「蒼茫の大地、滅ぶ」の版間の差分
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[[講談社]]の雑誌『[[小説現代]]』[[1977年]]9月号から[[1978年]]7月号まで連載され、1978年9月に単行本として刊行された。
[[中国大陸]]で大量発生した飛蝗([[トノサマバッタ]])が[[日本海]]を渡り、[[東北地方]]に襲いかかって[[農産物|農作物]]を食い尽くす。直接被害を受けた[[東北地方]]のみならず、日本全体に[[飢餓]]の危険が迫る。この未曾有の[[
なお、作中に登場する市町村名や国名等は発刊当時のものとなっている。
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冬が過ぎ春になると、農作物が育ち始めた畑に飛蝗の幼虫が現れる。人々はこれらが成虫にならないうちにと殺し続けた。しかし5月には再び飛蝗が群れをなして飛び始める。6月には人々の間に[[暴動]]が広がる。救援物資を満載した列車が転覆し、人々が争って物資を強奪すると、国道が渋滞で戻ることもできないうちに飛蝗の大群が近づき人間を襲って物資を食べ尽くす。ついには東北地方から50万以上の人々が難民となって東京へ避難し始めるが、途中の[[栃木県]]等で女性達は[[売春]]をして家族の食糧や現金を得、男達は地元の女性を強姦する。難民による掠奪も起こり、栃木県と[[埼玉県]]は県内への宿泊も滞在も拒否する声明を出す。さらに[[茨城県]]、[[群馬県]]、そして目的地の東京都も難民受け入れを拒否した。6月下旬にはすでに都内にいる難民が暴動を起こし始める。[[荒川 (関東)|荒川]]の[[新荒川大橋]]付近では、都内に入り込もうとする難民が機動隊と衝突する。
6月25日、野上は5県知事と共に[[IBC岩手放送|岩手放送]]会館のスタジオに入る。野上がマイクを通して東京にいる難民に、そして東北中の人々に語りかける。……[[戊辰戦争]]では[[奥羽越列藩同盟|奥羽越大同盟]]を結んで戦うも、農民の協力が得られず、敗れて中央政府の隷属となった東北諸[[藩]]。山林を[[日本の国有林|国有林]]にされ都会で低賃金で働かざるを得なくなった農民達。東北出身者は郷里で食えるからと[[解雇]]される差別。[[人身売買|身売り]]、娘売り。最上婆ァと呼ばれる子買い。[[満州国|満州]]への[[満蒙開拓移民|移民]]。やがて東北地方に工場が建てられ経済が成長した半面、[[稲作]]は[[減反政策|減反]]が命ぜられ酪農家は輸入飼料を買う。もう中央政府に幻想を抱いてはならない。我々は日本国から[[独立]]する。故郷に戻れば食糧を保証する。若者は最寄りの守備隊へ加わるように……。東京都の手前で足止めされていた難民がラジオでこれを聞き、北へ戻り始める。
日本から独立した「奥州国」を[[国家の承認|国家承認]]したのは[[アメリカ合衆国|アメリカ]]と[[ソビエト連邦]]だけ
== 登場人物 ==
=== 奥州国 ===
;野上 高明
:59歳、青森県知事で東北六県の知事会長でもある。中央政界にあった頃は次期[[内閣総理大臣|首相]]と目される人物であったが引退し、帰郷して知事となった。東北の他県の知事からの信頼も篤い。恩師の指示で訪ねてきた刑部から飛蝗禍の説明を受けると直ちに対応策を立て始め、盛岡市の岩手県合同庁舎内の知事執務室を改装した〈東北六県知事会議室〉において、〈タスク・フォース本部〉による被害予測を参考に他県知事らと協議を重ねる。いっぽうで刑部を見込んで東北地方守備隊の総隊長に任命し、さらに自分の娘・香江と結ばせる。奥州国成立後は首相に就く。総白髪で鋭い双眸をもつ威厳のある貌と描写される。
;刑部 保行(ぎょうぶ やすゆき)
