ないと結論づけた<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。
村松太郎([[慶應義塾大学大学院医学研究科・医学部|慶應義塾大学医学部]]精神神経科司法精神医学研究員)はこの判決について、(同日時点から見て)近年の重大事件の裁判では、犯行動機には妄想が影響したものの、犯行そのものは本人の意思であるとする責任能力の認定の動向があると指摘し、この判決もその動向に則ったものであると評した<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。また村松は、[[京都アニメーション放火殺人事件]]の刑事裁判ではこの判決と同様の理由で完全責任能力が認定され、死刑判決が言い渡された一方、[[淡路島5人殺害事件]]の控訴審で[[大阪高等裁判所|大阪高裁]]が「動機が妄想によって形成された以上、妄想の犯行への影響は極めて大きかったと言える」として心神耗弱を認定、完全責任能力を認定して死刑とした原判決を破棄し、無期懲役を言い渡したという事例もあると指摘している<ref name="信濃毎日新聞202510152"/>。
Aの弁護人は判決直後に[[控訴]]の意向を表明したが、Aは判決後に弁護人と接見した際、当初は控訴したくないと話していた<ref name="信濃毎日新聞20251015"/>。しかし弁護人は説得を続け、最終的にA本人も控訴することに応じたため、同月27日付で事実誤認と[[量刑]]不当を理由に[[東京高等裁判所]]へ控訴した<ref name="信濃毎日新聞20251028">『信濃毎日新聞』2025年10月28日朝刊第9版第一社会面27頁「中野4人殺害 控訴 弁護団 「死刑に不服」被告も同意」「猟銃情報 把握し現場へ 県警、事件受け仕組み導入」(信濃毎日新聞社)</ref>。Aは今後、長野県内の拘置所から[[東京都]]内の拘置所へ移送され、同日時点の弁護団との面会は難しくなるが、主任弁護人の今村は「控訴審での弁護団の構成は未定」と述べている<ref name="信濃毎日新聞20251028"/>。
== 反応 ==
[[内閣官房長官]]の[[松野博一]]は、5月26日の記者会見において、事件について「ご冥福を申し上げるとともに、ご遺族に心よりお悔やみを申し上げる」と哀悼の意を表した上で、「現在、警察において犯行の経緯、背景を含め事件の全容解明に向け捜査を進めている」とし、「政府としては、銃器犯罪の根絶のため、引き続き関係機関が連携して対策を推進していく考えである」と述べた<ref>{{Cite news|title=長野立てこもり 「事件の全容解明に向け捜査中」と松野官房長官|newspaper=毎日新聞|date=2023-05-26|url=https://mainichi.jp/articles/20230526/k00/00m/040/083000c|accessdate=2023-05-26}}</ref><ref>{{Cite news|title=【速報】長野4人死亡立てこもり事件うけ 松野官房長官「銃器犯罪根絶のため対策を推進」「厳しい規制は治安の根幹」|newspaper=TBS NEWS DIG|date=2023-05-26|url=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/507304|accessdate=2023-05-26}}</ref>。
事件後にAやその両親と面談した公認心理師は裁判で、Aの両親は人間関係を苦手としていた息子の特性に向き合わず、人との交流や学歴などを求めたのではないかと証言しており、その背景としては家父長的な意識が残る地域で長男に生まれたAに対し、両親は協調性やリーダーシップを持った人に育てなければというプレッシャーを抱えていたのではないかと評している<ref name="信濃毎日新聞20251018"/>。
== 影響 ==
中野市議会は事件から約1か月後の2023年6月23日、かねてから検討していた「犯罪被害者等支援[[条例]]」を制定、同年4月1日以降に発生した事件の犯罪被害者や家族への経済的支援(支援金の支給、市営住宅への優先的入居など)を行うこととした<ref>『NBSニュース』2023年6月23日配信「[https://www.nbs-tv.co.jp/news/articles/?cid=14573 警察官含む4人死亡 中野市「犯罪被害者等支援条例」成立 経済的支援など 今回の事件も適用]」([[長野放送]])</ref>。また中野市以外の県内各自治体でも、事件を機に同様の条例を制定する動きが広まり、事件から約1年の2024年5月時点では県内全77市町村のうち、69の自治体で既に同様の条例が制定されているか、同年度中に条例が制定される見込みであると報じられている<ref>『中日新聞』2024年5月25日配信「[https://www.chunichi.co.jp/article/903378 長野・中野4人殺害、事件後に体制整備加速 犯罪被害者支援条例に69市町村]」(中日新聞社 長尾明日香)</ref>。
また被害者となった警察官2人は、犯人が猟銃を所持していることを知らないまま犯人に接触しており、当時は拳銃も携帯していなかったことなどから、初動を問題視する声が上がり、[[警察庁]]は県警に対し、猟銃所持許可者の情報を通信指令に活用することを検討するよう指示した<ref name="信濃毎日新聞20251028"/>。これを受けて県警は2023年度に、傷害や暴力事案などで110番通報を受けた際、現場周辺に猟銃所持の許可者の登録があるかどうかを通信指令課が確認し、許可者が事件に関与しているかどうかわからない場合でも現場に向かう警察官に対し、「周辺に銃砲情報あり」などと伝達し、防弾装備品の着用や近隣住民の避難を促す仕組みを導入した<ref name="信濃毎日新聞20251028"/>。
== 関連事件 ==
=== 朝日新聞記者による立てこもり中の
長野県警は2023年6月23日、
== 脚注 ==
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* [[日本における銃犯罪一覧]]
* [[日野基本射撃場発砲事件]] - 本事件から3週間後の2023年6月14日に発生した銃殺事件。
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[[Category:令和時代の殺人事件]]
[[Category:日本の人質事件]]
[[Category:日本における銃乱射事件]]
[[Category:日本の警察官が殉職した事件・事故]]
[[Category:日本で死刑判決が宣告された事件]]
[[Category:2023年の日本の事件]]
[[Category:中野市の歴史|
[[Category:2023年5月]]
[[Category:2023年の長野県]]
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