「サウロン」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし |
m編集の要約なし |
||
24行目:
またサウロンは本来[[アウレ]]の配下であったため、世界を構成する物質や、鍛冶・工芸の知識に精通していた。その為、彼はアウレ一門の中でも偉大な工人とされていた<ref> J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.10 Morgoth's Ring』1993年 Harper Collins, 52頁</ref>。このことから、サウロンは強力な魔法具や堅固な城塞を作り上げることが出来た。[[力の指輪]]が魔法具の代表的なものである。[[一つの指輪]]と[[三つの指輪]]を除いた力の指輪は、サウロンの助言と指導の下、[[ノルドール]]・エルフが鍛え上げた品であり、一つの指輪はサウロンが単独で鍛え上げた品である。一つの指輪を作り上げたサウロンは、他の力の指輪で成される事柄やその所有者を支配できるようになった。またヌーメノールに囚われの身になった際、彼は当然一つの指輪を嵌めてゆき、島に到着後、指輪の力を用いて直ぐ様島民の大多数を支配下に置いたとされる<ref>Humphrey Carpenter 『The Letters of J.R.R. Tolkien :Letter#211』 1981 GEORGE ALLEN & UNWIN 296頁</ref><ref>これは後述する第二紀のアカルラベースの内容と矛盾するが、それはアカルラベースが書かれたのが1951年であるのに対し、書簡#211は1958年に書かれたものだからである。またアル=ファラゾーンの時代はエルフと疎遠になっていたことと、エルフ達は力の指輪を秘密にしたままだったため、ファラゾーン王は一つの指輪の存在とその力を知らなかったであろうとも書簡には書かれている。</ref>。その上肉体が滅びても指輪がある限り何度でも蘇ることができた。要塞の方は、最もよく知られたものとして[[バラド=ドゥーア]]があり、他にトル=イン=ガウアホスやドル=グルドゥアなどがある。またオークやトロルを改良することで、陽光に耐性があり、戦闘能力も向上している上位種を作り出した。その他にヌーメノールの地にあっては、工の知識を与えることで彼らの技術力を大きく発展させている。
妖術師とされるだけあって妖術の類に長けていた。特にサウロンが得意としたのが、死霊や悪霊を呼び集めて使役する術であった。彼は悪霊を獣の肉体に封じて己が下僕となした<ref>J.R.R.トールキン 『新版 シルマリルの物語』 評論社 2003年 284頁</ref>。また配下の死霊に他者に憑依してその肉体を乗っ取る術を教えていたとされる<ref> J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.10 Morgoth's Ring』1993年 Harper Collins, 224頁</ref>。後に彼の弟子である[[アングマールの魔王]]もこの術を用いて、[[ワイト|塚人]]を召喚し指輪所持者達を危機に陥らせている。トル=シリオン襲撃の際には恐怖の暗雲を生み出すことで、敵要塞の強襲と占領に成功している。炎の魔力も持っていたようで、[[最後の同盟]]との戦いにおいて、サウロンの手は黒く燃えていて高熱を発していたとされる。[[ギル=ガラド]]はこれによって斃された。指輪物語の初期稿では、最後の同盟軍に悪疫と衰弱の魔法をかけることで苦しめたことが[[エルロンド]]の口から語られている<ref> J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.6 The Return of the Shadow』1988年 Harper Collins, 214頁</ref>。主モルゴスのように暗黒を紡ぐ力も持っており、居城バラド=ドゥーアは常に彼の座す玉座から生み出される暗黒と靄でですっぽりと覆われていた。また中つ国全土に夥しい死者を生み出した大悪疫(やみ病)もサウロンの手になるものであった<ref>J.R.R. トールキン 『新版 指輪物語 追補編』 2004 評論社文庫 47-48頁</ref><ref>デビッド・デイ 『トールキン指輪物語事典』1994 原書房 47頁</ref>。他に幻術と魔術に優れた技術を持っていたため、ヌーメノールの地に居た際には不思議な現象や兆しを見せることで、ほぼ全てのヌーメノール人を惑わすことが出来たという<ref> J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.9 Sauron Defeated』1992年 Harper Collins 315頁</ref>。
