「アマテラスとスサノオの誓約」の版間の差分

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[[Image:Challenge of Amaterashu and Susanoo.svg|thumb|right|240px|アマテラスとスサノヲの誓約(古事記に基づく) [[media:Challenge of Amaterashu and Susanoo.svg|SVGで表示(対応ブラウザのみ)]]]]
'''アマテラスとスサノオの誓約'''(アマテラスとスサノオのうけい)とは、『[[古事記]]』や『[[日本書紀]]』記されている[[天照大神|アマテラス]]と[[スサノオ]]が行った[[うけい|誓約]]([[占い]])のこと。
 
==あらすじ==
===古事記===
[[イザナギ|伊邪那岐命]]が海原を支配するように[[スサノオ|建速須佐之男命]]に海原の支配を命じたところ、スサノヲは[[イザナミ|伊邪那美命]]がいる根の国(黄泉の国)へ行きたいと泣き叫び、天地に甚大な被害を与えた。イザナギは怒って「それならばこの国に住んではいけない」として彼を追放した<ref>戸部民夫 『日本神話』 44頁。</ref>。
 
建速須佐之男命は、姉の[[天照大神]]にってから根の国へ行こうと思って、アマテラスが治める高天原へと登っていく昇る。すると山川が響動し国土が皆震動したので、アマテラスはスサノヲが高天原を奪いに来たのだと思い、弓矢を携えて彼を迎えた<ref>戸部民夫 『日本神話』 45-46頁。</ref>。
 
建速須佐之男命は天照大神の疑いを解くために、二神で'''[[うけい|宇気比・誓約]]'''をしようといった。二神は天の安河を挟んで誓約を行った。まず、アマテラスがスサノヲの持っている[[十拳剣]](とつかのつるぎ)を受け取ってそれを噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の三柱の女神([[宗像三女神]])が生まれた。この女神は[[宗像]]の民が信仰しており、[[宗像大社]]に祀られている<ref>戸部民夫 『日本神話』 46-51頁。</ref>。
*[[タキリビメ|多紀理毘売命]] - 別名:奥津島比売命(おきつしまひめ)。沖つ宮に祀られる。
*[[イチキシマヒメ|市寸島比売命]] - 別名:狭依毘売命(さよりびめ)。中つ宮に祀られる。
*[[タキツヒメ|多岐都比売命]] - 辺つ宮に祀られる。
 
次に、建速須佐之男命が、天照大神が持っていた「八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠」受け取ってそれを噛み砕き、吹き出した息の霧から以下の五柱の男神が生まれた<ref name="shinwa">戸部民夫 『日本神話』 49頁。</ref>。
*左のみづらに巻いている玉から [[アメノオシホミミ|正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命]]
*右のみづらに巻いている玉から[[アメノホヒ|天之菩卑能命]]
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===日本書紀===
『日本書紀』第六段の本文では、素戔嗚尊を古事記と同様に天照大神が素戔嗚尊を待ち構えるのは古事記と同じだが、天の安河を挟んではいない。
 
また素戔嗚尊が「私は今、命令を受けて根國に向かおうとしており、一度高天原を訪れ姉上と会った後に去ろうと思う」と言うと([[イザナギ|伊弉諾尊]]が)「許す」とのお言葉であった、とあるので古事記の様に追われたのでも無い。
 
いざ誓約となるとでは、天照大神が素戔嗚尊の十握劒(とつかのつるぎ)を貰い受け、打ち折って三つに分断し、天眞名井(あめのまなゐ)の水で濯ぎ噛みに噛んで吹き出した、とある。その息の霧から生まれた神が以下の宗像三女神である。
*[[タキツヒメ|田心姫]](たこりひめ)
*[[タキリビメ|湍津姫]](たぎつひめ)
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*[[イクツヒコネ|活津彦根命]]
*[[クマノクスビ|熊野櫲樟日命]]
これにより彼の心が清い証明している。
 
