削除された内容 追加された内容
m Bot作業依頼#Cite webの和書引数追加
m sp(雑草取り)WP:STY
11行目:
地球の公転軌道や歳差の変動が極地への日照量に影響を与え、その結果として氷期と間氷期の繰り返しが生じるという見方は、20世紀の初めにはすでに形成されていた<ref name=itou>{{Cite journal|和書|author=伊藤孝士、阿部彩子|year=2007|title=第四紀の氷期サイクルと日射量変動|journal=地学雑誌|volume=116|issue=6|page=|pages=768-782|doi=10.5026/jgeography.116.6_768}}</ref>。1920–30年代には[[ミルティン・ミランコビッチ|ミランコビッチ]]によって軌道変動に基づく日射量サイクルが定量的に求められた。1970年代までに地質学的な気候変動指標の研究が進み、時系列で記録されたデータから周期性を読み取る[[スペクトル解析]]の手法が確立すると、日射量のミランコビッチ・サイクルと氷期サイクルの関連性は広く認められるようになった<ref name=itou/>。その中で10万年周期の問題もまた浮上してきた<ref name=hays/>。ElkibbiとRialは2001年に、ミランコビッチの軌道強制モデルが持つ5つの難点の1つとして10万年の周期性を挙げた<ref>{{Cite journal|last=Elkibbi Maya, Rial Jose A|year=2001|title=An outsider's review of the astronomical theory of the climate: is the eccentricity-driven insolation the main driver of the ice ages?|journal=Earth-Science Reviews|volume=56|issue=1–4|pages=161–177|bibcode=2001ESRv...56..161E|doi=10.1016/s0012-8252(01)00061-7}}</ref>。
 
[[古気候]]の指標としておそらくもっとも有用なのは、[[Δ18O|Δδ<sup>18</sup>O]]で表される酸素の[[酸素の同位体|同位体]]{{仮リンク|同位体分別|en|Isotope fractionation|label=分別}}であろう。酸素分別は[[氷床]]の量と地球全体の温度によって主に制御されており、これに基づくタイムスケール([[海洋酸素同位体ステージ]])が作られている。
 
1976年にHaysらは、海底[[堆積物]]からのδ<sup>18</sup>O記録に基づいて、ミランコビッチ・サイクルに含まれる歳差および軌道傾斜の成分は古気候記録に線形の影響(直接比例)を与える一方で、10万年周期の離心率成分は系の非線形性を通じて「ペースメーカー」の役割を果たしていると論じた<ref name=hays>{{Cite journal|last=Hays|first=J.D.|last2=Imbrie|first2=John|last3=Shackleton|first3=N.J.|date=1976-12-10|title=Variations in the Earth's Orbit: Pacemaker of the Ice Ages|url=http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/194/4270/1121|journal=Science|volume=194|issue=4270|pages=1121–32|accessdate=2007-05-09|bibcode=1976Sci...194.1121H|doi=10.1126/science.194.4270.1121|pmid=17790893}}</ref>。
17行目:
1990年代末には、南極[[ボストーク基地]]で採取された[[氷床コア]]中の空気や海底堆積物の[[有孔虫]]化石からδ<sup>18</sup>O記録を得ることができるようになり、氷床体積と温度の両方に影響を与える日射量との比較が行われ始めた。[[ニコラス・シャックルトン|シャックルトン]]は2000年の論文で、ボストーク氷床コアから得られた大気δ<sup>18</sup>O記録のタイムスケールを軌道強制の推定値によってチューニングし、さらに軌道強制への線形応答と見られる成分(直接比例成分)を[[スペクトル解析]]によって特定し、差し引いた。残った信号を同様に処理した海洋コア同位体記録と比べることで、氷床体積、深海温度、そして[[ドール効果]]による信号への寄与が分離された<ref name="Shackleton2000"/> 。
 
こうして得られた氷床体積記録には10万年周期の変動成分が見られ、サンゴの[[年代測定]]に基づく[[海水準変動|海水準記録]]と一致した。また周期の起源が軌道離心率であった場合に予想されるように、離心率の変動を数千年のタイムラグで追いかけていることが分かった。その一方、深海温度記録は離心率の変動と同期しており、南極温度やCO<sub>2</sub>濃度の記録も同様だった。これにより、離心率は気温・深海温度・CO<sub>2</sub>濃度に対して、地質学的な時間スケールでは即時的な影響を与えていると見られた。シャックルトンは「軌道離心率の効果は、おそらく大気CO<sub>2</sub>濃度への影響を通じて古気候記録に入ってくる」と結論した<ref name="Shackleton2000">{{Cite journal|last=Shackleton, N.J.|author-link=Nicholas Shackleton|year=2000|title=The 100,000-Year Ice-Age Cycle Identified and Found to Lag Temperature, Carbon Dioxide, and Orbital Eccentricity|journal=Science|volume=289|issue=5486|pages=1897–1902|bibcode=2000Sci...289.1897S|doi=10.1126/science.289.5486.1897|pmid=10988063}}</ref>。
 
== 10万年問題を説明する仮説 ==