「カルキスのイアンブリコス」の版間の差分

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神聖な宇宙の構成の複雑さにもかかわらず、イアンブリコスは救済を究極的な目的とした。受肉せる魂は特定の儀礼、すなわち神働術(テウルギア;逐語的には「神の働き」の意)を行うことによって神性に帰還することになっていた。テウルギアを「魔術」と訳す者もいるが、魔術という語の近代的含蓄はイアンブリコスの考えていたことと厳密には合致しない。むしろテウルギアとは秘跡的な宗教儀礼に近いものである。それでもやはり、こういった営みは、今日なら「魔術」の試みと受け取られるようなことをいくぶんかは伴っていた。
 
肉体の中に閉じ込められた魂は物理的な必然性に支配されるが、しかし魂はそれでも神的で理性的である。物質的で不完全で死すべき領域のまさしく一部でありながら、同時に不死的・神的な本性の一部でもある、ということは矛盾している。個の魂は、いわば受肉した「迷える」魂であり、そのより深い、神的な本性とのつながりを失い、[[自己疎外]]に陥っている。この矛盾の内に悪の起源についてのイアンブリコスの考えがあると目されているが、イアンブリコス自身はこのことに関して何も言っていない。
 
これはイアンブリコスが先代の巨匠ポルピュリオスと意見を異にする領域でもある。ポルピュリオスは精神的[[観想]]のみで救済がもたらされると信じた。ポルピュリオスはイアンブリコスの神働術に対する考えを批判する書簡を書いており、イアンブリコスの書いた「エジプト人の秘儀について」はその書簡に対する返答として書かれたものである。