「国鉄EF66形電気機関車」の版間の差分
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'''EF66形電気機関車'''(EF66がたでんききかんしゃ)は、[[日本国有鉄道]](国鉄)が[[1968年]]([[昭和]]43年)から[[1974年]](昭和49年)まで、[[日本貨物鉄道]](JR貨物)が[[1989年]]([[平成]]元年)から[[1991年]](平成3年)まで製作した[[直流電化|直流]][[電気機関車]]である。
本形式の量産に先立ち、[[1966年]](昭和41年)に試作された'''EF90形電気機関車'''についても
== 概要 ==
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== 構造 ==
※ここでは設計当初の仕様について記述し、後年の変更箇所
=== 車体 ===
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軸箱支持機構は台車枠の側梁から垂直に下ろされたピンと軸箱の円筒ゴムが摺動することで前後左右方向を弾性支持し、上下荷重は軸受直上に位置する2組のコイルばねが負担する、[[国鉄ED60形電気機関車|ED60形]]用DT106以来の方式が踏襲されている。
動力伝達機構は従来の[[吊り掛け駆動方式|吊り掛け式]]ではばね下重量が過大で[[軌道 (鉄道)|軌道]]負担が大きく、またMT56のような高速電動機ではフラッシュオーバなどの故障が頻発する恐れがあったことから、新開発のQD10[[クイル式駆動方式#中空軸可撓吊り掛け駆動方式|中空軸可撓吊り掛け式]]駆動装置を用いてばね下重量を軽減している。これは設計当時ドイツ連邦鉄道[[西ドイツ国鉄103型電気機関車|103型]]電気機関車などで採用されていたものと同様
高速貨物列車の牽引が前提であるため、ブレーキ装置には[[自動空気ブレーキ#電磁自動空気ブレーキ|電磁ブレーキ]]指令装置と応速度単機増圧機能を装備する。[[圧縮機|電動空気圧縮機]] (CP) は10000系貨車の空気ばねにも空気圧を供給する<ref group="注">10000系貨車の空気ばねは7両分以上の空気圧供給をブレーキ管経由で行うと、それだけで自動ブレーキが作用してしまうほどの消費量となる。そのため、10000系貨車を長大編成で運用するには元空気溜管 (MRP) の引き通しと、それに空気圧を供給する大容量CPの搭載が必須であった。</ref>ため、EF65形と同様のMH92B-C3000を2基を搭載する<ref group="注">EF65形は1基搭載である。</ref>。
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[[連結器]]は周囲にブレーキ指令を伝えるブレーキ管 (BP) および空気圧を供給する元空気溜管 (MRP)、と2系統の空気管を装備し、同形の連結器を備える10000系高速貨車との連結時には空気管も自動的に連結される構造である。これは10000系貨車の各台車に備えられた空気ばねと各車のブレーキ装置を駆動する動力源となる元空気溜に空気圧を供給するMRPを編成全体に引き通すためで、連結器本体は遊間のない[[日本製鋼所]]設計の[[連結器#密着自動連結器|密着自動連結器]](密自連)を使用して連結時に各空気管も確実に接続される設計としている。
補機類や計器類の電源を供給する補助電源には、EF65形と同様の5kVAの容量を備えるMH81B-DM44B交流発電機を採用
電動機などの冷却に使用する電動送風機は、MH91G-FK99を2基搭載する。内訳は、第1 - 第4電動機用が1基、第5・6電動機・ブレーキ抵抗器用が1基である。
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昭和40年度第2次債務により、1966年9月に'''EF90形'''として川崎車輛+川崎電機で製作された。本形式の前身となる試作機である。最高速度 100 km/h の高速貨車コキ10000形・レサ10000形などと同時に試作され、各種試験に供された。外観上、正面窓の形状が若干異なる。中央の桟は幅が太く、隅の桟は量産車より内側に寄っている。また、側引き窓が2分割されている(量産車は1枚)。1968年、量産1次車が製作されたのと同時期に量産車と仕様を統一する改造を行い、量産車と同じEF66形に編入して番号を'''EF66 901'''に変更した。前面窓の桟の移設は1987年の全検入場時に行われたが、桟の幅は変更されなかった<ref>『鉄道ファン』1991年11月号、交友社、p.44</ref>。
1987年のJR移行時にはJR貨物に承継され、[[吹田機関区]]に配置され貨物列車に使用された。[[1996年]](平成8年)12月にヘッドマーク「さよなら901」を装着して走行し同月28日の2060レ(幡生 → 吹田)で運用から離脱<ref name="EF66 0 100 p40">{{Cite book|和書|editor= |title=鉄道名車 モデル&プロファイル EF66 0&100番代|year=2011|publisher=ネコ・パブリッシング|pages=p.40|id=}}</ref>、[[保留車]]となり[[2001年]](平成13年)[[2月9日]]付で[[廃車 (鉄道)|廃車]]された<ref name="EF66 0 100 pp3637">{{Cite book|和書|editor= |title=鉄道名車 モデル&プロファイル EF66 0&100番代|year=2011|publisher=ネコ・パブリッシング|pages=pp.36 - 37|id=}}</ref>。現車は[[広島車両所]]構内で解体され、現存しない。
