「パラフィン系エンジンオイル」の版間の差分

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通常[[エンジンオイル]]などの[[潤滑油]]はパラフィン系の直鎖状の組成を成すが、近年、パラフィン系潤滑油が貴重かつ特殊なオイルである様な情報が[[インターネット]]を通じて広まっている。これはかつて[[ペンシルベニア州]]から採掘されるパラフィン系原油から精製したベースオイルが高粘度指数(100)を誇り、[[ペンシルバニア産エンジンオイル]]が高品質の証であったことからの誤解である。'''パラフィン系原油=パラフィン系潤滑油'''ではない。現代では水素化分解(異性化分解・[[フィッシャー・トロプシュ法]] ハイドロクラッキング=VHVI等)の高度精製の技術が発達し、[[原油]]の産地に関係なく高粘度指数の[[ベースオイル]]が生産できるようになった。また、パラフィン系潤滑油・エンジンオイルは特別なオイルでなく、一般的に使用される潤滑油の殆どがパラフィン系(パラフィンリッチ=パラフィン組成の割合が多い油)である。ナフテン系(環状の組成の割合が多い油)の[[エンジンオイル]]は存在しない。
 
インターネットによる影響で「[[アメリカ]]がパラフィン系オイルの輸出を制限したため、パラフィン系オイルを模して[[ヨーロッパ]]で[[エステル]]油が開発された」という情報が広まっているが、そのような事実はない。また、ナフテン系、パラフィン系にかかわらず、鉱物油が[[ジェットエンジン]]に使用されることはない。鉱物油ではエステルの代替には使えず、エステルと鉱油では組成も異なる。(ジェットエンジンにはジエステル <[[MIL]]-L-7808・TYPEⅠ>や、ポリオールエステル<MIL-L-23699 TYPEⅡ>が採用されている)
 
「日本で精製されるオイルは[[中東]]([[中近東]])産のナフテン系原油を用いているために低品質であるに対して、[[北米]]産のオイルはパラフィン系原油から精製される故に高品質」という認識もまたインターネットなどを通じて広まっている。しかし、粘度指数の基準となるアメリカのオイルでも、東側のペンシルベニアのパラフィン系原油から精製されたベースオイルが粘度指数が100であり、西側の[[ガルフコースト]]の原油はナフテン系で、これから精製されたベースオイルは粘度指数が0である。
(総合的に見て、[[化学合成油]]は[[鉱物油]]より遥かに品質が高い。パラフィン=[[ワックス]]・蝋分は凝固しやすく、流動点を下げてしまうので、精製過程においてむしろ除去すべきものであり、「パラフィンは摺動面に絡み付いてドライスタート(コールドスタート)時の摩耗を防ぐ」という宣伝文句の理屈は成り立たない。ドライスタート時の摩耗の防止は極性を持ち、吸着力のある[[エステル]]の方が有利に働く。) 鉱物油が化学合成油の[[PAO]]やエステルに対する優れた点といえば、化学合成に対応していない旧車のオイルシールや、劣化や加工精度の悪さに起因する[[パッキン]]からのオイル漏れや滲みが少ないこと、油膜の暑さからくるミッションオイル([[ギヤオイル]])に用いた場合のショックの緩和などが挙げられる。
また一部の業者が某アメリカ製のエンジンオイルを「パラフィン系!」と称し、製造元でさえ保障していないロングライフなどをセールスアピールをしているが、アメリカ本国のホームページを確認してもそのような記載はなされていない。またアメリカにおいては通常一般的なモーターオイルの販売価格で取引されている。中には10万キロ以上無交換をアピールしている業者もあるが、これは一度の走行距離が極めて長く、[[ハイウエイ]]を一定速度で走行するような負荷が低く、かつオイル容量も多い長距離トラック用途に限定されている。また近年ヨーロッパでは超ロングドレインなオイルが用いられているが、これは化学合成油であることが前提となっている。