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{{複数の問題
{{Wikify|date=2019年5月}}{{性的指向}}
| 出典の明記 = 2025年7月13日 (日) 12:50 (UTC)
| 独自研究 = 2025年7月13日 (日) 12:50 (UTC)
}}
{{Expand English|Animal sexual behaviour|date=2024年5月}}
'''動物の性行動'''(どうぶつのせいこうどう)では、動物の性行動について述べる。動物の性行動は、同じ[[種 (分類学)|種]]のあいだでさえ様々な[[形態]]がある。
 
==概要==
'''動物の性行動'''(どうぶつのせいこうどう)には同じ[[種 (分類学)|種]]のあいだでさえ様々な[[形態]]がある。研究者は[[一夫一婦制|一夫一婦]]あるいは[[一夫多妻制|多妻]]、種を越えた[[交尾]]、[[物体]]または場所による性的[[覚醒]]、[[強迫]]または[[強制]]によると思われる交尾、[[屍姦|死んだ個体]]との交尾、[[同性愛]]的・[[異性愛]]的・[[両性愛]]的行動、状況に応じた[[性行動]]などを[[観察]]してきた。関連する研究は[[間性]]および[[トランスジェンダー]]の動物のように肉体の[[性別]]および行動の[[ジェンダー]]における[[多様性]]を示している。
 
動物の[[性]]に関する研究(とくに[[霊長目|霊長類]]の性研究)は急速に発達した分野である。以前は[[ヒト|人間]]および一握りの種だけが[[生殖]]とは関係のない[[性行為]]をおこない、[[動物]]の性は[[本能]]的であり、[[視覚]]や[[嗅覚]]への「適当な」[[刺激]]に反応しているだけだと信じられていた。
 
しかし、[[現在]]では次のようなことがわかっている。

# [[単婚]]だと信じられていた多くの種が今や元来[[一夫多妻制|一夫多妻]]または[[日和見主義]]だと証明されてうこと
# 広範囲の種が[[自慰]]をなし、自慰の際には道具となる物体をつかうことが明らかになっているたこと
# 多くの種の[[動物]][[生殖]]を目的としないで、互いに性的刺激を与えたり受けたりしているたこと

そして、500の種では同性愛的行動も観察されている。
 
== 配偶システム ==
[[社会生物学]]および[[行動生態学]]では、[[配偶システム]]という用語は[[動物]]の社会が性行動に関してどのような構造になっているのかを記述するのに用いられている。配偶システムは、いかなる状況のもとで、どの[[雄]]がどの[[雌]]と[[つがい]]になるのかを明示する。
{| class="wikitable"
|+配偶システムの基礎的分類<ref>{{Cite book|和書 |title=Fishes, An Introduction to Ichthyology. 5th Ed. |year=2004 |publisher=Benjamin Cummings |pages=160-161 |isbn=978-0-13-100847-2 |author=Moyle PB and Cech JJ}}</ref>
!
!1体のメス
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|-
!1体のオス
|一夫一妻、単婚(Monogamy)<ref>{{lang-en|links=no|monogamy}}</ref>
|一夫多妻(Polygyny)<ref>{{lang-en|links=no|polygyny}}</ref>
|-
!複数体のオス
|多夫一妻(Polyandry)<ref>{{lang-en|links=no|polyandry}}</ref>
|乱婚<ref>{{lang-en|links=no|poygynandry}}</ref>
|乱婚(Poygynandry)
|}
[[動物]]について一般に認識されている配偶システムは次の通りである。
 
*[[単婚]]:1頭のオスと1頭のメスが排他的な[[つがい]]の関係になる。
*[[複婚]]:1頭または複数のオスが1頭または複数のメスと[[排他的]]な関係をもつ。これには次の3つの類型がある。
**[[一夫多妻]]:1頭のオスが2頭以上のメスと排他的な関係をもつ。これまで研究されてきた[[脊椎動物]]でもっともありふれた複婚的配偶システムである。
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**[[多夫多妻]]:2頭以上のオスが2頭以上のメスと排他的な関係をもつ。オスとメスの数は同じである必要はない。これまで研究されてきた[[脊椎動物]]では通常オスのほうが少ない。
*[[乱婚]]:社会集団内でどのオスとメスもつがいになる。
 
