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メタ倫理学: リチャード・ガーナーとバーナード・ローゼン 出典
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{{参照方法|date=2021年7月}}
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'''倫理学'''(りんりがく、{{lang-en|ethics}}、{{lang-la|ethica}})または'''道徳哲学'''<ref name=『百科事典マイペディア』「倫理学」>[https://kotobank.jp/word/%E5%80%AB%E7%90%86%E5%AD%A6-150514#:~:text=%E8%BE%9E%E5%85%B8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%80%E6%83%85%E5%A0%B1-,%E7%99%BE%E7%A7%91%E4%BA%8B%E5%85%B8%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%9A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%8C%E5%80%AB%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%80%8D,-%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC 『百科事典マイペディア』「倫理学」]</ref>(どうとくてつがく、{{lang-en-short|moral philosophy}})、'''道徳学'''<ref name=『百科事典マイペディア』「倫理学」/>(どうとくがく)は、行動の[[規範]]となる物事の[[道徳]]的な評価を検討する[[哲学]]の一分野。
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[[File:Jeremy Bentham by Thomas Frye.jpg|thumb|ジェレミー・ベンサムの肖像画。1760–1762]]
倫理の定義には、人の思考や行動において、何が正しく何が間違っているのか、人はどう生きるべきか、などをあげることができる<ref>[https://study.com/academy/lesson/what-is-morality-definition-principles-examples.html what-is-morality-definition]  study.com 2024年4月4日閲覧</ref>。倫理学の研究対象とは[[道徳]]の概念によって見定めることができる。この道徳の定義の問題に対して異なる見解が示されているが、一般的に道徳とは社会において人々が依拠するべき[[規範]]を確認するものである。しかし、道徳とは[[理性]]によりもたらされるものであるのか、[[感情]]によってもたらされるものであるかについては議論が分かれている。
スコットランドの哲学者である[[デイヴィッド・ヒューム]](『[[人間本性論]]』)は、哲学的経験主義、懐疑主義、自然主義で知られている<ref>Maurice Cranston, and Thomas Edmund Jessop. [https://www.britannica.com/biography/David-Hume#toc12268  David Hume]. Retrieved 5 April 2024</ref><ref>Harris, M. H. 1966. "David Hume". ''Library Quarterly'' 36 : 88–98.</ref>。ヒュームを拠り所とする論者は、事実についての「である」という言明([[命題]])のみから規範についての「であるべき」という言明を結論付けることは論理的にできない、と説く。これは[[ヒュームの法則]]とも呼ばれる主張であり、理性によって道徳的な判断を導くことは不可能であると考える。ヒュームは道徳的な判断が感情に起因するものであるという立場にあり、より厳密には自身の利益から道徳性が発生したとも論じている。[[イマヌエル・カント]]は理性から道徳法則を導き出している。カントは道徳性を[[自由]]選択と関連づけて理解しており、人間は自分自身の理性に従う時にだけ自由になることができると考える。そして理性によって人格として行為するための道徳的な規範の[[実在]]が主張される。このような道徳性の根源についての研究は[[メタ倫理学]](meta-ethics)の研究として包括することができる。一方でカントは倫理に反する反ユダヤ主義の思想を持っていたことも、よく知られている<ref>レオン・ポリアコフ III「反ユダヤ主義の歴史 ,p.248~251.</ref><ref>下村由一「ドイツのおける近代反セム主義~」 1972, p.111~112.</ref>
 
また道徳性の具体的な内容については[[規範倫理学]](normative ethics)という研究領域で扱われている。この領域で古典的アプローチの一つに[[徳倫理学]]がある。[[プラトン]]や[[アリストテレス]]の研究はその中でも最も古い研究であり、彼の分析は人間に固有の特徴に基づいた[[徳|美徳]]を中心に展開している。例えば危機に際して蛮勇でも臆病でもなく、その中庸の勇敢さを発揮する人間の特性を指して美徳と呼ぶ。このような研究に対して[[義務論]]の学説は道徳規則に基づいている。カントは人間の道徳法則としてどのような場合においても無条件に行為を規定する[[定言命法]]という原理を提唱した。この立場において人間は実在する道徳規則に対して従う義務を負うことが主張される。また義務論と反対の立場に置くことができる立場として[[帰結主義|結果論]]の立場がある。この立場に立った[[功利主義]]の理論が[[ジェレミー・ベンサム]]によって提示されている。ベンサムによれば、行為を正当化する時の判断の基準点とは行為によってもたらされる結果であり、具体的には[[効用]]によって計算される。ベンサムは行為がもたらす快楽の程度を最大化するように行為する最大多数の最大幸福の原理を提唱した。
 
