「相互主義」の版間の差分
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==外国人参政権における相互主義==
===EU加盟国における「相互主義」===
EU加盟国においては、[[マーストリヒト条約]]で「[[欧州連合の市民]]」(EU市民)の概念を導入し、[[欧州連合の市民#欧州連合市民の権利|その権利]]を相互に認めEU加盟国の国籍を持つ外国人に[[欧州議会]]と地方自治体における参政権(選挙権)を付与しなければならないことを定めており、これは「EU市民」としてのアイデンティティーの形成を目的とする<ref name=kyousei82>{{Cite book|和書|author=[[近藤敦]] |editor=[[田中宏]]、[[金敬得]]編 |others= |title=日・韓「共生社会」の展望―韓国で実現した外国人地方参政権 |year=2006 |month= |publisher=[[新幹社]] |___location= |series= |id= |isbn=978-4884000448 ||pages=82 「地域的な市民権」 |chapter=第7章 永住市民権と地域的な市民権|quote=}}</ref>。このため、各国は批准にあたりこれに対応する国内法の整備をしており、ドイツとフランスでは憲法を改正して'''EU加盟国の国籍者に限定して'''外国人参政権を与えられるようにした。<br>
※EU加盟国以外の外国人に関してはこの限りではないことに注意。
この結果、ドイツにおけるトルコ人や[[バルト三国]]におけるロシア人など、EU市民とそれ以外の外国人の待遇の差として新たに問題化することがある。EUに先立ち1970年代から「北欧市民権」と呼ばれる形で相互に地方参政権を認めていた北欧諸国は、互恵国民とその他の外国人との待遇差が問題となり、互恵型から定住者一般に認める方向に移行した<ref name=kyousei82 />。
{{Main|外国人参政権|日本における外国人参政権}}
===韓国の日本への「相互主義」の要求===
国籍を取得せず(帰化しない)に滞在する資格を持つ[[特別永住者]]をはじめとする[[在日韓国人]]の[[参政権]]要求運動にともない、韓国政府が2005年6月に盧武鉉政権下で「永住外国人に対する外国人地方参政権付与法案」を可決。以来、在日韓国人および韓国政府が相互主義を主張し、日本政府に対して外国人の参政権付与を要請している。
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[[日本国憲法]]は、第15条第1項で「[[公務員]]を選定し、及びこれを罷免することは、[[国民]]固有の権利である」、第43条第1項で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」としており、現状で外国人の'''国政参政権'''は認められていない。
相互主義が日本において外国人参政権問題の争点となったのは、EUが[[欧州連合の市民]]」概念とともに、EU加盟国間に限定して外国人参政権を相互に認めるという基本方針を導入し、それを受けて在日韓国人の参政権付与運動および韓国政府が相互主義を掲げて、参政権付与を要求するようになってからである。在日韓国人および韓国政府は自国において外国人参政権を在韓外国人に対して2005年に付与して以来、日本政府に参政権付与を要請しているが、日韓間での付与対象者の非対称性の問題、したがってまた韓国は在日韓国人と政治的に連携することなど政治的利益があるのに対して、在韓日本人はほとんどいないことから、日本側に相互主義を採用するメリットはまったくなく、条件の格差について不公正とする批判もある(後述)。また外国人参政権の前提としてのEUに比する地域共同体([[東アジア共同体]]構想)は形成されておらず、時期尚早との批判もある。なお中国は外国人参政権を認めていない。
===日韓における「相互主義」の検証===
従来、日本における外国人参政権付与対象者は「[[特別永住者]]」を予定していた。だが、民主党が「[[特別永住者]]」に加えて「[[一般永住者]]」も対象者に加える提言が発信されており、議論されている([[日本における外国人参政権#対象]]参照)。
[[特別永住者]]の国籍は、「韓国人」「朝鮮人」が41万6309人(99%)台湾人が2892人(0.7%)であり、[[一般永住者]]の国籍は、「中国(台湾)」が14万2469人(29.0%)「ブラジル」が11万0267人(22.4%)「フィリピン」が7万5806人(15.4%)「韓国・朝鮮」が5万3106人(10.8%)である(平成20年度調査)。
以上の永住者の主要な国籍について「相互主義」を検討していく。
====韓国における外国人参政権付与====
{{Main|韓国における外国人参政権}}
