「寄生獣」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
-{{subst:Sakujo}}、-{{Copyrights}} |
「漫画史的位置づけ」の節を追加。執筆と評価の節を「作品解説」の節で括った |
||
332行目:
: 治療を行った際、パラサイトとしての性質に[[突然変異]]をきたし、一日のうち連続して4時間程度、不定期に同属を察知する能力さえ働かない「完全な眠り」に陥るようになった(眠る前に形質を変化させておけば、眠っている最中も維持される)。この間は、普段よりさらに発信する「信号」が弱くなる。同時に新一の全身に散らばった全体の1/3にあたる寄生細胞が回収不能なため、腕の付け根まであった寄生部分が肘の上あたりまでとなった。
==
=== 漫画史的位置づけ ===
本作を連載していた当時の『月刊アフタヌーン』は、本流から外れた独創的な漫画作品を掲載している雑誌の中では著名と言える位置づけの雑誌であった<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" />。本作が連載されていた1990年代半ば頃は、漫画の売れ行きがピークを迎えると同時に「近頃の漫画はつまらない」という言説が取りざたされるようになった時期でもあり、本作はそうした言説の中にあって例外として評価された作品でもある<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" />。本作は藤島康介の『[[ああっ女神さまっ]]』と並び立つ『アフタヌーン』の看板的な作品であり<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp222-237" />、雑誌編集部はもっと連載を続けさせたい意向であったともいわれ<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp16-19" />、1995年に連載を終了した後も、『アフタヌーン』のコラボレーション企画では比較的大きな扱いを受けているのを見て取ることができる<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp222-237" />。
本作の連載中は[[環境問題]]が大きなブームとなっていった頃でもあり{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" />、また連載が終了した1995年初頭は[[阪神・淡路大震災]]や[[地下鉄サリン事件]]の影響もあって社会に終末的な空気が漂っていた時代でもあった<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171" />。本作は普遍的な題材を扱いつつも<ref name="mantan20150103" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" />、連載当時の時代性や風潮、若者の言葉遣いなどが色濃く反映された作品でもある<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171" />。本作のように人間以外の生態系の側から環境問題を問う形で物語が始まるものの、物語の途中でそれが否定されて異なる結論に到達する構造は、宮崎駿の漫画版『[[風の谷のナウシカ]]』<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp136-141" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp142-148" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171" />や、楳図かずおの『[[14歳 (漫画)|14歳]]』<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp136-141" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171" />といった同時代の漫画にも見ることができる<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp136-141" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp142-148" /><ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171" />。
=== 執筆 ===
作者の岩明によれば、『寄生獣』の元となる作品の構想を思いついたのは漫画家としてプロデビューする前のことで{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp8-13" />、最初から「主人公の手が意思を持って動き出す」という状況に「環境問題」を絡めて描くというところまでは決まっていたものの<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp8-13" />、当初はラブコメディー的な内容の投稿作品を想定していたという{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}。当初はお蔵入りのアイディアとなっていたものの、岩明にとって最初の連載長編作品であった『[[風子のいる店]]』における反省点を活かせる題材として日の目を見ることとなった{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}。連載開始時は読者に訴えるような強いメッセージ性を込める意図はなく、「嫌な理屈で来る新型生物を読者に紹介する」という程度のものであったと述懐しているが<ref name="nhk20141126" />、連載を終える頃までには何事もテーマと結びつけて深く考えるのが日課となっていたという{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}。
341 ⟶ 347行目:
作者の岩明は、登場人物の容姿を設定するに当たって、身近な人物をモデルとすることは避けていたが、その数少ない例外として、鏡に映してミギーのモデルにしていた自身の左手を挙げている{{sfn|アフタヌーンKC版第6巻|loc=裏表紙カバー袖}}。また、最終話で殺人鬼・浦上が武器として用いた肉厚のナイフのモデルは、資料として購入した実在のナイフであるという{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}。更に岩明は最終巻のあとがきで以下のような余談を明かしている。岩明は連載の最終話を脱稿した後、友人との酒の席で、酔った勢いで「浦上のナイフ」を弄び、誤って左手の親指を爪先ごと切り落とす怪我を負った。しかし指先は2か月後には元通りに再生し、「まるでミギー<!-- 左手だが -->」という感慨を抱くと同時に、それ以上に人間の身体が大自然に支配され生かされていることを改めて思い知ったという{{sfn|アフタヌーンKC版第10巻|付記(最終巻あとがき)}}。
=== 評価 ===
[[早稲田大学]]教授・文芸評論家の[[加藤典洋]]は「[[文学]]を含め、[[戦後]]のベストテンに入る」としている。また「[[進路]]選択に迷ったとき、あるいは[[大学]]の授業がつまらないと感じたとき、異性にふられて悲しいときに読んでみることを薦める」としている<ref name="wasedaweekly">[http://www.waseda.jp/student/weekly/contents/2006a/090r.html 早稲田大学週刊広報紙『早稲田ウィークリー』]</ref>。
891 ⟶ 897行目:
|interviewer=斎藤宣彦
|program=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
}}</ref>
<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp16-19">{{Cite journal|和書
|author=[[須賀原洋行]]
|title=心に届く人
|pages=16-19
|date=2014-12-20
|journal=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
|publisher=青土社
}}</ref>
<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp21-46">{{Cite journal|和書
913 ⟶ 927行目:
|title=「皮剥ぎ」が露わにするもの……岩明均の描く「人間」の境界
|pages=126-135
|date=2014-12-20
|journal=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
|publisher=青土社
}}</ref>
<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp136-141">{{Cite journal|和書
|author=[[杉田俊介]]
|title=岩明均論のためのノート 地球外的な暴力性について
|pages=136-141
|date=2014-12-20
|journal=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
|publisher=青土社
}}</ref>
<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp142-148">{{Cite interview
|subject=[[山崎貴]]
|date=2014-12-20
|title=いまこそ語られるべき物語……映画『寄生獣』製作秘話
|interviewer=泊貴洋
|program=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
}}</ref>
<ref name="ユリイカ2015年1月増刊_pp157-171">{{Cite journal|和書
|author=[[斎藤環]]
|author2=[[杉田俊介]]
|title=輪郭線に生きる者たち
|pages=157-171
|date=2014-12-20
|journal=[[#{{SfnRef|ユリイカ2015年1月臨時増刊号}}|ユリイカ2015年1月臨時増刊号]]
| |||