==歴史==
===ヨーロッパ===
イタリアのトマス・アキナス、ドイツのカント、イギリスのホッブス、ベンサム、ミルらが倫理の発展に貢献した。ベンサム、ミルが唱えたのが功利主義である。
[[イマヌエル・カント]]は理性から道徳法則を導き出している。カントは道徳性を[[自由]]選択と関連づけて理解しており、人間は自分自身の理性に従う時にだけ自由になることができると考える。そして理性によって人格として行為するための道徳的な規範の[[実在]]が主張される。このような道徳性の根源についての研究は[[メタ倫理学]](meta-ethics)の研究として包括することができる。一方でカントは倫理に反する反ユダヤ主義の思想を持っていたことも、よく知られている<ref>レオン・ポリアコフ III「反ユダヤ主義の歴史 ,p.248~251.</ref><ref>下村由一「ドイツのおける近代反セム主義~」 1972, p.111~112.</ref>。
 
また道徳性の具体的な内容については[[規範倫理学]](normative ethics)という研究領域で扱われている。この領域で古典的アプローチの一つに[[徳倫理学]]がある。[[プラトン]]や[[アリストテレス]]の研究はその中でも最も古い研究であり、彼の分析は人間に固有の特徴に基づいた[[徳|美徳]]を中心に展開している。例えば危機に際して蛮勇でも臆病でもなく、その中庸の勇敢さを発揮する人間の特性を指して美徳と呼ぶ。このような研究に対して[[義務論]]の学説は道徳規則に基づいている。カントは人間の道徳法則としてどのような場合においても無条件に行為を規定する[[定言命法]]という原理を提唱した。<ref>[https://kotobank.jp/word/%E5%AE%9A%E8%A8%80%E7%9A%84%E5%91%BD%E4%BB%A4-574137#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29 「定言的命令」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)]、小学館</ref><ref>精選版 定言的命令[https://kotobank.jp/word/%E5%AE%9A%E8%A8%80%E7%9A%84%E5%91%BD%E4%BB%A4-574137#E7.B2.BE.E9.81.B8.E7.89.88.20.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9B.BD.E8.AA.9E.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E5.85.B8 「定言的命令」 - 精選版 日本国語大辞典]</ref><ref>小学館デジタル大辞泉_定言的命令|[https://kotobank.jp/word/%E5%AE%9A%E8%A8%80%E7%9A%84%E5%91%BD%E4%BB%A4-574137#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 「定言的命令」 - デジタル大辞泉]、小学館</ref>この立場において人間は実在する道徳規則に対して従う義務を負うことが主張される。また義務論と反対の立場に置くことができる立場として[[帰結主義|結果論]]の立場がある。この立場に立った[[功利主義]]の理論が[[ジェレミー・ベンサム]]によって提示されている。ベンサムによれば、行為を正当化する時の判断の基準点とは行為によってもたらされる結果であり、具体的には[[効用]]によって計算される。ベンサムは行為がもたらす快楽の程度を最大化するように行為する最大多数の最大幸福の原理を提唱した。
 
===ギリシア・ローマ===
[[古代ギリシア]]の[[伝統]]・[[神話]]に囚われない[[哲学]]的営みは、[[アナトリア半島]]([[小アジア半島]])西海岸の[[イオニア学派]]に始まる「[[自然哲学]]」と、[[イタリア半島]]南部([[マグナ・グラエキア]])の[[イタリア学派 (ギリシア哲学)|イタリア学派]]([[ピタゴラス学派]]・[[エレア派]])に始まる「[[数理哲学]]・[[論理哲学]]」という2つの潮流が主導する形で始まった<ref>{{cite book |last1=Audi |first1=Robert |title=The Cambridge Dictionary of Philosophy |publisher=Cambridge University Press |url=https://philpapers.org/rec/AUDTCD-2 |chapter=Philosophy of logic}}</ref><ref>{{cite web |title=Philosophy of logic |url=https://www.britannica.com/topic/philosophy-of-logic |website=www.britannica.com | access-date=8 April 2024 }}</ref> 。その中には、[[ピタゴラス学派]](ピタゴラス教団)のように宗教教団的色彩を帯びたり、[[ヘラクレイトス]]のようにその世界観と共に倫理を説く者もいたが、後世で大きな潮流を成すには至らなかった。<ref>大きな潮流にがならなかったが、これらが後述するプラトンの思想形成に一定の影響を与えた事実は見逃せない</ref>
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また、[[墨家]]は「[[兼愛]]」(平等愛)を倫理的徳目として掲げるなど、儒家と対比される。
 
===ヨーロッパ===
イタリアのトマス・アキナス、ドイツのカント、イギリスのホッブス、ベンサム、ミルらが学問の発展に貢献した。ベンサム、ミルが唱えたのが功利主義である。
 
=== 宗教からの分離 ===