「進行性核上性麻痺」の版間の差分
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富山大学法医学講座の吉田、西田らは2007年から2014年の間に司法解剖した1,239例のうち中枢神経が評価可能であった998例を対象に神経病理学的な検討を行った<ref name="#2">Acta Neuropathol. 2017 May;133(5):809-823. {{PMID|28064358}}</ref>。998例中28例(2.8%)が病理学的にPSPの診断基準を満たした。この検討では生前のADLに寝たきりの患者は含まれていなかった。病理学的には[[タウタンパク質|タウ]]病理の分布が軽度、もしくは分布が不完全なものが多かった。生前の転倒が16例(55.2%)、自殺が11例(37.9%)であった。このことは生前のうつ状態や歩行障害からPSPと診断されない例が多数存在する可能性を示している。
Rainwater慈善財団の病理診断基準<ref>Acta Neuropathol. 2022 Oct;144(4):603-614. {{PMID|35947184}}</ref>を用いた検討では罹患率が10万人あたり780人/年であり従来予想されていたよりも多いと考えられる<ref>J Neuropathol Exp Neurol. 2023 Apr 20;82(5):438-451. PMID 37040756</ref>。
== 遺伝 ==
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;MDS診断基準
2017年にMovement Disorder Societyが新しい診断基準を示している<ref>Mov Disord. 2017 Jun;32(6):853-864. {{PMID|28467028}} [https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/pdffiles/12MDS-PSP.pdf 日本語版]</ref>。MDS診断基準はリチャードソン症候群以外の臨床亜系が診断可能な診断基準である。日本で報告が多いPSP-Cの診断基準が含まれていないことに注意が必要である。この診断基準の妥当性が評価されている。probableでは感度は低いが特異度は高くsuggestiveでは感度は高いが特異度が低いことが明らかになっている<ref>Mov Disord. 2019 Aug;34(8):1144-1153. {{PMID|30726566}}</ref>。このコホートではMDSのPSP診断基準ではProbable PSPの感度は47.0%、特異度85.7%、Possible PSPの感度は51.5%、特異度84.1%、Suggestive of PSPの感度は87.9%、特異度39.7%であった。NINDS診断基準に当てはめるとProbable PSPの感度は33.3%、特異度90.5%、Possible PSPの感度は45.5%、特異度90.5%であった。またsuggestiveであっても平均で3.6年後に66%でprobableへ進行するという報告がある<ref>Mov Disord. 2020 Dec;35(12):2301-2313. PMID 32914550</ref>。診断基準は複数の診断名がついてしまうため、割り付けられる診断名を少なくするためのMAXルールが公開されている<ref>Mov Disord. 2019 Aug;34(8):1228-1232. PMID 30884545</ref>。
その後の病理検討ではおよそ14%がPSP以外の疾患、すなわちPSP mimicsであった<ref>Mov Disord. 2025 Jun 12. PMID 40504076</ref>。PSP mimicsの内訳は[[レビー小体病]]、[[大脳皮質基底核変性症]]、[[多系統萎縮症]]であった。
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*ローランド回周囲皮質または被殻のいずれかに、少なくとも軽度以上(関心領域内に2つ以上の病変)の頻度で認められる房状アストロサイト
この診断基準は房状アストロサイトを重視した診断基準であり、進行性核上性麻痺と他のタウオパチーの鑑別において感度97%。特異度91%と報告された。この病理診断基準がコンセンサスを得られるか注目されている。この診断基準を用いた検討ではPSPの頻度は予想されていたよりも多い<ref>J Neuropathol Exp Neurol. 2023 Apr 20;82(5):438-451. PMID 37040756</ref>。
=== 臨床亜型の病理所見 ===
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