韓国が外国人参政権を付与したのは、日本での在日韓国人地方参政権獲得運動の進展が見られないため、その支援として参政権付与が検討されてきたとされる<ref name=kyousei44>{{Cite book|和書|author=[[鄭印燮]] |editor=[[田中宏]]、[[金敬得]]編 |others= |title=日・韓「共生社会」の展望―韓国で実現した外国人地方参政権 |year=2006 |month= |publisher=[[新幹社]] |___location= |series= |id= |isbn=978-4884000448 ||pages=44-56 |chapter=第4章 韓国における外国人参政権―その実現過程|quote=}}</ref>。また、韓国における付与対象外国人有権者数は内国人有権者の0.05%であり、選挙結果に何も影響しないとの思惑もあった<ref name=kyousei44 />。
韓国の[[金大中]]大統領は[[1999年]]以降に、韓国の日本人も含む外国人参政権との「相互主義」を掲げて日本政府に実現を迫ったが、当時韓国では永住資格制度もまだ整っておらず(2002年から)時期尚早であり、また、[[日帝残滓]]である在日問題と国内問題を同一線上で捉えることへの反発など国民世論も収斂しておらず韓国国内で廃案となった。しかし2005年6月に[[盧武鉉]]政権下で「永住外国人に対する外国人地方参政権付与法案」が可決された。主な当事者である在韓[[華僑]]からの要求が表面化しない中で付与が決定されたが、在日韓国人支援の名分がなければ成立したかは疑問とされる<ref name=kyousei44 />。現在、韓国政府は「相互主義」を掲げて在日韓国人に対する外国人地方参政権付与を再度日本政府に迫っている。
====日韓の憲法上の差====
日韓両国とも憲法第1条で国民主権をうたっているが、[[大韓民国憲法]]では第41条で国会議員を、第67条で大統領をそれぞれ秘密選挙により選出するとしているのみで、地方参政権は第118条において法律で定めると規定しているため柔軟な対応が可能であり、また憲法上は地方選挙については秘密投票を保障していない。憲法自体の改正も韓国ではこれまで9回行われている。一方、[[日本国憲法]]では国民主権を実現する上で第15条において公務員の選出・罷免権を幅広い範囲にわたって国民固有の権利と明記し、地方参政権も第93条でその地方公共団体の住民(国民)が直接これを選挙すると規定している。また、[[日本国憲法]]第15条では秘密投票権も明記されており、外国人有権者の影響の検証はより困難になっている。
====永住者数の格差====
*在日韓国人の永住資格保有者は45万人以上(特別永住者41万6309人・一般永住者5万3106人)。
*在韓日本人(長期滞在者含む)は2008年時点で27102人(男10680,女16422)。このうち、永住資格保有者は6265人(男1205,女5060)<ref>在韓日本人:[http://www.mofa.go.jp/Mofaj/toko/tokei/hojin/09/index.html 平成20年の海外在留邦人数調査統計], [[外務省]].</ref>。2006年5月の時点で、在韓日本人のうち有権者数は51人<ref>[http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060527k0000m030018000c.html 韓国:アジア初の外国人参政権 統一地方選で] 2006年5月31日の韓国統一地方選挙の時点。毎日新聞2006年5月27日</ref>。これは当時の在韓日本人永住者1622人のうち3.144%にあたる。有権者51人のうち9割以上が韓国人と結婚して永住資格を得た日本人女性であった。
* 韓国では外国人有権者は投票結果に影響をしないと考えられているが、日本では[[大阪市]][[生野区]]のように外国人比率が高い地域もある。
====永住資格付与条件の格差====
韓国では外国人参政権を極めて厳格な条件を満たしたものに限って、付与をみとめている。他方、日本の政党法案では、所得条件やキャリア条件などは一切付されていない。「相互主義」をとる場合、韓国と日本では制度差が生じる。どちらかの国が歩み寄る必要があり、もし日本が韓国と同様の要件を課した場合、当然のことながら高額所得者以外は永住権も参政権も付与されなくなる。
韓国における外国人参政権付与の基本要件は、永住資格(F-5)取得後3年以上の経過であるが、この永住資格取得には、高い収入条件(一般韓国国民の4倍<ref name=imm/><ref name=press>[http://megalodon.jp/2010-0309-2356-44/www.pressian.com/article/article.asp?article_num=20060519194122§ion=01 지방선거…외국인 투표는 '화교'만 해라?(地方選挙…外国人投票は '華僑'ばかりしなさい?)]2006年5月19日 PRESSian</ref>)や博士号取得者などの複合要件を満たすことが必要で、韓国人の配偶者や子供以外の一般外国人には、取得は極めて困難である<ref name=imm>[http://www.immigration.go.kr/HP/IMM/imm_04/imm_0403/imm_040304/1175799_20904.jsp 韓国入国管理局 永住資格]</ref>。また、要件を満たしていても、当該外国人の思想信条が韓国の国益に合致しない場合は、法務部長官の許可を根拠に、永住資格が付与されないこともある<ref>要件の詳細は[[韓国における外国人参政権]]も参照</ref>。
