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核燃料の作成に関する記述であるのでフロントエンドに関する記述を『核燃料』の記事に移動させた。
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[[Image:SchémaDechetsNucleaires en.svg|350px|thumb|核燃料サイクルの概要]]
'''核燃料サイクル'''(かくねんりょうサイクル、{{lang-en-short|nuclear fuel cycle}})<ref>核燃料リサイクル、原子燃料サイクルと呼ばれることもある。</ref>とは、[[核燃料]]にかかわる[[核種]]および[[資源]]の循環を指す。狭義には[[核燃料物質]]特有の[[核種]]変換系統を、広義には商用炉を中心とする[[原子炉]]用核燃料の製造から再処理と廃棄('''核燃料リサイクル'''、'''原子燃料サイクル'''とも言う)を意味する。
 
多くの場合、[[ウラン235]]を巡る後者の意味で用いられ、[[鉱山]]からの[[鉱石]]([[天然ウラン]])の[[採鉱]]、[[精錬]]、[[同位体]]の[[ウラン濃縮|分離濃縮]]、[[燃料集合体]]への加工、[[原子力発電所]]での[[発電]]、原子炉から出た[[使用済み核燃料]]を、[[再処理工場|再処理して]]、核燃料として再使用できるようにすること、および放射性廃棄物の処理処分を含む、一連の流れのことである。鉱山からの鉱石の採鉱から[[核燃料]]への加工までを'''[[フロントエンド]]'''、[[再処理]]以降を'''バックエンド'''と分けることもある。
 
== 概要 ==
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|image9=WIPP-04.jpeg
|caption9='''B4 地層処分''' 核廃棄物隔離試験施設 (Waste Isolation Pilot Plant)}}
核燃料サイクルは、多くの場合、[[ウラン235]]を巡る後者の意味で用いられ、[[鉱山]]からの[[鉱石]]([[天然ウラン]])の[[採鉱]]、[[精錬]]、[[同位体]]の[[ウラン濃縮|分離濃縮]]、[[燃料集合体]]への加工、[[原子力発電所]]での[[発電]]、原子炉から出た[[使用済み核燃料]]を、[[再処理工場|再処理して]]、核燃料として再使用できるようにすること、および放射性廃棄物の処理処分を含む、一連の流れのことである。鉱山からの鉱石の採鉱から[[核燃料]]への加工までを'''[[フロントエンド]]'''、[[再処理]]以降を'''バックエンド'''と分けることもある。
 
=== フロントエンド・サイクル ===
{{Maindetails|天然核燃料#低濃縮ウラン核燃料の製作過程 }}
ウランは地球上の地殻や海水中に広く分布しており土壌には平均2~4ppm(おもな分布範囲は0.7~11ppmで農地ではリン酸系の化学肥料の使用により最大15ppm)、海水中には0.003ppm含まれると推定されており、その総量は銀の40倍、スズと同量におよぶ。その内、確認可採埋蔵量は547万トンで可採年数は60~80年と推定されている。(エネルギー庁の試算2007年時点でキロあたり130USドルの採掘コストで。2007年度のウランの世界需要は約7万トン、2010年度のウランの平均スポット価格は44ドルであった。)鉱床のある主な資源国はオーストラリア、カザフスタン、ロシア、南アフリカ、カナダ、アメリカ、ナミビア、ブラジルなど石油のような極端な資源の偏在性はない<ref>{{Cite web|title=ウラン資源|url=http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data3032.html|publisher=エネルギー庁|accessdate=2011-08-22}}</ref>。
 
*'''採鉱''' (Mining)
:ウラン鉱床は露天および地中にあり他の鉱物と同様に採掘される。溶媒抽出法 (ISL: In-situ leaching) と呼ばれる採掘方法も実用化されている。
 
*'''精錬''' (Milling)
:採掘されたウラン鉱石は粗製錬工場で粉砕・選鉱されウラン含有率を60~75%ぐらいまで高められる。この粉体をウラン精鉱(イエローケーキ)と呼び八酸化三ウラン (U<sub>3</sub>O<sub>8</sub>) の含有量で値決めされる。イエローケーキはドラム缶に詰められて転換工場へ出荷される。
 
*'''ウランの転換''' (Uranium conversion)
:イエローケーキは転換工場で処理され六フッ化ウラン (UF<sub>6</sub>) となる。これは48Yシリンダー(直径約1.4m、長さ約3.8mの鋼製円筒容器)と呼ばれる輸送容器に封入されて濃縮工場に出荷される。
 
*'''濃縮''' (Enrichment)
:六フッ化ウラン (UF<sub>6</sub>) は濃縮工場でウラン235の比率(濃縮度)を0.7%から3~4%(核燃料グレード)へ高められる。(核兵器グレードでは90%まで濃縮される。)濃縮工程では大半 (96%) は副産物の劣化ウランとなる。アメリカには47万トンの劣化ウランがある<ref>{{Cite web|title=How much depleted uranium hexafluoride is stored in the United States?|url=http://web.ead.anl.gov/uranium/faq/storage/faq16.cfm|publisher=米国エネルギー庁|accessdate=2011-08-22}}</ref>。
 
*'''燃料集合体への加工''' (Fabrication)
:核燃料グレードの六フッ化ウラン (UF<sub>6</sub>) は燃料加工工場にて二酸化ウラン (UO<sub>2</sub>) の燃料ペレットへ加工され被覆を施され燃料棒となる。
 
=== バックエンド・サイクル ===
{{Main|放射性廃棄物#使用済み核燃料の処理}}
[[原子力発電所]]から発生する[[使用済み核燃料]]には、「燃えないウラン」である非核分裂性の[[ウラン238]]、ウランから生成された[[プルトニウム]]、僅かながら「燃えるウラン」である核分裂性核種の[[ウラン235]]、各種の[[核分裂反応#核分裂生成物|核分裂生成物]]が含まれる。このプルトニウムやウラン235を抽出し核燃料として再利用すれば、単に廃棄処分することに比べ多くのエネルギーを産出できる。また、使用済み核燃料のウランやプルトニウムを取り出すことになるため、[[放射性物質]]が減少し、廃棄物の量が減ることにもなる。更にウランは比較的政情が安定した国に多いため、ウランを全面的に輸入に頼る国でもエネルギーセキュリティ上のリスクは少ないが、核燃料サイクルで核燃料の有効活用と長期使用が出来ればよりリスクを低減できることになる。