'''マンクス2 7100便着陸失敗事故'''(マンクス2 7100びんちゃくりくしっぱいじこ)とは、[[マンクス2]]が運航する近距離定期便の{{仮リンク|フェアチャイルド・スウェアリンジェン メトロライナー|en|Fairchild_Swearingen_Metroliner}}が、[[2011年]][[2月10日]]に[[コーク空港]]での着陸に失敗した事故である。
== 航空機と乗務員事故概要 ==
2011年2月10日、現地時間午前9時50分頃、[[北アイルランド]]首都の[[ベルファスト]]から[[アイルランド]]の[[コーク]]へ向かっていた近距離定期便である7100便が、コーク空港の滑走路17への着陸に失敗した。機体は最終 着陸進入中 に突然、左に大きく傾き 滑走路に接触、裏返しになって 滑走路17に叩きつけられ大破した。 ▼
* 機体:フェアチャイルド・スウェリンゲン メトロライナー、[[機体記号]]:EC-ITP
* 乗務員:2名([[機長]](31歳)・[[副操縦士]](27歳))
乗 っていたのは員乗客12名 での内、機長と副操縦士および乗客4名の合計6名が死亡し、乗客4名が重傷を負った。アイルランドでは過去45年間で最悪の航空機事故となった<ref>ただし、[[1985年]][[6月23日]]に発生した[[エア・インディア182便爆破事件]]は含まれない</ref>。 ▼
▲2011年2月10日、現地時間午前9時50分頃、[[北アイルランド]]首都の[[ベルファスト]]から[[アイルランド]]の[[コーク]]へ向かっていた近距離定期便である7100便が、コーク空港の滑走路17への着陸に失敗した。機体は最終着陸進入中に突然左に大きく傾き、裏返しになって滑走路17に叩きつけられた。
7100便は濃 い霧のために 既事故直前に2度[[着陸復行]]をしていた。 それま3度目の着陸進入で は主な操縦は副操縦士が 操縦担当し ていたが 、3回目に着陸を試みた際は[[エンジン]]の 出推力調整 だけをのみ機長が担当し た。これは飛行機のており(後述)、操縦は1人が行い、もう1人は計器を確認するという手順を逸脱して おり、事故の引き金となっいた。 ▼
▲乗っていたのは12名で、機長と副操縦士および乗客4名の合計6名が死亡し、乗客4名が重傷を負った。アイルランドでは過去45年間で最悪の航空機事故となった<ref>ただし、[[1985年]][[6月23日]]に発生した[[エア・インディア182便爆破事件]]は含まれない</ref>。
▲7100便は濃い霧のために既に2度[[着陸復行]]をしていた。それまでは副操縦士が操縦していたが、3回目に着陸を試みた際は[[エンジン]]の出力調整だけを機長が担当した。これは飛行機の操縦は1人が行い、もう1人は計器を確認するという手順を逸脱しており、事故の引き金となった。
この事故の直接の原因はパイロット たちの操縦ミスエラーだが、 背後には数々その 問題他さまざまな要因があった。 ▼
まず、機長は事故の4日前に機長に なっ昇格したばかりであり、機長として の乗務にまだ慣れていない状態に経験不足であった。副操縦士は雇 われて用から3週間しか経っておらず、 さらに悪いことには両名共に 搭乗機であるフェアチャイルド・メトロライナーの慣熟訓練が未了だった。 つまり、(この 7100便では実質的に新米パイロット同士が組んでいたことにような り、航空業界で勤務は違反行為 にであ たる。り、通常、機長 ないもし くは副操縦士が 新人パイロット経験不足である場合 は、 組む相手であるクルーどちらかのパイロットには100時間以上の飛行経験が求められる。 )▼
機体は元々左エンジンの推力が相対的に高くなっており、左に傾いた際にスラストレバーを機長が握っていたために副操縦士の反応が遅れ、最後には裏返しになってしまった。
▲この事故の直接の原因はパイロットたちの操縦ミスだが、背後には数々の問題があった。
また、目的地であるコーク 空港は霧が発生しやすい場所 でにあり、そのような視界不良の起きやすい環境下では、 パイロットの操縦 経験や目的地への離着陸経験、地形や空港の状況の知識、さらには緊急事態に対 処する 能力技量が 必要 と求される 。そのため為、不慣れな 搭乗員パイロット同士の組み合わせは 尚更不適当であ ってはならない状況だった。 ▼
▲まず、機長は事故の4日前に機長になったばかりであり、機長としての乗務にまだ慣れていない状態にあった。副操縦士は雇われて3週間しか経っておらず、さらに悪いことには両名共に搭乗機であるフェアチャイルド・メトロライナーの慣熟訓練が未了だった。つまり、この7100便では実質的に新米パイロット同士が組んでいたことになり、航空業界では違反行為にあたる。通常、機長ないしは副操縦士が新人パイロットである場合、組む相手であるクルーには100時間以上の飛行経験が求められる。
さらに、事故機には[[客室乗務員]]がおらず、乗客の案内や、飛行準備作業(事業者は当該機を含むフェアチャイルド・メトロライナーを夜間は貨物機、日中は旅客機として運用を行なっていた為、座席の設置作業など)をパイロット自身が行っており、睡眠不足などの肉体的、精神的な疲労が累積していた。
▲また、目的地であるコークは霧が発生しやすい場所であり、そのような視界不良の起きやすい環境下では、パイロットの操縦経験や目的地への離着陸経験、地形や空港の状況の知識、さらには緊急事態に対処する能力が必要とされる。そのため、不慣れな搭乗員同士の組み合わせは尚更あってはならない状況だった。
