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==== 三大原理に対する批判的見解 ====
今日、学校教育で教えられている日本国憲法前文に示された日本国憲法の三大原則、すなわち「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」は昭和29年(1954年)の[[鳩山内閣]]の時に日本の主権が回復され、憲法改正ないし自主憲法制定の気運が盛り上がった時に[[護憲派]]勢力が譲れない三つの原則として打ち出したものである{{Sfn|八木秀次|2003|p=17-18}}。[[宮沢俊義]]は著書の中で憲法には十六の原則があると書き、その師匠の[[美濃部達吉]]は憲法には四つの原則があると書いている{{Sfn|篠田英朗|2019|p=120}}。日本国憲法の三つの重要な考え方を示したのは文部省が[[浅井清]]に作成させた1947年の『[[あたらしい憲法のはなし]]』であり、その三つは民主主義、国際平和主義、主権在民主義であった{{Sfn|篠田英朗|2019|p=121-122}}。昭和28年に文部省が発行した社会科副読本の『[[あたらしい憲法のはなし|あたらしい憲法の話]]』では憲法前文に示された原則は「民主主義」と「国際平和主義」「主権在民主義」であった{{Sfn|八木秀次|2003|p=17}}。本文の項目では「民主主義とは」「国際平和主義」「主権在民主義」と同格に「天皇陛下」の項目として象徴天皇制の六大原則であった{{Sfn|八木秀次|2003|p=17}}。その後1960年代初頭に[[小林直樹]]によって公刊された教科書において現在の三大原理が見られるようになった{{Sfn|篠田英朗|2019|p=122}}。つまり三大原則という捉え方やその内容が「国民主権」「基本的人権の尊重」「戦争の放棄」に限定されるのは一般的ではないとされる{{Sfn|八木秀次|2003|p=17-18}}。今日では日本国憲法の基本原則を三つに限定する必要はないと言われている。前文冒頭の[[議会制民主主義]]や第一章の[[象徴天皇制]]、他に[[議院内閣制]]なども憲法の基本原則と捉えられるとも言われる{{Sfn|八木秀次|2003|p=18-19}}。前文中に明記されている「人類普遍の原理」は「国政は国民の厳粛な信託によるもの」という一大原理であるとする指摘もある{{Sfn|篠田英朗|2019|p=130-131}}。
 
[[宮沢俊義]]は著書の中で憲法には十六の原則があると書き、その師匠の[[美濃部達吉]]は憲法には四つの原則があると書いている{{Sfn|篠田英朗|2019|p=120}}。
もっとも、日本国憲法公布の日(1946年(昭和21年)11月3日)に発行された[[山浦貫一]]著・法制局閲・内閣発行『新憲法の解説』{{Efn|高見勝利によれば、憲法制定当時、大日本帝国憲法の半官的な逐条解説書である『憲法義解』に倣って、日本国憲法についても有権的解釈書を出すべきだとする意見が政府内で浮上したとされる{{Sfn|高見勝利|2013|p=154}}。しかしながら、国民主権の憲法について政府が有権的解釈書を作成することは望ましくないとして[[金森徳次郎]]国務大臣や[[入江俊郎]][[内閣法制局長官|法制局長官]]が反対したとされる{{Sfn|高見勝利|2013|pp=154-156}}。その結果、内閣([[内閣法制局|法制局]])の事業として、「啓蒙的な何か」を出すこととなり、[[渡辺佳英]][[参事官]]及び[[佐藤功]]参事官が『新憲法の解説』の第一次原稿を作成し、これに[[佐藤達夫 (法制官僚)|佐藤達夫]]法制次長と入江俊郎法制局長官の目を通したものが第二次原稿として作成されたとされる{{Sfn|高見勝利|2013|p=156}}。『新憲法の解説』の序には、[[吉田茂]]首相や金森徳次郎国務大臣によって、山浦貫一の「筆」と記載されているが、実際には、渡辺、両佐藤、入江のもとで起草・修正され、その間、山浦の筆が入り、法制局の責任で完成稿に至ったものとされる{{Sfn|高見勝利|2013|p=157}}。1946年12月11日付け読売新聞に掲載された高山書院(『新憲法の解説』を刊行)の広告では、「本書は新憲法起草者たる法制局の手にな」るものであると紹介されている{{Sfn|高見勝利|2013|p=157}}。}}は、日本国憲法の基調とするところは「民主主義」、「基本的人権擁護」、「戦争放棄」の三点であると明記しており{{Sfn|高見勝利|2013|p=88}}、憲法制定当初から内閣がこれら三点を日本国憲法の基本原理として捉えていたことが理解できる。
日本国憲法の三つの重要な考え方を示したのは文部省が[[浅井清]]に作成させた1947年の『[[あたらしい憲法のはなし]]』であり、その三つは民主主義、国際平和主義、主権在民主義であった{{Sfn|篠田英朗|2019|p=121-122}}。
昭和28年に文部省が発行した社会科副読本の『[[あたらしい憲法のはなし|あたらしい憲法の話]]』では憲法前文に示された原則は「民主主義」と「国際平和主義」「主権在民主義」であった{{Sfn|八木秀次|2003|p=17}}。本文の項目では「民主主義とは」「国際平和主義」「主権在民主義」と同格に「天皇陛下」の項目として象徴天皇制の六大原則であった{{Sfn|八木秀次|2003|p=17}}。その後1960年代初頭に[[小林直樹]]によって公刊された教科書において現在の三大原理が見られるようになった{{Sfn|篠田英朗|2019|p=122}}。
つまり三大原則という捉え方やその内容が「国民主権」「基本的人権の尊重」「戦争の放棄」に限定されるのは一般的ではないとされる{{Sfn|八木秀次|2003|p=17-18}}。
今日では日本国憲法の基本原則を三つに限定する必要はないと言われている。前文冒頭の[[議会制民主主義]]や第一章の[[象徴天皇制]]、他に[[議院内閣制]]なども憲法の基本原則と捉えられるとも言われる{{Sfn|八木秀次|2003|p=18-19}}。前文中に明記されている「人類普遍の原理」は「国政は国民の厳粛な信託によるもの」という一大原理であるとする指摘もある{{Sfn|篠田英朗|2019|p=130-131}}。
 
=== 平和主義(戦争放棄) ===
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=== 日本政府側 ===
 
* [[近衛文麿]](近衛案<ref>{{Cite web|和書|title=近衛文麿の憲法改正要綱 {{!}} 日本国憲法の誕生 |url=https://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/041shoshi.html |website=www.ndl.go.jp |access-date=2022-09-18 |language=ja}}</ref>)
* [[佐々木惣一]](帝国憲法改正ノ必要<ref>{{Cite web|和書|title=佐々木惣一「帝国憲法改正ノ必要」 1945年11月24日 {{!}} 日本国憲法の誕生 |url=https://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/042shoshi.html |website=www.ndl.go.jp |access-date=2022-09-18 |language=ja}}</ref>)
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|ISBN = 4-641-12867-7
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|ref = harv }}
* {{Cite |和書
|author = 高見勝利
|authorlink =
|year = 2013
|title = あたらしい憲法のはなし他二篇
|publisher = 岩波書店
|ISBN = 978-4-00-603264-7
|ref = harv }}
* {{Cite |和書 |author = 樋口陽一 |authorlink = 樋口陽一