削除された内容 追加された内容
31行目:
===第五条===
*「一、世中にやくの侍べき人の、その身を卑下して我身やすくばとおもふ、かへすがへす口おしく、頑しき事也。人と生きなば万人に超、他人をたすくべき願をおこして、他のため心をくだくを生々世々のおもひ出とはすべきなり。[[菩薩]]といふもただ此ためなれば、凡夫の身として、菩薩の願にひとしくせば、思ひ出なにごとかこれにまさるべき。」
 
===第六条===
*「一、能の有人は、心のほどもおもひやられ、その家も心にくき也。世中は名利のみなり、能は名聞なれば、不堪と云とも猶たしなむべし。心のおよび、学びもて行ほどに、物のへたといふとも、功の入ぬる事は、かたはらいたきことのなき也。よくする事はまれなり。尋常しくなりて、人なみに立まじはるまでを詮とすべし。いかに高き家に生、みめかたちよく侍人も、歌よむとて、短冊とる所、詩作るとて韻などさぐり、管絃の所の器のまへわたし、連歌の中にせぬ人にて他言うちまじへ、音曲する人の座しきにつらなりてつらづえつき、鞠などの場に露をだにえはらはず。又わかき友だちのよき手跡にて消息かきかはしなどするに、他人の手をかりて、口筆をだにはかばかしくえせぬもいふがひなきに、あまつさへ女の方への文などの時、人の手をやとひ侍るほどに、忍ぶべきこともあらはになり侍るは、いかが口おしからぬや。囲碁、象棊、双六やうのいたずらごとにだにも、その座につらなりて、知侍らぬはつたなくこそ侍るめれ。弓箭とりにて、的、笠懸、犬追物などたしなむべきことは、云にをよばず。もとよりのことなり。」
 
(「能の有人」=芸能のたしなみのある人、「功の入ぬる事」=功は年功、年季の入ったものは、「尋常(つねづね)し」=教養のある、「歌よむとて~露をだにえはらはず」=芸事の作法を知らないが為の失態の例を挙げている。「象棊」=音からして将棋のことだろうか、)
 
良い家柄でも、良い容姿でも、教養がないと見苦しい。芸事をたしなむべきである。
 
==著者についての異説==