=== 基本番台 ===
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===== 改造 =====
; ひさし取り付け
運転台窓に飛散する汚濁防止として新製時にひさし
=== 100番台 ===
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外観は大きく変更され、前面は正面窓を大型化し、上面が大きく傾斜した3面構成の意匠に変更され、灯火類は正面中位に前照灯・標識灯を横方向に配置する。正面窓にはウィンドウォッシャーが装備され、乗務員室には[[エア・コンディショナー|冷房装置]]が搭載された。外部塗色は車体上部が濃淡ブルーの組み合わせ、下部がライトパープル、乗務員室扉はカラシ色([[黄土色]])のJR貨物標準色である<ref name="RF337_61">[[#鉄道ファン337|『鉄道ファン』通巻337号、p.61]]</ref>。
電動機・制御機器は新たな規制への対応や機器類の有害物質排除など細部に変更が見られる。電動機では、整流改善対策として基本番台2次形(EF66 21以降)からコンバインドシャント抵抗器が用いられていたが、誘導コイルの見直しなどにより整流が改善
制動面では基本番台に改造で取り付けられた[[国鉄コキ50000形貨車|コキ50000形]]250000番台コンテナ車による100km/h運転対応の減圧促進装置が当初から設けられている<ref name="RF337_62" />。また電磁ブレーキ指令装置は、編成増圧機能が省略され、単機増圧方式となり、従来の空気差圧感知式の電空帰還器から、[[国鉄ED79形電気機関車#50番台|ED79形電気機関車(50番台)]]同様のカム接点付きのブレーキ弁に変更されている。空気圧縮機は空気管などのドレンによる腐食を防止するため、除湿装置が追加されている<ref name="RF337_61" />。
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[[JR貨物コキ100形貨車|コキ100形貨車]]登場後は、100番台と同様にスカートの1位と4位側へのMRPの増設が、後にJR西日本から移籍した車両を含めて全機に施工された。
基本番台機に対しては乗務員室に冷風装置の取付を実施している。[[1988年]](昭和63年)に試験的に取付を実施し、1991年から本格対応として電源容量の大きいEF66 21以降<ref group="注">EF66 1 - 20は国鉄時代からの[[扇風機]]を設けるのみである。</ref>に
また、1988年にはEF66 18が瀬戸大橋の荷重試験列車の一部として使用された。
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{{main|#延命・更新工事}}
東海道・山陽本線を中心に運用されるが、[[1998年]](平成10年)10月には[[東北本線]][[黒磯駅]]までの運用が追加された<ref>『鉄道ファン』1999年4月号、交友社、1999年、p.37</ref>。[[2000年代]]に入ってからは[[国鉄EF65形電気機関車|EF65形]]から本形式に運用が置き換えられた線区・列車もあるが、基本番台は製作後30年以上が経過し老朽化や状態不良・[[JR貨物EF210形電気機関車|EF210形]]による置き換えの進行
[[2016年]](平成28年)[[3月1日]]時点では吹田機関区に基本番台6両(EF66 21・26・27・30・33・36)、100番台33両 (EF66 101 - 133) の合計39両が配置されていた。[[2018年]](平成30年)3月のダイヤ改正時点では東海道本線、山陽本線幡生駅以東区間、[[武蔵野線]]越谷貨物ターミナル駅以西で運用されていた<ref>{{Cite book|和書|author=|editor=|title=JR貨物時刻表2018|date=|year=2018|accessdate=|publisher=社団法人鉄道貨物協会|pages=|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=|id=}}</ref>。その後[[2019年]](平成31年)3月のダイヤ改正から東海道本線、山陽本線東福山駅以東、武蔵野線越谷貨物ターミナル駅以西、東北本線宇都宮貨物ターミナル駅までの区間で運用されている。
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2019年(平成31年)4月現在、現役で稼働している基本番台は27号機が唯一となっており、愛好家からは27という数字にちなんで'''「ニーナ」'''と呼ばれ親しまれている<ref>[https://www.47news.jp/3486160.html アイドル機関車「ニーナ」] - 47NEWS、2019年4月19日</ref>。
それ以外の基本番台機は
EF66 11は[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)に無償譲渡された後、[[鉄道博物館 (さいたま市)|鉄道博物館]]に展示のため連結器の空気管再設置やMRP管撤去など、EF66 35と同様に原型への復元作業が行われ、建設中の博物館建屋に搬入されている。EF66 35は運用離脱後、JR西日本に無償譲渡された。その後[[梅小路蒸気機関車館|京都鉄道博物館]]に展示のため冷房装置撤去と国鉄塗装への復元作業が行われ、建設中の博物館建屋に搬入された<ref group="注">京都鉄道博物館公式FacebookページでEF66 35の国鉄塗装への復元と展示について言及あり。</ref><ref>「[http://rail.hobidas.com/rmn/archives/2014/07/jref66_35dd51_756.html DD51 756・EF66 35が梅小路へ回送される]」 ネコ・パプリッシング『鉄道ホビダス』RMニュース、2014年7月7日</ref>。
