|
|
1990年代までよく使われていた精神世界という言葉は死語にはなってはいないが、代わりに「スピリチュアリティ」という言葉が聞かれるようになった。島薗の指摘するところでは、精神性と訳しうるスピリチュアリティは言葉の上でも精神世界と近縁関係にあるとみることができる<ref>[[#Shimazono2007b|島薗 2007b]], p. 5.</ref>。
スピリチュアリティ ({{lang-en|Spirituality}}) はもともとキリスト教において時代や場面によってさまざまな意味に使われてきた語であるが、神学用語としては「霊性」と訳され、殊に20世紀に入ってから注目されるようになった概念である<ref>『岩波 キリスト教辞典』</ref><ref>キリスト教の霊性の定義には「超感覚的な現実に触れることを可能にする態度、信条、行為」(『キリスト教神学事典』佐柳文男訳、596頁)などがある。</ref>。その一方で、1970年頃から盛んになってきたニューエイジ運動では、伝統的なキリスト教の枠を超えた新しいスピリチュアリティが展開され<ref>[[#Shimazono2007b|島薗 2007b]], p. 74.</ref>、北米では特に1980年代から盛んに spirituality という言葉がよく聞かれるようになった。日本でも1990年代後半からスピリチュアリティというカタカナ語が使われるようになり<ref>[[#Shimazono2010|島薗 2010]], p. 598.</ref>、中でも[[ホスピス]]や[[死生学]]の分野では形容詞の「スピリチュアル」や抽象名詞の「スピリチュアリティ」が用語として定着した。その一方で、2000年代に入るとそれらとは別の流れでスピリチュアルという言葉が人口に膾炙するようになり、スピリチュアルブームが話題になった。[[浅野和三郎]]の日本的[[スピリチュアリズム|心霊学]]の流れを汲む[[江原啓之]]は、スピリチュアル・カウンセリングと称するパフォーマンスを行い、タイトルにスピリチュアルの語を付した著書がベストセラーになったり、マスメディアに登場して有名になった。島薗は、スピリチュアルという語が現代日本で大衆的に普及した要因として江原の成功は無視できないと推察している<ref>[[#Shimazono2007b|島薗 2007b]], p. 34.</ref>。スピリチュアルと聞いて霊的存在や前世、オーラといった心霊主義的なものを連想する人が増え、2008年の読売新聞の宗教意識調査で取り上げられた「スピリチュアル」もこのような意味においてであった<ref>[[#Hayashi|林 2011]], p. 24.</ref>。江原のいうスピリチュアルは[[スピリチュアリズム]]に由来しており、死生学や医療・看護の文脈で言われるスピリチュアリティとは系譜を異にするが、両方面でのスピリチュアリティを混同したり、同じ潮流に属するものとして論じる向きもある<ref>[[#Hayashi|林 2011]], pp. 25-26.</ref>。他にスピリチュアリティルブームを代表するものに、2002年から毎年開催されている癒しをテーマにした精神世界の見本市「スピリチュアル・コンベンション」(略称すぴこん)が挙げられる<ref>[[#Hayashi|林 2011]], p. 220.</ref>(後に「スピリチュアルマーケット」)。こうした現代日本の通俗的なスピリチュアリティ文化では、本来は形容詞であるスピリチュアルを名詞として扱ったような語法が多く見られ<ref>[[#Hayashi|林 2011]], p. 222.</ref>、「スピリチュアリティ」の語自体の使用頻度は少ない<ref>[[#Hayashi|林 2011]], pp. 24, 181.</ref>。
==世界観==
|