「尊属殺」の版間の差分
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近親殺のうち尊属が客体となる場合を尊属殺、卑属が客体となる場合を卑属殺というが、親子間の殺人事件の処罰のあり方については、その時代における様々な社会的諸条件のもとに定められてきた<ref name="S62" />。
尊属殺を法律上特に重く罰することは、[[ローマ法]]のパリキディウム (parricidium) 以来、多くの[[国家]]で認められていた<ref name="S62">『昭和62年版犯罪白書』</ref><ref name="murai" />。古代ギリシャや古代ユダヤの法には、尊属殺の未遂に対する重罰規定が設けられていたが、既遂に関する規定はなく、このような蛮行がありうることを認めるのを嫌ったためとされている<ref name="S48" />。尊属殺と卑属殺を区別せず近親殺という構成要件で重く処罰する立法例もみられる<ref name="S62" />。
ただ、尊属殺重罰規定については[[法の下の平等]]の観点で議論があり、具体的事案に即した場合にも、親子間の葛藤の中で生じた殺人事件には、他人間の場合とは比較にならない「特別の情状」が存在することも多いとされている<ref name="S62" />。このように情状において同情すべき場合に、一律に加重類型として取り扱うより、通常の殺人罪の規定のもとで具体的事案に即して、刑の軽重を判断するほうが妥当であると考えられるようになった<ref name="S48" />。各国においても尊属殺人罪を規定する刑法は、[[大韓民国]](刑法250条)や[[中華民国]](刑法272条)、[[フランス]](刑法299条)など === 中国法 ===
中国の律令制度でも、重罰規定が設けられていた<ref name="murai" />。[[唐]]の[[律令]]における尊属殺人は、[[皇帝]]に対する反逆罪と同様とされた(十虐)。
=== 大陸法 ===
ローマ法では近親殺は、パリキディウム (parricidium) として処罰されていた<ref name="murai">村井敏邦『刑法~現代の「犯罪と刑罰」』1990年、16頁</ref>。このローマ法の思想はフランス法へと受け継がれて尊属殺の意味に転化した<ref name="murai" />。
=== 英米法 ===
大陸法にみられる尊属殺重罰規定は、英米法には見られない<ref name="S48">『最高裁判所判例解説刑事篇 昭和48年度』1973年、8頁</ref>。
== 日本における尊属殺 ==
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