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1993年から[[2006年]](平成18年)にかけて、内部機器の更新、側引き戸のステンレス化、前面ナンバープレート部の装飾および前照灯間のステンレス飾り帯の撤去などが行われた。施工済機は車体塗色を変更している。JR貨物所有の0番台全車に施行する予定であったが<ref>『鉄道ファン』1993年9月号、交友社、1993年、p.67</ref>、最終的にEF66 1 - 5・7 - 10・12・13・16 - 39・41・44・52・54に施行された。
更新工事を施工した車両には塗装変更を施した。この変更
[[2004年]](平成16年)施工のEF66 54以降は外部塗色が変更され、車体を青15号、正面と車体裾部にクリーム色1号を配した、国鉄色に近似するものとなった<ref>『J-train』Vol.14、[[イカロス出版]]、2004年、p.126</ref>。旧更新色と比べて色あせや汚れが目立たずにマスキングの手間を省くことができる塗装として採用され、この塗色は新更新色とも呼称される<ref name="EF66 0 100 p30" />。最終的にEF66 9・10・12・16・17・19 - 26・28 - 39・41・44・52・54が新更新色となった<ref group="注">EF66 33・36・54は旧更新色を経ることなく、国鉄色から新更新色に塗り替えられた。</ref><ref group="注">旧更新色もその後の全般検査において塗装変更された車両や、車両置き換えによって除籍された車両が増え、2010年6月に広島車両所を出場したEF66 30を最後に姿を消し、JR貨物における現役の更新色車両はすべて新更新色となっている。</ref>。初期に塗装が変更されたEF66 16・19・20・54とそれ以外の車両では、手摺や車体裾帯の色などで若干の相違が見られる。
2006年9月に0番台最後となる更新工事を施工したEF66 27は、ほぼ国鉄塗装のままで出場した。
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[[1994年]](平成6年)12月のダイヤ改正で「みずほ」と「あさかぜ」1往復が廃止となったのを皮切りに、東海道・山陽本線の寝台特急が徐々に削減されたため余剰が発生し、[[1995年]](平成7年)5月11日付でEF66 40がEF66形初の廃車、1997年(平成9年)2月22日付で事故復旧機のEF66 55が廃車となり、1999年(平成11年)から2002年(平成14年)にかけてEF66 41・44・52・54がJR貨物に移籍した。
以後、[[下関地域鉄道部#下関車両管理室|下関地域鉄道部下関車両管理室]]<ref group="注">2009年[[6月1日]]に[[下関総合車両所#運用検修センター|下関総合車両所運用検修センター]]に改称されている。</ref>に10両(EF66 42・43・45 - 51・53)を配置し引き続き使用されたが、寝台特急の運用は漸次減少し、最後まで残存した「富士」・「はやぶさ」(東京 - 下関間)の運用が2009年3月14日[[2001年以降のJRダイヤ改正|ダイヤ改正]]の列車廃止によって消滅し、定期運用を喪失した。その後、8両が廃車され<ref name="railf 201006">「JR旅客会社の車両配置表」 『鉄道ファン』2010年6月号(通巻591号)、交友社</ref>、EF66 45・49の2両のみ残存した<ref name="railf 201006" />。以後は臨時の[[特殊列車#工事列車|工事列車]](工臨)などに用いられたのち、2010年[[9月20日]]付で廃車となり、JR西日本所属車は消滅している<ref>{{Cite book|和書|editor=ジェー・アール・アール |title=JR電車編成表 2011冬 |year=2010 |publisher=交通新聞社|pages=p.349|id=ISBN 9784330184104}}</ref>。{{-}}
== 保存機 ==
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|EF66 35
|rowspan=2|[[京都府]][[京都市]][[下京区]]観喜寺町<br/>[[京都鉄道博物館]]
|EF66 11と同じくJR貨物で活躍したのち、展示用としてJR西日本に譲渡された。その後、冷房装置を撤去し、国鉄塗装に変更されている。[[2015年]](平成27年)[[1月4日|1月4]]・[[1月5日|5日]]限定で旧[[梅小路蒸気機関車館]]の扇形庫で展示された<ref>[http://railf.jp/news/2015/01/07/140000.html 梅小路蒸気機関車館で特別展示『蒸気機関車の頭出し』開催] - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 2015年1月7日付</ref>のち、京都鉄道博物館の開館に伴い
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|[[ファイル:JRW 221 and EF66 driver cabs at Kyoto Railway Museum 2016-10-17.jpg|150px]]
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