「加速器駆動未臨界炉」の版間の差分

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日本国内では、放射性廃棄物処理のために[[オメガ計画]]の一環として検討が進んでいる。京都大学原子炉実験所(現・[[京都大学複合原子力科学研究所]])にて、既存の原子炉に、加速器を併設しトリウムに囲まれた[[タングステン]]ターゲットに対して陽子線を照射する実験を行った<ref>[http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/KART/ads/adsgk/adsgk_pre_g.html KUCA既設加速器を用いたADS予備実験]</ref>。また、[[J-PARC]]において、[[マイナーアクチノイド|MA]]の核変換処理目指して液体[[ビスマス]]ターゲットに照射する実験が計画されている<ref>[http://j-parc.jp/Transmutation/ja/ads-j.html 核変換実験施設とは]</ref>。
 
2017年現在、日本で想定されている炉は10万kWを給電する[[FFAG型加速器]]を使って最大3万kwkWの陽子ビームを照射、核分裂による熱エネルギー80万kWを経て電気出力27万kWを発電し、自己使用した残りの17万kwkWを電力網に売電するものである。この加速器駆動未臨界炉1基で既存の電気出力100万kwkW級軽水炉10基が排出する高レベル廃棄物の処分が可能である<ref>[http://www.heas.jp/lecture/files/tujimoto.pdf 加速器駆動核変換システム(ADS)に関する研究開発の現状と将来計画]p15-16 日本原子力研究開発機構 辻本 和文 高エネルギー加速器科学研究奨励会第7回特別講演会 平成29年10月12日</ref>。
 
== 利点 ==
;[[原子核変換|核変換技術]]の実現
:[[TRU廃棄物]]や中性子吸収が大きすぎて燃料としては放棄されてきたウラン・プルトニウム近縁の核分裂物質に対し人工的に中性子を吹き込み核分裂させることで、熱の回収や半減期30年程度と短い核分裂生成物への変換ができる。これにより数万年に渡る保存が必要な放射性廃棄物の量を削減できる。同様の変換は[[高速増殖炉]]でも可能だが、これらは燃料の5%しか超長半減期核種を混入できない。これに対し加速器駆動未臨界炉ならば燃料の60%以上を超長半減期核種とできる。
:また、[[プルサーマル]]に使用できなくなった高次化プルトニウムも燃焼可能であり、高速増殖炉無しでもU238(ウラン238(劣化ウラン)をプルトニウムに変化させて燃やしてウランを有効利用する[[核燃料サイクル]]を完成することができる。
 
;高安全
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:現在日本で構想されているものは溶融金属(鉛ビスマス)を水で冷やす設計である。2次冷却が水の場合、水素あるいは水蒸気爆発の危険が存在する。
;鉛ビスマスの腐食性
:ターゲットとして用いられる鉛ビスマスは、ナトリウムのように水と反応して水素を発生する金属ではしたりしく、いため事故時に水をかけても危険性は低い。しかし鉄よりイオン化傾向が低いために、容器の鋼材が腐食したり、腐食剥離物や液体金属酸化物でスラグが発生する問題がある。そこで鉛ビスマス中の酸素濃度を電子制御管理することが、腐食やスラグ発生抑止に有効だと判明している。ソ連では原子力潜水艦で実績もある。<ref>{{Cite web|和書|title=鉛冷却炉研究の現状と発展の展望(その1) {{!}} SciencePortal China |url=https://spc.jst.go.jp/hottopics/1704/r1704_wu01.html |website=spc.jst.go.jp |access-date=2022-06-18}}</ref>流路設計では、プール型(圧力容器に2次冷却材熱交換器を内蔵した形式)で万一、機器故障でスラグが発生しても流路閉塞しない流路設計が採用されている。MYRRHAでは耐食性と耐熱性から[[燃料被覆管]]の材料には[[オーステナイト系ステンレス鋼]]が予定されている。
;ポロニウムへの対処
:ターゲットとして鉛ビスマスを使用した場合、[[中性子捕獲|中性子捕獲反応]]と[[ベータ崩壊]]によって[[ビスマス209]]から微量の[[ポロニウム210]]が発生するため、その除去が問題となる。対策として、ビスマスを使わず100%鉛を使い、早めにターゲットを交換することや、ベーキング技術の応用で解決可能との研究報告が出ている。また、東京工業大学を中心に鉛ビスマス冷却材の研究進展が著しい<ref>[http://wwwndc.jaea.go.jp/JNDC/ND-news/pdf72/No72-10.PDF 『鉛−ビスマス冷却材と keV 中性子捕獲断面積:α放射核210Poと210mBiの生成量評価のために』]。[[日本原子力研究開発機構]]核データ研究グループ「核データセンターニュース」第72号、2002年。</ref>。