'''第六段一書(一)'''では待ち構えいた[[天照大神|日神]](ひのかみ)が素戔嗚尊と向かい合って立ち、帯びていた剣を食べて生まれた神が以下の宗像三女神である。
*十握劒(とつかのつるぎ):[[イチキシマヒメ|瀛津嶋姫]](おきつしまひめ)
*九握劒(ここのつかのつるぎ):湍津姫 
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*[[クマノクスビ|熊野忍蹈命]](くまのおしほみ)
 
'''第六段一書(二)'''では、素戔嗚尊が天に昇ろうとする時に羽明玉(はかるたま)という神がおり、この神が素戔嗚尊を迎えて、瑞八坂瓊之曲玉(みつのやさかにのまがたま)を献上している。そこたの彼はその玉を持って天上を訪れた。この時、天照大神が弟に悪心(きたなきこころ)があるのだと疑い、兵を集めて詰問する、とある。
 
誓約では、天照大神の剣と素戔嗚尊の八坂瓊之曲玉(やさかにのまがたま)取り換える。そうして天照大神が八坂瓊之曲玉を天眞名井に浮かべ、玉を食いちぎって吹き出した、とある。その息から生まれた神が以下の宗像三女神である。
*玉の端を食いちぎって吹き出す:市杵嶋姫・遠瀛(おきつみや)に鎮座する神
*玉の中を食いちぎって吹き出す:田心姫・中瀛(なかつみや)に鎮座する神
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*熊野豫樟日命
 
'''第六段一書(三)'''では日神と素戔嗚尊と天安河(あめのやすのかは)を挟んで向かい合って立ち、まず日神が剣を食べて生まれた神が以下の宗像三女神である。
*十握劒:瀛津嶋姫命またの名は市杵嶋姫命
*九握劒:湍津姫命 
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'''第七段一書(三)'''では、まず素戔嗚尊の暴挙狼藉があり、それで日神が[[天岩戸|天石窟]](あめのいはや)に籠る事となる。
 
[[天児屋命]]が先だって事を運び日神が外に戻り、素戔嗚尊は底根之國(そこつねのくに)に追われる事となる。こうた後、素戔嗚尊は「どうして我が姉上に会わずに、勝手に一人で去れるだろうか」と言い天に戻る。すると[[天鈿女命]]がこれを見て、日神に報告する。そう二神で誓約が行われる運びになる。
 
誓約では「日神、先(ま)ず十握劒を囓(か)む。 云云(しかしか)」と略されているが、宗像三女神を生んでいるわり無更はなく、続いて素戔嗚尊はぐるぐると回しながら、その髻に巻いていた五百箇統之瓊(いほつみすまるのたま)の緒を解き、玉の音を揺り鳴らしながら天渟名井の水で濯ぎ浮かべた、とある。
 
そうしてその玉の端を噛んで以下六柱の神を生み出す。
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==解説==
古事記では天照大神は、後に生まれた男神は自分の物から生まれたから自分の子として引き取って養い、先に生まれた女神は建速須佐之男命の物から生まれたから彼の子だと宣言した。
スサノヲは自分の心が潔白だから私の子は優しい女神だったといい、アマテラスは彼を許した<ref name="shinwa"/>。
 
日本書紀第一と第三の一書では男神なら勝ちとし、物実を交換せずに子を生んでいる。すなわち、天照大神は十拳剣から女神を生み、素戔嗚尊は自分の勾玉から男神を生んで彼が勝ったとする(第三の一書で、スサノヲは六柱の男神を生んでいる)。
 
第二の一書では、男神なら勝ちとしている他は『古事記』と同じだが、どちらをどちらの子としたかについて書かれてい記載がない。古事記と同じ(様に物実の持ち主の子とするならば天照大神の勝ちとなる。
 
第七段一書(三)では、話の筋立てが他とは異なり、[[思兼神]]が登場しない極めて点が大きな特徴的な一書である。
 
また、日本にある天真名井神社、[[八王子神社]]などでは、宗像三女神と、王子五柱の男神を'''五男三女神'''として祀っている。
 
==脚注==