主モルゴスと同じく自然現象を操れたと思しい。事実[[滅びの山]]オロドルインはサウロンの意思に従っているようで、彼がモルドールにいる間には活発な活動を見せるが、いない間は休止状態にあった。[[指輪戦争]]時には噴煙を送り出すために噴火している。アカルラベースの最も初期の稿に当たる『失われた道』では、山のような高さの大津波を作り出して、ヌーメノールの
強力な意思の力を有していた。特にこれはサウロンの目や視線、眼光によって表わされる。第一紀ではベレンとフィンロド一行と相対した時、その燃えるような眼で睨みつけただけで、彼らは膝を屈し闇がその周囲に立ち込めた。一行が窒息し溺れるような感覚の中見ることが出来たものは、深く渦巻く闇の帳だけであったという<ref> J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.3 The Lays of Beleriand』1985年 George Allen & Unwin, 230頁</ref>。第二紀末における最後の同盟戦時のサウロンは、極めて恐るべき姿をしておりその目の悪意に耐え得る者は、エルフや人間の偉大なる者たちの中にすら殆どいなかったとされる<ref>J.R.R.トールキン 『新版 シルマリルの物語』 評論社 2003年 478頁</ref>。また、サウロンは中つ国の方々に意思を送ることが出来、彼の注意や意志の力を感じたものは恐怖と重圧を感じることになった。これは「まぶたのない火に縁取られた目」といった心象表現で捉えられた。アモン=ヘンにおいて[[フロド・バギンズ]]はこの目に捉えられそうになるが、ガンダルフがサウロンの注意を逸らしたおかげで事なきを得ている。しかしそれだけでガンダルフは酷く消耗してしまった。[[デネソール]]公は[[パランティーア]]を通じてサウロンと思念で対決をすることが出来たが、これはパランティーアが正当な使用者か、それに準ずる者に従う性質があったからに過ぎない<ref> J.R.R. トールキン 『終わらざりし物語』下巻 2003年 河出書房新社 194頁</ref>。しかし、使用する度に重なるサウロンの意思への抵抗の結果、それによる心労と精神的負担で、最終的にはデネソールは破滅へと追い込まれた。
上記に上げたものはあくまで一部であり、各所で色々と力を振るっているもののどれも詳細な記述はないため、サウロンの力の殆どは想像に頼るほかない。
35行目:
サウロンは能力の項でも述べたよう、巨狼や大蛇、吸血蝙蝠など様々な姿を取ることが出来た。しかし第一紀に普段とっていた姿がどのようなものかは、詳細に書かれている部分はない。ただゴルリムがその眼に射竦められたという件や、ベレンとフィンロド一行のことからわかるよう恐ろしい眼をしていたということだけは確かである。
第二紀においてはノルドールの[[エレギオン]]を訪った時は美しい[[ヴァンヤール]]・エルフの姿をしていたという。ヌーメノールに連れてこられた時は、『失われた道』によると人間の姿をしていたが、どのヌーメノール人よりも背が高く、特に彼の眼光を畏怖する者が多かったという。多くの者達には立派な外見と目に写ったが、他の者達にはひどく恐ろしいと思われ、ある者達は邪悪に感じたとされている<ref> 『ユリイカ 7月号』1992年 青土社 196頁</ref>。ヌーメノール沈没後は主モルゴスと同じような、見るも恐ろしい、目に見える形となった破壊と憎悪の権化となり、その眼を直視し得る者は殆どいなかったという。
第三紀ではトールキンの書簡からすると実体を持っていたようである。サウロンは恐ろしい姿をしていたと考えられるのは間違いない。人型の形をとっていたが、その身長は人間のそれよりもより高いものではあったものの、巨人と言えるほどのものではなかった、と記されている<ref> Humphrey Carpenter 『The Letters of J.R.R. Tolkien :Letter#246』 1981 GEORGE ALLEN & UNWIN 350頁</ref>。