:35歳、青森県出身。[[弘前大学]][[理学部]]<ref>1997年10月に理工学部に改組された。</ref>[[生物学]]科の[[講師 (教育)|講師]]で[[昆虫学|昆虫]]を専攻。恩師に指示され野上知事と会い、彼に飛蝗対策委員会の責任者に任じられる。野上との面会を重ねるうちに彼のために命を賭ける覚悟を固める。彼の娘香江に引き合わされ、さらに東北地方守備隊の総隊長に任ぜられる。奥州国独立後の戦争を戦い続け、岩手県の[[岩手県道・秋田県道1号盛岡横手線|山伏トンネル]]から[[湯田町]]
;野上 香江(のがみ かえ)
:野上の娘。尊敬する父の勧めに従い刑部と結ばれる。東北地方守備隊の一員となり指揮にあたる。[[青森市]]内での市街戦のさなかに死亡。
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;後藤 哲三
:秋田県出身。自衛隊を辞めて仲間と共に守備隊に参加し、本隊より機動性の高い混成団を結成して隊長となる。彼らが青森県を中心に婦女暴行や略奪を繰り返したことで守備隊本体への信頼が失墜。彼はさらに強盗団も暗躍させていた。[[軍需産業]]のM社の別荘に潜んでいたところを仲間もろとも尾形らに爆殺される。
;
:秋田県[[東成瀬村]]の分村檜山村<!--桧山台村?-->の出身。[[秋田市]]内の農業機械製造工場で働いていたが倒産し、東北地方守備隊に入って分隊長を務める。一度は隊を辞めて家族と共に東京へ向かうが、独立宣言を聞いて戻り、最後まで野上を守り続ける。川
;川島 安弘
:[[政治学者]]で、警備隊の参謀。盛岡市が爆撃され奥州国議会(旧岩手県庁舎)などが破壊された後、わずかな人数で[[鶯宿温泉|鶯宿]]に逃れた野上らと行動を共にしていたが、隙を見て野上を刺殺。直後に
;原田
:秋田県[[岩城町]]出身。[[第9師団 (陸上自衛隊)|第九師団]]所属の自衛隊員だったが「奥州国生まれ」の仲間と共に脱走。青森市の市街戦を生き残り、刑部と共に[[十和田市]]そして[[湯田町]]まで転戦。
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:与党所属の47人の[[衆議院]]・[[参議院]]の議員たち。[[幹事長]]・曲垣に要求して地方行政委員会と衆院[[予算委員会]]を開かせる。その1人、'''明野数重'''が非常時大権付与の動議を出したが、野上が取り消させる。彼らは奥州国においては国務大臣となる。盛岡の政府が崩壊した後は闇に潜んで移動政府となり、独立戦争を続けるはずだった。
;斎藤 吉則
:十和田市長。青森市を壊滅させた第九師団の進軍を止めるべく、市民に呼びかけ1万人を蜂起させる。しかし[[61式戦車|六一式戦車]]による砲撃を受け十和田市は炎上する。
;秋野 平造
:青森県出身。理学部教授。刑部の[[東京大学]][[農学部]]時代の恩師であり、同郷であることから刑部は在京時から秋野をしばしば訪ねていた。日本では数少ない飛蝗の研究者。
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* 作中で触れられる主な歴史上の出来事や人物等
** [[蝦夷]] - [[日高見国]] - [[武内宿禰]] - [[日本書紀]]
** [[
** [[飢饉]] - [[女工哀史]] - [[出稼ぎ]] - [[安達謙蔵]]([[内務大臣]]、「東北地方人は帰村すれば済む」と発言(講談社文庫版下巻154頁))
* 作中で触れられる主な法律等
** [[地方自治法]] - [[日本国憲法]]
** [[農業基本法]]
** [[国民生活安定緊急措置法]] - [[生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律]]
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