<!--
=== 単婚 ===
==== 社会的単婚 ====
=== 一夫多妻 ===
=== 乱婚 ===
=== 動物の性行動の季節的性質 ===
== 動物の性行動の解釈 ==
== 快楽のための性 ==
== 活動の類型 ==
=== 自慰 ===
=== オーラルセックス ===
=== 同性愛的行動 ===
=== 種を越えた交尾 ===
=== 性的フェティシズム ===
=== ポルノグラフィー ===
=== 交尾の強制 ===
=== おとなとこどもとの交尾 ===
=== 性的共食い ===
=== 屍姦 ===
== 特記すべき種 ==
== 種を越えた性的活動のほかの証拠 ==
-->
== 親から子への投資と生殖的成功 ==
多くの種で、メスとオスの性的行動は異なる。よくある場合として、[[交尾]]開始に際して、オスはメスよりも積極的であり、オスは[[視覚|視覚的]]な性的装飾を持つ(例:[[キジ]]における色鮮やかな羽)。これは卵に比して[[精子]]が小さく、生産に際してコストを要さないことを含む異型配偶の結果だと考えられている。この生理学的コストの差は、オスが(他の競争相手から守れる)交尾相手の数を生殖戦略上重視し、メスが交尾相手の遺伝子の質を生殖戦略上重視する、という[[ベイトマンの原理]]として知られている<ref>{{Cite journal|author=Bateman, A.J|year=1948|title=Intra-sexual selection in Drosophila|journal=Heredity|volume=2 (Pt. 3)|pages=349-368|doi=10.1038/hdy.1948.21|pmid=18103134}}</ref>。多くのメスは卵へのコストに加えて子育て(parental care)を行う。このため、メスは潜在的な繁殖成功(子育てにコストを費やし、子の生存可能性を高め孫世代の数を増やすこと)を重視する。[[タツノオトシゴ]]や[[チドリ目]]の[[レンカク科]]鳥類に見られるようなオスがより生殖的コストを費やす場合は、上記の役割が逆転し、メスがオスよりも攻撃的かつ明瞭な色の体色を持つようになる。
 
[[ミミズ]]など[[両性具有]]の動物においては、子育てのコストが両親に均一に分配される。また特定の種の[[プラナリア]](両性具有)においては、生殖行動が[[ペニスフェンシング]]の形態を取る。つまりペニスフェンシングによる交尾では、最初に他方の体をペニスで貫いた個体がオスとなり、貫かれた方の個体がメスとなる。このため、貫かれた方が生殖的コストの多くを負うことになる。特徴的な行動を持つ動物として[[ナメクジ]]の1種である[[バナナナメクジ]]が挙げられる。このナメクジは交尾後に時々、apophallationと呼ばれる精子競争行動の類型として、交尾相手のペニスを噛むことが知られている<ref>{{Cite journal|author=Miller, Brooke L. W|year=2007|title=Sexual conflict and partner manipulation in the banana slug, Ariolimax dolichophallus|journal=ProQuest Dissertations Publishing}}</ref>。仮説としては、これらのナメクジはオスの生殖機能喪失を補う形で、本来オスとしての生殖機能に向けられる余剰エネルギーをメスとしての生殖機能へ用いる、という説明がある<ref>{{Cite journal|author=K Jordaens, L Dillen, T Backeljau|year=2007|title=Effects of mating, breeding system and parasites on reproduction in hermaphrodites: pulmonate gastropods (Mollusca)|journal=Animal Biology|doi=10.1163/157075607780377965}}</ref>。[[マダラコウラナメクジ]]においては、コスト共有として特徴的な[[ディスプレイ行動]]を行う。このディスプレイ行動においては、交尾個体同士が粘液を木などから放出して地上から高い位置につり下がり、互いが卵を維持する役目から逃れられないようにするという物である<ref>{{Cite journal|author=Leonard, J. L|year=2006|title=Sexual selection: lessons from hermaphrodite mating systems|journal=Integrative and Comparative Biology|volume=46(4)|page=349-367|doi=10.1093/icb/icj041}}</ref>。
 
== 季節性 ==
多くの種は、子の誕生から育成までを理想的な時期に行う目的で、特定の交尾期を持つ。サンゴ・ウニ・貝類といった移動能力が限られかつ体外受精を行う海洋生物においては、精子・卵といった[[接合子]]を海中へ放出する行動が、人間の眼から観察し得る唯一の性行動となる。
 