要件には、200万米ドル以上の投資、先端技術分野の博士学位所持者かつ収入条件(韓国国民GNIの4倍)を満たしたもの、世界トップ500企業での経営幹部としてのキャリアを所持するもの、オリンピックで銅メダル以上の受賞者などがある。収入条件は2005年時点で年収63,320米ドル(633万円)以上であった<ref>2005年「韓国の一人当たり国民総所得(GNI)は年収15,830米ドル(158万円。便宜上、一ドル=100円で換算)。収入条件はその4倍である年収63,320米ドル(633万円)が外国人に必要とされ、同年の日本の一人当たりGNIは、38,980米ドル(389万円)。[http://www.mofa.go.jp/mofaj/world/ranking/gnp_2.html 1人あたりの国民総所得(GNI)の多い国 外務省] </ref>。
その他の韓国における制限として、政党に加入することはできない<ref name=kyousei44 />、政治資金の寄付禁止<ref name=kyousei44 />、投票行為以外の選挙運動の禁止<ref name=kyousei44 />などがある。
====諸外国との比較====
{{Main|外国人参政権}}
*ヨーロッパでは外国人参政権の相互主義が認められているが、これはEU加盟国間に限っており、また韓国のような高い条件を付されてもいない。イギリスにおいても、イギリス連邦加盟国に限定され、同じく韓国のような高度の要件を付していない。
*北朝鮮、台湾、中国、ブラジル、フィリピンについては、いずれも外国人参政権を与えていない。このことから「相互主義」は成立しない。そもそもいずれの国も日本に対して外国人参政権を求めておらず、相互主義を主張して外国人参政権を要求している国は韓国のみである。韓国の行動は、[[内政不干渉の原則]]に違反するという批判もある。
====「相互主義」に対する見解====
*[[在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議員連盟|民主党推進派議連]]は、2008年の提言で、相互主義に「一定の合理性は認められる」が、民主党は「多様な文化や価値観を認め合いながら、永住外国人の地域社会への政治的参画の道を開き、ともに地域社会づくりに取り組むべきであるとの基本的考え方」に立つことから、この考え方は「本来、外国の対応を前提とするものではなく、我が国自身がどう考えるかの問題である。このため、相互主義の採用には慎重であるべきとの結論に至った」としており、韓国政府の要請する相互主義について前提としないことを主張している<ref name="teigen080520"/>。他方、同提言では、[[一般永住者]]に対しても外国人参政権を与えることとしている。'''「相互主義」を採用した場合には一般永住者の65%以上を占める中国籍・ブラジル籍・フィリピン籍の外国人に、参政権が与えられない不都合が生じる。'''このような事情から「相互主義」を却下したともいわれる。
*[[長崎県議会]]は、2009年12月の意見書で、韓国の主張する相互主義に対し、「そもそも在韓日本人で参政権を得ている者は数十人であるにもかかわらず、日本で対象となる在日韓国人は数十万人もいて、決して相互主義が成立する条件に無い」として、相互主義は成立しないとした<ref name="nagasaki20091217">{{cite press release
| title = 永住外国人への地方参政権付与の法制化に反対する意見書
| publisher = 長崎県議会
| date = 2009-12-17
| url = http://www.pref.nagasaki.jp/gikai/2111teirei/tayori2111_ikensyo.html
| accessdate = 2010-01-12
}}</ref>。
*[[国家基本問題研究所]](民間シンクタンク)は、2008年3月の提言の中で、根拠としての相互主義に対して「(1)韓国で永住が認められるのは主として韓国人の配偶者やその子弟であり、日本とは実情が根本的に異なる」こと、「(2)在韓日本人永住者は2、903人(平成19年10月1日現在、外務省「海外在留邦人数調査統計」)であるのに対し、在日韓国人特別永住者は約41万人であり、'''互恵主義'''が成立する条件が欠如している」ことを挙げ、韓国との相互主義は成立しないとの見解を示している<ref name="jinf200803">{{Cite web
| url = http://jinf.jp/suggestion/archives/103
| accessdate = 2010-03-01
| title = 参政権行使は国籍取得が条件-特別永住者には特例帰化制度導入を
| publisher = [[国家基本問題研究所]]
}}
{{Cite web
| url = http://jinf.jp/suggestion/archives/2506
| accessdate = 2010-03-01
| title = 外国人参政権問題提言(平成22年2月改訂版)
| publisher = [[国家基本問題研究所]]
}}</ref>。
==歴史==
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