51行目:
その後イルーヴァタールの次子である[[人間 (トールキン)|人間]]が目覚めたため、モルゴスが彼らを堕落させるため東方に赴いた際には、モルゴス不在の間の指揮権を主から一任されており、その間のエルフとの戦いはサウロンが指揮を取っていた。
ダゴール・ブラゴルラハの二年後には<ref>トールキンの後期のアイディア(灰色の年代記)では、この合戦を、ダゴール・ブラゴルラハと同時期に起きたものにするというものがあった。その時トル=シリオンを守っていた、フィンロドの弟オロドレスは絶体絶命の危機に陥っていたが、この時南西方に逃れた[[ケレゴルム]]と[[クルフィン]]が配下の騎兵に加えて、道中集められるだけ集めた軍勢でサウロンに立ち向かったため、オロドレスは命拾いをしたというものがある。しかしこの結果サウロンの力の前に、ケレゴルムとクルフィンと僅かな供回りだけを残して軍は壊滅し、トル=シリオンは奪われた。この働きがあったために、二人は[[ナルゴスロンド]]で歓迎を受け両王家の痼は忘れ去られた、と出版されたシルマリルの物語よりも自然な流れになっている。J.R.R. Tolkien, Christopher Tolkien 『The History of Middle Earth, vol.11 The War of the Jewels』1994年 Harper Collins 54頁</ref>、サウロン自ら軍を率いて[[オロドレス]]の守護するトル=シリオンを強襲・陥落させて占領している。そして[[巨狼]]や[[吸血蝙蝠]]、悪霊・死霊の類といった配下でそこを満たしたため、エルフ達にとって大きな脅威となった。このため、トル=シリオンは以後トル=イン=ガウアホス(巨狼の島)と呼ばれるようになる。ここはモルゴスのための物見の塔となり、以後全てのものはサウロンに見られることなくこの谷間を通過することは不可能になった。また、トル=イン=ガウアホスの塔に座したサウロンはそこで広く妖術を執り行ったため、[[ドリアス]]を守る[[メリアン (トールキン)|メリアン]]の魔法帯とせめぎ合うこととなり、両者の力が渦巻く地点となったナン=ドゥンゴルセブはオークでさえもが決して近寄らない魔境と化してしまった。他に、ドルソニオンでゲリラ的抵抗を続けるバラヒア一味の抹殺をモルゴスから命じられた際には、そのうちの1人であるゴルリムを捕らえて欺くことで、彼らの隠れ家を突き止めて[[ベレン (トールキン)|ベレン]]を除いた一味の殲滅に成功する。10年後、ナルゴスロンドの王[[フィンロド
やがて[[ルーシエン]]がヴァラールの猟犬[[フアン (トールキン)|フアン]]を伴いベレン救出のためにやってくると、サウロンは配下の巨狼を次々と繰り出すが、皆フアンに一撃で殺されてしまう。そこで巨狼の祖たるドラウグルインを送り出すが、彼もまた激闘の末に敗北する。ドラウグルインは瀕死の身で主の下に辿り着くと、敵がフアンであることを伝えて死亡する。かねてから「フアンはかつて存在したこともない強大な狼と闘って命を落とす」との予言を耳にしていたサウロンは、自らを史上最大の狼に姿を変えて彼らの前に姿を現す。巨狼サウロンが近づくに連れ、その恐怖の余りの凄まじさにフアンが怯み退いてしまったため、サウロンはルーシエンに容易く近づくことが出来た。サウロンを目の前にしたルーシエンは失神してしまったが、倒れる寸前に眠りの魔力が込められた外套をサウロンに被せることに成功し、その魔力でサウロンは微睡み蹌踉めいてしまう。その隙を突いて再び姿を現したフアンが、サウロンに跳びかかり両者の戦いが始まるが、フアンの予言された運命にある巨狼とはサウロンのことではなかったため、遂にサウロンは敗北を喫する。そしてトル=イン=ガウアホスを明け渡すことと引き換えに助命する条件で、ルーシエンからの降伏勧告を受け入れたサウロンは、巨大な吸血蝙蝠に姿を変じるとタウア=ヌ=フインへと飛び去って、そこを恐怖で満たした。サウロンの魔力が消失すると、トル=イン=ガウアホスの塔は崩れ落ち、地下牢は日に曝され、島に巣食っていた悪霊たちは雲散霧消した。
| |||