[[基礎生産]]量が継続して高い地域では、年中を通じて連続した殖期を持つ種も存在する。この例は多くの[[熱帯]][[亜熱帯]]生息の[[霊長目|霊長類]]に観られる。また環境が繁殖に好ましいかどうかを考慮する日和見殖型の動物の一部は、時間以外の要因を考慮して繁殖する。例えば[[イスカ]]では、食料が豊富な時に繁殖するが、夏に繁殖能力の活性化が起こり、秋頃に繁殖期が終わるというパターンが観られた<ref>{{Cite journal|last=Hahn|first=Thomas P.|dateyear=1998|title=Reproductive Seasonality in an Opportunistic Breeder, the Red Crossbill, Loxia curvirostra|url=https://www.jstor.org/stable/176828|journal=Ecology|volume=79|issue=7|pages=2365–2375|doi=10.2307/176828|issn=0012-9658}}</ref>。
 
=== 哺乳類の場合 ===
繁殖期は多くの場合、群れなどの構造の変化、あるいは個体間での[[縄張り|なわばり]]の変化など行動の変化に関連し、繁殖期が年1回の種(例:[[オオカミ]]<ref>{{Cite web |title=Gray Wolf |url=https://www.nwf.org/Home/Educational-Resources/Wildlife-Guide/Mammals/Gray-Wolf |website=National Wildlife Federation |access-date=2023-10-03 |language=en}}</ref><ref name=":0">{{Cite journal|last=Ortega-Pacheco|first=A.|last2=Segura-Correa|first2=J. C.|last3=Jimenez-Coello|first3=M.|last4=Linde Forsberg|first4=C.|date=2007-01-15|title=Reproductive patterns and reproductive pathologies of stray bitches in the tropics|url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0093691X06004432|journal=Theriogenology|volume=67|issue=2|pages=382–390|doi=10.1016/j.theriogenology.2006.07.020|issn=0093-691X}}</ref>)や、2回(例:[[イヌ]]<ref name=":0" />)、それ以上の種(例:[[ウマ]])が存在する。
 
==近親交配==
{{see also|近親交配}}
[[山極寿一]]は[[三浦雅士]]との対談において、かつて伊谷純一郎が「霊長類の社会構造」(1972年)で示した仮説としてインセスト回避が[[霊長類]]の社会構造の基礎であるという仮説があったが、その後この仮説は[[哺乳類]]一般まで普遍化が可能な代物であることがわかってきたとしている{{Sfn|山極|2015|pp=240 - 241}}。なお、山極寿一によれば、霊長類は普通オスが群れから出て行くインセスト回避の形式だが、人間により近い[[類人猿]]の場合メスが親元から出ていくためこの規則は当てはまらず、[[テナガザル]]や[[オランウータン]]ではメスもオスも親元から離れるのだが、[[ゴリラ]]では群れに残るオスがぼちぼちと出始め、[[チンパンジー]]や[[ボノボ]]に至っては群れから出て行くのはメスだけでオスはもっぱら群れに残るといったように父系重視の傾向が鮮明化するという{{Sfn|山極|2015|pp=54 - 56}}。また、ゴリラは親元に息子が留まり続けようとすると、父親と息子で交尾する相手が競合しかねないため、通常は息子は親元を離れるのだが、まれに父親が娘と交尾しないのを利用して、その父親の娘たちを交尾相手にして息子が親元に残る場合もあるとも山極寿一は述べる{{Sfn|山極|2015|pp=217 - 218}}。2015年、近親交配がアフリカ中部のマウンテンゴリラの生存に役立っているとする研究をクリス・タイラースミスらが発表した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/3045089|title=近親交配がマウンテンゴリラの生存に一役、研究 |work=[[フランス通信社|AFP]] |date=2015-04-10|accessdate=2015-04-17}}</ref>。
 
ボノボの母と息子の交尾類似行為を観察した橋本千絵と[[古市剛史]]は、この行為は母親に性的興味があってやっているというよりも、母親にかまって欲しくてやっている行為のようだと論じている<ref>『霊長類学を学ぶ人のために』(西田利貞・上原重男編、1999年) 240頁 ISBN 4-7907-0743-1</ref>。[[平山朝治]] (2003) は、人間は[[ネオテニー]][[進化]]を経た存在であるという見解について触れ、ボノボやチンパンジーでは性的に成熟した息子が母親と性交することはまず見られないものの、性的に成熟していなければ母親と性交する現象が確認できることから、ネオテニーの子供の場合では母親が息子のことをまだ子供だと錯覚しているため、より母と息子の近親交配が起こりやすいという仮説を立てている<ref>{{Cite journal|和書|url=https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/12.HIRAYAMA.pdf |format=PDF |author=平山朝治 |title=人間社会と精神の起源 |journal=[https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/index-j.html 東京家政学院筑波女子大学紀要] |issn=13426451 |publisher=筑波学院大学 |year=2003 |volume=7 |pages=159-177 |naid=110000074567 |accessdate=2021-05-10}}</ref>。
 