当日は空港の気象状態が悪く、本来ならば別の空港に代替着陸するべきだったが、会社側から振替え便や代替輸送手段などの支援を受けられなかった為、着陸を強行せざるを得ない状況にあった。
さらに、事故機には[[客室乗務員]]がいなかったため、出発前に乗客への安全事項を説明する役割は副操縦士が行なう他なかった。本来ならば、機長と副操縦士のパイロット2人で運行する場合は、彼らは操縦に集中し、運行に備えた打ち合わせを出発直前まで行なうべきである。それに加えて、運行会社のマンクス2は、当該機を含むフェアチャイルド・メトロライナーを夜間は貨物機として使用し、昼間に旅客運行を行なっていた。ところが、本来ならば旅客運行のために座席を設置する地上スタッフがいてしかるべきであるのに、マンクス2ではパイロットたちが座席を設置する作業を行なうことが常態化していた。そのような条件下に置かれたパイロットたちには肉体的、精神的な疲労が累積し、事故当日のパイロットたちは実際にほぼ睡眠不足だったことが判明している。
フライトレコーダーの記録から、事故機のエンジンが整備不良により左右のエンジンで推力に差があり、右に傾斜しやすい状態にあった。この問題は事故の106時間前から発生していたが、整備されていなかった。
そして、当日パイロットたちは着陸を焦っていた。視界不良という悪条件があり、本来ならば別の空港に着陸するべきであるが、若いパイロットたちは会社側から振替え便や代用の輸送手段などの支援を受けられず、重いプレッシャーに晒されていたため、二度着陸復航した後、三度目の着陸を強行した。この時、操縦を担当していたのは副操縦士だったが、機長がエンジン推力の調整を行なったために、副操縦士の対応にタイムラグが起きてしまった。
そして、フライトレコーダー3度目の記録から明らか着陸復航の際になったことは、左右のエンジン推力にバランス傾斜したが取れておらず、左操縦を副操縦士、エンジンの方の推力が大きかったために、の調整を機長が土壇場で着陸復航行う不適切な作業分担を行おうとしった結果為、機体の傾斜に対する修正操作に遅延が生じ、右主翼をが滑走路面に叩きつけ、接触しそのまま機体が横転大破した。
このような事実が明らかになり、事故調査はマンクス2という会社の実態調査に移行した。すると、マンクス2というのは、[[スペイン]]資本の会社だったが、拠点は[[マン島]]の[[マン島空港]]となっており、[[航空会社]]ではなく、[[インターネット]]上で[[チケット]]を販売しているだけのいわゆる[[ペーパーカンパニー]]であることが判明した。使用されていた航空機はスペインの会社の所有で整備も外注であったことに調査官たちは困惑した。さらに、当該機には事故までの106時間の飛行記録がありエンジンの推力バランスに問題を抱え続けていたにも関わらず、搭乗したパイロットたちがそのことに気付かなかったか記録しなかったため、整備時に見落とされていたことも判明する。これらの実態が明るみに出た運航会社のマンクス2は、2012年12月に倒産した。
マンクス2は2006年に設立された[[スペイン]]資本の会社だったが、拠点は[[マン島]]の[[マン島空港]]となっており、[[インターネット]]上で[[チケット]]を販売しているだけのいわゆる[[ヴァーチャル・エアライン|バーチャルエアライン]]であった。事故機はスペインの会社の所有で整備も外注であった。事故の後、2012年12月に運航停止し、[[マネジメント・バイアウト|MBO]]により設立されたシティウイングに移管された。
== 関連項目 ==
{{ウィキポータルリンク|災害}}
* [[エア・インディア182便爆破事件]] - [[シク教]]徒が仕掛けたテロリストの爆弾により、[[エア・インディア]]の[[ボーイング747]]が[[空中分解]]して墜落した事件。329名が死亡し、当時[[テロ]]による史上最悪の犠牲者を出した。偶然にも墜落現場は本事故の現場となったコークから290km沖だった。{{疑問点|title=本記事の事故との関連や類似性が不明|date=2019年1月}}
* [[エア・モーレア1121便墜落事故]] - 本事故の4年前に[[タヒチ]]の[[モーレア島]]で発生し、20名が死亡した事故。当初この事故と同じように方向舵や昇降舵のケーブルの切断が疑われた。
* [[クロスエア3597便墜落事故]] - 夜間の悪天候にもかかわらず、無理にの着陸を試みたパイロットの時に不適切な操縦が原因で発生した航空機事故。この事故機時の機長は経歴こそ長かったが、パイロットとしては不適格な人物であり、会社側もこの機長に対して適切な教育や処分を下さないまま放置していったことが遠因となった。
* [[アダム航空574便墜落事故]] - [[ボーイング737]]が[[インドネシア]]の[[スラウェシ島]]沖に墜落し、乗員乗客102名全員が死亡た事故。原因は悪天候下における技量未熟なパイロットたちの操縦ミスが原因だったが、安全性を軽視する運航空会社の体質も問題視され、その後も事故が続発したことで[[アダム航空]]は事故から2年後に倒産した。
* [[航空事故の一覧]]
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