桑村哲生は、クマノミ類は親子のように見える三匹には実は血縁関係はなく、雌がいなくなると雄が雌に[[性転換]]し未成熟な第三個体と交配するという特性を持つと指摘した上で、[[カクレクマノミ]]を扱った『[[ファインディング・ニモ]]』を実際の話に置き換えると、育ての父親が母親になって育ての息子とカップルになる話になってしまうと論じている<ref>『性転換する魚たち サンゴ礁の海から』(桑村哲生、岩波書店、2004年) 22~24頁 ISBN 4-00-430909-3</ref>。[[元村有希子]]は桑村哲生の『ファインディング・ニモ』のたとえ話について、父親と息子が愛し合い子供をもうけることが問題視されるのは人間の世界の話であり、魚の世界の価値観に基づくものではないと指摘している<ref>『気になる科学』(元村有希子、KADOKAWA、2016年、原書2012年発行) 309頁 ISBN 978-4-04-601325-5</ref>。
 
[[アダクチリディウム]]などの[[ダニ]]の複数の種類、[[ギョウチュウ]]、様々な種類の昆虫は日常的に近親交配を行うことが知られている。ガイマイゴミムシダマシに寄生するダニは、親から雄と雌が1体50の割合で生まれるが、行動範囲が狭く他の家族と接触する機会がないため、同じ親から生まれた兄妹で近親交配を行う{{Sfn|ジャドソン|2004|p=239}}。[[トコジラミ]]も近親交配を日常的に行っており、一匹の妊娠した雌がいれば、その子供達同士で交尾し大規模に繁殖をすることができる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2845329|title=トコジラミ大繁殖の秘密は「近親交配」、米研究 |work=[[フランス通信社|AFP]] |date=2011-12-12|accessdate=2017-02-26}}</ref>。哺乳類においても、[[シママングース]]は近親交配を日常的に行っており、父親と娘が近親交配していることも観察されている。これは、一つの血縁関係のあるグループ内で近親交配をした方が、家族から離れ、他のグループの成員を探しに行くことで死亡するリスクを支払うことより利益が大きいからだという<ref>{{Cite web |url=http://www.techtimes.com/articles/22981/20141226/scientists-find-a-mammal-species-that-practices-incest-frequently.htm|title=Scientists Find Mammal Species that Practices Incest Frequently |work=TECH TIMES |date=2014-12-26|accessdate=2017-02-26}}</ref>。明治時代の日本の[[トキ]]のように人為的な理由から近親交配に追いやられた動物もいるが、結局最後の日本のトキだった[[キン (トキ)|キン]]が2003年に死に、全滅してしまった{{Sfn|酒井|2015|p=251}}。酒井仙吉は、[[ニワトリ]]では近親交配によって受精率の低下などがみられ、ヒトでも同様の現象が起こると述べている{{Sfn|酒井|2015|p=250}}。
 
== 脚注 ==
{{reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書 |author=山極寿一 |title=父という余分なもの サルに探る文明の起源 |publisher=新潮社 |year=2015 |origyear=1997 |isbn=978-4-10-126591-9 |ref={{SfnRef|山極|2015}} }}
* {{Cite book|和書 |author=酒井仙吉 |title=哺乳類誕生 乳の獲得と進化の謎 驚異の器官がうまれるまで |publisher=講談社 |year=2015 |isbn=978-4-06-257898-1 |ref={{SfnRef|酒井|2015}} }}
* {{Cite book|和書 |author=オリヴィア・ジャドソン |title=ドクター・タチアナの男と女の生物学講座 |publisher=[[光文社]] |year=2004 |isbn=978-4-334-96165-7 |ref={{SfnRef|ジャドソン|2004}} }}
 
== 関連事項 ==
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*[[フリーマーチン]]
*[[性行為]]
*{{ill2|動物の非生殖的性行動|en|Non-reproductive sexual behavior in animals}} - 生殖目的以外の性行動について。
 
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{{DEFAULTSORT:とうふつのせいこうとう}}